ーカインsideー
レッドアクシズがアズールレーンに進軍を開始した。
目的はーーーー『アズールレーンに捕虜とされている重桜指揮官・海守トモユキ指揮官を奪還する』と言う大義名分を掲げて・・・・。
それを知ったカインは迅速に指示を出し、アズールレーン艦船<KAN-SEN>の大半に出撃させた。
現在カインは、ウェールズとQ・エリザベスの艦の船首に立っていると、Q・エリザベスが声をかけた。
「素晴らしいわね下僕。これこそ私が求めた艦隊だわ!」
「そうですね陛下。ロイヤルとユニオンの艦隊が並んだこの光景、まさに壮観と言えます」
「頼もしい限りですわ」
近くでテーブルを置き、椅子に座りながら優雅に紅茶を飲むフッドと、その隣に控えるシェフィールドとエディンバラ。
それを見て、ウォースパイトは呑気だな、と思いながらも口を開く。
「ええそうね・・・・決戦ですもの」
「指揮官。もう避けられないのだろうか・・・・?」
「・・・・何も相手を全滅させる事が勝利って訳ではないんだ。ようは、レッドアクシズの戦う意思を折れば良いんだよ」
「それは、一体・・・・?」
「ま、その為にこれだけの艦隊を組んだんだけどね」
ウェールズと問答をしたカインの見つめる先には、まだ姿は見えないが、レッドアクシズ艦隊を捉えていた。
≪いよいよおっぱじまるって事か・・・・!≫
≪しかし、同じ艦船<KAN-SEN>達が戦う事になろうとは・・・・≫
≪みんなの本当の敵は、『セイレーン』の筈なのに・・・・!≫
トライスクワッドも、これから起こる戦争に、苦い声色をあげていた。
ー重桜sideー
その頃。
重桜艦隊も、アズールレーン艦隊との決戦に向けて進軍していた。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
赤城と加賀、二人はまっすぐに、遠くから迫り来るアズールレーン艦隊を見据えていた。が、二人が同じ物を見ているかは分からないが。
そんな中、赤城を遠くから見据えている高雄に、愛宕が話しかける。
「どうしたの、高雄ちゃん?」
「いくら指揮官殿を取り戻す為とは言え、時期尚早と思わんか?」
「・・・・・・・・」
「『オロチ計画』も進まない内に、これほどの大規模作戦・・・・。赤城殿は何を考えている?」
「・・・・指揮官と黒いメンタルキューブを取り戻せなかったから、焦っているのかも・・・・?」
トモユキ指揮官を取り戻す事に関しては、重桜艦船<KAN-SEN>全員の総意と言っても良いので、その事に関しては問題は無いが、『オロチ計画』については、赤城と加賀以外は詳しく計画全貌を知らない。旗艦である筈の長門ですらーーーーその事に不信感が抱いているのだ。
自分の艦に立っている瑞鶴も、赤城を見据えていた。そんな妹に、翔鶴が話しかける。
「赤城先輩が何を企んでいるのか分からないけど、大丈夫よ瑞鶴! お姉ちゃんが守ってあげますからねぇー!」
「・・・・うん!」
明るい口調で言う翔鶴に、瑞鶴は頷くが、その胸中は曇ったままだった。
そして綾波の艦に来ていた時雨と夕立と雪風がいた。
「やったー! 漸く出陣だぜ! 指揮官を取り戻すぜーっ!!」
「雪風様の力で、指揮官を取り戻すのだー!」
「・・・・・・・・」
はしゃぐ夕方と雪風を放っておいて、時雨が綾波に近づく。
「元気無いわね、この前からずっと変よ?」
「何でもないです。大丈夫です・・・・」
「・・・・安心しなさいよ! この時雨様には、幸運の女神様が付いているんだから!」
「雪風様もなのだー!」
「ああハイハイ、忘れてないわよ~」
いつもの通りのやり取りで騒ぐ仲間達に、笑みを浮かべる綾波だが、その心は晴れなかった。
ージャベリンsideー
ジャベリンとラフィーは、エンタープライズの艦で物思いに耽っていた。
「向こうには、綾波ちゃんが・・・・」
不安がるジャベリンの手を、ラフィーがソッと掴んだ。
「っ・・・・」
「・・・・」
「ふふっ、大丈夫! どうすれば良いのかまだ分からないけど、でも、もう迷ってはいないから!」
お互いの手を握り合うジャベリンとラフィーの身体からーーーー微かに、金色の光が昇っていたのを、偶然後ろを通りかかったベルファストが見た。
「っ・・・・・・・・」
ベルファストは二人の様子に笑みを浮かべると、同じく物思いに耽っているエンタープライズの元へと向かった。
ーエンタープライズsideー
「・・・・・・・・」
瞼を閉じて風を感じているようなエンタープライズに、ベルファストが話しかける。
「エンタープライズ様」
「・・・・・・・・」
ベルファストの方へと振り向くエンタープライズ。
「考え事でございますか?」
「いや、少し風に当たっていただけだ。・・・・決戦の時は近い、気を引き締めないとな」
「あまり無茶な行動は慎んでくださいませ」
「・・・・・・・・善処する」
顔を逸らして言うエンタープライズに、ベルファストは半眼で見据える。
「エンタープライズさま」
「・・・・まぁそう心配するな。大丈夫だ、迷いは無い」
頬に一筋の汗を垂らしてそう言い、カイン指揮官の指示を仰ぐため、歩みだしたエンタープライズの背中を見つめるベルファスト。ハムマン達が騒いでいるが、ベルファストはその背中に険しい視線を送っていた。
ーカインsideー
そしてその夜。
寝つけず、軍服の上着を肩にかけて甲板に立ち、夜風に当たっていたカインは、静かな海と夜空を訝しげに見ていた。
「(・・・・静かだ・・・・。静か過ぎる・・・・)」
あまりにも不自然なほど静寂な状況に、奇妙な不気味さを感じているカインに、ヘレナから通信が入る。
《指揮官・・・・》
「ヘレナか、どうかしたの?」
《可笑しいんです。さっきから、レーダーの調子が良くなくって・・・・》
「何・・・・?」
すると、今度は褐色の肌に白い髪、白いラインが描かれている少し神聖な雰囲気を持つ、『ユニオン所属 戦艦 マサチューセッツ』からの通信が入った。
《指揮官、何か、良くない事が起きそうな気がする・・・・!》
「っ!」
二人の報告から、カインはイヤな予感が全身を走ると、通信を個別から全体通信に変えて、声を発する。
「全艦船<KAN-SEN>に告ぐ! 直ちに戦闘配備! 敵さんが来るぞっ!!」
カインがそう叫んだその瞬間ーーーー。
ーオブザーバーsideー
『お膳立てはしておいたわ。後は貴女しだいよ、赤城』
『セイレーン・オブザーバー』が、どことも知れない別の空間でそう囁くと、その空間に降り立った赤城が、言葉を唱える。
「天津風、雲の通ひ路吹き閉ぢよ・・・・をとめの姿・・・・しばしとどめむ・・・・!」
その赤城の詠唱と共にーーーーカイン達のいた海域に異変が起きた。
ージャベリンsideー
カインの指示が飛んだその時ーーーー。
突如、静かだった海の波が荒れ、空は暗雲に包まれ、暴雨が降り注ぎ、嵐が吹き荒れた。
「きゃぁあああああああああああああああああっ!」
艦が傾きそうになり、艦載機まで吹き飛ばされそうになり、ジャベリンが落ちそうになるが、ラフィーがその手を取った。
「あっ・・・・!」
「大丈夫・・・・?」
他の艦でも、カインの指示で外に出た艦船<KAN-SEN>達が、突然の嵐に驚いていた。
その時ーーーー。
ーカインsideー
「な、なんだっ!?」
カインが大雨が降り注ぐ曇天の空を見上げるとーーーー虚空に、赤い亀裂が走り、幾つもの赤い稲妻が、アズールレーン艦隊のいる海域に落ちていった。
「くうっ!」
≪これって・・・・!≫
≪何事なのだっ!?≫
≪どうなってんだよっ!?≫
稲妻が迸ると、辺り一面が光に包まれ、カインとトライスクワッド、アズールレーン艦船<KAN-SEN>達は目を瞑った。
◇
光が収まったと思い、目を開けた時ーーーー海域が、いや、その空間自体が変わっていた。
赤い光を放つ太陽のような光。それに照らされた赤い空。闇のような漆黒の海。そしてその海には、『セイレーン』の物と思わしき黒い柱が幾つもの並び、黒い大陸のような物があった。
「・・・・ここは、一体・・・・?」
≪どうやら、何者かによって我々は、別の空間に転移させられたと思われます≫
≪あの一瞬で、艦隊全部を転移させるだなんて・・・・!≫
≪『異次元人 ヤプール』でもあるまいしよ!≫
異様な空間に、カインにトライスクワッド、アズールレーン艦船<KAN-SEN>全員が、辺りを見渡した。
「指揮官! あれを!」
カインの元にやって来たウェールズが指差し、カイン指揮官が視線をそこに向けると、ワームホールのような穴が展開され、ソコから『セイレーン』の艦隊が次々と出てきた。
「指揮官! 『セイレーン艦隊』です!」
「っ! あれは・・・・!」
『セイレーン艦隊』の後方にある、火山列島のような島になんとーーーー赤城が宙を浮いてこちらを見据え、
「赤城っ!!??」
「お迎えにあがりましたわ、我が愛しく恋しい指揮官様♥️・・・・そして、歓迎するわアズールレーン。『私の海』へ」
カインには紅蓮の炎のように熱く危険な視線を、アズールレーン艦隊には冷たい氷のような冷徹を向けていた。
ーオブザーバーsideー
『セイレーン オブザーバー』がいる空間に、霧崎が悠然と歩いてきた。
『あら、なにか用かしら? トレギア?』
「いや何、かなり面白い展開を見せてくれるねぇ」
『“お互いにある程度の干渉はしても、作戦行動には触れない事”。それが私達と貴方の取り決めよ? 反故するつもり?』
「まさか。だけど、私が目をつけている者達に、ちょっとしたサプライズを見せてあげたいんだ」
霧崎が、片手を虚空に向けると、“三つの映像”が映し出せる。
それを見て、オブザーバーも口元を笑みで歪める。
『あらあら、これはこれは、中々楽しめそうねえ・・・・!』
「ふふふふ、だろう?」
霧崎、トレギアもまた、歪んだ笑みを浮かべた。
ーカインsideー
『セイレーン艦隊』から艦載機が発進したのを確認すると、Q・エリザベスから通信がきた。
《下僕。敵が来たわよ?》
「・・・・陛下。この場は、ロイヤル艦隊で対処しましょう。ユニオン艦隊は待機」
《ちょっと待ってよ指揮官! ロイヤル艦隊であの大艦隊を相手にするって無茶だよ! 私達も!》
通信を聞いていたクリーブランドが抗議の声を出すが、カイン指揮官は冷静に対応した。
「クリーブランド。何も彼女の、赤城の『策』に乗る必要は無いよ」
《えっ? 『策』??》
「明石から聞いたが、赤城は頭もキレるし、かなりの陰険な所がある性格らしい。そんな人が、なんでわざわざこんな手の込んだ事をやったと思う?」
《えっと・・・・なんで?》
「赤城の狙いは、“こちらの消耗だ”」
カイン指揮官はアズールレーン艦船<KAN-SEN>全員に伝える。
「おそらくこの『セイレーン艦隊』は囮だ。僕達がコイツらを相手すれば、多かれ少なかれ消耗する。後は切りの良いところで艦隊を退かせ、レッドアクシズ艦隊の本隊で一気に攻め落とすつもりだ」
《な、なるほど・・・・!》
《でも下僕。この海域、もといこの空間から出られないようじゃどの道、消耗戦は避けられないわよ?》
「赤城は言った、『私の海へ』って、この言葉から、おそらくこの空間を作ったのは赤城。おそらく『セイレーン』の技術を応用したのだろう。・・・・つまり、この空間を作った元凶を狙えば良い」
《狙いは赤城って、事ね?》
「その通りです。故にーーーー陛下達に派手に、そして優雅に活躍してもらおうと思います」
《・・・・悪くないわね》
若干弾んだような声でそう言ったQ・エリザベスが言うと、ロイヤル女王陛下として、ロイヤル艦隊に指示を飛ばす。
《行きなさいっ! 我が騎士達よっ!!》
《はっ!!》
ウォースパイトを始めとしたロイヤル艦隊が、応戦に出た。
「よろしく頼むぞ、皆・・・・!」
ーロイヤルsideー
「回りくどい策なんて不要よ! 状況は私が作る! 行くわよ、ウォースパイト!」
「はっ! 陛下!」
Q・エリザベスとウォースパイトの身体から金色の光が漏れ出てくる。
「行くぞ、イラストリアス。ユニコーン」
「はい」
「うん」
ウェールズ達もーーーー。
「では行きますよ、『シグニット』ちゃん」
「は、はい! フッド姉さま!」
フッドが『ロイヤル所属 駆逐艦 シグニット』と共にーーーー。
「我らロイヤルメイド隊、あくまでも優雅に参りましょう」
『はい!』
メイド隊の大半もーーーー。
「ビックセブンの力、見せてやるわよロドニー!」
「敵に情けを無用です」
ネルソンとロドニーもーーーー。
ロイヤル艦船<KAN-SEN>達の身体から、光が漏れ出て来て、そしてーーーー。
『〈ノブレス・ドライブ〉!!』
ロイヤル艦隊の大半が、金色に輝く光を身体に纏った。
次回、〈ノブレス・ドライブ〉ができる艦船<KAN-SEN>達に、暴れてもらいます!