【新章】新たな始まり
ーカインsideー
海守トモユキがカイン・オーシャンとしてアズールレーン母港の指揮官を勤めるようになってから、早くも半年近くが経った。
海守トモユキとして士官学校を卒業したのが18歳で、重桜母港の指揮官となった時は『少佐』。それから艦船<KAN-SEN>達と共に戦い、僅か1年で19歳にして異例の『大佐』にまで昇進した。
が、ウルトラマントレギアと戦い記憶を失ってカイン・オーシャン『特務中佐』となって1年が経過し、メガオロチとトレギアとの激戦を終えた時に、丁度20歳となり、『メガオロチ戦役』と呼ばれるようになったあの戦いを終結させ、重桜と東煌をアズールレーンに入れた功績により、一気に『准将』として正式にロイヤル上層部から任命された。
アズールレーンはロイヤル、ユニオン、重桜、そして東煌が加わり大きくなった。
「あぁ~・・・・疲れるぅ~・・・・」
「少しお休みください、ご主人様」
が、組織が大きくなると言う事は、それだけ事務仕事も多くなると言う事で。
執務室のカイン指揮官の机には山のように大量の書類が所狭しと置かれていた。
応接用のソファに腰かけたカイン指揮官は、ベルファストの膝枕で休憩していた。
「あぁ、ベルのこの適度に柔らかいスベスベな極上のお膝を枕にしているだけで、疲れが癒されるよ」
「それは何よりです」
「指揮官は、良くベルファストに膝枕をしてもらっているのか?」
「ええ。主にお疲れになった時などに」
本日の秘書艦、エンタープライズが、その姿を見て苦笑いを浮かべる。
当初はウェールズが秘書艦を勤め、イラストリアスは補佐をしていたが、他の艦船<KAN-SEN>達から、「私も秘書艦をやりたい!」だの、「ロイヤルの艦<ひと>達だけなんて不公平だ!」だのと嘆願書が大量に来ていたので、志願者のみ週一の交代制で秘書艦と補佐を任せるようにした。
「あぁ、それにしても、セイレーンは此処のところ大人しいけど、怪獣問題が大きくなってきたなぁ・・・・」
≪全くだよなぁ≫
≪『メガオロチ戦役』が終わって! から一ヶ月あまり! これといって! セイレーンの動きは! 無かったが! 怪獣の出現が! 三回も! 起こったからな≫
≪海のど真ん中だったり、人気のない火山島だったりとよぉ≫
カイン指揮官の目の前のテーブルにいるのは、遠い宇宙の果て、平行世界からこの星にやって来た光の戦士・ウルトラマン達だ。
〈M78星雲 光の国〉の若きウルトラマン・『光の勇者 ウルトラマンタイガ』。
〈U40〉のウルトラマン・『力の賢者 ウルトラマンタイタス』。
〈O-50〉のウルトラマン・『風の覇者 ウルトラマンフーマ』。
三人のウルトラマンとカイン指揮官を合わせ、〈トライスクワッド〉と言うチームである。
トレギアと戦い、粒子レベルにまで分解されて三人は、現在カイン指揮官と融合し、カイン指揮官の身体をそれぞれが状況に応じて変身し、怪獣と戦っている。
思念体でミニマムサイズになったトライスクワッドの面々は、テーブルに置かれた三人用の専用のベンチソファーに座っているタイガ。寝転んでいるフーマ。ソファ近くで日課のトレーニングをするタイタスだった。
「(タイガ達もすっかり皆に受け入れられたなぁ)」
本来ならカイン指揮官にしか姿も声も見えないし聞こえなかったが、『メガオロチ戦役』から、艦船<KAN-SEN>達もトライスクワッドの姿が見え、声も聞こえるようになった。
タイガとフーマが皆と戯れたり、タイタスがウルトラマンについての知識を授業で教えたりしていた。
「・・・・エンタープライズ。トレギアの所在は?」
カイン指揮官の問いに、エンタープライズは首を横に振る。
「他の皆にも、私と加賀に『怪獣リング』を渡した男を探してもらっているが、見つかっていない」
「ご主人様は、トレギアはあの時に倒されたと思っていないのですね?」
「ーーーーどうにも、ヤツがあれでくたばったとは思えないんだ」
頭の位置を変えて、ベルファストの豊かな双乳を見上げる形になったが、カイン指揮官は鼻の下を伸ばさず断言した。
ーーーーウルトラマントレギア。
タイガ達トライスクワッドを粒子に分解し、トモユキをカイン指揮官にし、エンタープライズと加賀を利用して『メガオロチ戦役』を陰で操っていた悪辣な宇宙人である。
アズールレーン艦船<KAN-SEN>達の大半は、『メガオロチ戦役』の終盤、カイン指揮官とトライスクワッドによって倒されたと思っているだが、カイン指揮官もタイガ達も、エンタープライズにベルファストを含んだ一部の艦船<KAN-SEN>達も、トレギアは死んでいるとは思えず、警戒をしているのだ。
≪ヤツが何かしらの動きも見せていないのも、不気味だな≫
≪まだ『メガオロチ戦役』での傷が完治しておらず、療養しているなのか、それとも、セイレーンと共に何処かで暗躍しているのか・・・・≫
≪ま。ろくでもねえ事しか企んでいねぇってのは分かるけどよ。たくっ、つくづくいけすかなくて、ムカつく野郎だぜ!≫
≪ムカつくヤツだが、油断できる相手ではない≫
≪あぁ≫
「『メガオロチ戦役』から現れた怪獣は、『どくろ怪獣 レッドキング』や『彗星怪獣 ドラコ』。『食葉怪獣 ケムジラ』に『火山怪鳥 バードン』。『地底怪獣 グドン』と『古代怪獣 ツインテール』。一度に二体の怪獣が現れた、か」
エンタープライズがタブレットを操作して、レッドキングとドラコと戦うタイタス。生まれたばかりのツインテールが好物であり補食しようとするグドンとの戦いに参戦するフーマ。バードンに食い殺されたケムジラと、そのバードンと空中戦を繰り広げるタイガの姿が映し出された。当然、艦船<KAN-SEN>達と協力して倒していったのだ。因みにバードンがケムジラを補食する光景は幼い艦船<KAN-SEN>達には見せないようにした。
「『怪獣リング』が現れなかったと言う事は、トレギアとは関係ない、この星の怪獣と言う事か・・・・」
『メガオロチ戦役』で再び回収した『ヘルベロスリング』と『ゴロサンダーリング』、『ギガデロスリング』に『ナイトファングリング』は、今度こそ厳重に保管ーーーーと言うよりも、封印している。
「・・・・ベル。〈ヴィラン・ギルド〉のマーキンド星人とマグマ星人はどうしてる?」
「はい。現在は明石様のお店で住み込みで働いております。メイド隊からシェフィールドとシリアスが監視をしていますから問題ありません」
ー明石sideー
「ほれほれ! キリキリ働くにゃッ!」
『何で私達がこんな目に!』
『合わなきゃならねぇんだよ!?』
「黙って働くにゃ! 明石が指揮官に売り込もうと思っていた『指揮官専用 小型潜水艦』を持ち逃げして無くしたにゃら、代金は働いて払ってもらうにゃ!」
『チキショー! 自給自足で生活していた重桜でのサバイバルよりかは寝床も飯もちゃんとしているけどよ!』
『こう毎日働かされたら身が持ちませんよ!』
マーキンド星人とマグマ星人がヒィヒィ言いながら明石の元で働かせており、力ずくで明石を黙らせたくても、シェフィールドとシリアスが目を光らせておりそれもできず、結局二人は働くしかなかった。
ーカインsideー
「まぁ何にしても、〈ヴィラン・ギルド〉の情報を得る為にも、彼らに手荒い真似はあまりしないようにな」
「承知しています」
彼ら二人を置いているのは、この星の各地に拠点を置いている〈ヴィラン・ギルド〉を捜索する為だ。
「・・・・セイレーン、トレギア、〈ヴィラン・ギルド〉。そしてこの星の怪獣・・・・忙しさ全開だよ」
「しかし、やるしかないのだろう、指揮官」
「まぁな。やるっきゃないな」
エンタープライズの言葉に、ニッと笑みを浮かべるカイン指揮官。
と、ソコでーーーー。
「失礼します、指揮官様」
「失礼する」
「っ!? 赤城! 加賀!」
執務室に入ってきた赤城と加賀の姿を確認して、カイン指揮官はガバッとベルファストの膝枕から飛び起きた。
「・・・・・・・・・・・・」
「あ、あの・・・・赤城、さん・・・・?」
赤城は何も言わず、カイン指揮官に近づくと、書類を渡した。
「指揮官様。重桜の子達から、重桜のお菓子が少ない事に不満の声があがっていますわ。どうかご検討を」
「あぁ、確かに大福やお団子や羊羹やお煎餅が食べたくなるかなぁって思ってたんだよなぁ。・・・・分かった。丁度重桜母港の方にも視察に行く予定だったから手配してみる」
「宜しくお願いします。では、失礼しますわ」
そう言って、赤城は加賀を連れて執務室を出ていく。その際、カイン指揮官と加賀の間でアイコンタクトが行われた。
赤城と加賀が退室すると、タイガが訝しそうな声をあげる。
≪・・・・・・・・変だな?≫
≪何がだタイガ?≫
≪赤城さんの様子だよ≫
≪赤城の姐さんの?≫
タイガの言葉に、タイタスにフーマだけでなく、エンタープライズも首を傾げ、ベルファストは察しがついているのか黙っている。
≪重桜にいた頃の赤城さんなら、トモユキが他の艦船<KAN-SEN>の子と良い雰囲気を作っていたら・・・・≫
【あら指揮官様。膝枕で甘えたければ赤城の膝を幾らでもお貸し致しますわ。さぁさぁ指揮官様~!】
【指揮官様に膝枕をするなど・・・・どうやら『ソウジ』が必要なオジャマムシなメイドがいますわねぇ。ちょうど良いですからグレイゴーストと、指揮官様に寄生している『三馬鹿』もろとも、『ソウジ』をしてあげますわぁ!】
≪って言うくらいはする筈なのになぁ≫
≪『三馬鹿』って、俺らの事かよっ!?≫
≪随分と、過激な性格をしているのだな、赤城殿は・・・・≫
「私にも敵意を向けている所があったしな・・・・」
「ーーーーご主人様」
タイガの説明にフーマは不満気な声をあげ、タイタスとエンタープライズは苦笑いを浮かべ、ベルファストは赤城の心情を察しているのか、カイン指揮官に声をかける。
「・・・・まだ引け目を感じているんだろう。あぁ見えて、根は真面目だからな赤城は。加賀は戦闘で先陣切って、少しでも重桜の評価を取り戻そうとしているけどな」
赤城と加賀は、セイレーンと癒着し、『メガオロチ戦役』を引き起こしてしまった。トモユキ指揮官が行方不明になってしまったからが理由の一つでもあるが、それでもカイン指揮官や仲間達の信頼に泥土を塗り、重桜の立場を悪くしてしまった負い目を感じているようだ。
『メガオロチ戦役』からの怪獣騒動でも、二人が率先してタイガ達と共に戦っていたり、訓練から他の事務仕事、果ては雑用まがいな仕事もしていたりしていた。
「重桜の皆も、赤城と加賀が無理をしている事を心配してたしな」
「・・・・もう重桜は勿論、ユニオンもロイヤルの皆も、気にしてはいないと言うのに」
「それでも、ご自分が許せないのでしょうね」
≪お前も少しは姐さん達を見習えよ≫
≪反省しろ≫
≪わ、分かってるよ・・・・≫
同じく、トレギアの罠に嵌まってしまったタイガも、バツが悪そうな態度になっていた。
と、何とか赤城と加賀に元気になって貰えないかと悩んでいると。
「失礼しまーす! です!」
「ジャベリン。綾波にラフィーにユニコーンまで、どうしたんだい?」
「指揮官。実は重桜母港の方から連絡が来たです」
「ん?」
「・・・・メガオロチがいた洞窟ドックに、可笑しな反応があるって・・・・」
「も、もしかしたら、怪獣が現れるんじゃないかって・・・・長門さんが・・・・」
「ふむ・・・・良し。調査に行ってみよう。ちょうど重桜のお菓子も不足しているって報告もあったしね。メンバーは・・・・」
カイン指揮官が重桜に向かうメンバーを選抜し終えると、ソファから立って出発しようとする。
「ちょっと待ってくれ指揮官。仕事は?」
エンタープライズが執務机に置かれた書類を指差すと、カイン指揮官はにこやかな笑みを浮かべて、エンタープライズの両肩に手を置き。
「後は任せたよ。エンタープライズ秘書艦!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・えぇっ!?」
「じゃベル。エンタープライズのフォロー宜しくね! もしもって時はヴェスタルに応援を要請してくれ!」
「承知致しました」
「えっ、ちょっと待ってくれ指揮官ーーーー」
「それじゃ、あと宜しくーーーー!!」
エンタープライズの訴えを遮り、カイン指揮官は綾波達を引き連れて執務室を出ていった。
ー???sideー
その頃、重桜母港・旧洞窟ドック。
『・・・・・・・・・・・・』
メガオロチの出現で母港の三割が崩壊してしまったその場所の岩壁から、不気味な赤い目のような物が、うっすらと開き、
『・・・・キェェェ・・・・!』
まるで今にも起き上がりそうな唸り声をあげていた。
はてさて、重桜に戻ったカイン指揮官達を待ち受けるものとは?