ーカインsideー
カイン指揮官とフーマが目を覚まし、暴走しそうになっていた赤城と加賀が大人しくなった。アズールレーン母港の艦船‹KAN-SEN›達は皆が喜ぶ。
そしてカイン指揮官はーーーー。
「ハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグ・・・・!」
数日間の空腹で、体力回復の為に、ベルファスト達が持ってくる〈ロイヤル〉、〈重桜〉、〈ユニオン〉、〈東煌〉の食事を思いっきり食べていた。
「ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ・・・・!」
「指揮官。いきなりそんなに食べても胃が受け付けないぞ」
「ムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャ・・・・!」
「もっとゆっくりと噛んで食べた方が良いですよ」
イーグルとハーマイオニーが苦言を言うが、カイン指揮官はウーロン茶を流し込んで口の中を綺麗にしてから口を開く。
「グビグビグビグビグビッ・・・・ゴックン。プッハァ!ーーーー今はさっさと栄養付けてあんのオーブダーク‹黒黒黒野郎›にリベンジする準備をするんだ! 数時間もあれば艦載機だって直る!」
《その通りだ兄ちゃん! あんの野郎にこの借り! 十倍の利子を付けて顔面に叩きつけてやろうぜ!!》
同じく負けたフーマも同意するように叫ぶと、カイン指揮官は再び料理を口の中に詰め込んだ。
「ングングングングングングングングングングング・・・・〜〜〜〜!」
と、その瞬間、顔色が緑色に変色した。
《うわぁっ!? トモユキの顔が!》
《言わんこっちゃないな。洗面器か?》
タイガとタイタスがそう言うが、カイン指揮官は口を押さえてベッドに倒れる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜!」
《あ? なんだ兄ちゃん?》
フーマが何かを言いたげにうめき声を上げるカイン指揮官に近づき耳を傾けると。
《ーーーーフンフン》
《なんだってフーマ?》
《・・・・腹膨らんだから寝るってよ》
その言葉に、全員がはぁ~と、盛大に溜め息を吐いた。残った食事はエンタープライズとクリーブランドとラフィー等が平らげた。
◇
それからさらに数日。漸く身体の傷が癒えた頃。リハビリがてら、ベルファストに綾波とジャベリンとラフィーを連れて、久しぶりに重桜寮に来ていた。
『しきか〜ん!』
と、睦月達幼年部の子達と戯れている。
アークロイヤルがいたら鼻血を噴水のように噴射するような光景であろう。余談だが、アークロイヤルは重桜の幼年部の寮には一切の立ち入り禁止をくらっている。重桜がアズールレーン母港に来て間もなく、幼年部の寮に不法侵入し、写真の隠し撮りや風で落ちた下着等を物色し、半月程営倉に叩き込まれたからだ。
「ーーーーご主人様。エディンバラ姉さんとシェフィが帰還しました。“例のお二人も一緒です”」
「ああ。分かった」
連絡を受けたベルファストの言葉に頷いたカイン指揮官は、睦月達と別れ、そのまま執務室に戻った。
そして、執務室に到着すると、既に来ていたエンタープライズてウェールズ、イラストリアスにユニコーンがいた。
応接用のソファに、荒縄で簀巻きにされたマグマ星人とマーキンド星人が器用に座っており、二人の後ろではエディンバラが縄の先を握っていた。
「ーーーー久しぶりだね、マグマ星人にマーキンド星人。【労働力が逃げたにゃあ!】って、明石がゴネていたよ」
『あぁ久しぶりだな指揮官さんよ』
『こっちはまあーーーーボチボチやってましたよ』
「それで、なんだって〈鉄血〉にいたんだ?」
カイン指揮官が目を細めて問うてくる。その瞬間、執務室に緊張感に包まれる。
『ーーーーあ、その、な・・・・』
その空気に耐えられなくなり、マグマ星人が口を開き、歯切れ悪く説明した。
『〈重桜〉でよ、お前らがエンマーゴと戦っている最中にトンズラした俺らは、〈ヴィラン・ギルド〉に戻る事もできねぇし、暫く各国を渡ってノンビリとバカンスでもやろうかと思って潜水艦を動かしていたんだ・・・・』
『ですが、その最中に〈鉄血〉艦船‹KAN-SEN›達に見つかり、あのアイゼーン・マコットラー・・・・いえ、『チェレーザ』に、【自分達に協力しろ】と言われましてね』
「っ? 『チェレーザ』?」
マーキンド星人が言った名前に、カイン指揮官やその場にいる艦船‹KAN-SEN›達も訝しげに首を傾げる。
その様子に、マグマ星人とマーキンド星人は意外そうな声を発する。
『あん? 何だよ知らなかったのか? アイゼーン・マコットラーは、俺らと同じ宇宙人、『精神寄生生命体チェレーザ』に身体と意識を乗っ取られているんだよ』
『なっ!?』
マグマ星人の意外過ぎる言葉に、全員が驚愕に目を見開いた。
しかしそれは仕方ない。何しろ四大国家の一角の軍のトップが、異星人に寄生されているだなんて、目の前に異星人がいなければ、くだらない妄想と一笑されるような話だ。
「そのーーーーチェレーザか、先ずはソイツの事を教えてくれ。交換条件として、身の安全の保証をしよう」
『・・・・まあ、別に話しても良いですね』
『俺ら、野郎に消されかけたしな』
そう言うと、二人は『精神寄生生命体チェレーザ』について話しだした。
『ヤツは俺達と同じ異星人、それも特殊なタイプでな。俺らみたいな肉の身体ではなく、ガス状の身体をしていて、他生物の身体に入り込み、その精神を支配し、肉体の主導権を奪う事ができるんだ』
『おそらく今〈鉄血〉の総統をしているアイゼーン・マコットラーは本来の人格ではなく、チェレーザによって操られているだけの器のようなものでしょう』
「ーーーーその話、真実である根拠は?」
『俺達〈ヴィラン・ギルド〉にはな。宇宙の裏情報ってのが流れてくる。その中には、“平行世界の情報もあってな”。似てるんだよ、『ウルトラマンR/B‹ルーブ›の世界』で起こった、『ウルトラマンオーブダーク』の情報にな』
『っ!』
『ウルトラマンR/B‹ルーブ›』の名前が出てきた事で、カイン指揮官達は驚いた。まさか、タイガ達トライスクワッドの先輩達の世界でも、オーブダークか現れていたとは。
思わずカイン指揮官は、『ロッソレット』と『ブルレット』を取り出して見た。
「まさか、『ウルトラマンロッソ』と『ウルトラマンブル』の『ルーブ兄弟』の事か?」
『そうそう。チェレーザは『ルーブ兄弟の世界』で、この世界でやっているように、ウルトラマンに変身して周囲の被害お構いなしに暴れて、自分をヒーローとして宣伝するような事をしていたようだ』
『まあ失敗して、その世界から追い出されたようですが。何の因果かこの星にやって来たそうなんです。そして、アイゼーン・マコットラーに寄生し、鉄血軍の総統にまで登り詰めたようです』
「ーーーー何故お二人がそれを知っているのですか?」
ベルファストが至極もっともな質問を投げかけると、マグマ星人とマーキンド星人が肩をすくめながら答える。
『俺とマーキンドとヤツだけで話し合っている時にな、協力をする事を渋っていた俺達に、ヤツはーーーー』
ーーーー【同じ異星人同士、手を取り合っていこうじゃあないか】
『ーーーーって言って来てな。自分の正体を教えてくれたのよ』
『我々の方でもチェレーザの存在は知っていたので、ヤツが正体をあかしたので分かったのです』
「・・・・もし、それが本当ならば、チェレーザはいつ、アイゼーン・マコットラーに取り憑いたんだ?」
エンタープライズの疑問に、今度はシェフィールドとエディンバラが答えた。
「私とエディンバラで、アイゼーン・マコットラーの事を調べて見たのですが、どうもアイゼーン・マコットラーは、十数年前までは、元々大人しく温厚な性格をし、軍人に向いていない、〈鉄血〉の美術大学に通う普通の学生だったようなのですが。ある日を境に、まるで人が変わったように豹変し、軍隊に入隊し、あらゆるコネクションや策略や計略を使って総統にまで登り詰めたようです」
「ーーーー成る程。十数年前にチェレーザに寄生され、今の状態になった、って訳か。それで、君達はヤツに何を依頼されたんだ?」
『『・・・・・・・・・・・・』』
カイン指揮官の問いに、二人は言いづらそうに口ごもるが、背後でシェフィールドが、カチャカチャと銃の手入れを始めたので顔を青ざめて、観念したように口を開いた。
『あぁ・・・・その、な。ヤツが『ルーブの世界』に置き忘れていった、ルーブ兄弟の変身アイテム『ルーブジャイロ』を模して作った『AZジャイロ』の修理と、『怪獣クリスタル』ってヤツの精製をな』
『そして、鉄血艦船‹KAN-SEN›達が付けた、チョーカーの製造と調整をされていましてヒィっ!!』
ーーーーゴォォォォォォ・・・・。
『『ひぇぇぇぇぇぇぇ・・・・!!』』
マーキンド星人が言い終わる前に、カイン指揮官にトライスクワッド、さらにその場にいる艦船‹KAN-SEN›達全員から凄まじい怒気が放たれ、マグマ星人とマーキンド星人は身を寄せ合って震え上がる。
そして、カイン指揮官が、低く重い声を発する。
「ーーーーつまり、お前達が、今ニーミ達鉄血艦船‹KAN-SEN›達を苦しめているあの忌々しいチョーカーを作ったって訳かな?」
『あわわわわわわわわわ! そ、その! わ、私達も、あんな悪趣味な事に使われると思っていなくて!』
『作らないと俺らも何されるか分かったもんじゃなかったから仕方なくなんだ!』
マーキンド星人とマグマ星人は必死に弁解をする。
カイン指揮官は、彼らの立場へ慮り、深い溜め息を吐いてから、皆に落ち着くよう手を上げると、トライスクワッドと艦船‹KAN-SEN›達は怒気を収める。
「・・・・それで、シェフィ達から聞くと、君達は隠れるように鉄血にいたようだが、何でそんな事になったんだ?」
そう。シェフィールドとエディンバラの話では、二人は人目を避けながら食料を調達し、古びた家に隠れるようにしていたと言う。一応鉄血の保護下にある筈なのにおかしいと思ったのだ。
『そうなんだよ! 保護と言う名の古城に何日も監禁され! しかも連日徹夜で休憩もなし! 飯も最低限の栄養サプリとエナジードリンクばっかり! ブラック企業もビックリの最低待遇だったぜ!』
『しかも! アイゼーン・マコットラーが来て文句を言おうとすれば! 後ろに『ローン』と言う鉄血艦船‹KAN-SEN›の中でもかなり好戦的な性格をした艦船‹KAN-SEN›を控えさせたアイゼーン・マコットラーが!』
ーーーー【これも全てこの星の『正義』と『平和』をもたらす『希望』を生みだす為だ! さぁ! ギリギリまで頑張って! ギリギリまで踏ん張って!!】
『ーーーーなんて、聞く耳なんて欠片も持っていない! これならアズールレーン母港で明石さんに丁稚としてこき使われていた方がマシでしたよ! イヤホント!!』
オ〜イオイオイオイと泣き出す二人に、カイン指揮官達は怒気が消え、逆に憐憫の気持ちで二人を見ていた。
『ーーーーそして! やっっっと! チョーカーとクリスタルの完成やらAZジャイロの修理完了やらで、俺らも漸くお役御免になって、後は適当な所でトンズラかまそうとしてたのよ!』
『そしたら! あのチェレーザがお礼にって鉄血のビールとごちそうを大量にくれて! 十日以上の徹夜による気分の異常と! もう地獄のような仕事をやらなくていい事でテンションが完全にハイな気分になってしまったのも手伝い、浴びる程、イヤ、浴びながら飲めや食えやの二人だけのどんちゃん騒ぎをしたのです!』
『そしてグッスリ寝た俺らは! 何か表が騒がしいなぁと、思って二日酔いどころか五日酔いしていた頭を振って起きてみると! グビラが俺らが軟禁されていた古城に向かって来たんだ! もう五日酔いなんてどっかに吹っ飛んじまった!』
『っ!』
グビラの名が出て、カイン指揮官達は目を見開いた。
確かウルトラマンオーブダークは、鉄血の海岸の街に現れた『深海怪獣グビラ』によって、古城が破壊され、ウルトラマンオーブダークがグビラと戦い倒したと報道されていたが、まさかその古城に、目の前の二人が幽閉されていたのだ。
「ーーーー助けは、呼ばなかったのか?」
『もちのろん! 呼びましたよ! チェレーザが連絡用に置いていた通信機で! しかし、ヤツは助けを求める私達に、こういったんです!』
ーーーー【何者かね君達は? えっ? 〈ヴィラン・ギルド〉? 知らないなぁ? 私は清廉潔白にして真実無妄たる〈鉄血〉の偉大なる総統閣下アイゼーン・マコットラー! 君達のような犯罪者と関わりがある訳がない!!】
『と言って、私達を散々利用して切り捨てたのですよ!! まぁ幸い、私達はこんな事もあろうかと、脱出ルートは既に確保していましたからね。グビラが古城に到達する寸前に離脱したのですがね』
『命からがら逃げ延びた俺達ら、まだ残っていた睡眠不足と疲労と、逃げられた安心感からそのまま一週間もあの古びた無人の家で熟睡しててな。起きて朝飯の調達している時に、この姉ちゃん達に捕まったんだよ』
成る程。何とも非道い話だ。保護するとか言っておいて、本当の目的はジャイロとクリスタルとチョーカーの製造。しかも過酷な職場環境で無理強いをさせた挙げ句、用済みとなれば怪獣を使って抹殺する。恐らくグビラが古城を破壊した後にオーブダークが出てきたのは、そうした裏の目的をあったからだ。
「・・・・最後に、話に出てきた『怪獣クリスタル』。そのクリスタルはーーーーこの怪獣達の事か?」
カイン指揮官がタブレットを操作し、画面を二人に見せた。そこには、オーブダークがこれまで倒してきた怪獣達の映像が表示されていた。
『ーーーーあぁっ! そうだそうだ! グビラ! ゴモラ! テレスドン! ベムスター! ナース! それにペギラ! 確かに俺達が調整した『怪獣クリスタル』にあった怪獣達じゃあねぇか!』
『ーーーーそう言えば、『AZジャイロ』には『怪獣クリスタル』から怪獣を召喚する事ができるそうですね』
《ーーーー成る程。これであらかたの事が分かったな。トモユキ》
「ああ。ずっと疑問に思っていた。オーブダークと怪獣の戦いの最中、オーブダークが劣勢になり怪獣に触れると、怪獣の動きが止まってしまう。これらの情報から推察するにーーーー怪獣達は、オーブダークが召喚した存在だ」
「では、これまでオーブダークが鎮圧させた怪獣騒動は全て、アイゼーン・マコットラー、嫌、『寄生生命体チェレーザ』による自作自演・・・・!」
「マッチポンプ、だったと言う訳ですか・・・・」
ーーーードンッ!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あ、綾波ちゃん・・・・?」
「綾波・・・・」
タイタスとカイン指揮官が推理し、エンタープライズとベルファストが不快感を顔に浮かべながら言うと、綾波が無言で執務室の壁を殴ると、殴られた壁が凹んだ。
「・・・・許せない、です・・・・! オーブダークの自作自演の為にーーーーニーミ達鉄血艦船‹KAN-SEN›達は身代わりにされたのです? オーブダークのマッチポンプなんかの為に、苦痛に苦しまされていたのです・・・・!?」
綾波は許せなかったのだ。捕虜として連れてきてから、綾波はニーミに何度もそのチョーカーを外す為に協力して欲しいと頼んだ。
しかしニーミは、
ーーーー【コレが私の、私達の役目なんです・・・・! 鉄血の艦船‹KAN-SEN›として、鉄血の総統を守る為に必要な痛みなんです・・・・!】
と、アイゼーン・マコットラーは、否、チェレーザは、そんなニーミの想いを、嫌、下手をすれば鉄血艦船‹KAN-SEN›全員の想いを踏みにじる最悪の裏切り行為をしているのである。
その場にいる艦船‹KAN-SEN›全員が、綾波と同じ気持ちであるような顔であった。
「ーーーーさて・・・・マグマ星人。マーキンド星人」
『『は、はい!』』
カイン指揮官が改めてマグマ星人とマーキンド星人に目を向けると、二人は簀巻き状態でありながら、ビシッと姿勢を正した
「君達に、またこのアズールレーン母港に来て貰いたい。明石には君達への待遇の改善を言っておく。ーーーーどうだろうか? 君達をコケにした、アイゼーン・マコットラー、否、チェレーザに仕返しをするチャンスを与えるが、どうだろうか?」
『『・・・・・・・・・・その話、乗ったぁ!』』
二人が勢い良く言うと、カイン指揮官はニヤリと笑みを浮かべ、ソファから立ち上がり、その場にいる全員に向けて声を発した。
「ーーーーさあ皆、〈鉄血〉総統閣下の、『ごっこ遊び』を終わらせるぞ! 反撃開始だ!」
《ああ!》
《うむ!》
《よっしゃぁっ!!》
『了解!!』
トライスクワッドとアズールレーン艦船‹KAN-SEN›が、力強く頷いた。