アズールレーンT   作:BREAKERZ

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【捕虜】綾波、アズールレーン母港にて

ーカインsideー

 

「うっ、くぅっ・・・・ああぁっ・・・・はっ!!」

 

時刻は深夜2時。

アズールレーン母港の指揮官の寝室で眠っていたカインは、ベッドから飛び起きた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

荒い息を吐き、寝汗をかいていた。

 

≪指揮官殿、大丈夫ですか?≫

 

≪スゲぇ、うなされていたぜ≫

 

「ああ、すまない・・・・(なんだ、黒い影に襲われる、妙な夢をこの処見るようになったな・・・・)」

 

カインは、ベットの近くのテーブルの上に置かれたリング収納ケース(明石の店から買った)に収められた、『怪獣リング』を見据える。

 

「(・・・・まさか、僕もエンタープライズのように、暴走するのか?)・・・・ん? タイガ?」

 

≪・・・・・・・・≫

 

思念体のタイガが、バルコニーの手すりに座りながら夜空を見上げていた。

 

「・・・・どうしたタイガ?」

 

≪あっ、トモユキ・・・・≫

 

「何か、悩みが有るなら聞くよ?」

 

≪・・・・俺、もっと強くなりたい≫

 

悩みながらタイガが発した言葉に、カインは静かに聞きながら口を開く。

 

「・・・・『フォトンアース』の力を得て、君は強くなったと思うけど?」

 

≪いや、それだけじゃ多分足りない・・・・。トレギアを倒すにはーーーー父さんを越えるには・・・・≫

 

「君の父さん、確かウルトラマンタロウって言ってたね?」

 

≪ああ。俺はいつも、父さんと比べられてきた。いつも、『ウルトラマンタロウの息子』扱いを受けてきた。だから、俺はーーーー≫

 

英雄の父を持つと、息子は周りの一方的な期待や嫉妬を受けてくる。

タイガはその事に辟易としていたのだ。

 

「タイガ。僕は君のお父さんがどんなに凄いウルトラマンだったのか分からないから、そんなに偉そうに言えないけど・・・・タイガはタイガ。僕にとって、それだけで十分だよ」

 

≪俺は俺?≫

 

「そう。あるがままのタイガで、ウルトラマンとして戦えば良いんだ。だからもし、タイガに何かあったら、必ず手を伸ばして、掴んで、助け出してみせるよ」

 

≪・・・・俺はウルトラマンだ。そんな事起きないよ。ほら、さっさと寝ようぜ≫

 

タイガは照れ臭そうに部屋に戻ると、カインは笑みを浮かべながら、部屋に戻っていった。

 

 

 

 

ー綾波sideー

 

「・・・・・・・・」

 

朝日の陽光で目を覚ました綾波が身体を起こすと、頭や腕のアチコチに包帯が巻かれて、ベッドの上にいた。

 

「???」

 

綾波は訝しげに治療を受けた身体を見て、周りを見ると、明らかに重桜ではないと推察した。

 

「逃げようとしても無駄だぞ」

 

「っ!」

 

綾波が声がする方に目を向けると、部屋の扉に、ロイヤルの服を黒いショートヘアーで片目が隠れた、艶やかな雰囲気に、スレンダーながらも、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んだ攻撃的なプロポーションをした麗人風の女性『ロイヤル所属 空母 アークロイヤル』が、林檎が入った紙袋を抱えて立っていた。

 

「見張りが付いている。何も捕って喰ったりはしないさ」

 

「・・・・ここは、アズールレーンの基地ですか?」

 

「流石に詳しいな。良く調べている」

 

アークロイヤルは、紙袋の中の林檎を一つ、綾波に投げ渡すと、綾波は受け取った。

 

「戦いが終わった後、黒い怪獣が現れ、ソイツはウルトラマンが撃破したが、気絶したお前を我々の仲間が運んだ。閣下・・・・指揮官からも、お前の事を丁重に扱うように指示をされているしな」

 

「(指揮官が・・・・)あの二人は、どうしてるんですか?」

 

「気になるのか? ジャベリンとラフィーが?」

 

「・・・・・・・・」

 

綾波は、林檎に映る自分の顔を見つめた。

 

 

 

 

ーカインsideー

 

植えた桜が花を咲かせた母港の、指揮官の執務室にて、綾波を助けたジャベリンとラフィーに対してお叱りが始まった。

 

「全く! 無茶をしてくれたよ!」

 

「敵を助ける為に無謀な突貫。ま、そのお陰で二人とも、〈ノブレス・ドライブ〉を発現させる事ができたけど、あまり褒められた事じゃないね・・・・」

 

クリーブランドとホーネットが、難しい顔でジャベリンとラフィーを睨む。

 

「ご、ごめんなさい・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「っ、お待ち下さい! お二人をけしかけたのは私です! 責は、このベルファストにあります!」

 

二人を弁護するベルファストだが、指揮官の席に座るカインが手を上げて制した。

 

「ベルファスト。綾波を助けろと命じたのは、指揮官であるこの僕だ。ジャベリンもラフィーも、その命令を実行したに過ぎない。責を感じる事はない」

 

「しかし指揮官。確かに結果として、ジャベリンもそうですが、ラフィーもユニオン初の〈ノブレス・ドライブ〉を発現させました。これから二人には、艦隊の主力部隊に入ってもらう事になります。しかし、このままでは“示し”がつかないでしょう?」

 

「ふむ。ウェールズの言う事も、一理あるか・・・・」

 

「「・・・・・・・・」」

 

ジャベリンが顔を俯かせ、ラフィーはいつも通りの無表情だったが、どこか険しい目をしていた。

カインが顎に手を当てて考えるそぶりをすると、二人に向けて口を開いた。

 

「では、ジャベリンならびにラフィーの両名には、懲罰としてーーーー『捕虜の監視任務』を与える!」

 

「「えっ?」」

 

「捕虜は丁寧に扱うのが基本だからねぇ」

 

肩を揺らす二人に、クリーブランドが人差し指を立てて説明する。

 

「それって・・・・!」

 

「任せたよ、二人とも」

 

「「はい!/うん・・・・!」」

 

笑みを浮かべるカインの言葉に、二人は笑みを浮かべて答えた。

 

 

 

 

 

 

 

ジャベリンとラフィーを退室させると、カインは応接用のソファの上座に座り、左右のソファに座るクリーブランドとホーネット、ウェールズとお茶会をし、笑みを浮かべたベルファストが煎れた紅茶を一口飲んだ。

 

「少々、寛大だと思いますが?」

 

「甘い、と言いたいのかい『PoW』?」

 

「・・・・少し、な////」

 

ウェールズの言葉に、カインは笑みを浮かべながら、ウェールズの愛称を呼んでそう答えた。愛称で久しぶりに呼ばれ、少々顔を赤らめるウェールズ。

 

「〈ノブレス・ドライブ〉を発現させた二人に、ちょっとした恩賞さ。それに、ラフィーのお陰で一つの可能性が実証できたしね」

 

「・・・・我々ロイヤル艦船<KAN-SEN>だけでなく、ユニオン艦船<KAN-SEN>も、〈ノブレス・ドライブ〉を発現させる事ができる、か?」

 

「ああ。それが証明されたんだ。これっくらいは許されても良いだろう」

 

「私も良いと思うよ」

 

「そうそう♪ コーヒーも紅茶も人生も、甘い方が良いのさ♪」

 

カインの言葉に同意するクリーブランドもホーネットは、先ほどの険しい顔が嘘のような顔となっていた。

 

「・・・・しかし、問題はコレらだな」

 

ウェールズが、お菓子が置かれたテーブルの上にさらに、『黒いメンタルキューブ』と、『怪獣リング』が置かれていた。

その時、キューブが今までにない、禍々しいオーラを放っていた。

 

「っ! キューブがっ!」

 

「あの戦い以降、キューブは異常な反応を示しています。これが何を意味するのかまでは、分かりませんが」

 

クリーブランドとホーネットも、キューブに目を見開き、ベルファストが説明した。

 

「『黒いメンタルキューブ』はオロチ計画の『鍵』。セイレーンの企みである事は間違いない。それに、この怪獣の指輪も、何かしらの関連があるだろう」

 

「これって、やっぱり姉ちゃんと関係があるよね?」

 

エンタープライズに起きた暴走とも言える異常を思いだし、沈黙が部屋を満たした。

カインがベルファストに向けて声を発する。

 

「ベル。エンタープライズの様子はどうだい?」

 

「身体と艤装の検査を行っていますが、今のところ、異常は見つかっておりません」

 

「凄い艦だとは思っていたけど、さ・・・・あの時のエンタープライズは、何て言うか、怖かった。まるで、そうーーーー前に戦った、機械の怪獣のようだったよ」

 

冷酷に、無機質に、ただ相手を殲滅するだけの殺戮の機械のような雰囲気、それをクリーブランドは、以前に遭遇した『ギャラクロンMK2』と重ねた。

 

「・・・・気になる事があるのはもう一つ、“重桜の今後の動き”、だね」

 

「『オロチ計画』を進めていた赤城が行方知れずになった今、計画に協力していた加賀が動くのでしょうか?」

 

「そうなると、厄介になるかも知れないな」

 

「厄介な事って?」

 

「追い詰められた加賀が、暴走するかも知れないって事だよ・・・・」

 

カインは、一抹の不安を感じていた。

と、そこで、グリーブランドとホーネットの通信機が鳴り響き、二人が応答した。

 

「はいこちらグリーブランド。あ、モントピリア、どうしたの?・・・・えっ?・・・・あっ!」

 

「あ、ボルチモア? どうしたの?・・・・えっ?・・・・あっ!」

 

二人は同時に声を上げると、同時に肩をビクンと揺らした。

 

「ああ、今日だったけ? ご、ゴメンすぐ行くから!」

 

「えぇっ! ハムマンが参加を断った!? ・・・・OK! 選手の方はこっちで探してみるよ!」

 

二人は同時に通信を切ると、カインに向き直り。

 

「ゴメン指揮官! ちょっと用事が出来ちゃって!」

 

「ヘイ指揮官! ちょっとお願いがあるんだけど!」

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

何やら嫌な予感を感じるカインとウェールズだった。

 

 

 

 

ーエンタープライズsideー

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そしてエンタープライズは、小島に建てられた塔に立ち、物思いに耽っていた。

 

「こんな所にいた!」

 

「?」

 

下を見ると、艤装をまとったヴェスタルが、自分に向けて声を発していた。

 

「まだ検査は終わってないのよ! 大人しくしてなくっちゃ!」

 

「・・・・ああ・・・・すまない・・・・」

 

「・・・・エンタープライズちゃん、大丈夫?」

 

「・・・・ああ・・・・何があろうと、今は戦うしかない・・・・そうだろう」

 

「エンタープライズちゃん・・・・」

 

空返事をするエンタープライズを、ヴェスタルは心配そうに言うが、エンタープライズは構わずに言い、ヴェスタルは心配そうにするがその場を離れた。

 

「・・・・私には分からない、ヨークタウン姉さん。海の美しさも、この名前に込められた思いも、指揮官の言うーーーー『気高さ』と言うのも・・・・力を得れば、分かると思ったのだが、結局、何も分からないんだ・・・・」

 

エンタープライズは、この場にいない、遠いユニオンにいる姉に向けて問いかけた。

 

 

 

ー綾波sideー

 

綾波はジャベリンとラフィーに連れられ、アズールレーン母港の桜並木の道を、重桜とは違った赴きのある道を歩いていた。

 

「まずは必要な物を買いに行かなくちゃ!」

 

「???」

 

「しばらくはこっちで暮らすんだから、色々と準備しなと!」

 

「売店なら揃ってる・・・・」

 

「あ、そうだね! 行こう行こう!」

 

はしゃいでいるジャベリンに戸惑う綾波が、ふと周りを見ると、他陣営の艦船<KAN-SEN>達が、仲睦まじくしている姿が映った。

足元に転がってきた野球ボールを、『ユニオン所属 軽空母 ボーグ』達『野球部』に投げ渡すと、かなりの威力に拍手されたり、『ユニオン所属 駆逐艦 チャールズ・オースバーン』達〈リトル・ビーバーズ〉に、重桜の仲間の為に戦う姿勢を賞賛され、仲間として受け入れてもらえた。

それを見て、ラフィーが綾波に向けて口を開く。

 

「大丈夫・・・・誰も綾波の事、悪く思ってない」

 

「さあ! 早く行こう!」

 

「・・・・何か、変な感じなのです」

 

先を歩くジャベリンとラフィーの後に続く綾波。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

その後ろの桜の木に隠れていたアーク・ロイヤルが、小さく笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませニャ! 綾波久しぶりニャ!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そしてここは『明石商店』。

ソコには、アズールレーンに捕虜にされていると思っていた明石が、ニッコリと笑みを浮かべて商売をしていた。半眼になる綾波が口を開く。

 

「こんな所で何やってるですか? 明石?」

 

「お客様がいれば、世界の何処でも商売ができるニャ」

 

綾波の後ろから、『ユニオン所属 空母 ロング・アイランド』が商品を持って顔を出す。

 

「ねえねえ! これまけてよ!」

 

「びた1まからないニャ!」

 

「ケチー!」

 

「明石ちゃんが来てから、品揃えが増えたんだよ!」

 

「・・・・・・・・皆心配してたのに」

 

捕虜になりながらも、図太く厚かましく商売をしている明石に、綾波が呆れたような、もしくは、ある意味感心したような気持ちで肩をすくめた。

それから、ジャベリンとラフィーが品定めをしている間に、明石から『オロチ計画』の裏に隠された事を聞いた。

 

「っ! 赤城さんが、『セイレーン』と・・・・!」

 

「赤城はおっかなけど、仲間を、指揮官の信頼を裏切るような事は絶対しないヤツだったにゃ・・・・」

 

「重桜はどうなっちゃうですか?」

 

「分からないニャ・・・・」

 

「・・・・明石。カイン指揮官は、本当にトモユキ指揮官なのですか?」

 

綾波は、これまで何処か避けていた指揮官の事を明石に聞くと、明石は頷きながら口を開く。

 

「アズールレーン母港に来てから、それとなく指揮官を見て観察したけどニャ。トモユキ指揮官らしい行動はそれとなくあったニャ。明石の借金の請求書を破いたり、シュレッダーにかけたり、バラバラの紙吹雪にしたり、トモユキ指揮官がやっていた事を無意識にやっているようだったニャ」

 

「・・・・・・・・」

 

「綾波。指揮官が記憶を取り戻す『鍵』は、綾波だと明石は思うニャ。多分、口には出さないけど、重桜の皆も、そう思っている筈ニャ」

 

「・・・・・・・・・・・・綾波は、恐いのです」

 

「えっ?」

 

何処か怯えたような声の綾波に、明石は首を傾げた。

 

「もし・・・・指揮官に会って、指揮官に、綾波を『知らない人を見る目』で見られたら・・・・綾波は・・・・」

 

明石は理解した。そして、聞き耳を立てていたジャベリンとラフィーも理解した。綾波は指揮官が大好きなんだ。だからこそ、大好きな人の記憶から、自分が消えてしまった現実を受け入れるのが、綾波は怖くて堪らないのだとーーーー。

 

「・・・・綾波ちゃん!」

 

「綾波」

 

「っ!」

 

そんな場の空気を変えようと、ジャベリンとラフィーが、マグカップを持って綾波の前に出る。

 

「どれが良いと思うっ!?」

 

「良い?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

綾波はそんな二人の心遣いに、笑みを浮かべた。

そして店先では、アーク・ロイヤルが、フッと笑みを浮かべていた。

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