アズールレーンT   作:BREAKERZ

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【試合】 リーダーに必要なもの

ー重桜sideー

 

アズールレーン母港がまだ昼頃の頃、重桜母港では夕日が沈み始め、夕闇が広がっていた。

そして母港では、時雨と夕立と雪風、そして瑞鶴が、海の向こうーーーーアズールレーン母港に連れて行かれた指揮官と綾波の事を心配していた。

 

「指揮かーーーーん!! 綾波ーーーー!!」

 

「指揮官だけじゃなくて、綾波まで敵に捕まっちゃうなんて・・・・」

 

「ゴメンね、二人を連れて帰れなくて・・・・!」

 

泣きじゃくる雪風と泣きそうになる夕立を見て、瑞鶴が申し訳ない無さそうに顔を俯かせた。

 

「ず、瑞鶴さんが謝る事じゃ・・・・」

 

「綾波、大丈夫かな? 虐められてないかな?」

 

「ひっく、雪風様と違って、幸運じゃないから、もしかして・・・・・・・・びぇええええええええええええええええええええ!!!」

 

「ええっ!!?」

 

遂に大泣きする雪風に、時雨が驚く。

 

「私、殿だったのに、逆に助けられて・・・・」

 

「ちょっとちょっと! 暗くなりすぎよ!」

 

瑞鶴まで目に涙を貯め始め、時雨がしどろもどろになる。

 

「綾波だけご飯抜きだったら・・・・」

 

「一人だけ肉食わせて貰えなかったら・・・・」

 

「私がしっかりしていれば・・・・」

 

「もう何なのよーーーー!! この重たい空気ーーーー!!」

 

涙を流す三人に、遂に時雨がお手上げと言わんばかり叫んだ。

 

 

 

 

 

そして瑞鶴の姉の翔鶴は、社にて長門に報告をしていた。

 

「赤城は戻らなかったか」

 

「作戦の総指揮を務める赤城先輩を失い、『黒箱』はーーーーアズールレーンに奪われたまま、極めて厳しい状況です」

 

「加賀は『オロチ計画』の遂行を強く主張しているが・・・・怪しんでおるのか? 加賀を」

 

「・・・・指揮官からーーーートモユキ指揮官から、赤城先輩と加賀先輩の動きに、目を光らせておいてくれ、とご指示を受けました」

 

「指揮官が、か・・・・」

 

「このまま計画を続けるのは危険です」

 

「・・・・仲間を疑いたくはないが」

 

目を伏せる長門の心情を察したのか、陸奥と江風は長門を心配そうに見つめた。

 

 

 

 

 

ー鉄血sideー

 

そして重桜と同盟であるはずの鉄血陣営は、重桜の茶屋で団子を頬張っていた。

 

「何か大変な事になってんなぁ~」

 

「重桜は苦境に立たされているです。今こそ同盟相手である私達、鉄血が立つべきではありませんか?」

 

「あら、混乱に乗じて重桜を乗っとるつもり? ニーミったら腹黒いわね?」

 

「そう言う意味で言ってるんじゃありません!」

 

レーベとニーミが、重桜の様子を見てそう言うが、オイゲンがからかうように言ってきて、ニーミが怒鳴る。

 

「冗談よ冗談。早く綾波を助けに行きたいのよね?」

 

「妙に仲良かったもんなぁ、お前達」

 

「そ、そんな個人的な動機じゃありません。違います!////」

 

「確かに動くなら今がチャンスよ。どうするの?」

 

オイゲンの姉である『鉄血所属 重巡洋艦 アドミラル・ヒッパー』が聞くと、オイゲンは追加された餡蜜を見つめる。

 

「さて、どうしようかしら? うちの『総統閣下』は、この状況を見ても、私達の好きにすれば良いと言っていたけどね」

 

「あの総統かぁ。何か気持ち悪いのよね・・・・」

 

「それに胡散臭くて、どうにも信用できないんだよなぁ・・・・」

 

「ヒッパーさん! レーベ! 『総統閣下』に対してそんな不敬な事を・・・・!」

 

「ニーミだって、あのハイテンションに付いていけないって、ボヤいていただろう?」

 

「そ、それは・・・・!」

 

「ま、何にしても、我らが鉄血の『総統閣下』曰く、私達は、“愛と善意を伝道する、鉄血艦隊!”、だからね」

 

オイゲンは、『総統閣下』がよく口にする言葉を呟いてから、餡蜜を食べた。

 

 

 

 

ーカインsideー

 

「はぁ、はぁ、なんで、こんな・・・・事に?」

 

ロイヤルの軍服から、スポーツウェアに着替えたカインは、今自分の現状に、肩で息をしながら若干困惑していた。

何故なら、軍港のバスケットコートで、ホーネット、ヘレナ、『ユニオン所属 重巡洋艦 ボルチモア』と共に、クリーブランド率いる『海上騎士団<ソロモンネイビーキャリバーズ>』とーーーーバスケの試合をしていた。

 

「何でバスケ?・・・・はぁ、しかも、4対4だし。普通バスケって、5人でやる、スポーツでしょうが・・・・」

 

「ゴメンね指揮官。今日クリーブランド達とバスケする約束してたんだけど、お互いメンバーが四人しか集まらなくてさ。本当はハムマンがメンバーに入る予定立ったんだけど、ドタキャンされちゃったんだ」

 

既に前半を終えて後半のタイムアウトでベンチに休憩するカインに、ホーネットが改めて説明した。

 

「いや、まあ、でもさ、僕が助っ人に入っても、クリーブランドの姉妹達に勝てるかな・・・・?」

 

現在、海上騎士団<ソロモンネイビーキャリバーズ>50点対指揮官チーム40点。

圧倒的不利な状況だ。バスケ経験0のカインを穴にして、クリーブランド達が攻めるが、運動神経抜群のボルチモアとホーネットと、サポート上手のヘレナがカバーに入ってくれているが、10点差で勝てるか分からない。クリーブランド達はもう勝った気になっているような雰囲気だった。

自分が足を引っ張っている自覚があるカインが、気落ちするーーーーが。

 

「指揮官・・・・ヘイガッツ!!」

 

バチンっ!

 

「いっつぅ! ホ、ホーネット?」

 

ホーネットがカインの背中を叩いた。

 

「沈んでたって勝てる訳じゃないんだよ。私も頑張るからさ。諦めずに頑張ろう指揮官! 諦めたらそこで試合終了だって、重桜のバスケの名将も言ってたしさ!」

 

「いや、知らないけど・・・・」

 

「指揮官。私ももっと頑張るよ。だから諦めないで」

 

「私もです指揮官・・・・!」

 

「ボルチモア・・・・ヘレナ・・・・。ふぅ、ありがとう。お陰で冷静になれた。10点差を埋めるのは難しいけど、一つ、“策”がある」

 

「「「えっ?」」」

 

カインがホーネット達を側に集めて、声をひそめて口を開く。

 

 

 

ータイガsideー

 

≪さぁ~て、兄ちゃん達はこの窮地をどうやって攻略するのか! 解説のタイタスの旦那! どう思います?≫

 

≪うむ。姉妹艦なだけに、クリーブランド嬢が率いる海上騎士団<ソロモンネイビーキャリバーズ>は素晴らしい連携が取れている。逆にカイン指揮官達のチームは寄せ集め、これはカイン指揮官の統率力が試される事になる!≫

 

フーマとタイタスは、カインから離れ、ベンチの上でフーマが司会者のように声をあげ、タイタスが解説役をやっていた。

しかしーーーー。

 

≪・・・・・・・・・・・・≫

 

普段ならば応援か、自分も出たいと騒ぎそうなタイガが、何も言わずに物思いに耽っていた。

 

≪・・・・おい、タイガ?≫

 

≪っ、えっ?≫

 

≪どうしたのだ? カイン指揮官が何か動きを見せているのだが?≫

 

≪あ、あぁ! 確かに、トモユキの奴、何か仕掛けてきそうだなぁ!≫

 

明らかに様子がおかしいタイガに、タイタスとフーマは怪訝そうに見つめていた。

 

 

 

 

ー綾波sideー

 

綾波はジャベリンとラフィーについていくと、バスケットコートに多くの艦船<KAN-SEN>達が集まっているのが見え、ジャベリン達も気づいたのか近づくと、指揮官も混じってバスケの試合をしていた。

 

「あっ、ジャベリンちゃん・・・・! ラフィーちゃん・・・・!」

 

「ユニコーンちゃん!」

 

ユニコーンを見つけ近づくと、その隣にイラストリアスとベルファストーーーーさらにベルファストの隣には、何故かゴルフウェアを着用したQ・エリザベスとウォースパイトとフッド、そばに控えるメイド隊がいた。

ベルファストから、カイン指揮官がハムマンに代わってホーネット達と一緒にクリーブランドのチームとバスケの試合をする事になったのを聞かされ、それを知り多くの艦船<KAN-SEN>達が見物に来たのだ。饅頭を率いる明石がおせんにキャラメルを売っていた。

すると、近くにハムマンがやって来たので、ジャベリンが聞いてみた。

 

「ハムマンちゃん。何で出るの止めたの?」

 

「・・・・あれを見るのだ」

 

ハムマンが膨れっ面を作りながら、何やらカイン指揮官と話し込んでいるボルチモア、ホーネット、ヘレナの三人を指差したーーーー正確に言うと、ボルチモアとホーネットの巨大な、ヘレナの普通のサイズだが形が美しく発育した胸部装甲を・・・・。

 

「バスケで激しく動くと、三人のアレが揺れるのだ、弾むのだ、暴れるのだ・・・・! そんな物を間近に見せられて、どれだけの苦行だと思うのだ・・・・!!」

 

拳を強く握りながらさめざめと悔し涙を流すハムマンに、ジャベリン達は苦笑いをし、エリザベスとウォースパイトだけは「確かに・・・・」と云わんばかりに、三人の胸部装甲を睨んでいた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「綾波。この試合どう見るにゃ?」

 

明石が綾波に近づき、話しかけた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「ベル。貴方はこの試合、下僕達が逆転できると思う?」

 

エリザベスがベルファストに尋ねた。

 

「綾波は、バスケットボールの事は良く分からないのです・・・・」

 

「率直に申し上げまして、残り時間も15分。ここから逆転するのは困難でしょう・・・・」

 

二人の言葉は、妙に重なっていた。

 

「でも・・・・」

 

「しかし・・・・」

 

綾波とベルファストの視線は、カイン指揮官へと注がれていた。

 

「指揮官のあの目・・・・」

 

「ご主人様のあのお顔・・・・」

 

その視線を追って、ジャベリン達もエリザベス達も、カイン指揮官に視線を向けた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

その眼差しには、この状況を諦めていない、強い光が宿っていた。

 

「そろそろ何か仕掛けてくる筈なのです」

 

「何やら策があるようです」

 

と、そこで二人の意見が重なり、綾波とベルファストがお互いに顔を向けあった。

 

「・・・・指揮官の事を分かっているのですね」

 

「・・・・メイドとして、主の事をある程度理解しておくのは当然ですから」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

『あわわわわわわわわわ・・・・!』

 

二人の間に、何やら不穏な気配が漂い始める。二人の視線が合わさり、青い火花がバチバチと弾けているように見えるのは、おそらくジャベリン達の気のせいでは無いだろう。

そんな中、試合再開のホイッスルが鳴り響くと、両チームが再び試合を始まった。

そしてーーーー。

 

 

 

ークリーブランドsideー

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・ど、どういう事?」

 

クリーブランドは若干困惑した、試合が再開して僅か5分で10点もあった差がーーーー3点差にまで縮められたのだ。

先ほどまで自分達の勝利を確信して浮かれていた妹達の顔にも、ハッキリと焦りが浮かんでいた。クリーブランドは自分に立ち塞がる艦船<KAN-SEN>に目を向ける。

 

「まさか、君に止められるなんて思わなかったよ・・・・ヘレナ」

 

試合が再開してすぐ、クリーブランドに1on1<ワンオンワン>で勝負を仕掛けてきたのはなんと、ヘレナだったのだ。

最初は奇策で来たのかと思ったが、ヘレナはまるで自分の動きを予測しているかのように動き、攻められなかった。

周りを見ると、妹達もそれぞれホーネットとボルチモア、そしてカイン指揮官にマークされていた。

 

「ふっ!」

 

「しまった!?」

 

ヘレナ、僅かに視線を外したクリーブランドから、ボールをカットすると、ボールはホーネットがキャッチした。

 

「行けホーネット!」

 

「OK! 行けっ!」

 

ボルチモアの声に答えるホーネットがシュートを打とうとするが、

 

「させるかっ!」

 

コロンビアがブロックするように飛び、ホーネットを遮る。

 

「うっ!」

 

「ホーネット!」

 

「っ!」

 

「こっちだ!」

 

思わずホーネットがカイン指揮官にパスを渡した。カイン指揮官がマークしていたモントピリアは、得点力の高いボルチモアをマークしているデンバーのフォローに回り、クリーブランドもヘレナに押さえられて動けない。

 

「指揮官!」

 

ホーネットはフリーとなったカイン指揮官にボールをパスし、カイン指揮官がそれをキャッチすると、クリーブランドはヘレナを押さえ、コロンビアはホーネットを、モントピリアがボルチモアをデンバーに任せ、再びカイン指揮官の元へ向かおうとする。

 

「(思い出せ、クリーブランドが教えてくれた事を・・・・!)」

 

カイン指揮官は、試合が始まる前に、クリーブランドに少しだけ教えてもらった。シュートの打ち方をブツブツと言いながら思い返した。

 

【指揮官、バスケ初めてだろ? じゃあ私がシュートの打ち方を教えるよ! 大切なのは膝だぞ。しっかりジャンプして、腕の力はあまり使わない、そして・・・・】

 

「(左手は添えるだけで、アーチを描くようにボールを上に・・・・放つ!)」

 

カイン指揮官がソッとボールを放つと、コートの中にいた皆、外にいる皆が、そのボールの軌跡を追い、そしてーーーー。

 

スパッ・・・・。

 

ボールは、ゴールリングの中に、綺麗に入っていった。

 

ピー!

 

「指揮官チーム! 二点追加!」

 

審判役をしていたウェールズがホイッスルを鳴らすと、得点版に50対49になった。

 

わぁああああああああ!!

 

「やった・・・・!」

 

「ナイス指揮官!」

 

「お見事!」

 

「凄いです!」

 

周りが歓声をあげ、ホーネットとボルチモアとヘレナも声をあげ、ハイタッチした。

 

「ナイスシュート、指揮官!!」

 

「「「姉貴・・・・?」」」

 

「あ、ご、ゴメン!」

 

クリーブランドも思わず声を張り上げるが、妹達の視線に気づいて頭を下げた。

そして試合は進み、残り時間は30秒。ボールはカイン指揮官に渡り、モントピリアは今度こそカイン指揮官を止めようとマークする。

 

「っ!」

 

「2度もさせるかっ!」

 

カイン指揮官がシュートモーションに入り、モントピリアがジャンプして遮ろうとするが、

 

「っ・・・・」

 

「なっ! フェイント!?」

 

フェイントをかけられ、モントピリアが下がると、再びシュートしようとしたその時ーーーー。

 

「なんのぉっ!」

 

何と、クリーブランドがカイン指揮官に向かって来た。

 

「来ると思ったよ、クリーブランド」

 

「えっ?」

 

その刹那、クリーブランドに向けて、カイン指揮官が声を発する。

 

「クリーブランドが妹のフォローに動くと、予測していた、よ!」

 

カイン指揮官がクリーブランドから反対側にボールを投げると、ソコにいたのはーーーー。

 

「っ! ヘレナ!!」

 

「行け、ヘレナ」

 

「っ! えいっ!」

 

ボールを受け取ったヘレナが、ボールを放った。

 

スパッ・・・・ボスン。

 

そしてボールはゴールリングに入り、コートの地面に落ちたその瞬間、

 

ピッ、ピーーーーー!

 

「試合終了! 得点、51対50で、指揮官チームの勝利!」

 

わぁああああああああ!!

 

「やった!!」

 

「よっし!」

 

「ナイスだ! ヘレナ!」

 

「えっ、あ、えぇっ」

 

戸惑いがちのヘレナの元に、ホーネットとボルチモアとカイン指揮官が集まり、ハイタッチをした。

クリーブランド姉妹は、「負けたぁ・・・・」と、残念そうに肩を落とした。

 

「ふぅ・・・・」

 

「やったね指揮官!」

 

「ああ・・・・ありがとうホーネット」

 

「えっ? 何でお礼を言うの?」

 

「ホーネットが、諦めずに頑張ろう指揮官! って言ってくれたし、私の作戦を信じてくれたから、勝てたようなものだよ」

 

「いや、そんな・・・・」

 

照れ臭そうにするホーネットに、カイン指揮官がさらに言葉を紡ぐ。

 

「ホーネット。君もちゃんとリーダーの素質があるよ」

 

「えっ?」

 

「他のユニオンの皆から聞いたけど、ヨークタウンもエンタープライズも、“背中で仲間を引っ張っていくリーダー”なら、ホーネットは、ムードメーカーとして、“仲間を後ろから押してやるリーダー”だよ」

 

「後ろから押してやるリーダー?」

 

「そ。ホーネットは皆の空気を明るくする太陽のような子だよ。そんなリーダーがいれば、どんな危機的状況でも、希望を捨てずに戦える。ホーネットはさ、間違いなく、そんなリーダーの素質を持っている」

 

「私が?」

 

「ああ。流石は、ヨークタウン姉妹の末娘。ホーネットだけが持つ、姉達に負けない素晴らしいリーダーだよ」

 

「~~もう! 照れ臭い事言わないでよ!」

 

「イタタタタタ!」

 

顔を赤くして、カイン指揮官の背中をバシンバシンと叩くホーネット。そんな二人を見て、ボルチモアとヘレナも笑みを浮かべた。

そして、クリーブランドがカイン指揮官に近づく。

 

「負けたよ指揮官。もしかして最後の攻めって、指揮官が考えたの?」

 

「イチチチ、まあね」

 

「どんな作戦だったのか、教えてくれないか?」

 

「ああ。先ず、ヘレナにクリーブランドのマークを頼んだのは、結構単純な理由だよ」

 

「単純?」

 

「その、クリーブランドって結構小柄な方だろう」

 

「うっ、うん・・・・」

 

自分の身長を若干気にしているのか、苦々しく頷く。

 

「クリーブランドは小柄だから、自分より身体の大きいホーネットやボルチモアより小回りが効く、でもヘレナも同じくらいの体格だからそれは効かないし、ヘレナはサポート上手だから、クリーブランドがどう動いてくるのかある程度を察する事ができると思ったんだ。あそこまでできるとは思わなかったけど」

 

「情報収集は得意ですから・・・・」

 

照れ臭そうに言うヘレナ。

 

「それに、クリーブランドの動きを少しでも封じれば、コロンビアやモントピリアやデンバーの動きのリズムを狂わせる事ができるしね」

 

「「「えっ!?」」」

 

突然自分達の事を言われ、三人はピクッと肩を揺らす。

 

「こう言うのも悪いけど、長女に頼りきっている所がある妹達は、クリーブランドが動きづらくなればプレーが狂い出す。そこにすかさずホーネットやボルチモアが攻め立てれば、焦りが生まれて、さらにプレーに乱れが生じる。ぼく達はそこを突いたって訳さ」

 

「あちゃー、そうか・・・・」

 

「クリーブランド。長女だから自分が頑張らなくっちゃって思う気持ちは分かるけど。たまには、妹達に頼ったらどうかな?」

 

「えっ、妹達に?」

 

「さっきも言ったけど、妹達はクリーブランドに頼りきっているから隙が生まれた、だから勝てたんだ」

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

三人は図星なのか、肩を落としたり、頭をかいたりしていた。

 

「信頼って言葉はな。重桜では、“信じる”って言葉と“頼る”って言葉を合わせて生まれる言葉だ。クリーブランド。妹達を信じて、頼るのもリーダーとして必要な事だ。そして妹達も、姉に頼られるようになれば、もっと伸びると思う」

 

「信頼、か・・・・」

 

クリーブランドはカイン指揮官の言葉を反復すると、妹達に向かった。

 

「「「あ、姉貴・・・・」」」

 

「皆、ゴメン。私がもっと皆にパスを回したりしていれば、勝ってたかも知れないのに」

 

「いえ、そんな、僕達も、姉貴に頼り過ぎていたし・・・・」

 

「ま、これから頑張って姉貴に頼られるようになるよ」

 

「だから姉貴も、私達に頼ってください」

 

「皆・・・・うん! これから頑張ろう! 海上騎士団<ソロモンネイビーキャリバーズ>はまだまだこれからだ!」

 

さらに気合いを入れるクリーブランド達を見てカイン指揮官は笑みを浮かべた。

そして、晴らしい試合を見せた皆に、他の艦船<KAN-SEN>達が集まった。

 

 

 

ー綾波sideー

 

「・・・・・・・・ふふっ」

 

「綾波ちゃん?」

 

綾波は小さく笑みを浮かべた。

カイン指揮官の元に集まる艦船<KAN-SEN>達の笑顔が、重桜にいる仲間達と同じなのだった。

記憶は失われても、指揮官の周りにはあんなに笑顔が集まっている。それが綾波には嬉しく、そしてーーーー少し羨ましいと感じたからだ。

 

 

 

ーアークロイヤルsideー

 

「ふっ」

 

綾波達の様子を物陰から見ていたアークロイヤルの口元に笑みが、そして鼻からは何故か、血が流れていた。

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