アズールレーンT   作:BREAKERZ

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【覚醒】黒き力の顕現

ー赤城sideー

 

赤城はエンタープライズが沈んだ海を見下ろしながら、笑みを浮かべる。

 

「お眠りなさい。『灰色の亡霊』・・・・。貴女の想いは『黒箱』に宿り、大いなる力の一部となるのよ・・・・」

 

「“大いなる力の一部”、か。それは一体なんの事なのから詳しく教えてほしいな」

 

「っ!」

 

赤城が声のする方に目を向けると、ベルファストとウェールズを控えさせたカインがいた。

 

「あぁ、指揮官様♥️ やはり来てくださると思っておりましたわ・・・・」

 

カインに向かって危険な光を放つ視線を送る赤城。ウェールズとベルファストが警戒して、カインを守るように赤城との間に立つ。

 

「赤城。分かっているのか? 今お前が手にしている力は、とんでもない危険性を持っているって事に?」

 

「指揮官様。・・・・以前も言いましたが、アズールレーンのやり方では間に合いません。その為には、『オロチ計画』を成功させなければなりません」

 

「その為に、セイレーンと癒着したと言うのか?」

 

「・・・・必要な事だったんです。愚かな上層部から指揮官様の母港を守るためにも、『オロチ計画』を成功させ、姉様を・・・・『天城姉様』を取り戻す為にも」

 

「『天城』・・・・。そうか、君は姉を取り戻す為に、セイレーンの技術を・・・・」

 

≪トモユキ! 海面を見ろっ!≫

 

「っ!」

 

タイガに言われ、エンタープライズが落ちた海面から金色の光が上ってきてーーーー。

 

その光が巨大な柱のような伸び、天を貫いたーーーー。

 

「っ!」

 

≪なんだぁっ!?≫

 

≪光・・・・?!≫

 

≪どうなってんだっ!?≫

 

「これは・・・・!」

 

「エンタープライズ様・・・・?」

 

「なっ!」

 

「何事だっ!?」

 

カインとトライスクワッドも、ウェールズも、ベルファストも、赤城と加賀も、そしてこの場にいる艦船<KAN-SEN>全員が、その光に目を奪われた。

 

 

 

 

 

 

ー霧崎sideー

 

「ウッフフフフフフ! 予想通りだよ! エンタープライズ!!」

 

「『覚醒』したわね・・・・やはり貴女なのね。“この世界でも、貴女が『鍵』となるのね”・・・・エンタープライズ」

 

霧崎<トレギア>とオブザーバーは、セイレーン艦船の艦橋から光を見つめると、笑みを浮かべた。

 

 

 

 

ーカインsideー

 

天を貫く光の柱の中に、“瞳が金色に光るエンタープライズが宙に浮いていた”。

両手の中指には、『ベムラーリング』と『エレキングリング』を嵌めており、その貌はまるでーーーー感情、心、意思、それらを全て失った、ギャラクトロンMK2と同じ、文字通りの機械となったようだ。

 

「エンタープライズ・・・・? いや、違う・・・・一体、誰だ?」

 

≪あれって、ベルファスト姐さん達がやる〈ノブレス・ドライブ〉か・・・・?≫

 

≪いや、違う気がするが・・・・っ!≫

 

≪っ! さらに海から何か出てくるぞッ!!≫

 

「っ!」

 

エンタープライズ?の後ろから、巨大な水柱を上げて、漆黒の異形が現れた。

 

『フェエエフェフェフェフェっ!!!!』

 

眼と口の位置が逆転した頭部。胴体に浮かぶ赤い目の巨大な髑髏の顔のような模様をし、身体の各所には何本もの触手が生え、両腕も鞭のような触手となり、背中には巨大な黒い翼などが生え、その容姿はまるで、おぞましい悪魔か、禍々しい邪神のようで、人間の啜り泣きにも、薄ら笑いにも聞こえる不気味な鳴き声を発っするその怪獣はーーーー『悪夢魔獣 ナイトファング』である。

 

「なんだっ?! あの怪獣はっ!?」

 

 

 

 

ー加賀sideー

 

「ーーーーっっ!!!」

 

加賀がエンタープライズの目に見据えられた瞬間、突如意識が遠のき、艦載機から落ちていくーーーー。

 

 

 

ー赤城sidー

 

「加賀っ!! ・・・・っ!!」

 

赤城は加賀の方に向かうが、エンタープライズの光が迫り、危険を感じて逃れようとする。

 

 

 

ーカインsideー

 

「これは一体?」

 

「ご主人様っ!!!」

 

「ベル! ウェールズ! 皆を守るんだっ! 急げ!!」

 

「っ! 行くぞベルファスト!」

 

カインの意図を察したウェールズが、ベルファストを連れて離れようとするが。

 

「しかしご主人様が・・・・!」

 

「大丈夫だベル! 僕を信じて!!」

 

「~~~~!! 承知しました!」

 

ベルファストがウェールズと共に離れるのを確認すると、カインは『タイガスパーク』を起動させた。

 

「行くぞタイガ!」

 

≪ああ!≫

 

[カモン!]

 

腰につけた『タイガキーホルダー』を掴み、赤いインナースペースが展開される。

 

「光の勇者! タイガ!!」

 

[ハァアアアアアっ!!]

 

「バディィィィィィィゴーーーーーー!!」

 

[ウルトラマンタイガ!]

 

『シュアッ!!』

 

ウルトラマンタイガがナイトファングに向かっていくと、ウルトラマンタイガとカインーーーー。

アズールレーンもーーーー。

レッドアクシズもーーーー。

エンタープライズの生み出した光に呑み込まれていった。

 

 

 

 

『うわぁあっ!!』

 

『「くぅっ!!」』

 

光が突如消えると、嵐と暴雨が吹き荒れる海に戻ったタイガは、荒れ狂う海の波に足をとられ倒れるが、すぐに起き上がると、ナイトファングが両手を上げて迫ってきた。

 

『ぬぅあっ!』

 

ナイトファン力比べをするタイガ。インナースペースのカインとタイタスとフーマは辺りを見渡す。

 

≪我々は元の空間に戻ってきたのかっ!?≫

 

≪おい! 嬢ちゃん達と姉ちゃん達は何処に行っちまったんだっ!?≫

 

『「っ! 赤城っ! エンタープライズっ!!」』

 

『えっ!?』

 

カインの視線の先に向いたタイガが目を向けると、宙に浮いた赤城とエンタープライズが、暴風雨の中で睨み合っていた。

 

「貴女、何者なの・・・・?」

 

赤城はエンタープライズの身体を使っている“何か”に問いかける。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

エンタープライズ?は金色の瞳を光らせて俯いていた。

 

「・・・・邪魔はさせないわ!」

 

赤城が艤装から真っ赤な炎を迸らせると、炎が龍の形となって、赤城の周りを守るように渦を巻いた。

 

『「まずい! タイガ!!」』

 

『応! 『ストリウムブラスター』!!』

 

「フェエエエエエエ!!!」

 

組み合っていたタイガが力の限りにナイトファングを押し出すと、『ストリウムブラスター』を放ち、ナイトファングを後方に吹き飛ばすと、赤城に向かって走り出す。

 

≪急げタイガ!≫

 

≪間に合えば良いがっ!≫

 

『くっそぉっ!!』

 

『「赤城・・・・っ!」』

 

赤城の名を呟いたカインの意識が・・・・一瞬、途切れた。

 

 

 

 

ー赤城sideー

 

「これが私の愛のあり方よ! 私の愛は時を越え、神ですら凌駕して重桜を! そして姉様を! 指揮官様を!!」

 

赤城が叫ぶと、炎の龍がエンタープライズ?に向かって、その紅蓮の顎を開いた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

しかし、エンタープライズ?は無機質な貌で艤装の弓を構えると、光の矢が生まれ、両手のリングが禍々しく光ると、エンタープライズ?の左右にリングから緑色と黄色の光が漏れだし、集まり、『宇宙怪獣ベムラー』と『宇宙怪獣エレキング』の幻影となった。

 

ーーーーギュワァァァァァァァ!!

 

ーーーービギュゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

『「なにっ!!?」』

 

『あれは、ベムラーとエレキングっ!?』

 

エンタープライズ?が弓を絞ると、矢の光が強くなり、左右のベムラーが青白い炎の玉を、エレキングが電撃を、大顎を開ける龍に向けて、放ったーーーー。

 

「っっ!!!」

 

 

 

 

 

 

ソコは、真っ白な空間に赤い曼珠沙華が咲き乱れる世界。

 

「・・・・ん?・・・・あっ」

 

ソコに呆然と佇む赤城の瞳に、番傘を広げ、自分と良く似た容姿をした女性の後ろ姿が映った。

 

「ぁっ!」

 

赤城はその女性に向けて手を伸ばす。

が、その時ーーーー。

 

『「赤城ーーーーーーーーーーーー!!!!!」』

 

「(っ、指揮官、様・・・・?)」

 

 

 

 

 

 

微睡む意識の中、赤城の光を失いそうになった瞳に、自分に向かってくるウルトラマンタイガが映った。

が、赤城にはその姿が、愛おしい海守トモユキ指揮官の姿に見えた。

 

「(ああ、指揮官様・・・・。ソコに、いたの・・・・ですね・・・・)」

 

身体に電流が流れる光の矢が刺さり、身体を青白い炎に包まれた赤城が、ゆっくりと海に落ちていくと、矢と炎が消えていったーーーー。

 

 

 

ーエンタープライズsideー

 

「・・・・え?」

 

左右の怪獣の幻影が消え、意識を取り戻したエンタープライズが、嵐の海に落ちていく女性ーーーー赤城を見下ろし、近くでウルトラマンタイガが赤城に向かっている姿が視界の端に入った。

 

「ぁっ・・・・あぁっ・・・・!」

 

エンタープライズが落ちていく赤城に手を伸ばすが、赤城は静かに、ポチャンッと静かな音を立てて、嵐の海に沈んでしまった。

 

「あぁ・・・・!」

 

茫然となりながら、エンタープライズは赤城が落ちた海を見つめる。

 

【それはただ、“海が怖いだけなんじゃないか”?】

 

カイン指揮官の言葉が頭にフラッシュバックする。

そして・・・・その問いに応えるように、嵐の空を見上げるとーーーー雨と交じった涙を零しながら呟く。

 

「ーーーーあぁ・・・・そうか・・・・そうだったのか・・・・私は、海が怖いんだ・・・・!」

 

涙がこぼれるようにエンタープライズの意識は、この嵐の海へと落ちる涙のようにーーーー沈んでいった・・・・。

 

 

 

ーカインsideー

 

『赤城さんっ!!』

 

『「赤城・・・・何故、こんな事に・・・・! “俺”はお前に、こんな事を、望んでは・・・・!」』

 

≪カイン指揮官?≫

 

≪どうした兄ちゃん?≫

 

『っ! トモユキ、お前、今・・・・“俺”って・・・・?』

 

『「赤城・・・・。“俺”は、“俺”は・・・・!!」』

 

『フェエエエエエ、プルゥワァアアアアア!!』

 

意識が混濁したように呟くカインだが、背後からナイトファングが頭部の口から、火球『ファングヴォルボール』を吐き出した。

 

『うぁあああああああああっ!!』

 

『「ぐぅあっ!!」』

 

強力な火球を浴びてしまい、タイガは嵐の海に倒れる。

 

『フェエエエエエッ!!!』

 

さらに火球を放ち、大雨であるにも関わらず、その火球の威力も熱量も衰えず、タイガを攻め立てた。

 

『「くぅううううっ!! タイガ! 赤城はどうしたんだっ!!?」』

 

『は? 何を言ってるんだトモユキ! 赤城さんは海に落ちていっちゃっただろう!』

 

『「何っ!?・・・・えっ? どうなっている? 赤城が、嵐の海に落ちていきそうになって、それから・・・・何だ? 記憶がソコから無くなっている??」』

 

≪どうなってンだ?≫

 

≪(・・・・まさか、記憶が戻り始めたのか?)≫

 

『フェエエエエエェェェェェッ!!!』

 

ナイトファングがさらに大きな『ファングヴォルボール』を放ち、タイガがそれを浴びて、後方に吹き飛ぶ。

 

『うあああああああああああああっ!!』

 

吹き飛んだタイガが大きな水飛沫を上げて倒れーーーー。

 

ピコンッ! ピコンッ! ピコンッ! ピコンッ!ピコンッ! ピコンッ!・・・・。

 

カラタイマーが鳴り響き始める。

 

『フェエエエエエ!!』

 

ナイトファングが両腕の鞭を振り、タイガの首に巻き付いた。

 

『ぐぅああああっ!!』

 

タイガが巻き付いた鞭を掴むと、ナイトファングが背中の翼を大きく広げると、タイガごと空の向こうへと飛翔した。

 

『「ま、不味い! エンタープライズっ!!」』

 

カインが茫然と宙で佇むエンタープライズに叫び声をあげるが、エンタープライズはそれに答えず、ただ涙を流して上の空の状態だった。

 

 

 

 

稲妻が迸る暗雲の中、ナイトファングに捕まったタイガが脱出しようと、もがいていた。

 

『この・・・・!』

 

『「タイガ! 荒っぽいやり方をするが、良いかっ!?」』

 

『ああ!』

 

タイガの了承を聞くと、カインはブルレットを召喚し、タイガスパークに読み込ませた。

 

[ブルレット コネクトオン!]

 

『『アクアブラスター』!!』

 

水を纏った光線をゼロ距離から放ち、爆発が起きる。

 

『ぐぁあっ!!』

 

『「うぅっ!!」』

 

ゼロ距離で爆発を浴びて、タイガもダメージを受け、インナースペースのカインにも及んだ。

 

『フェェェェェェ!』

 

が、ナイトファングの耐久力が凄いのか、あまり効いていなかった。

 

『トモユキ! お前の目的が分かったぁ! コイツが離すまで、光線をぶつけまくってやるぜっ!!』

 

『「ああ! まだまだぁっ!!」』

 

[ロッソレット コネクトオン!]

 

『『フレイムブラスター』!!』

 

『フェエエエエエ!!』

 

炎を纏った光線を浴びせ、爆発が起き、ナイトファングの身体が揺れた。

 

『「ぐぅあああ!・・・・くぅ、うぉぉおおおおおおおおおおっっ!!!」』

 

[オーブレット コネクトオン!]

 

『『スプリウムブラスター』!!』

 

水色の光線を受けて、ナイトファングが腕の鞭を弛めたその瞬間ーーーー。

 

『「今だ! タイガッッ!!!!」』

 

『っっっ、セヤッ!!』

 

ボロボロになりながらも、鞭から逃れたタイガは再び光線を放つ。

 

『スト、リウム・・・・ブラスター!!!!』

 

最後に渾身の力を込めた『ストリウムブラスター』を浴びせると、ナイトファングは後方に吹き飛び、暗雲の中に消えていった。

 

『や、やった、ぜ・・・・!』

 

『「タ、タイガ、ヤツは、一時撤退した、だけだ。また、直ぐにーーーー」』

 

『ぅあっ!』

 

言葉を続けようとしたカインだが、カラタイマーの光が消えた瞬間、タイガの身体は赤い光の粒子を撒き散らせながら、その姿がカインへと戻った。

 

「あ、か、身体が、動け、ない・・・・!」

 

ダメージによって、タイガとカインは気を失った。

 

≪カイン指揮官っ! タイガっ! フーマ、我々の力でカイン指揮官を守るのだ!≫

 

≪応よ旦那!≫

 

タイタスとフーマの思念体が光を放出させると、カインの身体が黄色と青色の光に包まれ、暗雲の中を落下していくと、“空にできた大きな亀裂”に、呑み込まれていった・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

そしてここは、夜明けの日が登り始めた海。しかし、その天候は、季節外れがすぎる吹雪となり、海には巨大な氷山が浮かんでいた。

“空の亀裂”から、カイン指揮官が落ちてきて、小さな流氷の上に倒れる。

 

「・・・・ぁ・・・・あ、赤城・・・・! エンター、プライズ・・・・!」

 

薄れ行く意識の中、ここにはいない二人の艦船<KAN-SEN>に思いを馳せながら、ゆっくりと、瞼を閉じた・・・・。

 

その時ーーーー氷山が浮かぶ海の海底で、『金色の光』が漏れ始めていた。

 

 

 

 

 

ー赤城sideー

 

赤城が再び、夢の世界に戻ると、背中を見せる女性、『天城』へと近づき、その肩に手を置いた。

 

「・・・・漸く会えたわ。『天城姉様』・・・・」

 

が、『天城』が振り向くとーーーー顔は何もなかった。

 

「っっっ!!!??」

 

愕然となる赤城の耳に、オブザーバーの声が響いた。

 

 

ーーーーまだ終わってないわよ、赤城。




次回、ボロボロになったカイン。指揮官の行方が不明となったアズールレーン。重鎮赤城を失ったレッドアクシズ。追い討ちをかけるようにエンタープライズとナイトファングが襲い来る。

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