ー綾波sideー
カイン指揮官のバスケの試合を終えると、次はQ・エリザベスとウォースパイトとフッド、そして『ユニオン所属 戦艦 ノースカロライナ』と『ユニオン所属 戦艦 ワシントン』とゴルフをするので連れて行かれた。
綾波達はイラストリアスとユニコーン、ベルファストと一緒に基地から離れた島にある露店商に赴いていた。
他の艦船<KAN-SEN>達も来ており、大道芸をしていたり、買い物をしていたり、食べ歩きをしていたりと、かなりの賑わいを見せていた。
「うわぁ~! 今日も賑わっていますねぇ!」
「ここに来たのって・・・・」
「一緒に遊ぶ」
「あっ・・・・」
戸惑う綾波の手を引っ張って走るラフィー。
「ユニコーンちゃんも! 早く早く!」
「あっ・・・・」
「(コクン)」
「うん!」
イラストリアスに行って良いと許可も貰い、ユニコーンは笑顔でジャベリン達の方に走り、イラストリアスとベルファストは笑みを浮かべる。
露店商を見て回る四人。その後ろを、アーク・ロイヤルが物影に隠れながら眺めていた。
◇
そして、カフェでパンケーキを注文した綾波達。
「わぁ~! 美味しそう! いっただきまーす!」
「「「いただきます」」」
四人がパンケーキを食べようとするが、ラフィーは一口で食べてしまった。
「・・・・・・・・」
綾波はパンケーキを美味しそうに食べるユニコーンを見て、ジッとパンケーキを見ていたが、
「えい」
「あっ・・・・」
ソコでラフィーが綾波のパンケーキの上に置かれた苺を横から取って頬張った。
「(ムグムグムグムグ)・・・・ふっ」
「~~~~~~!! 鬼神の力、思い知るです・・・・!」
「受けて立つ」
目に涙を貯めた綾波が、ナイフとフォークを構え、ラフィーもナイフとフォークを構えた。
それから二人がナイフとフォークでつばぜり合いを繰り広げた。
「ちょっとちょっと! お行儀良くしなくちゃダメだよぉ!」
ジャベリンが言うが、二人は聞かず戦いを続ける。
「全くもう! もっと上品に食事できないのかなぁ?」
「・・・・・・・・」
そう言うジャベリンの口の周りには、パンケーキのクリームがベットリとついており、ユニコーンはそれをジッと見ていた。
ーアーク・ロイヤルsideー
「・・・・・・・・尊い」
「アーク・ロイヤル様。鼻血が」
離れた席でその様子を紅茶を飲みながら眺めて鼻血を流していたアーク・ロイヤルに、ソフトクリームを舐めていたイラストリアスの隣にいたベルファストが静かに言った。
ロイヤル空母 アーク・ロイヤル。見た目はウェールズと同じ麗人風で涼やかな美貌とスレンダーながらも攻撃的なナイスバディをし、性格も良好なので、女性に好かれそうなのだが、幼い駆逐艦が大好きなーーーーロリコンである。ロリコンである。ロリコンなのである!
それもベルファストが「この方をあまり陛下の近くに置くのは危険です」と危惧し、タイガも≪コイツが重桜の睦月や如月達に会ったら大変だろうなぁ・・・・≫と呆れてしまう程である。
おそらく綾波の監視役であるジャベリンとラフィーのフォロー役を志願したのも、駆逐艦達の様子を特等席で眺める為だろうと言うのが、容易に想像できた。
「・・・・ダイドー。シリアス」
「「はい」」
ベルファストの後ろから、ダイドーとシリアスが現れ、アーク・ロイヤルの両脇から挟み込むように持ち上げる。
「なっ! ベルファストっ!?」
「ご主人様から、アーク・ロイヤル様が何かやらかしそうになったら、ジャベリン様達から引き剥がして営倉に放り込んでおけ、とご指示を受けておりましたので。ここはユニコーン様とイラストリアス様と私に任せ、アーク・ロイヤル様は少々営倉でお休みくださいませ」
「えっ! カイン指揮官<閣下>がっ!?」
「では、アーク・ロイヤル様。参りましょう」
「誇らしきご主人様からのご命令。このシリアス。命を賭けて遂行します」
「い、いやーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
そしてそのままアーク・ロイヤルは、ダイドーとシリアスに引きずられていく姿を、イラストリアスは苦笑を浮かべ、ベルファストはため息を吐いた。
ーカインsideー
ーーーーココン・・・・
「パーね、下僕」
「ええ。そうですね。今日はいまいちです・・・・」
ゴルフウェアを着用し、Q・エリザベス達とゴルフをしているカイン指揮官は、バスケの疲労が残っているのか中々スコアが伸びず、ワシントンと最下位争いをしていた。
「うがー! 何でこんなほっそい棒に当てなきゃなんねえんだよ!!」
「いけませんよワシントン。あなたは元気が有り余っているんだから、『スマイル』でしょ?」
「いい!? 姉貴!?」
金髪碧眼に高身長と豊満なバストに整ったプロポーション女性、ノースカロライナが、ボールが上手く当てられず、イライラしだした妹の、銀髪青眼に姉と同じ高身長とナイスバディをしたワシントンに注意した。
ノースカロライナがワシントンにスイングを教えていると、
「ノースカロライナは教え方が上手いね」
「えっ?・・・・お褒めにあずかり光栄です指揮官。私・・・・周りに比べたら個性がなくて地味ですから・・・・」
「ん? 何でそう思うんだい?」
カイン指揮官が問うと、ノースカロライナはオズオズと話し出す。
「だって他の艦船<KAN-SEN>は皆可愛いし、魅力的じゃないですか。それに比べて私は目立った戦果はないし、特徴もこれと言って・・・・」
「いや、ノースカロライナは金髪碧眼でスゴい綺麗だし、スタイルも抜群だし、暴れん坊のワシントンの手綱を握れる胆力があるし、クリーブランド達から聞いたところによると、何でもそつなくこなせる、ベルファストと同じ万能タイプって聞いたけど?」
「ベ、ベルファストさんとっ!? でも私、あんな完璧なメイド属性でクールビューティーなスゴい個性なんて・・・・」
「いやいや、ここだけの話だけどね。ベルも自分には突出した能力がない事を、ちょっと気にしていた時期があったんだよ」
「えっ?」
「シェフィは掃除が得意。サフォークはお菓子作りが得意。シリアスも戦闘方面は頼りになる。ケントはムードメーカー。エディンバラは紅茶を淹れるのはベルより上手い。ベルファストも自分には尖った個性がなくて、少し自信喪失になっていた事があったよ」
「そう、なのですか?」
「ああ。でも、そんなベルだからこそ、クセの強いメイド隊の皆を統率できるし、全線でも、後方でも頼りになるんだ。ノースカロライナだってそうだよ。万能型な子はどんな状況でも柔軟に対応する事ができる。個性だとか地味なんて関係ないよ。ノースカロライナにはノースカロライナの魅力があるんだからさ」
「わ、私の魅力・・・・あの、指揮官、実は私・・・・」
「下僕! 次はあんたの番よ!」
「あぁはいはい! それじゃまたなノースカロライナ」
「あっ・・・・」
カイン指揮官が行くのを、ノースカロライナは手を少し伸ばした。
「指揮官・・・・/////」
「姉貴??」
「ワシントン。今度一緒に、指揮官にバニーで・・・・」
「それは勘弁してくれぇ!」
ノースカロライナとワシントンが何やら騒いでいるが、シュパッ! とボールを打ったカイン指揮官に、Q・エリザベスが話しかける。
「下僕。アンタはセイレーンが何の目論見で私達に仕掛けているのだと思う?」
「・・・・これはあくまで僕の憶測ですがーーーー“観察している”、もしくは、“見定めている”んだと思います」
「見定めている、ね」
「ええ。彼女らは、僕達人間が、陛下達艦船<KAN-SEN>達が、どんな動きをするのか見定めていると思うんです。まるでそうーーーーチェス盤に乗った駒達がどう動くのかを眺めているかのように」
カイン指揮官の憶測が、奇妙な説得力があるように、エリザベス達も感じていた。
ージャベリンsideー
そしてその日の夜。食堂で夕食をとるジャベリン達。
「重桜のご飯はどんな感じ?」
「・・・・同じです」
「同じ?」
「大人の人も、小さな子も、皆仲良く、美味しく食べて皆、同じなのです・・・・」
そう言って穏やかな笑みを浮かべる綾波。
それを見ていたジャベリン達だが、台所のほうで、『ロイヤル所属 駆逐艦 グローウォーム』が包丁で指を少し切ったようだ。
「大丈夫かっ!! 傷は浅い・・・・いっ、いまッ・・・・お、お姉さんが消毒してッ・・・・!!」
と、ソコで営倉から出てきた(脱走してきた?)アーク・ロイヤルが、頬を赤くし、目がケダモノのように危ない光を放ち、ベロベロと舌舐めずりをしながらグローウォームの指を舐めようと迫った。完全に変態な変質者であった。
ーーーーゴン!
「ミリオンヘッドスマッシュ!!」
「かはっ!」
が、グローウォームが必殺技の頭突きをお見舞いし、アーク・ロイヤルをノックアウトした。
「「・・・・・・・・・・・・」」
と、そこでダイドーとシリアスが現れ、アーク・ロイヤルの身体を荒縄で簀巻きにすると、そのまま引きずりながら、再び営倉へと連行していった。
「・・・・・・・・・・・・」
その光景を、綾波は何とも言えない顔で見ていた。
ーカインsideー
「いででででででで!!」
また時間が経ち、カイン指揮官は自室のソファーで、バスケにゴルフと立て続けのスポーツで、軽い筋肉痛の痛みに悲鳴を上げていた。
「大丈夫指揮官?」
「たくっ、この位で情けないぜ?」
カイン指揮官の身体にストレッチをさせてくれているのは、ノースカロライナとワシントンだった。
そのストレッチで密着する度に、二人の豊満なバストが押し付けられたりして、かなりドギマギしていた。
「いやいや、昼にバスケ、その後ゴルフって、結構ハードだったんですけど・・・・!」
コンコン・・・・。
「失礼いたしますご主人様」
と、部屋に入ってきたのはベルファストだった。
「おおベル。来てくれたか。それじゃノースカロライナ。ワシントン。ありがとう。お陰で少し楽になったよ」
「いえいえ、それじゃ私達はこれで。行くわよワシントン」
「ああ」
二人はベルファストに一礼すると、部屋の外に出ていった。
ーーーーやっぱりバニーで来て方が良かったかしら?
ーーーー姉貴、マジで勘弁してくれよ・・・・。
何やら二人が外で話し合っているようだが、ベルファストは聞かなかった事にして、カイン指揮官に話しかける。
「ご主人様。それでどうしましたか?」
「う~ん。久しぶりにベルと夜のお散歩をしたくなってね。ダメかな?」
「・・・・ふふっ、はい。ご一緒させてもらいます」
一瞬ポカンとなるベルファストだが、すぐに可笑しそうに笑みを浮かべて、カイン指揮官と一緒に散歩に出掛けた。
ーエンタープライズsideー
「・・・・・・・・・・・・」
エンタープライズは一人自室で携帯食を食べながら、窓から見える月を見上げていた。
ー加賀sideー
そしてここは『オロチ』が隠されている重桜の洞窟ドック。加賀はオブザーバーと共に『オロチ』を見下ろしていた。
「・・・・・・・・」
「『オロチ』が目覚める。数多の“想い”を乗せて。『オロチ』の中には“全て”がある。あらゆる海を渡り、“想い”を集めてきた」
「“想い”を・・・・」
「そうよーーーー赤城の想いもまた、ここにある。途絶えさせてはいけないわ」
赤城を失い、心に穴が空いた加賀に、オブザーバーは甘い言葉を紡ぐ。
「ああ・・・・そうだ、だがら私は・・・・!!」
その瞳に、危うい光を宿す。
ー???sideー
『・・・・なぁなぁ、なんかヤバい物見ちまったな・・・・!』
『そ、そうですね、この母港に来てしばらくこのドックに隠れていましたが、何でしょうあの戦艦は・・・・!』
廃れた艦の影に隠した小型潜水艦から加賀の様子をコッソリと眺めていたのは、マグマ星人とマーキンド星人だった。
ー綾波sideー
そしてその頃。ジャベリンの部屋でジャベリンとラフィーとユニコーンと一緒に寝ていた綾波が、ふと目を覚まし、外に出た。
「・・・・・・・・あっ」
「ん・・・・?」
すると、エンタープライズを見つけ、目を細める。
「何だ脱走か?」
「(フルフル)」
綾波が首を横に振ると、エンタープライズはフッと笑みを浮かべ、
「冗談だ。眠れないのか?」
「良く分からないのです。アズールレーンとは敵同士。でも、皆は優しくしてくれて・・・・戦いの事、重桜の事、指揮官の事・・・・色々考えるとーーーーどんどん、分からなくなって。もうずっと、綾波は分からないままなのです・・・・」
「まだ、戦おうと思うか?」
「綾波の“戦う理由の答え”は分かっているです。でも、アズールレーンと戦う事が正しいのか、分からないです。ーーーー分からないけど、戦いは好きじゃないです・・・・」
綾波がそう言うと、エンタープライズは綾波に背を向けて歩いていった。
「そうかーーーー“戦う理由の答え”が出ている所では、私よりかはマシだが・・・・。私も、戦いは好きではない」
ーカインsideー
と、ソコで、ベルファストとデートしていたカイン指揮官が、エンタープライズと綾波の話を聞いてしまった。
そして、そのままベンチに座るカイン指揮官。
「ご主人様・・・・」
「ベル。隣に座って」
「いえ私は・・・・」
「たまには良いだろう?」
「・・・・はい」
ベルファストを隣に座らせ、カイン指揮官が口を開く。
「エンタープライズは確かに強い。だが、その内面は繊細で脆い。だから、強い力を求めたのかもな。その脆さを隠す為に・・・・」
「はい・・・・」
「ねぇベル」
「はい」
「たまにはベルもーーーー少し強引になってみたら?」
「強引に、ですか?」
「そ。ベルはいつも3歩後ろに引いて来てくれるけど、たまにはこんな風に隣や前に来て、強引に攻めた方が良いよ」
「・・・・そうですか。ーーーーでは、ご要望通り、強引にいかせていただきます」
「うぉっ!?」
ベルファストはカイン指揮官を押し倒すように横にすると、覆い被さるように身体を密着させ、顔を眼前にまで近づけた。その豊満なバストがムニュリっと、押し付けられ、カイン指揮官は内心歓喜しそうだった。
「ご主人様」
「ん?」
「何を隠しておられるのですか?」
「んん!?」
少しムッとした顔で迫るベルファストの言葉に、カイン指揮官は歓喜しそうだった内心が、ギクッとなる。
「ウェールズ様とイラストリアス様は何かを知っているような雰囲気でした。ご主人様が私達に隠し事をしておられるのは察しておりました。そしてそれは、海守トモユキ指揮官様の事以外で。ご主人様は何を隠しておられるのでしょう?」
「・・・・・・・・」
「ご主人様・・・・?」
カイン指揮官は一瞬目を泳がせる。
こんな時にタイガもタイタスもフーマもすでに就寝してしまっているのだ。まぁ、ベルファストととのデートをお邪魔しないように配慮してくれたのだろうが。
「はぁ・・・・ベル。この事は他の皆、陛下達にもまだ内密にしてくれるかい? 折を見て皆にもいずれ話すからさ」
「お約束いたします」
「実はーーーー」
ー綾波sideー
そして綾波は、はじめてジャベリン達と出会った海岸に立って、月を眺めていた。
するとその足元に、ユニコーンのゆーちゃんが転がってきた。
「ぁ・・・・」
ゆーちゃんを持ち上げると、ジャベリンとユニコーンとラフィーが近くに立っていた。
「あの時、ゆーちゃんを見つけてくれて、ありがとう!」
「・・・・綾波は、本当に何もしていないのです。綾波はこの基地に忍び込んだ敵です・・・・」
「・・・・でも、だから会えた」
「ぁ」
綾波の言葉をラフィーがそう言った。そして次にジャベリンが口を開いた。
「【うわぁ~! こんな凄い場所があったんですね!】」
芝居がかった口調で話すジャベリン。
「【こんな穴場を知ってるなんて、貴女中々やりますね!】」
「ぁ」
それは、ジャベリン達と初めてこの場所でした会話だった。
「【私ジャベリンです!】」
「【ラフィー・・・・】」
「【ユニコーン・・・・】」
「【あの~、貴女のお名前聞いても良い?】」
「・・・・・・・・綾波、です。よろしくです」
あの時言えなかったその言葉を、綾波は漸く、伝えられた。
「指揮官もいれば、完璧・・・・」
「そうだね。綾波ちゃん!」
「ぇ」
「お兄ちゃんに、会いたくない?」
「・・・・会いたい、です。トモユキ指揮官としての記憶を、重桜の皆の事を、綾波の事を、思い出して欲しいです」
綾波のその顔から、綾波がどれだけ指揮官が好きなのか、ジャベリン達も察した。
「でも、前に蒼龍さん、重桜で知識が凄い人が教えてくれたです・・・・」
「え? 何を?」
「記憶を失う前の記憶を取り戻すと、記憶を失ってからの記憶を無くしてしまう、です・・・・」
「・・・・それってーーーー」
綾波が次に発した言葉に、ジャベリンも、ラフィーも、ユニコーンも息を呑んだ。
「海守トモユキ指揮官の記憶を取り戻すと、カイン・オーシャン指揮官が、消えてしまうのかも知れないのです」