ー重桜sideー
「ーーーーはっ!・・・・」
気を失っていた加賀が、目を覚ますと、山城が自分を介抱していた。
「目を覚ましたぁ「姉様!!」うわぁ!!」
山城が皆に声をあげるが、飛び起きた加賀に驚き後ろに転んだ。
「加賀先輩! 重傷です、無理はしないでください!」
瑞鶴が近づいてきて、加賀を支えた。
「・・・・五航戦・・・・私は一体・・・・」
周りを見ると、寒さや疲労でぐったりとしていた重桜艦船<KAN-SEN>達がいた。
「確か私は、グレイゴーストと戦って・・・・」
言葉の途中で、以前赤城に買って貰った髪飾りが落ちてくる。
「姉様・・・・? そうだ! 赤城姉様はどうした!?」
「っ・・・・それは・・・・」
加賀が聞くと、瑞鶴が辛そうな顔を浮かべた。
◇
そこで、綾波と時雨、夕立と雪風が通りがかると、他の艦船<KAN-SEN>達が不安そうな声と泣き声が聞こえた。
「(・・・・指揮官、皆不安で、怖がっているです。こんな時、綾波はどうすればいいのです・・・・?)」
綾波は上空の亀裂を見上げながら、ここにいないトモユキ指揮官へと問いかけた。
◇
瑞鶴に肩を貸して貰いながら、加賀は蒼龍と飛竜、日向と伊勢、扶桑と山城、そして翔鶴。現在重桜の重鎮達と合流し、これからのどうするかを話し合っていた。
「もう瑞鶴ったら! 加賀先輩ばっかり構っちゃって! お姉ちゃん寂しい!」
「「あはは・・・・」」
飛龍と瑞鶴が、翔鶴の言葉に苦笑いを浮かべた。
赤城の行方を知りたい加賀は、そんなじゃれ合いに構わず、蒼龍を見ると、蒼龍は加賀の言葉を予測しているかのように口を開く。
「赤城先輩の消息は、未だ不明です」
「はぐれてた連中は大体合流したぞ。それでも見つかってないっつー事は・・・・」
「やはり、グレイゴーストに・・・・」
「・・・・・・・・」
伊勢と扶桑の言葉を聞いて、翔鶴は思案するように黙る。
「諦めるのはまだ早いですよ! もっと良く探してみないと!」
「でも、ノンビリはしてられないぜ。この海域は危険だ。いつまでもいられないぞ・・・・」
飛龍が諦めないように言うが、次々と亀裂が生まれる海域に、日向も蒼龍も、訝しそうな視線を向ける。
「それと、問題が1つ・・・・」
蒼龍の視線の先には、動かなくなった『セイレーンの量産型』を見据えた。
ー高雄sideー
その量産型には、高雄と愛宕が、他の艦船<KAN-SEN>を率いて、量産型の様子を調べていた。
「量産型セイレーンが、機能停止、ね・・・・」
「1隻だけでなく、全艦、か・・・・」
高雄は周りの量産型を見据えて呟いた。
ー瑞鶴sideー
「海域の異常と関係あるのか?」
「『オロチ』との接続が、途切れたのかもしれません」
「『黒いメンタルキューブ』を失ったのは、痛いですね・・・・」
「そもそもどうなんですかねぇ? 『オロチ計画』って」
一同に向かって、翔鶴がそう言い出した。
「翔鶴・・・・?」
「元々あの計画って、トモユキ指揮官も難色を示していた物ですしぃ。『黒いメンタルキューブ』の正体も、セイレーンを操る仕組みも、私達詳しく知らされてないですしぃ」
「ちょっと、翔鶴。こんな時に・・・・」
「赤城先輩の、結界? みたいな術もですけど、秘密が多すぎません? 報告・連絡・相談は大切にしろって、トモユキ指揮官が常に私達に言っていた事ですよぉ? 一航戦の先輩方、何を隠しているですかねぇ?」
翔鶴が加賀を探るような視線で見据えた。
ーカインsideー
「へっくちっ! ぶるるる、うぅさむぅ~~!!(タイガ。無事かい?)」
≪いっつつ・・・・何とか、な・・・・!≫
≪だが、まだ戦闘ができるコンディションではありません≫
≪クソッ、一体何がどうなってんだよっ!?≫
くしゃみをしたカインに、シリアスがさらに毛布をもってこようと、ダイドーが暖かいコーヒーを持ってこようと走っていくと、カインはひび割れた虚空を見上げながら、タイガの容態を聞く。まだ万全とは言えず、タイタスもフーマも、異常が起きた空を見上げていた。
「(エンタープライズ。怪獣リングを持っていたのか・・・・)」
≪彼女のあの異常な力は、リングによるものだったのですね≫
≪探しに向かったベルファストの姐さんとジャベリン嬢ちゃんとラフィー嬢ちゃんに、なにも起きなければ良いけどよぉ≫
ーベルファストsideー
ベルファストはジャベリンとラフィーを連れて、エンタープライズの捜索に出ていた。
「「・・・・・・・・」」
「あの重桜の子を気にしているのですか?」
ジャベリンとラフィーにそう言うと、ジャベリンが返答する。
「み、見てたんですね・・・・」
「はい。助けに入るのが遅れてしまい、申し訳ございません」
「・・・・あの、怒らないんですか?」
「はい?」
「綾波ちゃんは敵で、でも、私達どうしても戦いたくなくて、でも、どうしたら良いのか分からなくて・・・・」
敵となってしまったが、それでも戦いたくない。そのジレンマを吐き出すジャベリンに、ベルファストは声を発する。
「大いに、悩むべきかと・・・・」
「え?」
「悩むのです。状況に流されるまま、引き金を引いてはいけません。我々の力は、そんな軽いものではなのです。私達は“戦う為”に生まれてきました。“滅ぼす為”に生まれてきたのではありません」
「っ、はい!」
「(コクン)」
ベルファストの言葉に笑みを浮かべて頷くジャベリンとラフィーだが、吹雪が強くなり、すぐ近くでセイレーンの量産型が沈んでいった。
「この周辺は特に危険です。お二方は、艦隊にお戻りください」
「ベルファストさんは?」
「私は、エンタープライズ様を捜索します。私はメイドです。主であるご主人様から、エンタープライズ様のお目付け役を任された身。エンタープライズ様のお側にいる事こそ、今の私の仕事です」
「ラフィーも手伝う」
ラフィーが小さく手を上げて言う。
「ですが・・・・」
「私達も、エンタープライズさんを探します! 皆で指揮官達が待っている艦隊に戻りましょう!」
「・・・・・・・・」
ジャベリンとラフィーの言葉に、ベルファストは笑みを浮かべた。
ー重桜sideー
「なんだとっ!? もう一度言ってみろっ!!」
「加賀先輩、落ち着いて!」
蒼龍に掴み掛かりそうになる加賀を、瑞鶴がおさえる。蒼龍は加賀の剣幕に臆せず、眼鏡をあげながら言葉を並べる。
「・・・・現時刻をもって、赤城の捜索を打ち切ります。全艦、速やかにこの海域を離脱。重桜本陣に帰投します」
「・・・・くっ、ふざけるな! 赤城は旗艦だぞ! 姉様を置いて帰投などあり得ん!!」
瑞鶴から離れ、蒼龍を指差す加賀。蒼龍は冷淡に続ける。
「はい、おっしゃる通り。我々は旗艦である赤城を失い、量産型セイレーンも活動を停止しています。艦隊に作戦を遂行する能力はありません。この海域に留まり続ける事は不可能です。赤城一隻の為に、艦隊を危機に晒す訳にはいきません」
「~~!! 蒼龍貴様っ!! ぐぅっ!」
「ぁっ!」
蒼龍に掴みかかろうとする加賀だが、身体の痛みで倒れそうになるのを、瑞鶴が支えた。
「ーーーー“アイツ”、ならば・・・・!」
『っ!』
苦しそうに、絞り出すように加賀が口にした“アイツ”と言う言葉に、その場にいた艦船<KAN-SEN>達が、ぴくりっと、肩を揺らした。
「指揮官ならば・・・・絶対に、赤城姉様を、見捨てたりなんか、しない・・・・! 」
『・・・・・・・・』
加賀の言葉を否定する者はいなかった。確かに、トモユキ指揮官がこの場にいれば、決して赤城の捜索を止めなかっただろう。その意思を曲げなかっただろう。誰一人欠ける事無く、母港に帰る事を、あの人は常に言っていた。
だがーーーー。
「・・・・だって、仕方ないじゃないですか。・・・・今は、あの方はいないのですから」
「蒼龍姉様・・・・」
蒼龍は加賀から目をそらし、人知れず拳をきつく握り締めながら、小さな声でそう言った。その声が聞こえた飛龍も、悲痛な顔の姉を心配した。
「「「・・・・・・・・」」」
その様子を物影から見ていた綾波と夕立と雪風。
「あっ・・・・」
そこに、加古がやって来て、アズールレーン艦隊を発見したと報告した。
ーカインsideー
「へっくしゅんっとアホタレっ!!(ズズッ)・・・・重桜の主力艦隊が見つかった?」
漸く身体が暖まってきたカインと、側に控えるウェールズとクリーブランドとホーネットの元に、ヘレナからの報告が入った。
「・・・・やるしかないのかな? 指揮官」
クリーブランドが、辛そうな顔でそう言った。本来なら、重桜は戦う相手ではない。しかし、セイレーンの力はあまりに危険であり、このままでは情勢が更に悪化してしまう。
「・・・・・・・・」
カインは難しい顔を浮かべていた。
ー重桜sideー
蒼龍と飛龍が、アズールレーン艦隊との戦闘の準備を進めていた。
「ただでは、帰してくれないようですね・・・・」
「今の戦力で、正面から戦り合う訳にはいかないわ」
「蒼龍姉様は、撤退の指揮をお願いします。アズールレーンは、僕が引き付けます」
飛龍が頭に巻いていたハチマキを締める。がーーーー。
「いいえ! 殿は私に任せて!」
「瑞鶴ッ!?」
「後輩にそんな事させられないよ!」
「あなたが気にやむ事ないでしょう!?」
飛龍と翔鶴が、瑞鶴をひき止める。
「翔鶴姉。私ね、加賀先輩の気持ち、痛い程分かるんだ・・・・。私だって、お姉ちゃんが居なくなったら、きっと耐えられないって思うから」
瑞鶴の言葉に、翔鶴はふぅ、と息を吐いた。
「大丈夫よ瑞鶴。お姉ちゃんはずっと一緒にいるから!」
翔鶴も殿を務めるつもりのようで、最早言っても無駄だと感じた蒼龍と飛龍。
「もしも無理だと思ったら、降伏をしなさい。アズールレーンには指揮官がいますから、煮たり焼いたりなんかは絶対にしないでしょう」
「決して早まらないでよ、二人共」
「「(コクン)」」
◇
五航戦の二人を、綾波達も一緒に行こうとするがーーーー。
「へーきよへーき! こう見えて私だって幸運艦なんだから!」
「皆をよろしく頼むわね」
「・・・・翔鶴さん」
「それに、降伏したフリをして、指揮官に近づいて、隙を見て連れて帰るって事もできるかもしれないしね」
「だから綾波。あなたは待っていて。あなたがいる重桜こそ、トモユキ指揮官の帰る場所なんだから!」
「瑞鶴さん・・・・」
そして、重桜の仲間達が見送る中、翔鶴と瑞鶴は出撃した。
ー綾波sideー
それを見て高雄が呟く。
「・・・・行ったか」
「・・・・どうすれば良いのか、綾波には分からないのです」
「綾波・・・・」
顔を俯かせる綾波を高雄は心配そうに見つめる。
「・・・・でも!」
顔をあげた綾波の目には、決意が込められていた。
ー???sideー
氷山の上に隠れていたウェールズが、進んできた五航戦に砲撃を放つが、二人は回避した。
それを確認したウェールズは、自分のいる地点に砲撃が迫っている事を見て回避する。
そして、ウェールズがいた地点に砲撃したのは、
超巨大な砲塔を片翼に3基ずつと、巨大な魚雷発射管のようなものを3連装で腰に装備し、腕には飛行甲板と思われる平たい面を持つアームに収めた全身兵器と言わんばかりの重武装をしているセイレーンの上位個体『テスター』だった。その身体には、左肩から右脇腹にまで、大きな刀傷が刻まれていた。かつて重桜との戦闘で付けられた傷だ。
『つくづく面白いわね人類って、争いを恐れながら戦う事を選ぶ。度しがたい程に矛盾しているわ』
『彼女達は、人の想いと歴史を映し出す鏡。闘争こそ人類の本質よ』
『オブザーバー』もそこにいた。
『そうーーーー戦いはいつの世も、変わる事はない』
嘲笑うような『オブザーバー』に、『テスター』がその触手に絡めている艦船<KAN-SEN>を見据える。
『なぁに拾ったの、それ?』
『ええ。トレギアが持ってきてくれたの。この子にはまだ役割があるわ』
触手に絡めていたのは、気を失っている赤城だった。
『エンタープライズのお陰で、『黒いメンタルキューブ』は膨大なデータを獲得したわ。『計画』には十分なエネルギーよ』
それを聞いて、『テスター』がニヤリと笑みを浮かべた。
『そう、漸くね・・・・』
『ええ。〈オロチ〉が目覚めるわ・・・・』
ー瑞鶴sideー
アズールレーン艦隊と交戦していた五航戦は、二手に別れて、瑞鶴は氷山の隙間から、別ルートを進んでいた。
その時、視界の端に映った氷山の一角に、エンタープライズがいた。
「っ! 『グレイゴースト』っ!?」
「・・・・・・・・」
エンタープライズを何も言わず、何も感じていないように無感情に。その金色に光る瞳を開けると、立っていた氷山が砕け、その中から、『悪夢魔獣 ナイトファング』が現れた。
『フェエエフェフェフェフェッッ!!』
エンタープライズはナイトファングの頭上に降り立つ。そしてエンタープライズが片手をあげて下ろすとーーーー。
『フェエエエエッ!!』
ナイトファングが『ファングヴォルボール』を放ち、それが瑞鶴に迫る。
「っ!!」
「瑞鶴っ!!!」
別ルートから駆けつけた翔鶴が、瑞鶴を抱き締めた。
ーカインsideー
瑞鶴がエンタープライズを発見するのと同時に、カインは双眼鏡でエンタープライズを見つけ、氷山の中にナイトファングがいるのを確認した。
「タイタスっ!!」
≪了解!≫
タイガはまだ本調子ではなく、ナイトファングに対抗するパワーと頑丈さを持つタイタスを選んだ。
カインはタイガスパークのレバーを動かし起動させる。
[カモン!]
「力の賢者! タイタス!!」
『ヌゥゥゥンッ!! フンッ!』
「バディーゴー!!」
叫び、腕を思いっきり突き上げると、黄色い光が眩く輝き、カインの身体を包み込む。
[ウルトラマンタイタス!]
『ヌゥゥンっ!!』
七色の光の奔流がマーブルに変化し、その中からウルトラマンタイタスが両腕を振り上げて、五航戦の前に飛び出し、『ファングヴォルボール』を受け止めた。
ー瑞鶴sideー
突然現れた光の巨人ーーーーウルトラマンが、自分達を守るようにナイトファングに立ち塞がった。
「「(・・・・・・・・えっ? 指揮官??)」」
それを見て翔鶴と瑞鶴は、自分達を庇ったウルトラマンの姿が、海守トモユキ指揮官と重なったーーーー。
『セイレーン・テスター』に傷を負わせたのは、綾波です。本人は覚えていませんが。