アズールレーンT   作:BREAKERZ

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今回の話で、艦船<KAN-SEN>に『オリジナル能力』を付けます。


【対話】何の為に戦う?

ーカインsideー

 

カインは書類仕事を終えると、まだ挨拶を済ませていない艦船達と対話するために外を歩き回りながら、『ロイヤル』や『ユニオン』の艦船<KAN-SEN>達と話をしていた。

話を終えると、ノンビリと母港を歩きながら、タイガと心の中で会話する。

 

≪良いのかカイン? 『女王陛下』さんに“あんな頼み”しちゃってさ?≫

 

「(まぁ、確かにウェールズとイラストリアスに大反対されたけどな。でも、セイレーンだけでなく、怪獣なんて存在が現れたんだ。このまま艦船<KAN-SEN>同士で内輪で戦いだなんて不毛だろう)」

 

≪まぁな・・・・(それに、“アイツ”の存在も気がかりだしな・・・・)≫

 

タイガは、“トモユキが記憶を失いカインとなった原因”の事を考えていた。

 

「(・・・・タイガ、ちょっと向こうに行こうか?)」

 

≪ああ≫

 

指揮官である以上、艦船<KAN-SEN>達に話しかけられるので、タイガとの会話は綾波と会った丘でする事にした。

ーーーーが、先客が二人いた。ジャベリンとラフィーがシートを広げて昼食を取っていた。

 

「ーーーーあの子、元気かなぁ・・・・」

 

「ん?・・・・あぁ、綾波って言ってた・・・・アムアム」

 

「綾波ちゃん、かぁ・・・・」

 

「随分黄昏ているね?」

 

「えっ?・・・・あっ! 指揮官っ!?」

 

「やっ。ここ良いかな?」

 

「良いよ」

 

「は、はいっ!」

 

指揮官であるカインの登場に驚くジャベリンだが、カインは二人のシートの隣にハンカチを広げて腰を落とした。するとラフィーが眠そうな眼をカインに向ける。

 

「指揮官もお昼ご飯?」

 

「まぁね。それで、どうしたんだジャベリン? 重桜の綾波の事が気になるのかい?」

 

「えっと、その・・・・指揮官。やっぱり、戦わないといけないんですか? 綾波、ちゃんと・・・・」

 

「フム・・・・指揮官としての立場上、おいそれと答える訳にはいかないが・・・・。ジャベリン自身はどうなんだい?」

 

「っ、わ、私は・・・・」

 

ジャベリンが口を開こうとすると、バサッと音が聞こえ、頭上を見上げると、一匹の鷹が飛んできて、近くの枯れ木に止まった。

 

「あの鳥・・・・」

 

見たことある鷹だと思うと、エンタープライズがやって来て、鷹はエンタープライズの肩に止まった。

 

「あっ、エンタープライズさん!」

 

「・・・・・・・・指揮官か?」

 

エンタープライズは話しかけたジャベリンに視線を向けた後、カインの方を見据える。

カインも立ち上がって、エンタープライズに向けて声を発する。

 

「はじめましてエンタープライズ。この母港の指揮官をする事になった、カイン・オーシャンだ。どうだい? 少し話をしないか?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

エンタープライズはカイン達の近くに行くと、そのまま立ち尽くし、頭の上を鷹が飛んでいた。

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

「≪(お、重い・・・・!)≫」

 

「モグモグ・・・・」

 

重い沈黙がその場を包み、さっきから一言も喋らないカインとエンタープライズ。タイガとジャベリンはこの沈黙に息苦しさを感じるが、ラフィーは何とも思わないと言わんばかり、昼飯のバーガーを食べていた。

 

「あ、え、エンタープライズも食べますか?」

 

遂に沈黙に耐えられなくなったのか、ジャベリンがお昼ご飯のサンドイッチが入ったバスケットをエンタープライズに差し出した。

 

「いや、結構だ」

 

「ああ・・・・」

 

が、断れてしまった。

 

「エンタープライズが食べないなら、僕にくれないかジャベリン?」

 

「えっ? あ、はい! どうぞ指揮官!」

 

「ありがとう。・・・・・・・・うん。美味しいよジャベリン」

 

「えへへへ」

 

カインがバスケットからサンドイッチを取り出して頬張って言うと、ジャベリンは嬉しそうに笑った。

 

「・・・・エンタープライズ。ケガしてる?」

 

「≪えっ?≫」

 

「・・・・・・・・」

 

ラフィーが言った言葉に、ジャベリンとタイガは驚き、カインはラフィーの洞察力に感心した。

 

「・・・・分かるか? どうやら直りが遅いらしい」

 

「ええっ! ちゃんと直さないと!」

 

「最低限の措置はしている。心配は無用だ」

 

「あのね。指揮官として言わせてもらうが、最低限の措置程度で、次の任務をやらせる訳にはいかないよ」

 

「っ!」

 

「敵は『セイレーン』だけじゃない。この間の、異常進化した生命体、『怪獣』だって現れたんだ。艦船<KAN-SEN>達には常に万全の状態にしておいて貰わないと作戦行動にも支障を来す。そんな初歩的なミスをしないで欲しい。エンタープライズ、君は治療が済むまでは母港で待機。これは命令だ。」

 

「・・・・・・・・」

 

カインの言葉に、エンタープライズはカインの静かに見据えるが、カインはその視線を見つめ返す。

 

「(エンタープライズさん、ユニオン最強の人、こういう人だから強いのかな。でも・・・・)」

 

ジャベリンは意を決して、エンタープライズに声を発する。

 

「エンタープライズさんは、どうしてそこまでして戦うんですか!」

 

「っ・・・・おかしな事を聞く子だな。私達は『戦う為に生まれた存在』だ。その事に疑問は無い」

 

「・・・・『つまらない生き方』だな」

 

「なんだと?」

 

カインがそう言うと、エンタープライズは訝しそうにカインを見る。

 

「『つまらない生き方』だって言ったんだ。『戦う為』? せっかく人の身体を得たんだから、『戦う』以外の『生き方』だってあるだろう。なぁラフィー?」

 

「んー、ラフィー、眠い時やる気でない」

 

「ラ、ラフィーちゃん!!」

 

『酸素コーラ』をグビグビと飲むラフィーに、カインはウムウムと頷く。

 

「ラフィーみたいに、寝たいときは寝る。お腹減ったらご飯を食べる。『酸素コーラ』を飲みたくなったら飲む。こう言う『生きる事』を堪能している方が、『生きてる』って感じがあるな。ラフィーは『戦う』以外の事をちゃんと心得ているよ」

 

「・・・・・・・・」

 

カインはラフィーの考えを肯定するが、エンタープライズはわずかに片眉を動かす。

 

「でもラフィー、友達虐められたら許せないから、そのときはちょっと本気出す」

 

「あぁ、それで良いんだよ。友達の為に戦うラフィーは正しいよ」

 

「おぉ~・・・・」

 

カインがラフィーの頭を撫でると、ラフィーは気持ち良さそうな声を上げ、カインはエンタープライズに目を向ける。

 

「エンタープライズ、君はどうなんだ? ラフィーは友達を守る為に戦う。君はなぜ戦う? 何の為に戦う?」

 

「・・・・・・・・私は・・・・・・・・」

 

エンタープライズは顔を俯かせ、それ以上の言葉を紡げなかったーーーー。

 

 

 

ーホーネットsideー

 

『アズールレーン基地』の近海。

新たに増援として派遣されるユニオンの艦船<KAN-SEN>達は、襲撃を受けた基地に向かって急いでいた。

 

「『ハムマン』、落ち着きなよ!」

 

小麦色の肌に水着のような衣装を着て、鍛え上げられた腹筋が見え、やや紫がかった黒髪に黄色い大きなリボンをつけた少女は、『ユニオン所属 重巡 ノーザンプトン』。

 

「のんびりしている場合じゃないのだ! ハムマン達の基地がピンチなのだ!!」

 

編隊を組んで海を進む艦隊の先頭を走るのは、白い髪に犬耳と尻尾をつけ、見るからに犬っぽい雰囲気のある少女、『ユニオン所属 駆逐艦 ハムマン』。

 

「あのー。だから敵艦隊は、すでに撃退したと報告が・・・・」

 

「急ぐのだーーー!!」

 

青と紫のグラデーションの長髪と、紫とピンクのこれまたグラデーションの瞳をした少女、『ユニオン所属 軽巡 ヘレナ』の言葉を遮り、ハムマンはさらにスピードを上げた。

 

「元気だな。昨日からあのテンションだよ」

 

「幽霊さん、もうダメ、ヘトヘト・・・・」

 

呆れるノーザンプトンに同意するのは、足の膝まで届く黒いスーパーロングヘアーにスカイブルーの瞳を持ち、大き過ぎて腕の裾が垂れている制服を着て自らを『幽霊さん』と自称するこの少女は、『ユニオン所属 軽空母 ロング・アイランド』。

 

「敵を退けたのは、『ロイヤル』から転属された指揮官が指揮をとって、あの武勲艦、エンタープライズのようですね」

 

薄幸そうな表情をし、青い服装をし、黒髪のロングストレート、白いタイツをはき、帽子を被った少女、『ユニオン所属 戦艦 アリゾナ』。

 

「エンタープライズって、『ホーネット』。貴女の・・・・」

 

アリゾナの言葉に、ノーザンプトンは自分の横を走る艦船<KAN-SEN>に目を向けた。

 

「いや~。凄い姉を持つと、大変だわ~」

 

陽気に答えたのは、黒一色の服装と言うよりも、白い肌にナイスバディの肢体に、黒ビキニとホットパンツと扇情的な格好に、裏地が黄色の黒いマントを肩にかけ、見るところ、スズメバチのようなカラーリングに、金髪のツインテールにテンガロンハットを被った少女、『ユニオン所属 空母 ホーネット』。エンタープライズの姉妹艦である。

 

「なに呑気におしゃべりしてるのよ! 敵がくるかもしれないでしょうっ!!」

 

「ま、ハムマンの言うことも一理あるよね。急いだ方が良さそうだ!」

 

ハムマンに急かされ、ホーネット達もスピードを上げた。

 

ーーーーキン・・・・!

 

が、その時、ヘレナの髪にアクセサリーとして付けている『SGレーダー』が異変を検知した。

 

「っ! みんなっ!」

 

「ヘレナ? っ!!」

 

「あぁ、ちょっと遅かったようだね!」

 

ホーネット達が立ち止まると、眼前に、2隻の空母が立ち塞がった。

 

『重桜所属 空母 翔鶴』と『重桜所属 空母 瑞鶴』だ。

 

「『重桜五航戦』・・・・!」

 

「うぅっ、強そうだよ・・・・」

 

「雑魚どもめ、このハムマンがやっつけてやる!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ホーネットは2隻の空母を見据えて、渋面を作っていた。

 

 

 

ー翔鶴sideー

 

「あぁ、可愛そうな私達! あんな意地悪な先輩<赤城>に目をつけられるなんて! そう思わない? 瑞鶴?」

 

泣き真似をしながら赤城に対する毒を吐くのは、鶴を彷彿させる着物に身を包んだ長い銀髪の女性、『重桜所属 空母 翔鶴』。

翔鶴は妹艦でもある瑞鶴に目を向けると、瑞鶴は先輩である赤城に悪態をつく姉に向けて口を開く。

 

「真面目にやろうよ翔鶴姉。この戦いで一航戦の先輩に、私達の実力を認めさせなくちゃ!」

 

「もう、瑞鶴は本当に素直なんだから・・・・。それで、本当なの? “指揮官がアズールレーン側にいたって”?」

 

『海守トモユキ指揮官』の所在を翔鶴が聞くと、瑞鶴は顔を俯かせて頷いた。

 

「うん・・・・間違い無いよ。遠目だったけど、あれは間違いなく指揮官だった・・・・」

 

「・・・・指揮官が今の重桜の有り様を見たら、どれだけ失望するかしらね・・・・?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

少し辛そうに呟く姉と同じように、瑞鶴も顔を曇らせた。

“重桜がアズールレーンを脱退する事に反対していた派閥の筆頭だったトモユキ指揮官”。

もちろん五航戦の二人も、一航戦の赤城と加賀もその事は重々承知だった。

だが、トモユキ指揮官が行方不明となってから、少しずつ、そして確実に、重桜艦隊に行く道が歪み初めている事に、翔鶴も瑞鶴も薄々気づき始めていた。

 

「でも、やるしかないんだ・・・・。指揮官がアズールレーン側に行ったんなら、無理矢理でも、殴ってでも連れて帰る! そうすれば、重桜もきっと、きっと元に戻るはずだよ!」

 

指揮官が戻って来てくれれば、また皆で笑い合い、騒がしくも楽しかった、あの頃の重桜に戻れるかもしれないと、瑞鶴はそんな一縷の希望を信じていた。

妹のそんな純粋な心情を察したのか、翔鶴も肩をすくめてから、口を開いた。

 

「まぁ確かに。指揮官が戻ってきてくれれば、あの性格の悪い赤城先輩も少しは大人しくなるかも知れないわね。・・・・それじゃ瑞鶴! お姉ちゃんが守ってあげるから! 行きましょうっ!」

 

「うん! お姉ちゃんがいれば、何も怖くないっ!!(だから、少しだけ待ってて指揮官! 絶対に、絶対に連れて帰るから!!)」

 

翔鶴が笛を、瑞鶴が刀を抜刀して、空母を艤装へと変換し、戦闘を開始したーーーー。

 

 

 

ーカインsideー

 

昼食を終えたカインは、執務室に戻ると同時に、『ユニオン』の増援部隊が重桜の五航戦と遭遇した事を報告され、主要メンバーを集めた。

 

「ホーネット達の援護には、クリーブランドを旗艦に、『ユニオン』艦船<KAN-SEN>達と、『ロイヤル』の艦船<KAN-SEN>の一部を追加して向かわせよう。ウェールズ、『陛下』達には?」

 

「『陛下』達も指揮官の指示通り、既に向かっています」

 

昨日の内に手を打っておいたカインは、ウェールズの報告を聞いていると、執務室の扉が乱暴に開かれ、扉からイラストリアスとユニコーンがやって来た。

『ロイヤル淑女』と言ってもいいイラストリアスの慌てた様子を見て、カインは嫌な予感がし、イラストリアスが発した言葉を聞いて、それが的中した。

 

「指揮官さま! クリーブランド様がエンタープライズ様を追って・・・・!」

 

「やっぱりか、たくっ・・・・! ウェールズ、僕も出る。母港の指揮は任せるぞ」

 

「了解しました。指揮官、お気をつけて」

 

「ああ」

 

『指揮官専用 量産型艦船』の元に向かいながら、カインはジャベリンとラフィーに連絡をする。

 

「ジャベリン。ラフィー。『ユニオン』の増援部隊が重桜に攻撃を受けている。クリーブランドとエンタープライズが向かっているが、エンタープライズは損傷がまだ直っていない、すまないが護衛を任せるぞ!」

 

《り、了解しました!》

 

《状況了解・・・・》

 

二人との通信を切ると、カインは『とある艦船<KAN-SEN>』に連絡を入れた。

 

「『ベル』、聞こえるかい? 『ベル』・・・・」

 

《はい。如何なさいましたか? 『ご主人様』》

 

「少し厄介な事態になった。できるだけ急いで向かってくれ。いざとなったら『アレ』を使う事も許可する」

 

《承知いたしましたご主人様。では、〈ノブレス・ドライブ〉。解禁いたします》

 

カインは、“記憶を失ってから一番お世話になった艦船<KAN-SEN>”に連絡した。

 

 

 

 

ー???sideー

 

薄暗い通路の中を“ある異形”が歩いていた。青い蝉のような姿をしたその“異形”は、『マーキンド星人』。

 

『さぁ~て、『オークション』の始まりですよぉ~』

 

マーキンド星人は、通路の先にある光が漏れていた出口に向かって歩き出していった。

 

 




オリジナル能力・〈ノブレス・ドライブ〉。どんな能力かは、次回で解禁で。
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