ーカインsideー
『ヌゥンッ!』
ナイトファングからの攻撃から、五航戦の二人を守ったタイタスは、ナイトファングに向かって構える。
『フェ~フェフェ!!』
と、そこで、ナイトファングの頭部の角が上がり、巨大な一つ目から紫色の音波が流れた。
「うっ!」
「あっ!」
「なっ!」
五航戦はその音波に頭を抑えるが、ウェールズ達は、その音波を聞いてーーーー眠ってしまった。
『こ、これは・・・・!』
『「な、なんだ、すさまじく、眠い・・・・! み、皆・・・・!!」』
カインが全員に連絡を取ろうとすると、インカムから、他の艦船<KAN-SEN>達の声が聞こえた。
《・・・・私が、ヨークタウン姉を、守っていたら・・・・!》
《私は、まだ、戦える・・・・!》
《ハムマンが、ハムマンがヨークタウン姉さんを・・・・!》
通信インカムから聞こえる苦しそうな声と、周囲の海域、もっと良く言えば、艦船<KAN-SEN>達から、紫色のオーラが立ち上がり、それがナイトファングの額の目玉に吸収されているようだ。カインは訝しそうな顔になる。
『「これは、一体・・・・」』
≪トモユキ! アイツが出す音波に、皆は悪夢を見せられているんだ!≫
『「っ! なんだってっ?」』
『やはりあの怪獣は・・・・!』
『「タイタス、知っているのか?」』
『はい。奴は怪獣よりも強力な力を有する『魔獣』と言う個体です。名を『悪夢魔獣ナイトファング』。ウワサ程度に聞いてみましたが、悪夢を見させて、その苦しみを自らエネルギーに変換するようです』
≪けっ! 胸くそ悪い野郎だぜ・・・・!≫
エンタープライズはナイトファングの上に佇み、紫色のオーラを立ち上らせ、ナイトファングの目玉に吸収されていた。
『「エンタープライズ。彼女もあの魔獣に悪夢を見せられているのか・・・・?!」』
エンタープライズの後ろから、艦載機が大軍でせまり、機関銃や爆撃でタイタスを攻撃する。
『ぐぅあっ!!』
『「くっ! エンタープライズっ!!」』
ーエンタープライズsideー
エンタープライズの意識は、炎の海の悪夢に捕らわれていた。
終わることのない戦い。炎に埋め尽くされる海。倒れていく仲間達。
「誰か教えてくれ・・・・争いのない日は、果たしてくるのだろうか・・・・?」
『その答えは、貴女が一番良く分かっているでしょう?』
エンタープライズの問いかけに、オブザーバーが答えた。
エンタープライズは炎に焼かれる仲間達の艦を見て、声を発する。
「ああ・・・・そうだな。戦いは、変わる事のない・・・・」
ーーーーライズ・・・・。
「・・・・・・・・」
ーーーーエンタープライズ・・・・。
「・・・・誰だ? この声は・・・・?」
ーーーーエンタープライズ!!
「・・・・・・・・指揮、官??」
ーカインsideー
『ぬぅぉおおおお!!』
タイタスはナイトファングにショルダータックルを繰り出すと、抑えながら押し出そうとする。
『「エンタープライズ! 目を覚ませっ! お前は、こんな風になることを望んでいるのかっ!?」』
タイタスの後方では、眠りそうになるのを必死に抵抗する五航戦の姿があった。
≪どうやら、艦船<KAN-SEN>の嬢ちゃん達の何人かは、コイツの音波に耐えられるようだな・・・・!≫
≪だけど、いつまでもつか分からないぜ!≫
「・・・・・・・・・・・・」
エンタープライズは、艦載機を発進させると、五航戦へと飛ばした。
『っ、不味い!!』
『「くぅっ!! 翔鶴っ!! 瑞鶴っ!! 逃げろーーーーっ!!」』
「っ! 指揮官?」
「あっ!」
指揮官の声が響いた気がして、顔をあげた二人の目の前に、艦載機が爆撃しようとしていた。
「お姉ちゃん!!」
「瑞鶴っ!」
翔鶴を庇おうする瑞鶴は、爆撃の衝撃に備えて目を瞑ろうとした瞬間ーーーー。
ドゴォォォオオオオオオンンッ!!
近くの氷山が突如崩壊し、その中から、ここにいる筈のない駆逐艦が現れた。
「綾波っっ!?」
「え・・・・!」
ーテスターsideー
『疼くわねぇ・・・・!』
オブザーバーと共に離れた位置からウルトラマンとナイトファングの戦いを眺めているテスターが、急に自分の身体に刻まれた刀傷をなぞる。
『あの子がいるのかしら? 私の身体に傷を付けたあの子が・・・・?』
自分の身体に傷を付けた艦船<KAN-SEN>、綾波の存在を感じていた。
ー綾波sideー
綾波は砕け散る氷山の欠片の上を飛びながら、艦載機に向かう。
「(どうすれば良いか、綾波には分からないです。でも、これは違うっ!!)」
綾波は対艦刀で艦載機を切り捨てた。
「嫌なのですっ!!!」
切り捨てた艦載機の爆発に、綾波も巻き込まれてしまった。
ーエンタープライズsideー
「・・・・・・・・・・・・」
エンタープライズは、爆発した艦載機の爆煙の中から落ちていく傷だらけの綾波の姿を捉えた。
「・・・・・・・・っっ」
その時、金色に光っていた瞳から光が消えて、元に戻っていく。
「あぁ、待って・・・・!」
正気に戻ったエンタープライズが、綾波に向かって、虚しく手を伸ばすーーーー。
ージャベリンsideー
「ぁっ!」
「・・・・!」
ジャベリンとラフィーも、眠りそうになっていたが、綾波が落ちていく姿を見て、眠気が吹き飛んだーーーー。
艤装も失い、ゆっくりと落ちていく綾波、その落下先の空間が砕け、その中に落ちていきそうになる。
「行きなさいっ!!」
「「はい/(コクン)っ!」」
微睡む頭を振るベルファストが叫ぶと、ジャベリンとラフィーは綾波に向かって走り出した。
その時、二人の身体から、金色の光が漏れ出すーーーー。
ーカインsideー
綾波が落ちていく姿を見て、カインの頭に一瞬ノイズが走り、その中から1人の少女の姿が映った。
自分の隣にいつもいてくれた女の子、それはーーーー。
『「綾波っ!!」』
≪トモユキ! ジャベリンとラフィーがっ!!≫
タイタスの中から綾波を見ていたカインは、タイガの言葉で、視界の端に、光が漏れ出ているジャベリンとラフィーが入った。
『「ジャベリン・・・・! ラフィー・・・・! ベルから報告を受けていたが・・・・良し。ジャベリン! ラフィー!」』
《っ! 指揮官?!》
《??》
通信で二人に呼び掛けるカイン。
「二人とも! 綾波を! 君達の友達を助けろ! それが、君達の・・・・君達だけの『気高さ』だっ!!!」
その時、ジャベリンとラフィーの身体から出ている金色の輝きが更に増していった。
ージャベリンsideー
「ジャベリン・・・・!」
「うん! 今なら・・・・できる気がする!!」
身体から溢れる輝きを感じ、二人は叫んだ。
「「〈ノブレス・ドライブ〉っ!!」」
その瞬間、ジャベリンとラフィーの瞳が金色に煌めき、全身を金色のオーラを纏っていた。
ーカインsideー
≪ジャベリン・・・・! ラフィー・・・・!≫
『「ついに扉を開いたか・・・・!」』
ナイトファングを抑えているタイタスの中から、タイガとカインが、覚醒した二人を見た。
ーベルファストsideー
「お二方・・・・!」
ベルファストも満足そうな笑みを浮かべた。
ージャベリンsideー
「「・・・・・・・・」」
二人は氷山の上を走りながら、冷静に綾波を助けに向かう。
「(不思議・・・・。急がなくちゃって思っているのに、頭が凄く落ち着いている)」
「(視界良好。障害回避)」
二人はこの一分一秒を急がねばならない状況であるにも関わらず、視界が広く、崩れる氷山の何処を走れば良いのか、どう行けば綾波に最短に近づき、助けられるのか、非常に落ち着いた心で、クリアな思考で見ていた。
「(ーーーーここだ)ラフィーちゃん」
「(コクン)了解」
ほんの少し声をかけただけで、ジャベリンもラフィーも、お互いどうするのかを直ぐに察知し、視線を合わせた瞬間、お互いの考えが瞬時に理解できた。
「っ!」
氷山から飛び降り、空中を飛ぶジャベリンとラフィーはお互いの手を取ると、ジャベリンが空いた片方の手で自分の艤装に付いた錨を投げ、氷山に突き刺すと、まるで振り子のように大きく弧を描いて動き、綾波へと近づく。
「(チャンスは一回だけで、一瞬・・・・)」
「(でも、できる気がする!)」
こんな一か八かの危険な事をやっているのに、二人には、失敗するだなんて思考が、まるで無かった。
綾波に近づき、ラフィーが綾波の手を取った。
「あ・・・・っ」
「救出成功。任務完了」
「綾波ちゃん!!」
三人はそのまま遠心力で亀裂から離れ、ジャベリンとラフィーは綾波を連れて、ベルファストのいる地点に着水した。
「お二方。お見事です!」
「ベルファストさん!」
「(グッ)」
ベルファストが二人を労い、ジャベリンとラフィーは気を失った綾波を二人で支えながら笑みを浮かべた。
ーエンタープライズsideー
「ぁぁ・・・・!」
正気に戻ったエンタープライズは思い出したーーーー自分が赤城を撃破してしまった事。力と悪夢に呑まれてしまった事。ジャベリンとラフィーの〈ノブレス・ドライブ〉への覚醒を見て、両膝をついて項垂れた。
『フェーッ! フェフェッ!!』
ナイトファングが悪夢を放たなくなったエンタープライズを、用済みと云わんばかりに、頭を振るいエンタープライズは振り下ろした。
「っ・・・・!」
空中に投げ飛ばされたエンタープライズに向けて、ナイトファングは『ファングヴォルボール』を放つ。
「(ああ・・・・これは、報いだな・・・・)」
自分に迫る炎を見て、エンタープライズは瞼を閉じようとしたーーーーしかし。
《エンタープライズっっ!!!!》
『フーマ! 任せるぞっ!』
『あいよっ!』
[ウルトラマンフーマ!]
ナイトファングを殴り飛ばしたタイタスはフーマへと変わり、エンタープライズの元へ一瞬で走り、手のひらの上にキャッチした。
「・・・・・・・・指揮官?」
そこでフーマを見上げたエンタープライズは、フーマの姿が、カイン指揮官と重なったかのように見えてしまった。
が、そこで意識を失い、眠ってしまった。
ーカインsideー
エンタープライズをその手で受け止め、『ファングヴォルボール』を回避したフーマは、ベルファスト達がいる地点に優しく下ろし、エンタープライズをベルファストに渡した。
『フェ~ッ!』
ナイトファングが再び『ファングヴォルボール』をフーマの背中に放ち、フーマはそれを受けた。
『ぐぅああああっ!!』
「「「ウルトラマンっ!!」」」
攻撃を受けたフーマにジャベリン達が声を張り上げる。
『「つぅ、すまないフーマ!大丈夫かっ!?」』
『た、大した事ねぇ・・・・!』
フーマがジャベリン達から高速で離れるが、ナイトファングは腕の触手を鞭のようにしならせると、フーマの首に巻き付かせた。
『ぐぅあああああっ!!』
『「フーマ・・・・! 『ビクトリーレット』をーーーー」』
≪トモユキ! ヤツの額がっ!!≫
「っ!」
カインが目を向けると、ナイトファングの額の目玉から音波が放たれる。
『「うわぁっ!」』
『うぁぁっ!』
≪しまった!≫
≪ぐぅあっ!!≫
カインとフーマ、タイタスとタイガも、ナイトファングの悪魔を見せる音波を受けてしまった。
『「あ、あぁ! 赤城・・・・! 僕は、俺は・・・・! 何だ、あの怪獣は? 『チビスケ』? えっ? 『チビスケ』って何なんだ・・・・?」』
『『ゲルグ』・・・・! 俺が、俺が選らばれたせいで、お前は・・・・!!』
『す、すまない、『マティア』・・・・! あの時、私が躊躇しなければ・・・・!!』
『あ、あぁっ! あああああああああっ!!』
カインは“海守トモユキとしての記憶”と混濁し。
フーマとタイタスは、かつて死なせてしまった友の記憶が悪夢として甦り。
タイガは仲間のタイタスとフーマーーーーそして自分が、トレギアになす術もなく殺された記憶が甦り、苦しんでいた。
ーーーーピコン! ピコン! ピコン! ピコン!・・・・。
『フェッフェッフェッフェッ!』
カラータイマーが鳴り響いたフーマに、ナイトファングが『ファングヴォルボール』を次々と放ち、フーマは後ずさる。
『ぐあああああああっ!!』
と、その時・・・・。
ーーーーベゴッ!
『うゎあっ!!』
ーーーーザバァアアアアアアアアンン!!
突如、フーマの足元が大きな海溝だったのか、フーマは足を踏み外し、海底へと沈んでいったーーーー。
ーベルファストsideー
「っ! ウルトラマンが・・・・!」
ベルファスト達も、フーマが沈んでいく姿を見た。
「・・・・ラフィーちゃん」
「(コクン)」
ジャベリンがラフィーに話しかけると、ラフィーも理解を示すように頷くと、二人は走り出そうとした。
「お二方・・・・!」
「ベルファストさん。綾波ちゃんとエンタープライズさんをお願いします」
「今のラフィー達なら、艦隊の皆が逃げられるまでの時間稼ぎができる・・・・」
「しかし、二人だけで戦わせる訳には参りません」
「大丈夫です。ウルトラマンさんも、きっと戻ってきてくれます」
「ラフィー達、信じてる・・・・」
ジャベリンとラフィーの目には、死ぬ気など全くない、ウルトラマンが戻ってくると、信じていると、目で言っていた。
ベルファストと、肩を竦めると、綾波とエンタープライズを抱えて、艦隊のいる方角を向く。
「ご無理を為さらないようお願いします。私も仲間を連れて直ぐに戻ってきます」
「はい!」
「了解」
ベルファストが走り出すと、ジャベリンとラフィーは、五航戦へと向かうナイトファングへと、駆け出した。
ジャベリンとラフィーが覚醒。
そして次回、タイガが新たな姿に!