ータイガsideー
『・・・・っ! タイタス? フーマ? 何処だっ?』
タイガが暗黒の空間の中にいた。そこには仲間達がおらず、一人ぼっちだった。
その時、タイガの頭に、身体に痛みが走る。
『ぐっ! お、俺の中に、激しい感情が・・・・!』
そしてタイガは、暗黒の渦の中に呑み込まれそうになる。
「トモユキ・・・・! トモユキっ! トモユキィィィィィィィィィィィッ!!!!!」
タイガの悲痛な叫びが、暗黒の空間に虚しく響いたーーーー。
ーカインsideー
「っ!」
ーーーーガチャガチャガチャガチャ・・・・!!
ソコは執務室だった。カイン指揮官はこのところ見るようになった夢の中であると瞬時に理解すると、執務室の扉が、外から無理矢理開けられそうになっているのか、大きな音を立てていた。
「・・・・・・・・」
カイン指揮官は、扉の向こうにいる存在に警戒心を抱くと、扉が乱暴に開かれ、
ーーーーヴォオオオオオオオオオオオオオっ!!!
「う、うわぁあああああああああああああっ!!!」
黒い塊が、自分に襲い掛かってきた。
* * *
「うわぁああっ!・・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ゆ、夢か・・・・?」
最近同じような夢を見るようになり、寝汗が酷い状態だ。
時計を見ると、午前5時を回っていた。ベッド近くのテーブルを見ると、タイガとタイタスとフーマが、それぞれミニチュアのベッドに横になり、寝息を立てていた。
がーーーー。
『うっ! うぅぅぅぅぅぅぅ!』
「タイガ?」
苦しそうにうなされていたタイガが、ガバッ! と、起き上がった。
『はっ! ト、トモユキか?』
「どうしたんだ? うなされていたけど」
『・・・・な、なんでもない』
そう言って、タイガは寝直そうと横になり、カイン指揮官も横になって寝直した。
ーエンタープライズsideー
そしてここにも、夢に悩まされている艦船<KAN-SEN>がいた。エンタープライズだ。
「また、この光景・・・・」
真っ暗な海に佇むエンタープライズは、過去の記憶、『カンレキ』を思い返していた。
終わる事のない争い。
燃える海。
沈みゆく艦達。
「・・・・・・・・」
そして振り向くと、炎の海で、死んでしまった仲間達を海にソッと横たわらせるセイレーン。
「お前は何だ? 私にこれを見せて、どうしようと言うのだっ!?」
そのセイレーンが、声を発する。
『戦い・・・・』
振り向いたそのセイレーンは、“髪を不揃いに短くしたエンタープライズに良く似た姿”だった。
『私は繰り返す・・・・。時を巡り、海を越え、戦い続ける・・・・。終わる事のない、戦い』
そのセイレーンは、手を出すと、その手のひらから、『黒いメンタルキューブ』を出現させ、そのキューブから禍々しいエネルギーを溢れる。
『燃えるこの海こそ、紅に染められた我が航路・・・・お前もいずれ・・・・』
ーーーーグルルゥワアアアアアアアアアッ!!!
「っっ!!」
『黒いメンタルキューブ』が妖しく輝くと、セイレーンの影から、巨大で異形の姿の怪物が現れ、エンタープライズを見下ろしていたーーーー。
* * *
ーーーーシャッ!
「っ!!」
突然朝日が目の前に現れると、エンタープライズは目を覚ました。
「おはようございます。ゆっくりお休みになられましたか?」
ベルファストが、エンタープライズを起こしにきたようだ。
「ベルファスト・・・・」
◇
ユニオン宿舎から出るエンタープライズに、ベルファストが声をかける。
「朝食の時間ですが?」
「いらない」
「それはいけません。人として健康的な生活を送る為に、朝食は欠かせません」
「よせ!」
「っ!」
「私が人の真似事をしたところで、滑稽なだけだ・・・・!」
「・・・・・・・・」
そう言って、エンタープライズはそのまま去っていった。
ーカインsideー
カイン指揮官はウェールズとクリーブランドと共に、教室にいる皆と会議の為に向かっていた。
「重桜は戦力を失った、建て直しには時間がかかるわね」
「だが、こちら『黒いメンタルキューブ』と『怪獣リング』の事もあり、簡単には動けない状況だ」
「それに、エンタープライズの事もね」
「エンタープライズの事に関しては、彼女自身が頑なになってしまっている。・・・・問題は山積みだ」
そして教室に着くと、ベルファストに明石にホーネットとアーク・ロイヤルの他、数名の艦船<KAN-SEN>が教卓に置かれた『黒いメンタルキューブ』と『怪獣リング』を見ていた。
その教室に、カイン指揮官達が入ってくる。
「何か分かったかい?」
「さっぱりだ。何も分からん!」
「そもそも私達は、メンタルキューブに対して何も分かっていません」
「ふっ、文字通り、ブラックボックスと言う訳だな」
「誰が上手い事を言えと?」
『ロイヤル所属 駆逐艦 アマゾン』と『ユニオン所属 軽空母 ラングレー』がお手上げと言わんばかりに声をあげ、アーク・ロイヤルが駆逐艦が撮られた写真集を眺めながら肩をすくめ、カイン指揮官がため息交じりにそう言い、『黒いメンタルキューブ』を見ると、以前よりも光が強くなっていた。
「何だか前より光、強くなってない?」
「セイレーンの関わる事だ。危険の兆候と考えるべきだろう」
「指揮官。このリングは何なのにゃ?」
明石が『怪獣リング』を指してそう言う。
「・・・・怪獣を倒してから、発見されたリングだ。このところ出現する怪獣の事で何か関係があるんじゃないのかなって、ベルファストやウェールズ達に捜索と回収を任せていたんだ。まさか、エンタープライズも隠し持っていたとは思わなかったけどね」
「これも『ヴィラン・ギルド』の物なのでしょうか?」
「だが、エンタープライズはこのリングを嵌めて強力な力を発揮した。『ヴィラン・ギルド』がそんな物を作ったとは思えないな」
ベルファストは怪獣オークションを行っている『ヴィラン・ギルド』を怪しむが、犯罪組織は自分達に得の無い事をしないと、カイン指揮官は否定する。
「兎に角、セイレーンがこのキューブを使って、姉ちゃんに何か悪さをしたのなら、絶対に許さない」
「それでベル。エンタープライズの様子は?」
「・・・・悩んでおられます」
「そうか・・・・」
「何だよ、1人で抱え込んじゃってさ・・・・」
ホーネットは珍しく姉に対して愚痴り、その部屋に重い空気が流れ始めた。
「にゃ~~!! 赤城のヤツ! なんて面倒な事をしてくれたにゃっ!!」
それを破るように明石が頭を抱えて声をはり上げた。
「赤城がいない今、加賀がどう動くか、一応五航戦の翔鶴と瑞鶴に警戒しておいて欲しいと伝えたが・・・・」
「にゃ~・・・・。重桜は無事なのかにゃ・・・・?」
「・・・・(ん? タイガ?)」
カイン指揮官の肩に乗りながら、タイタスとフーマが『黒いメンタルキューブ』を見ている中、タイガは『怪獣リング』の方に視線が向いていた。
ー綾波sideー
「・・・・暑い」
綾波はジャベリンとラフィーとユニコーンと共に、大浴場のサウナにあたっていた。
「・・・・・・・・」
「大丈夫綾波ちゃん? もうあがる?」
「っ!・・・・考え事をしてただけです」
「「「?」」」
「重桜の皆が、心配なんです」
「「「あ・・・・」」」
「アズールレーンの皆は、良い人達です。だから、カイン指揮官の事を、アズールレーンの皆から奪いたくないです。でも、重桜の皆だって大切な人達で、トモユキ指揮官も、大切な人です。・・・・綾波、重桜の皆を助けたいです!」
決意を新たにする綾波の手を握るジャベリン。
「うん! うん! 頑張ろう綾波ちゃん!」
「・・・・綾波の大切な人、ラフィーにとっても大切な人」
「でも、指揮官の記憶を戻せば、カイン指揮官が・・・・」
「大丈夫・・・・!」
トモユキ指揮官の記憶が戻ればカイン指揮官の記憶が消える。その事を危惧する綾波に、ユニコーンが声をあげる。
「お兄ちゃんはユニコーン達の事、絶対に忘れないよ! もし忘れても、また覚えてもらうよ! 綾波ちゃんのお友達の皆とも、ユニコーン達、お友達になれる!」
「「(コクン!)」」
ユニコーンの言葉に、ジャベリンとラフィーも頷いた。
「・・・・ありがとうです。皆」
綾波は笑みを浮かべてそう言った。
ー加賀sideー
その頃重桜では、旗艦の長門が『オロチ計画』の中止を決め、それに加賀が反対していた。
「『オロチ』を封印するだとっ!?」
「計画を一時中止するだけだ。赤城がいない以上、無理はできぬ」
「誰の入れ知恵だ?」
「あくまで余の判断だ」
「甘いぞ長門! オロチ無くして重桜に未来はない!」
「・・・・それを指揮官が望んでおると言うのか?」
「っ!」
長門の言葉に、加賀は息を詰まらせる。
「忘れるでないぞ加賀。我ら重桜の指揮官は海守トモユキ指揮官じゃ。指揮官は『オロチ計画』に懐疑的じゃった。指揮官不在の穴を埋めるために、赤城は『オロチ計画』を半ば強引に進めていたが、指揮官がアズールレーンにいるのが分かった以上、先ずは指揮官と綾波と明石の3人を取り戻してから、改めて『オロチ計画』を進めるか協議をするつもりじゃ」
「しかし指揮官は記憶を!」
「蒼龍曰く、記憶は時間をかければ自然と戻るとも言う。・・・・何やら、指揮官が戻ってくるのが、困るみたいな言い方じゃな?」
「っ!・・・・失礼する」
長門の探るような言葉に、さらに息を詰まらせる加賀が、その場を去ろうとすると、長門がその背中に声をかける。
「・・・・加賀、赤城がいなくなってお主の心は乱れておる。少し休養を取るがいい」
「・・・・・・・・」
その言葉に答えず、加賀は去っていった。その背を見て、長門達はため息を吐いた。
◇
「・・・・・・・・」
加賀は石段を下りながら、『オロチ計画』を如何にして進めるか悩んでいた。
トモユキ指揮官や綾波と明石を取り戻す為に、重桜艦船<KAN-SEN>が今は戦力を整えているのは分かる。しかし、『オロチ計画』がセイレーンの技術の横流しと知る指揮官と明石が戻ってくるのは非常に不味い。
元々こういった腹芸は赤城の担当だったのでどうするべきかと悩んでいると、
「ーーーーおやおや。お困りかな?」
「っ、誰だっ!?」
加賀が振り向くと、そこには白と黒のツーカラーのスーツを着た若い男性だった。ニヤニヤと軽薄そうに笑みを浮かべているが、加賀は騙されない。
この男から、危険な気配を漂っているのだ。
「このままじゃ、『オロチ計画』が水泡にきちゃうね? それでも良いの?」
「何・・・・?」
何故この男が『オロチ計画』を知っているのかと、加賀が札を出して攻撃体制に入るが、男は両手を上げて降参を示した。
「落ち着いて。僕はただ、大好きなお姉ちゃんを失って不安な君の為に、プレゼントをもってきたんだよ」
そう言って、男は右手を握ってすぐに開くと、『指輪』が握られていた。
「大好きなお姉ちゃんがいない状況でも、指揮官や仲間達を裏切る計画を続ける君に贈り物さ」
そう言って、男が投げ渡した指輪を加賀は思わず手に取った。
赤く長い角をした、異形の生物の形をした指輪を。
「これは・・・・?」
「その指輪を、セイレーンに気づかれずに、オロチに付与すると良い。そうすれば、誰も君とお姉ちゃんの邪魔はできない」
加賀は一瞬指輪に視線を向け、再び男を見ると、男はその姿を消していた。
ー霧崎sideー
加賀に接触した男、霧崎は、重桜母港の遥か上空に浮かんでいると、黒い魔法陣を足元に展開して、沈みながら加賀に呟く。
「頑張りなよ、愚かな艦船<KAN-SEN>くん」
その口元には、歪んだ笑みを浮かべながら。
ータイガsideー
『うわぁあああああっ!!』
そしてその頃、カイン指揮官はタイガに変身し、アズールレーン母港の近くに突如現れた、首が長く頭は小さい人型に背骨状のパーツを始め、有機的な要素があり、右腕から伸びた剣と左手と一体化した銃を武器とした黒い身体に目や肩や膝にオレンジのパーツを付けたロボット怪獣、『惑星守護神 ギガデロス』と交戦していた。
『くっ! 『ストリウムブラスター』!』
『ーーーー!!』
タイガが光線を放つが、ギガデロスは駆動音を響かせ、オレンジのパーツが発光すると、光線のエネルギーを吸収して、二体に分裂した。
『何っ!?』
『「エネルギーを吸収したのかっ? この怪獣は一体?」』
≪噂に聞いた事があります。惑星守護神と呼ばれるギガデロスです!≫
『「ギガデロス?!」』
≪元々は、流れの宇宙人科学者が怪獣災害に苦しんでいる人々の為に造り出した防衛兵器であり、複数製造され怪獣災害をなくして平和をもたらしたらしいのですが。突然制御不能の暴走状態に陥り、その星のあった銀河を滅ぼしてしまい、その後は宇宙に散らばったと聞いておりましたが、まさかこの星に来るとは・・・・!≫
≪星を守っていた兵器が銀河を破壊しちまうとは! 守護神じゃなくて破壊神だろっ!≫
『トモユキ! 怪獣リングを使おうぜ! あれがあれば!』
『「駄目だタイガ。エンタープライズを見ただろう、あれは危険過ぎる!」』
『何言ってんだよっ!? エンタープライズは力不足だっただけだっ! ウルトラマンの俺なら使いこなせるっ!』
『「・・・・いや、駄目だ」』
『トモユキ!!』
怪獣リングの危険性もだが、タイガの様子がおかしい事を危惧するカイン指揮官は、怪獣リングを使わない事を選択した。
カイン指揮官はタイガスパークを起動させる。
[カモン!]
『タイガキーホルダー』が『フォトンアースキーホルダー』に変わり、それを手に取り、左右の水晶に順に翳した。
[アース!][シャイン!]
『「今持てる力を全て使って、コイツを倒す!輝きの力を手に!」』
キーホルダーを握ると、上部が二又に開き、光輝く。
≪ト、トモユキっ!!≫
タイガの身体に金と銀と黒の鎧が脚から順に装着され、ウルトラホーンも金色に変化し大振りになった。
「バディー、ゴー!」
[ウルトラマンタイガ フォトンアース]
『ちっ・・・・シュアッ!!』
フォトンアースとなったタイガが、舌打ちするような声を漏らし、雷のようなエネルギーを迸らせながら、ギガデロスと交戦した。
ーエンタープライズsideー
ギガデロスと戦うタイガを援護しようと、〈ノブレス・ドライブ〉ができるロイヤル艦船<KAN-SEN>達やラフィーが向かう。
エンタープライズ達は、母港の防衛をしながら、遠くでウルトラマンとギガデロスの戦いを見ていた。
「・・・・・・・・・・・・」
そしてエンタープライズは、全員の目がウルトラマン達に集中している中、コッソリとその場を離れた。
「っ・・・・姉ちゃん?」
ホーネットだけが、姉の不審な行動に気づいていた。
◇
エンタープライズはカイン指揮官の執務室に赴き、机の上に置かれているケースを開けるとーーーー怪獣リングが入っていた。
「・・・・・・・・」
エンタープライズは、怪獣リングを手にしようとその手を伸ばした。
「ーーーー姉ちゃん」
「っ! ホーネット・・・・」
執務室の扉から、ホーネットが現れ、驚愕に目を少し見開きながら、エンタープライズを見ていた。
「何、してんの? そのリングには近づくなって、指揮官から通達があった筈でしょう?」
何してんの? と問うたが、ホーネットも分かっている。だが、それが間違いであって欲しいと願う気持ちで問うがーーーー姉は、それが間違いではないと告げた。
「このリングの力を使って、怪獣を倒す」
「っ! 何言ってんのっ!? そのリングは危険だよ! またあんな風になるかもしれないでしょう?!」
「あの時は怪獣のせいで私の意識が無かっただけだ! 今度は使いこなしてみせる!」
「姉ちゃん!」
「私は艦船<KAN-SEN>だ! 戦う事が私の存在意義だ! 感情なんていらない! 『気高さ』など、『戦う理由』など、戦う為に生まれた私には・・・・不要なんだっ!!」
そう言って、エンタープライズはリングを全て左右の指に嵌めたその時、禍々しいオーラがエンタープライズの身体を包み込んだーーーー。
ータイガsideー
『ハアァッ!!』
タイガがギガデロスに拳を叩きつけるが、そのエネルギーまで利用して、三体へと分裂した。
『これは・・・・!』
『「(厄介だな・・・・)」』
足元の海面から、〈ノブレス・ドライブ〉した艦船<KAN-SEN>達も援護してくれているが、このままではジリ貧である。
『『『ーーーー!』』』
三体のギガデロスが、それぞれ左腕の銃をタイガに向けて発砲しようとした瞬間ーーーー。
ーーーーズガァアアアアアアアアアンン!!
『『『ーーーー!!』』』
三体のギガデロスが別方向から放たれた三本のエネルギーの矢に当たり倒れた。
『っ、あれは・・・・!』
『「エンター、プライズ・・・・?」』
宙に立つエンタープライズ。だが、その様子は前回と同じく、感情が消失した瞳は金色に妖しく輝き、さらにその両手の指には、全ての怪獣リングが嵌められていた。
ーベルファストsideー
「エンタープライズ様っ!?」
ベルファストが、まだ〈ノブレス・ドライブ〉になって間もないジャベリンとラフィーのフォローをユニコーンと共にしながらギガデロスと戦っていたが、突如不気味なオーラを纏い、前回と同じ状態で現れたのだ。
《指揮官! 皆!》
と、そこで通信機から、ホーネットの慌てたような声が響いた。
「ホーネット様?」
《姉ちゃんが、姉ちゃんが怪獣リングを嵌めて、またあの姿に・・・・!!》
「っ!?」
通信機から聞いた言葉に、ベルファストは視線を鋭くする。
《・・・・全艦船<KAN-SEN>は、怪獣への攻撃を継続。エンタープライズの方は警戒を持て。暴走するようなら止めろ》
「・・・・はい」
ベルファストが頷き、銃を乱射してくるギガデロス2の攻撃を回避する。
ー霧崎sideー
エンタープライズの様子を母港近くの灯台の天辺で眺めていた霧崎、トレギアが高笑いをする。
「ふっふふふふふ、あっはははははははは!! 想像以上だ! 想像以上の事をやってくれたねエンタープライズ! 私の感情をいれたロボットを連れてきたかいがあったよっ!!」
そう、ギガデロスが暴走し、惑星守護神を破壊神にしたのは、このトレギアだったのだ。
「でも、それじゃ面白くないからなぁ・・・・」
そう言って、パチンッ、と指を鳴らした。
ータイガsideー
『くっ! ふっ! はぁっ!!』
ブレードて攻撃してくるギガデロスの攻撃を受け止め、反撃するタイガ。
もう一体のギガデロスは宙に浮くエンタープライズが攻撃し、さらにもう一体は、ウェールズ達が戦っていたが、徐々に追い詰められていく。
《指揮官! 奴らの動きが段々正確になっています!》
『「こちらの動きを学習しているのかっ!?」』
『ーーーーイラつかせるぜぇ!!』
段々とタイガの声に苛立ちが募らせる。
と、エンタープライズの指に嵌めた『ナイトファングリング』が光ると、エンタープライズは手をギガデロスに向けると、ソコから超音波が放たれ、ギガデロスの動きを封じ、分身が一体に集まった。
『これは・・・・!』
『「超音波で奴の能力を封じたのか?」』
『・・・・・・・・』
『「タイガ?」』
タイガのカラータイマーに、黒い光が灯り出す。
『しぶとい野郎だ・・・・!!』
『「タイガ!」』
『っ! トモユキ・・・・』
『「落ち着くんだタイガ」』
『っ、お、俺はーーーー』
一瞬、我を忘れそうになったタイガが、トモユキの声で少し落ち着く。
『「皆! やつを抑えてくれっ!」』
『『共鳴<レゾナンス>』!!』
『ーーーー!!』
共鳴<レゾナンス>を使って、ギガデロスを攻撃する艦船<KAN-SEN>達。ギガデロスはその攻撃で身体を止めた。
『「タイガ!」』
『ふっ! ふぅぅぅぅぅ、『オーラムストリウム』!!』
ーーーーチュドォオオオオオンン!!
金色の光線が、ギガデロスの身体を爆散させると、爆発から、光が、怪獣リングが飛んできた。
「っ!」
『「なっ! エンタープライズ!?」』
タイガがそれに触れようとするが、エンタープライズが先に怪獣リングを掴み、指に嵌めた。
「・・・・・・・・うあぁあああああああああっ!!!!!!!」
『「エンタープライズ!」』
「エンタープライズ様っ!」
カイン指揮官とベルファストの声が重なると、エンタープライズがタイガに攻撃をしてきた。
「っ! うぅぅぅぅぅぅぅ!」
『うぁあああああ!!』
エンタープライズの攻撃に、タイガは倒れる。
『エ、エンタープライズ・・・・!』
≪怪獣リングの力に呑み込まれたかっ?!≫
≪するてぇとよぉ! どうすんだっ!? 手加減してどうにかなりそうもねぇし! 俺らの力じゃ、あの姉ちゃんも無事じゃすまねぇぞ!!≫
「姉ちゃーーーーーーーーん!!」
『「っ! ホーネット!」』
母港からホーネットとヴェスタルとハムマンが駆けつけ、エンタープライズに向かって叫ぶ。
「やめてよ! やめてよ姉ちゃん!」
「エンタープライズちゃん!」
「お願いだから止めてなのだーーーー!!」
「・・・・・・・・」
しかし、エンタープライズは、三人の言葉を意に返さず、弓の弦をしぼって、矢を三人に向けると、ヘルベロスの『ヘルスラッシュ』のような血のように真っ赤な刃が、矢に付与された。
「・・・・・・・・」
「姉ちゃん・・・・!」
妹や仲間を見るその目は、感情などなく、ただ目先の相手を機械的に殲滅するーーーー正しく、殺戮兵器へと化してしまった。
変わり果てた姉の姿を見て、ホーネットは静かに涙を流した。
矢が三人に迫るその時、ホーネットの前に、タイガが壁のように立ち塞がる。
『ぐああああ!!』
「っ! ウルトラマン!!」
『っ!! エンタープライズ! いい加減にしやがれぇええええ!!』
タイガがエンタープライズに手を伸ばし、エンタープライズが新たに構えた矢がタイガの手に触れた瞬間ーーーー。
タイガスパークが目映く光った。
『「っ! これは・・・・!」』
そしてカイン指揮官は、意識が遠退く感覚に襲われた。
* * *
「っ! ここは・・・・」
ソコは漆黒の空と燃える海の空間。
その海の上に立ち、涙を流す少女、エンタープライズがいた。
「エンタープライズ」
「・・・・終わらない・・・・戦いは、終わらない。私は、失う・・・・。大切なモノ・・・・全て・・・・!」
「・・・・エンタープライズ!!」
ーーーーパンッ!
カイン指揮官が、エンタープライズに近づき、その頬をひっぱたいた。
「っ・・・・し、指揮官?」
「エンタープライズ」
「私は、分からないんだ・・・・。どうすれば戦いが終わる? 私はいつまで戦う? 私は、“何の為に戦えば良い”?」
「・・・・“何の為に”、か。エンタープライズ。問い返すが、君は今まで、“何で戦ってきたんだ”? 艦船<KAN-SEN>だって言うのは無しだ」
「わ、私は・・・・私、は・・・・」
“何で戦ってきた?” それが艦船<KAN-SEN>として生まれた自分の意義だと言いたかった。それ以外に、戦う理由なんてーーーー。
今にも泣きそうな顔となるエンタープライズに、カイン指揮官は優しく説く。
「エンタープライズ」
「・・・・・・・・」
「笑いなよ」
「え?」
「皆同じだ。ベルファストも、ジャベリンも、ラフィーも、陛下達ロイヤルの皆も、君と同じユニオンの皆も、皆君と同じ不安や恐怖を抱いている。だから、いや、だからこそ、皆笑って、笑顔を作るんだ・・・・」
「笑う? 笑顔?」
「いつ終わるか分からない戦い。いつ失うか分からない仲間。いつ無くしてしまうか分からない場所。皆同じような気持ちだ。でもさ・・・・だから、そんな不安に負けない為に笑うんだよ」
「笑う?」
「君達は、人間と同じ身体と心を持った。だから、人間の身体を得てできる事をやる。そうして、皆と笑い合えば、不安な気持ちを吹っ飛ぶからだ」
「私は、人間では・・・・」
ない、と言おうとするエンタープライズの口に、カイン指揮官は人差し指を押し当てた。
「そうやって、否定したり、不安や恐怖を抱いたりするのも、人間だよ。エンタープライズ。僕は君達艦船<KAN-SEN>は、人間と同じだと思っている」
「私が、人間・・・・」
「エンタープライズ。辛いなら言えばいい。恐いなら叫べばいい。泣きたいなら泣けばいい。倒れそうになったら倒れてしまえばいい。でも、そうした時、君は一人じゃない事を思い出せ」
「私は、一人じゃない・・・・」
「僕が、ベルファストが、ホーネットが、皆が君を引っ張って、起き上がらせ、時には肩を貸してやる。間違った道に行きそうになったら、今みたいにひっぱたいてやる。そして僕が倒れた時は、道を間違えた時は、エンタープライズがそうしてやって欲しい。お互いに補う合う事ができるのが、“真の仲間”と言うんだ」
「“仲間”・・・・」
「ああ。仲間だエンタープライズ。君と皆と、そして僕との間にある、絆を信じろ!!」
「“絆”・・・・。指揮官・・・・」
差し出された指揮官の手を、エンタープライズは少し震えながら、その手を掴もうと伸ばした。
しかし次の瞬間ーーーー。
「指揮官! 後ろ!!」
「っ!」
怪しい影がカイン指揮官の背後に現れ、エンタープライズが叫び、カイン指揮官が振り向くと、ピエロの仮面をつけ、ロイヤル軍服を纏う人物がいた。
「何者だ・・・・!?」
『ありがとうエンタープライズ。違う形だが、『ゴール』に達したよ』
仮面を脱いで現れたのは、トレギアだった。
「お前は・・・・」
『ふふふふふふふ・・・・!』
トレギアが手を伸ばすと、その手が黒い光の手となり、カイン指揮官に向けて、黒い稲妻を放った。
「うわぁあああああああああああ!!!」
「指揮官!!」
エンタープライズがカイン指揮官を掴もうとするが。
突然、エンタープライズの意識が遠退いたーーーー。
ータイガsideー
『「うわぁあああああああああああ!!!」』
『っ! トモユキっ!? うわぁあっ!』
カイン指揮官が悲鳴をあげると、エンタープライズの身体から、漆黒のエネルギーが弾け、タイガをぶっ飛ばす。
そして、エネルギーが収まると、エンタープライズは力無く落下していき、指から怪獣リングが全て外れ、リングは宙を浮くと、凄まじい勢いで次々とタイガのカラータイマーの中に入っていった。
『な、なにっ!? ぐぁあああああ!!』
苦しむタイガの様子に、艦船<KAN-SEN>達が何事だと顔を向ける。
『逃げろ! トモユキ!』
インナースペースで黒い稲妻を浴びていたカイン指揮官の前にタイガが現れ、黒い稲妻を代わりに浴びた。
『ぐっ! うぅっ! あぁあああああああ!!』
『「タイガ!!」』
タイガがトレギアに連れていかれた。
『うぅっ! あぁっ! うあぁああああああっ!!』
タイガの身体から黒い稲妻が迸り、稲妻が空に昇っていくと、暗黒の雲が広がっていった。
『フフフフフ・・・・』
『ぐぅ、あぁあ・・・・!』
そして、空から、トレギアがゆっくり舞い降りてきた。タイガが海に倒れると、苦しそうにもがき、トレギアが近づく。
『苦しいかい? タロウの息子?』
『ト、トレギア・・・・!!』
『その怪獣リングには、私の感情が入っているのさ』
『お、お前の、感情?』
『何の代償も無しに、都合良くリングを使えると思っていたのか?』
『な、何・・・・!? リングはまさか、お前が・・・・!?』
『リングを使えば使うほど、使った者の魂は闇に堕ちていく仕掛けを作っていたのさ。まさか、艦船<KAN-SEN>にも使えるとは思わなかったけどね』
トレギアが、ベルファストとホーネットに肩を貸してもらいながら抱えられた、気を失ったエンタープライズを見てそう言った。
『ご利用は計画的に♪』
『この野郎!!』
『ハハハハハハハハハハ!!』
タイガが起き上がってトレギアに掴みかかり、殴り続けるが、トレギアはその攻撃が通じていないと言わんばかりに笑い声をあげ、タイガを後ろから押さえ込んだ。
『そうだ。もっと怒れ! 残忍になれ! そうすれば君は私になる!』
『「タイガ!!」』
『落ち着けタイガ!』
『怒りに呑み込まれるんじゃない!』
カイン指揮官、フーマとタイタスが呼び掛けるが、タイガは耳を貸さずトレギアと戦う。
『「僕達の声を聞いてくれタイガ! これまで一緒に戦ってきただろう! 戻ってきてくれ! 僕と君の絆は!」』
『絆・・・・?』
と、カイン指揮官の言葉を遮るように、トレギアがタイガの首を掴んで苛立ったような声で、カイン指揮官に伝えるように言う。
『二言目には、絆絆五月蝿いんだよ。人間風情に何ができる?』
首を離すと、ヨロヨロになったタイガに追い討ちを仕掛けるように蹴り続けてくる。
『あ、あぁ・・・・!』
『フフフフフ』
《ウルトラマンさん!》
『「皆! 動くな!」』
ジャベリンが駆けようとするが、カイン指揮官が止めた。
《指揮官!》
『「コイツは、トレギアは、危険すぎる!」』
タイガをなぶるように攻撃するトレギア。そして闇が身体から溢れ、タイガの身体を苦しめる。
『あぁああああ・・・・!!』
『ハハハハハ! 聞こえるかNo.6! 闇がお前の息子を蝕んでいるぞ! ウルトラマンタロウの息子を!!』
『ぐぅぅぅぅ、俺はタイガだっ!! うわぁああぁああああ!!!』
『ハハハハハ! ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』
起き上がるタイガだが、身体から闇が溢れ出て、フォトンアースの鎧を吹き飛ばしてしまった。
『っっ!!!』
艦船<KAN-SEN>達が驚愕する中、 茫然と立っているタイガ。ゆっくりと近づくトレギア。
『じゃあリングは返して貰うね。ご苦労さん』
トレギアがタイガのカラータイマーに手を翳すと、中から小さな光、怪獣リングが全て出てきて、トレギアの手に収まった。トレギアは、タイガの胸元を、ツンッと押すと、タイガは力なく座り込んでしまった。
ーカインsideー
そして、闇に染まったインナースペースでは、闇の渦の中にタイガが沈んでいった。
『タイガっ!!』
『タイガっ!!』
『「タイガーーーーっっ!!!」』
『タイタス! フーマ! トモユキーーーーっ!!』
『「タイガ! タイガーーーー!!」』
タイガが闇の渦に呑まれると同時に・・・・。
『ぐぅあああああ!!』
『「タイタスッ!?」』
タイタスが・・・・。
『うぁあああああ!!』
『「フーマッ!?」』
フーマが、光となって弾け消えた。
『「皆ーーーーっっ!!!」』
そしてカイン指揮官も、闇の中に呑み込まれていったーーーー。
◇
「指揮官!」
「閣下!」
「指揮官様!」
「お兄ちゃん!」
「指揮官!」
「指揮官・・・・!」
「ご主人様!!」
「はっ! み、皆・・・・!」
皆の声に目を覚ましたカイン指揮官、ウェールズが展開させた艦の上にいた。横を見ると、ホーネットとヴェスタルとハムマンに介抱されているエンタープライズもいた。
どうやらタイガと分離してしまったようだ。
腰を見やると、タイガのキーホルダーだけがなくなっていた。そしてタイガを見ると、海に倒れるように横になり、その前に、トレギアがいた。
タイガの右腕にタイガスパークは消え、カラータイマーは赤く発光していた。
「タイガ・・・・!」
カイン指揮官が呼ぶが、タイガはゆっくりと起き上がり、それを見てトレギアが艦船<KAN-SEN>達にも聞こえるように言う。
『昨日までのタイガは死んだ。新しいタイガの誕生だ』
「っ!?」
『っ!!?』
その言葉に、カイン指揮官と、アズールレーン艦船<KAN-SEN>達が息を呑む。
それに構わず、トレギアはタイガの顔を手で触れて語りかけた。
『もう君は人間がいなくても変身できる。新しい相棒は闇のエネルギーと言う訳だ。君と僕とでバディ・ゴー。フフハハハハハハハハハ! アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』
「・・・・タイガの光が、消えていく」
その様子を愕然と見るカイン指揮官に、イラストリアスが声を発する。
「例え・・・・暗黒の雲が世界を覆ったとしても、その向こうでは、太陽が光り輝いています!」
「イラスト、リアス・・・・」
「聖なる光が、そう言っています・・・・! 太陽はいつも、輝いているのです!」
《・・・・ここは危険だわ。全艦船<KAN-SEN>。母港に撤退よっ! 急ぎなさいっ!!》
通信機越しに、Q・エリザベスが代わりに撤退の指揮を取る。
カイン指揮官は、再びタイガの方を見る。トレギアに顔を撫でられているタイガを。
『良い子だ。それで良い。フフフフフフフ!』
「・・・・タイガ・・・・タイガ・・・・!!」
『さぁ、一緒に行こうか』
そしてトレギアは魔法陣を展開させ、タイガを放り込むように入れた。
「タイガ・・・・(ズキンッ!) うぉあっ!!」
突然、カイン指揮官の頭に激しい痛みが走った。
「ぐぅ、あ、あぁああああ!!」
『おや、君にも影響があったようだねぇ。それじゃ、貰っていくよ。カイン・オーシャン指揮官♪』
トレギアはそう言って手を振り、魔法陣の中に入り、魔法陣は消えていった。
「あぁあ、タイタス・・・・! フーマ・・・・! タ、タイガ・・・・!!」
四つん這いになったカイン指揮官は、そのまま意識を失ってしまった。
『指揮官(様)!/お兄ちゃん/閣下!/ご主人様!!』
ジャベリン達、艦船<KAN-SEN>達の悲痛な叫びが、暗黒の雲に覆われた海に、虚しく響いていった。
ー綾波sideー
「っ! 指揮官・・・・?」
そして母港から戦況を見ていた綾波が、嫌な予感がざわめき、それがカイン指揮官、トモユキ指揮官に何か起こった事を予感させた。
闇に呑まれたタイガとカイン指揮官。失意のエンタープライズ。暴走する加賀。
これからの展開をお楽しみください。