ーーーー『艦船<KAN-SEN>』。
未知の敵、『セイレーン』に対抗する為に作られた、『人の形をした兵器』と呼ばれている。
その『艦船<KAN-SEN>』を創造したのがーーーー『メンタルキューブ』。『セイレーン』との戦いの中、人類にもたらされた未知の結晶体。
『艦船<KAN-SEN>』が結成した『アズールレーン』により、人類は海を奪還する事ができるようになったがーーーー今、『四大国家』の『重桜』と『鉄血』が、“セイレーンの力を取り込まん”とし、『レッドアクシズ』と言う同盟を組み、『アズールレーン』に反旗を翻した。
しかし、この星の人類と、各陣営の艦船<KAN-SEN>達はまだ知らない。
『この星から生まれた異常進化した巨大生物』。
『遥か宇宙の彼方からやって来る異星の悪党』。
そしてーーーー『青い悪意の影』が迫っている事を。
ーカインsideー
「(つまり・・・・“僕は元々重桜の、『海守トモユキ』指揮官だった”って事で良いんだな、タイガ・・・・?)」
≪ああ。記憶を失って精神が不安定になってたから、今まで何も言わないでおいたけど、重桜がこんなことになっているなら、カインに“トモユキだった頃の記憶”を取り戻して貰うしかないと思ってな・・・・≫
カインは今、重桜いや『レッドアクシズ』からの襲撃を受け、それにより負傷した艦船<KAN-SEN>達を救助する饅頭達に指示を飛ばしながら、自身と同化し、現在は妖精のように小さな思念体となっている『光の勇者 ウルトラマンタイガ』から、自分の失われた記憶についての事を聞いていた。
「(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)」
≪やっぱり、戸惑うよな?≫
「(正直、いまだにピンと来ないが、とりあえず1つ聞きたい)」
≪なんだ?≫
「(僕は・・・・『海守トモユキ』は、“重桜がアズールレーンを脱退する事”をどう思っていた?)」
≪もちろん。“トモユキは脱退に反対派の筆頭”だったぜ。トモユキは、【『セイレーン』と言う脅威が去っていないのに、人類同士で内輪揉めをやってるなんて馬鹿馬鹿しい】って常に、重桜の艦船<KAN-SEN>のみんなに言ってたからな≫
「(そうか。それだけ聞ければ良いさ・・・・。それにしても、今回はエンタープライズのおかげで救われたな)」
≪ああ。アイツ、スゲェな≫
「(だが、危うい)」
≪えっ?≫
カインの言葉に、カインの肩に乗ったタイガが首を傾げるように声を発した。
「(彼女は強い。それに、迷いは無いように見えるが・・・・)」
≪???≫
「(己を省みない者に、力を持つ事はできない・・・・。今の彼女じゃ、『アレ』は使えないな)」
≪『アレ』か・・・・でも、『ロイヤル』のみんなは大半ができるんだよな?≫
タイガの声を聞きながら、カインは自分の左の手の甲に刻まれた、『薔薇のような痣』に目をやる。
「(・・・・『アレ』が何なのか、正直僕にも分からないが。あ、ウェールズ達が来る。少し静かにしてくれタイガ)」
≪分かった≫
タイガとの会話を終えたカインに、プリンス・オブ・ウェールズとイラストリアス、そしてグリーブランドが近づく。
「指揮官。お疲れ様でした」
「イヤ、済まないなウェールズ。少々面倒をかけたようだ」
「いえ、気にしなくて良い。と言いたい所だけど、これを教訓に気まぐれ行動は控えてほしいものだな」
「善処するよ。イラストリアスも、着任早々にお疲れ様・・・・」
「それは指揮官様も同じですよ。気にしないでください」
ウェールズが少しやれやれと、肩をすくめ、イラストリアスがたおやかな笑みを浮かべてそう言うと、カインは二人の背後にいる艦船<KAN-SEN>に目を向けた。
先程指揮した艦<KAN-SEN>の1人、『ユニオン所属 クリーブランド級軽巡洋艦一番艦クリーブランド』だ。
「はじめまして、クリーブランド。改めて、僕は本日から指揮官となった、カイン・オーシャンだ」
「はじめまして、指揮官。私はクリーブランド、海上の騎士だ! さっきの指揮のおかげで助かったよ!」
「ああ、そう言ってもらえると嬉しいよ。こちらとしても、『ユニオン』の精鋭チームのリーダーが仲間になってくれて心強いよ」
カインが握手を求めるように手を差し出すと、クリーブランドはその手を快く取ってくれた。
「アハハ! そうかなぁ!」
「もちろん。それに、可愛い女の子が来てくれた事にもね」
「か、可愛い・・・・!///////」
カインが「可愛い」と言った瞬間、爽やかに笑っていたクリーブランドの頬が紅く染まる。
タイガは≪(やれやれ始まった・・・・)≫と、内心ため息を吐いた。
「? どうしたんだい?」
「いや、その、『格好いい』って良く言われるんだけど、『可愛い』なんて、始めて言われたから・・・・」
「そうなのかい? 『ユニオン』の人達は見る目がないんじゃないか? 確かに『格好いい』って感じもあるけど、クリーブランドはこんなに『可愛い女の子』なのに」
「か、可愛い、女の子っ!!?///////」
カインが可愛いと言うと、クリーブランドは頬だけでなく、顔や耳まで真っ赤になって俯く。
「あの、その、ええっと・・・・///////」
「ん? どうしたんだい?」
「あ、あの! 私! ちょっと他のみんなの方に行ってくるから!!」
真っ赤になった顔を隠しながら、クリーブランドは握手を離して、そそくさとその場を去っていった。
「あんなに慌てて、他の艦船<KAN-SEN>のみんなが心配なんだな」
「「・・・・・・・・・・・・」」
呆れた様子で、ウェールズが半眼となり、イラストリアスは苦笑いを浮かべていた。
「・・・・それにしても、やられたわね」
溜息混じりに話を変えようと、ウェールズが双眼鏡を覗き込んで、救助されている艦船<KAN-SEN>達を眺めながら呟いた。
「『重桜』に先手を打たれた・・・・」
「『重桜』が『鉄血』と手を組む事は予想されていた事です。でも・・・・」
イラストリアスが見据える先にあった。小島に建てられた寺院に刺さった『セイレーンの鑑載機』と『セイレーンの量産型艦船』が霞のように消えた。
「『セイレーン』の力、それがどれほど危険か、分かっているのか」
「・・・・ウェールズ。イラストリアス」
「はっ」
「はい」
カインの言葉に、二人は答える。
「復旧を急ごう。第二陣が来ないとも限らないから、ウェールズは動ける艦船<KAN-SEN>達を集めて防備を固める準備をしてくれ」
「了解」
「イラストリアスは、動ける艦船<KAN-SEN>達から、怪我をしてなく、もしくは軽傷で、それでいて足の速い子達を集めておいてくれ」
「足の速い子達、ですか?」
「おそらく、『重桜』の攻撃はまだ終わっていない」
「「っ!!」」
カインの言葉に、ウェールズとイラストリアスは息を飲んだ。
「お兄ちゃん・・・・! イラストリアス姉ちゃん・・・・!」
そこで、ゆーちゃんを抱えたユニコーンが現れた。
「あぁユニコーン。お疲れ様。よく頑張ったな」
カインですユニコーンの頭を優しく撫でると、ユニコーンはほんのり頬を赤くなり、嬉しそうに笑みを浮かべる。
「うん・・・・! ユニコーン、頑張ったよ、お兄ちゃん。ジャベリンちゃんとラフィーちゃんも、頑張ったんだよ・・・・」
「そうか、それじゃジャベリンとラフィーにも労いに行かなきゃな」
「うん・・・・!」
カインはユニコーンと手を繋いで、ジャベリンとラフィーの元へ向かい、ウェールズとイラストリアスも、二人の後に続きながら、艦船<KAN-SEN>達に連絡を取っていた。
ージャベリンsideー
ジャベリンとラフィーが母港の港に戻り、艤装を解除すると、艤装はそれぞれの艦船の形に戻った。
「はぁ・・・・全員無事みたいで良かったね」
ジャベリンはラフィーに向けて声をかけるが、ラフィーはずぶ濡れの身体で大の字で横になり、動かなかった。
「(チーーーーーーン・・・・)」
「って! 大丈夫ラフィーちゃん!?」
「駄目かも・・・・眠い・・・・くぅ・・・・」
顔を向けたラフィーは、眠そうな重い瞼を閉じそうになる。
「こんなところで寝ないで! よいしょっ!」
うつ伏せに倒れるラフィーをジャベリンが仰向けにして身体を起こさせ、肩を貸して歩き出した。
するとちょうど良く、カイン達と合流した。
「ジャベリンちゃん! ラフィーちゃん!」
「あっ、ユニコーンちゃん! 大丈夫? ケガ無い?」
「うん、大丈夫!」
「ジャベリン。ラフィー。良くやってくれた」
「あっ・・・・」
カインの言葉に、ジャベリンは先ほど相対していた艦船<KAN-SEN>、綾波の事を思い浮かべた。
「あ、あの! 指揮官!」
指揮官に声を発そうとしたジャベリンだが、ラフィーが肩からずり落ち、その際ジャベリンの服の肩紐を掴み、ジャベリンの服がずり落ち、以外と発育したトップレスが露になった。
「えっ? あっ、あぁっ! あぁぁぁぁぁ!!」
「っ・・・・!////」
「うぉっ・・・・!」
「「・・・・・・・・」」
≪わっ! わっ! わわっ!/////≫
ジャベリンが両手を交差してその場にしゃがみこみ、ユニコーンが顔を赤くし、カインが目を奪われそうになるが、後ろに控えていたウェールズとイラストリアスが左右から目を塞ぎ、タイガは慌てて両手で目を隠して身体を反らした。
「うぅっ! ちょっと! ラフィーちゃん!!」
「眠い、お腹すいた、だるい・・・・」
ジャベリンが怒鳴るが、ラフィーは眠っているのか、身体を仰向けにすると、ラフィーの服もずり落ち、片乳が露になる。
「わわわわわわわ!!」
ジャベリンが慌てて、ラフィーの服を直した。
「疲れたでしょう? もう休むと良いわ。さ指揮官様、参りましょう」
「あのさ。だったら手を離してくれないかな?」
ウェールズとイラストリアスに両目を塞がれたまま、カインはその場を去ろうとし、ユニコーンも続いた。
「あ、あの・・・・!」
「ジャベリン。言いたい事は分かるが、今は休むことだ」
「休憩も任務の内だぞ」
そう言って、四人はその場を立ち去った。
「・・・・・・・・」
「・・・・飲まないとやってられない」
しょげるジャベリンの横で、ラフィーが『酸素コーラ』をイッキ飲みした。
ークリーブランドsideー
カイン達と別れたクリーブランドは、艦船の修復作業を行う饅頭達の手伝いをしていた。
「ふぅ、船の修復も、手が回らないよ・・・・」
ふと辺りを見ると、自分の船を沈められて泣き崩れている『サンディエゴ』が目に入った。
「あちゃー。せめて『工作艦』がいてくれたらなぁ・・・・。ん?」
さらに目を向けると、港に立って海を眺めているエンタープライズがいた。
クリーブランドはエンタープライズに近づく。
「おーい、エンタープライズ! 休んだ方が良いよ! さっきの戦闘で、かなり無茶してたじゃないか!」
「・・・・問題ない」
「そんな訳無いだろ・・・・!」
クリーブランドの言葉に、エンタープライズは素っ気なく答えたが、エンタープライズの船に目を向けると、船体がボロボロの状態となった、痛々しい姿が見えた。
「緊急修理は済ませた。まだしばらくは戦えるさ。・・・・あっ」
「あっ! ほら見たことか!」
移動しようとしたエンタープライズだが、足元がよろけ、クリーブランドが駆け寄る。
が、エンタープライズはクリーブランドの手をソッと払う。
「敵はまだ近くにいる。警戒を解く訳にはいかない・・・・!」
「・・・・・・・・あぁもう!!」
自分の身を鑑みないエンタープライズに、クリーブランドは地団駄を踏んだ。
ー加賀sideー
その頃、アズールレーン母港から離脱途中の赤城と加賀と綾波。
赤城は朱傘を広げた縁台に、団子と救急箱を置き、加賀の手当てをしていた。
「ほら、じっとしてなさい」
「ね、姉様・・・・近いです・・・・」
赤城はお互いの息がかかりそうな程に顔が近づけ。思わず顔を背ける加賀。
しかし、赤城はそれを許さなかった。
「ほら、顔にも怪我してる」
「姉様、この程度の傷で大袈裟な・・・・」
しかし赤城は止めない。かすり傷でも見逃さずように、過保護な検診を続いた。
「ダ~メ。せっかく“指揮官さま”が生きている事が解ったのに、加賀の綺麗な顔に傷が残ったら指揮官さまが悲しむわ」
すると赤城は、加賀の顔にある傷を消毒するかのように加賀の頬を舐めた。
「うっ、それは、そうですが・・・・しかし、姉様。指揮官が“記憶を失っている”と言うのは、本当だと思いますか?」
加賀の言葉に、赤城は当然と言わんばかりに笑みを浮かべる。
「ウフフ、当然よ。そうでなけれ指揮官さまが赤城と敵対するだなんてあり得ないもの。あぁ、おいたわしい指揮官さま。指揮官さまが記憶を失っている事を良いことに、アズールレーンのお邪魔虫達に利用されているのよ。指揮官さまを取り戻すためにも、身体は大事にしなくちゃダメよ加賀」
「はい姉様。指揮官を取り戻すためにも、私も全力を尽くします」
「ええそうよ加賀。指揮官さまは必ず取り戻すわ。ウフフフ、ウフフフ!」
赤城の狂気を帯びた笑みを浮かべるが、加賀は少し顔を曇らせた。
「へぇ〜あれが『海原の軍者』と言われた、『海守トモユキ指揮官』なの」
「っ!!」
不意に頭上から聞こえた声に、加賀は過敏に反応して、縁台から弾けるように飛び出て、声のした方を睨むと、アンテナマストに座る一人の艦船<KAN-SEN>がいた。
「あら? お邪魔だったかしら?」
銀色の長髪をツーサイドアップにし、前髪の一房に赤いメッシュが入っている少女が機械でできた2頭の龍の艤装を背面から伸ばし、加賀達を見下ろしていた。
『鉄血所属 重巡洋艦 プリンツ・オイゲン』
鉄血の艦の証である赤と黒と灰色を中心とした無骨な衣装を纏い。プリンツ・オイゲンのアレンジなのか露出は多く、スカートがあるのかないのか、分からないくらい丈は短く、レオタードのような服の線から先は、脚部が全面的に露出し太ももを大胆に晒す形になっており、ガーターベルトが露出していた。
プリンツ・オイゲンは蠱惑的な笑みを浮かべて声を発する。
「貴様・・・・!」
「そんな怖い顔しないでよ。“仲間”じゃない。 貴女達『重桜』と私たち『鉄血』は?」
加賀は、プリンツ・オイゲンを静かに睨むと、彼女が言った“仲間”と言う単語に、妙な薄っぺらさを感じた。
かつて『トモユキ指揮官』が言った“仲間”と、目の前の艦船<KAN-SEN>が言う“仲間”が、天と地ほどの差があると心から感じた。
「(やはり苦手だこいつは・・・・)」
内心渋面を作っている加賀の心境を察してか、赤城が甲板に降り立ったプリンツ・オイゲンに向けて、『黒いメンタルキューブ』を取り出して口を開く。
「もちろんですわ。私たちは“同じ理想を掲げる同志”。全ては、『レッドアクシズ』の勝利のために」
明らかに社交辞令のような赤城の物言いに、プリンツ・オイゲンも織り込み済みと言わんばかりの態度で返す。
「ふ~ん。それにしても大したものね。量産型とはいえ“セイレーンの船を意のままに操る”なんて。これも“例の計画”の成果?」
「全ては神の思し召しですわ」
「でも随分と慎重なのね。あのまま基地を一気に潰してしまえばよかったのに」
赤城が縁台から離れ、プリンツ・オイゲンは縁台に置かれた団子を一本取り、舐めるように食べていく。
加賀は内心、「なんて行儀の悪い」と、悪態をついた。
「妹が傷ついて怖くなっちゃった?」
「くっ・・・・!」
加賀への侮辱なのか、プリンツ・オイゲンが加賀を一瞥してそう言った。
加賀はプリンツ・オイゲンを殴ってやろうかと近づくが、赤城がソッと制した。プリンツ・オイゲンはそれを愉快そうに眺めて口を開く。
「フフフ。それにしても、行方不明だった指揮官が目の前にいたのに、何もしないで帰るだなんてね」
「ふふっ。急いては事を仕損じると言う言葉がありますの。それに慌てなくとも、あのお方は自分からこちらに接触してきてくださるはずですわ。だって、あのお方の本来の居場所は『アズールレーン』などではない。『重桜』なのだから・・・・!」
赤城は笑っていた。その目にはもう離さないと訴えるような色を帯びていた。
そして赤城は、激しく損傷した加賀の船を一瞥する。
「それに3つ。気になる事が起きましたの。『あの船』と『巨人』、そして『巨大な異形』。この事をすぐに本国に報告しなければなりません」
「『ユニオン』のエンタープライズ、別名『グレイゴースト』。『宇宙の守護者』と呼ばれるウルトラマン。異常進化の生命体、通称『怪獣』。確かに厄介ね」
プリンツ・オイゲンが食べ終えた団子の串をプラプラと弄びながら呟くと、赤色の紙飛行機が赤城に近づき、声が響いた。
《先輩見つけました。別動隊です》
「綾波の報告通りだな」
「じゃぁ、もうちょっとだけ『嫌がらせ』をしましょうか。やれるわよね五航戦? 未熟な貴女達でも、このくらいの『お使い』なら、ね?」
《・・・・了解》
紙飛行機はそう返事すると、その場で燃えて消えた。
すると、赤城はプリンツ・オイゲンに一礼する。
「さて、武名高き『鉄血』のプリンツ・オイゲン様に、お頼み申し上げます」
「五航戦が『食い残し』を見つけた。見逃す手はない」
「お恥ずかしながら私、後輩達が心配で心配で・・・・。『鉄血』の皆様にご協力してもらえたら、こんなに心強い事はありませんわ」
「ふ~ん・・・・」
いけしゃあしゃあとそう言う赤城に、プリンツ・オイゲンは縁台から立ち上がり、赤城の足元に団子の串を投げ指し、加賀は、クッと唇を噛む。
「ま、良いわ。うちの『Z23<ニーミ>』とあの『綾波』って子を連れていくわよ」
「ええ。お手並み拝見ですわね」
プリンツ・オイゲンはそのまま悠然と歩いていく。
『重桜』と『鉄血』。一応の同盟を組んだ両者の間には信頼はなく、“打算による同盟”と言うのが明らかに見えていた。
ー綾波sideー
その日の夕方、綾波は自分の船で海に沈む夕焼けを眺めていると、近づく艦船<KAN-SEN>が現れた。
「綾波」
赤と紺と白を基調にした金の縁取りの美しいコートを身に着けて、腕にはアームカバーと腕章、手には白い手袋を嵌め、コートの下はハイネックタイプの水着。
頭にはベレー帽と鉄十字のヘアアクセサリーを付けた、見るからに優等生然とした少女。
『鉄血所属 駆逐艦 Z23<ニーミ>』である。
「ニーミ・・・・」
「出撃命令です。私達について来て下さい」
「また、戦闘・・・・?」
「はい。基地を離れていた敵艦隊です。帰還する前に叩きます」
「・・・・敵・・・・」
綾波の脳裏に、アズールレーン基地で出会ったジャベリン達の事、そして、カイン・オーシャン指揮官の顔がよぎった。
「・・・・戦闘は嫌いじゃないけど、好きじゃないです・・・・」
「い、いきなり我が儘言わないでください!」
「ニーミは戦うの好きですか?」
「・・・・好きも嫌いもありません。任務を遂行する事が、私達の義務ではないですか?」
「・・・・・・・・・・・・」
ニーミは綾波から目を離して、夕日を見据える。
「私達は艦船<KAN-SEN>です。戦う為にこそ、私達は生まれたのですから・・・・」
ニーミの言葉に、綾波は昔の事を思い出していた。
もう数年も前になるのに、綾波には遥か昔の事のように、妙に懐かしくなる言葉。
「綾波も、昔はそう思っていたです・・・・。でも、【つまらない生き方だな】って、言われたです」
「? 誰にですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あ、綾波??」
ニーミが綾波を見ると、悲しみを堪えるような、切なそうな顔をした綾波の瞳からは、静かに涙が流れていた。
「・・・・・・・・・・指揮官に、『海守トモユキ』指揮官にです」
ーカインsideー
その頃。アズールレーン母港の『指揮官の執務室』。
カインが秘書であるウェールズと被害報告書などの書類と格闘していると、通信機を持って来たイラストリアスが執務室に入室してきた。
「指揮官さま。『陛下』と連絡がつきましたわ」
「そうか、ありがとうイラストリアス」
カインがイラストリアスから通信機を受け取り(その際、イラストリアスの豊満なバストがブルンっと揺れ、深い谷間がかいま見えて、眼福と思ったのは割愛する)。
通信機を机に置くと、通信機から光が出て、その光から、優雅に椅子に座りながら紅茶を飲んでいる貴族、と言うより、王族のような衣装を着た少女の映像が映し出された。
《あら『下僕』。何かあったのかしら?》
「ご無沙汰してます『女王陛下』。こちら、貴女の可愛い下僕ですけど。折り入って『陛下』に少しばかりのお願いがあるんです」
いきなり『下僕』と呼んだ少女に怒りを覚えず、カインは『次の一手』を打とうとしていた。