ー加賀sideー
その頃重桜では、赤城と加賀が気分転換で、母港の出店で、髪飾りが売られている店にいた。
鏡に映る加賀に、赤城が青い髪飾りを加賀の新雪のように美しい白い髪に着けた。
「ほら似合うでしょう?」
「このような物は、私よりも姉様が着けた方が、アイツも喜ぶと思います・・・・///」
「そんな事無いわよ。ほら御覧なさいな」
赤城は髪飾りを着けた加賀に鏡に映る自分を見させた。
「思った通り、加賀には青がよく映えるわ。きっと指揮官様も似合うって言ってくれるわよ」
そう言って、赤城が店にいる饅頭に髪飾りを買う言った。
「これ頂くわ」
「あっ・・・・////(指揮官、似合うと言ってくれるだろうか・・・・)」
加賀も満更でもない笑みを浮かべば、二人はそのまま母港の出店を歩いていると、幼年部の艦船<KAN-SEN>、『重桜所属 駆逐艦 睦月』、『三日月』、『長月』、『水無月』、『文月』、『卯月』がタイヤキを食べる為に走っていると、赤城と加賀に会い、二人が避け、睦月達は通り過ぎるが、卯月は転んでしまい、加賀の足元で止まった。
「っ」
「うぅ・・・・ふぁっ!?」
卯月は加賀を見上げて涙目になる。幼く気弱な卯月にとって、加賀の無言の威圧感(本人にその気は全く無い)が恐いらしい。
加賀が腰を下ろして卯月に話しかける。
「こら、走ると危ないぞ」
「ひぅっ!」
加賀なりに優しく注意したようだが、卯月は完全に怯えてしまったようだ。
「ごめんなさい・・・・!」
「え?」
「悪気は無かったんです・・・・!」
「食べないで下さい・・・・!」
「ま、待て! 私は怒っている訳では・・・・!」
三日月達も戻ってきて加賀に謝罪するが、加賀は怒っているつもりなんて無いので弁明しようとするが聞き入れて貰えなく、どうしたものかと迷っていると。
「あら、加賀ダメじゃない。こんな小さな子を泣かせちゃ」
「姉様!」
「あの! あの! ごめんなさい! むつきのアメさんぜんぶあげるからゆるして!」
「いや、だからな・・・・」
「うふふ、じゃ頂こうかしら」
今度は陸月が涙目でやって来て、飴をあげようとするが、加賀はさらに困ってしまうと、赤城が睦月から飴を1つ取ると、にこやかに睦月の頭を撫でた。
「うふふ、加賀も許してあげるわよね?」
「え、ええ・・・・」
赤城が飴を加賀に渡すと、袖口から小袋を出して睦月に渡した。
「ちゃんとごめんなさいできたご褒美よ。みんなで分けると良いわ」
「??・・・・わぁ!」
小袋の中には、金平糖が一杯入っており、睦月が顔を喜びに染めた。
「お姉ちゃん! ありがとう!!」
睦月達は赤城と加賀に手を振って、タイヤキを食べにまた走り出した。
「まったく、走るなと言ったろうに・・・・」
幼い駆逐艦達に、加賀はため息を吐いた。
「あの子達なりに、不安を振り抜こうとしているのよ」
「えっ?」
「あの子達、凄く泣いていたでしょう? 指揮官様がまたいなくなって」
「あっ・・・・」
加賀も思い出した。カイン指揮官こと、トモユキ指揮官がこの母港を去って、あの駆逐艦達が泣いていた事を。
ーカインsideー
「あら指揮官。もうお暇するの?」
「あぁ、まだ色々な艦船<KAN-SEN>達とコミュニケーションを取らないとね。お茶をありがとうフッド。それじゃ、これから宜しくね『ネルソン』、『ロドニー』」
「はい。指揮官」
「・・・・ふん」
カインが仕事を終えて母港を歩いていると、テラスで優雅にお茶をしていたフッドと、金髪のツインテールに赤い瞳をした豊満な胸に抜群のスタイルをしたツンツンとした艦船<KAN-SEN>と、紫色の長髪と瞳をした同じく豊満な胸と抜群のスタイルをしたにこやかな笑みを浮かべた艦船<KAN-SEN>と共に、お茶を楽しみながらの会話を終えた。
金髪の方は『ロイヤル所属 戦艦 ネルソン』。紫色の長髪はネルソンの妹である『ロイヤル所属 戦艦 ロドニー』。二人は『世界7大戦艦・ビッグ7』と呼ばれる戦艦である。ちなみに重桜であった旗艦の長門と陸奥も、ビッグ7の一員である。
≪ネルソンもロドニーも、相変わらずのようで安心したな≫
「(うん。ロイヤルにいた頃と変わっていないようだ)」
≪しかし、この母港の指揮官に対して、ネルソン嬢は少し態度が悪いと思うが≫
「(まぁまぁ、あれがネルソンの通常運転なんだよ)」
≪俺的にはあのロドニーって嬢ちゃんの方が曲者って感じだったぜ≫
「(あぁ。実は姉のネルソンよりもロドニーの方が恐い処が有るからな)」
トライスクワッドと会話しながら、カインは歩を進めた。
因みにネルソンはカインに好意を抱いているのだが、素直にそれを表現できないだけである。ロドニーもカインに好意を寄せているが、にこやかな笑みのポーカーフェイスで隠しているのだ。
「「ご主人様!!」」
「ん? おお! 『ダイドー』に『シリアス』!」
名前を呼ばれて振り向くと、露出が少々激しいロイヤルメイド服を着た、銀髪の二人の艦船<KAN-SEN>だった。
青を帯びた長い銀髪に大剣を持ち、露出が少々激しいメイド服に豊満な胸とグラマラスな肢体をしたメイド・『ロイヤル所属 軽巡洋艦 ダイドー』と、白銀の銀髪をボブカットにした、同じく大剣に豊満な胸とグラマラスな肢体をしたメイド・『ロイヤル所属 軽巡洋艦 シリアス』である。
「ご主人様。またお会いできて嬉しいです♥️」
「お会いしたかったです。誇らしきご主人様♥️」
二人が頬を赤らめてそう言った。
記憶を失ったカインの側にいて、支えていたのはベルファストだが、ベルファストはロイヤルメイド隊のメイド長としても、ロイヤルの主戦力の一角としても多忙だった為、その時は目の前のダイドーとシリアス、そして『ロイヤル所属 軽巡洋艦 ハーマイオニー』が世話を焼いてくれていたのである。
「あぁ、僕も二人が来てくれて嬉しいよ。ハーマイオニーはどうだい?」
「は、はい。ハーマイオニーはまだ本国の守りを勤めていますが、いずれ来るとの事です」
「そうか、それは楽しみだな」
「・・・・あ、あの、ご主人様、な、何か仕事はありませんか?」
ダイドーが何やら不安そうな顔でそう言った。
「えっ? いや無いけど「そ、そんなっ!?」 ダ、ダイドー?」
≪ヤベッ、始まった・・・・!≫
≪≪何が?≫≫
「ご、ご主人様から何も命じて貰えない・・・・! やっぱり、〈ノブレス・ドライブ〉になれないような無能なメイドには、ご主人様からのご命令を頂けないのでしょうね・・・・!」
「そ、そうなのですかご主人様! あぁ申し訳ありません! ご主人様のお役に立てないこの無能なメイドに! どうか! どうか罰を!!」
顔を青くしてこの世の終わりのように泣き崩れるダイドーの言葉に、シリアスも顔を青くして泣きそうな顔で罰をしてくださいと懇願した。
「い、いや、二人とも落ち着いて!!」
≪・・・・どうなっておるのだタイガ?≫
≪ダイドーもシリアスも、かなり思い込みの激しい性格でさ。トモユキが少し連れない態度を取るとああなるんだ≫
≪メンヘラ系ってヤツか・・・・。兄ちゃん、がんばれよ≫
トライスクワッドはダイドーとシリアスを宥めるカインにエールを送った。
◇
≪こんなに店ができたんだなぁ!≫
≪おお! 寧海くんと平海くんの肉マンか!≫
≪おいあの明石って嬢ちゃんも、店を出してるぜ!≫
何とかダイドーとシリアスを宥め終えて、二人に自分に付いてきてくれと命令をし、浜辺に着いたカインは、浜辺に出来た明石の店や寧海と平海の肉マン屋と花屋を見て、笑みを浮かべる。と、そこで話しているエンタープライズとベルファストを見つけ、話しかけようとすると、エンタープライズが思わぬ事を言った。
「・・・・一緒にメイドでもやれと言うつもりか?」
「ほぉ、随分面白い冗談を言えるようになったなエンタープライズ」
「っ! し、指揮官!?」
「あら、ご主人様。ダイドーとシリアスを連れて視察ですか?」
「まぁね。ところでベル。先ほどのエンタープライズの言葉だが?」
「ええ。ご主人様、いかがでしょうか? 私がエンタープライズ様を何処へ出しても恥ずかしくない、立派なメイドに躾て見せますが?」
「うんうん。ベルが躾てくれるなら、エンタープライズも見事なメイドになるなぁ」
「いや、指揮官! 私は・・・・!」
何やらエンタープライズをメイドにする方向で話を進める二人に、エンタープライズは慌てる。
そんな様子を見て、カイン指揮官(&トライスクワッド)とベルファスト、ダイドーとシリアスもクスクスと笑みを浮かべる。
「メイドは兎も角としても、新しい事に挑戦する事は、良い考えだよ。実はここにいるシリアスだって、少し前までは戦闘担当だったけど、メイド隊に志願して今に至っているんだ」
「っ」
「ぁ・・・・!」
エンタープライズがシリアスを見ると、シリアスはモジモジしながら項垂れた。
「戦い以外の『何か』を見つければ良いのです」
「・・・・私にとっては、難題だな」
「ご主人様の仰る通り、挑戦して見て見れば良いのです。人生とは何時だって、冒険なのですから!」
「・・・・そういう物かな?」
「ふふふ、エンタープライズ。悩め。悩んで悩んで悩みまくって、その先にある『答え』を見つけてみろ」
「・・・・『答え』を、か」
「さて、僕達は明石の店を見てくるよ。行くよダイドー、シリアス」
「「はい。ご主人様」」
明石が開いた店の中に入りーーーー明石の名を呼ぼうとしたその時。
ーーーージリリリリリリリリリリリリリリ!!!
「な、なんだぁっ!?」
何と、突然店内に警報がけたたましく鳴り響くと、店内のシャッターや窓が急に閉めきってしまい、カインと何人かの艦船<KAN-SEN>達を閉じ込めた。
「にゃふふふふふふ!! 遂に捕まえたにゃ指揮官!!」
「あ、明石っ!? 何のつもりだ?!」
カインがレジの方に顔を向けると、レジ台の上に立ち、何やら紙の束を持って饅頭達にスポットライトを当てられている明石がいた。
「忘れているようだけどにゃ指揮官。指揮官は明石に『借金』をしているのにゃ!」
「・・・・・・・・・・・・『借金』??」
≪あぁそう言えばトモユキの頃、艦船<KAN-SEN>のみんなに新しい衣装が出ると明石に借金してまで作ってもらっていたな≫
「・・・・・・・・そうか、『借金』か」
明石が見せた紙の束は、おそらく借金の請求書を、カインはユラリと近づき、請求書の束を持つと、近くにあったシュレッダーに近づきーーーー。
ーーーーガリガリガリガリガリガリガリガリ・・・・。
請求書の束を細く切り刻んでいった。
「にゃぁああああああああああ!! 何を請求書を処分してるにゃ指揮官!!」
「・・・・えっ? あれっ!? 僕、今何やってンのっ!?」
「指揮官ーーーー!!」
袖口から何やら物騒な工具を取り出した明石が、カインに飛びかかる。
「うわーーーー!! 待て待て待って明石! 僕も分からないんだ! 何故かあの紙の束を見た瞬間、意識が飛んでしまって気がついたら!」
「言い訳無用にゃ! 解体してやるにゃーーーー!!」
ーエンタープライズsideー
ドタン! バタン! ガチャガチャ! ドヒャーン!!
外にいるエンタープライズ達は、突然シャッターが閉め切り、指揮官と明石、そして他の艦船<KAN-SEN>達の騒ぐ声を聞きながら、唖然とした顔になっていた。
「ウフフフ。ご主人様がいると、本当に愉快な事が起きますね♪」
ただ一人、ベルファストだけはにこやかな笑みを浮かべていたが。
ー霧崎sideー
「♪~♪~♪~♪~♪~」
霧崎は母港から数十キロ離れた海面の上に立ちながら、鼻歌を口ずさみ、母港に近づく黒い影を見ていた。
次回、カインにとって“天国と地獄"が広がります。