アズールレーンT   作:BREAKERZ

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鉄血編はこれにて終了。


【壊滅】黒き野望は霞へと消えて

ー綾波sideー

 

綾波達艦船‹KAN-SEN›の視力でも、眼の前でフーマとトレギアによる高速戦闘を捉える事はできなかった。

 

ーーーーキン! キン! キン! キン! キン!・・・・。

 

しかし、所々で聞こえる衝突音が、戦いが繰り広げられている事を教えてくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

ーフーマsideー

 

フーマとトレギアは、加速した世界で激しい戦いを繰り広げていた。

 

『ハッ! セヤッ!』

 

『ふっ! 『オーブの光』から、新しい力を手に入れて気分は最高かい? まるでオモチャを貰ってはしゃいでいる子供のようだよ!』

 

『へッ! そう思うのはテメェの勝手だがな!』

 

『『力を持つ自分達達こそ宇宙の守護者だ』と言いたいのかな!?』

 

『『力』さえあれば宇宙の守護者になれるなら、あのオーブダークだって宇宙の守護者になってるだろうよ!』

 

トレギアの煽りとも嫌味とも取れる言葉の数々を、フーマは応じる。

 

『あの野郎の愚行を見て思った! 『力』自体に善悪なんて無いんだよ! あの野郎の使っていたのは、ウルトラマンオーブとほぼ同じの『光の力』だ!』

 

そう。オーブダークの『力』自体は、オリジナルであるウルトラマンオーブオリジンとほぼ同じ戦闘能力を有していた。しかし、オーブダークはその『力』を、己の歪んだ英雄願望と自己顕示の為だけにしか使えなかった。

 

『どんなに凄い『力』を持ってもな! それを使う『本人』次第なんだよ! ウルトラマンオーブ! ウルトラマンジード! アイツらだって! 『闇の力』を正しい事に使っていたんだからな!』

 

『ーーーーふん! あんな、『光』も『闇』も受け入れるなんてほざく『偽善者』共めが! そんな物、なんの役にも立たないのに!』

 

『お前がなんでそんなに、『光』も『闇』にも意味がない、なんてほざいているが、俺から言わせればーーーーお前とんでもなく、つまらねえ生き方してんぜ!!』

 

『っ! 貴様!!』

 

『おっと! セヤッ!!』

 

トレギアがスピードを上げるが、フーマも更に速度を上げていく。

 

『ハァァァァァァ!!』

 

『セェェェェェェ!!』

 

トレギアは両腕から放つ十本のカッター光線『トレラテムノー』を放つ。

フーマは両手に『フーマリントウ・ドトウ』と『フーマリントウ・ジンライ』持ち、独楽のように回転しながら突っ込む。

そしてその刹那ーーーー凄まじい閃きが、艦船‹KAN-SEN›達の眼前に走った。

 

『『・・・・・・・・』』

 

と、ソコで、フーマもトレギアが背中を向け合って立ち止まっていた。

そしてーーーー。

 

『くっ・・・・』

 

フーマがよろけるが、足に力を込めて、ズシッとアスファルトを力強く踏み持ち堪えた。

 

『フッフッフッフッフッ・・・・所詮、その程度だようね。『オーブの光』に与えられた『力』なんてーーーー』

 

『ーーーーチッ。“二十は届かなかったか”』

 

『はぁ? 何を(ザシュッ)ーーーーえ?』

 

ーーーーザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッ。

 

『っっっ!!! グァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

トレギアの身体に幾つもの光の線の傷が走ると、トレギアは悲鳴を上げて両膝を付いた。

 

『こ、これは・・・・!?』

 

『テメェの目には、もう俺の剣速は見抜けなかったようだな?』

 

『ーーーーま、まさか・・・・! 私が、見抜けなかったなど・・・・!! ぐぅぅっ!!』

 

トレギアは魔法陣を展開して、その場から離脱した。

 

「指揮官! トレギアが逃げます!」

 

『「落ち着け綾波。今はアイゼーン・マコットラーの始末をつけるのが先だ」』

 

カイン指揮官が綾波にそう言った

 

 

 

 

 

 

ーアイゼーン・マコットラーsideー

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・!!」

 

アイゼーン・マコットラーはすっかり軍服がボロボロになり、勲章も落ちたり壊れたり、土汚れに穢れながらまるで脅えるネズミのようにコソコソと隠れながら、その場から逃げようとしていた。

 

「(ーーーーまだだ! まだ私には、俺にはまだ『アレ』がある! 『アレ』の所に行けば、“この世界から逃げられる”! 『ノイレッドアクシズ』と言う『帝国』を造れなかったのは残念だが、“別の世界”で造れば良いだけだ! 『ウルトラマンベリアル』と言う『卑劣な裏切者』だって、『帝国』を創れたんだ、俺ならもっと素晴らしい『国』を作れる! こぉんな、『真のウルトラマン』を理解できない無知蒙昧な愚民しかいない世界なんて、精々トレギアの遊び場として(ガツン!))どわっ!? ブベヘェッ!?」 

 

内心で悪態を吐きまくりながら、逃げようとするアイゼーン・マコットラーだが、『何か』に足を引っ掛けられ、盛大に地面にキスをした。

するとその拍子に、『オーブリングNEO』を落としてしまう。

 

「あぁっ・・・・! こ、このパターンは・・・・!!」

 

『ルーブ世界』でも経験した状況に顔を青ざめるアイゼーン・マコットラーが、倒れたまま足を引っ掛けた相手に振り向くと。

 

「ーーーーあ〜ら、ドブネズミみたいにコソコソと何処かに逃げようとしている無様なヤツだと思ったら、“我々〈鉄血〉の偉大なる総統閣下(笑)”のアイゼーン・マコットラーじゃないの?」

 

いつも通りの蠱惑的な笑みなのだが、その目は冷徹な光を放ちながら、アイゼーン・マコットラーを見下ろすオイゲンであった。

 

「うぅ、ううっ! ううぅぅぅっ!!」

 

アイゼーン・マコットラーは唸り声を上げながら四つん這いになって駆け出し、『オーブリングNEO』を手に取ろうとした。

しかしーーーー。

 

ーーーーシュワァァァァ・・・・。

 

「えっ!?」

 

突如、『オーブリングNEO』がその形を光の粒子に変えると、何処かに吸い込まれるように流れていき、その先には、『オーブレット』を嵌めた腕を掲げるカイン指揮官と、その隣には人間サイズになった思念体のフーマ、そしてアズールレーン艦船‹KAN-SEN›と鉄血艦船‹KAN-SEN›が揃っていた。

 

 

 

 

ーフーマsideー

 

「なっ、何で私の居場所が!? いや、そんな事どうでもいい! か、返せ! 私のオーブリングNEOを返せっ!!」

 

アイゼーン・マコットラーがオーブリングNEOを返せと喚くが、その様はまるで、オモチャを取られて癇癪を起こしている幼稚な子供のようであった。

 

「ーーーー返せって、元々オーブリングNEOはオーブレットから『力』を抽出して作ったんだから、それを取り返しただけだ」

 

『それと居場所だけどな。このオーブレットが教えてくれたんだよ。オーブリングNEOのある所、つまりテメェの居場所をな!』

 

カイン指揮官とフーマがそう言い、カイン指揮官が前に出る。

 

「ーーーーアイゼーン・マコットラー、嫌、『精神寄生生命体チェレーザ』。お前はもう終わりだ。これから〈鉄血〉軍に引き渡し、軍法会議にかけられる」

 

「なっ!?・・・・ふ、ふざけるなぁ!! 何故私が軍法会議なんぞにかけられなければならないのだ!?」

 

「・・・・お前がオーブダークとして活躍する為に起こしてきた怪獣騒動の責任を取れって言ってるんだ。一応〈鉄血〉の総統としての矜持が僅かに残っているのなら、潔く縛につけ」

 

「うぅぅぅ、うるさいうるさいうるさいうるさぁぁぁぁいぃ!! まだ私は負けていない! 私にはまだこのーーーー『AZジャイロ』があるのだ!!」

 

『っ!』

 

アイゼーン・マコットラーは『鋭』と記されたグルジオキングの怪獣クリスタルを嵌めて構える。それを見た一同が距離を空けようと動き出そうとする。

が、しかしーーーー。

 

ーーーーバチッ・・・・バチバチッ!

 

「え・・・・?」

 

突如、AZジャイロから火花が飛び散る音がして、アイゼーン・マコットラーに、カイン指揮官と艦船‹KAN-SEN›達が訝しそうに目を細めてジャイロを見ると。

 

ーーーーバチバチッ! バチバチバチバチッ!!

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

ジャイロから激しい火花が飛び散りスパークし、堪らずアイゼーン・マコットラーが手放して地面に落ちると。

 

ーーーーバチバチバチバチバチバチッ、ズガァァァァァァァンン!!

 

大きな火花を盛大に散らせながら、ジャイロは内部から破裂するように爆散した。その際、グルジオキングのクリスタルも、何処かへ吹き飛んでいってしまった。

 

「あ、あぁ・・・・あぁあああああああああああああああああああああ!!!!」

 

アイゼーン・マコットラーは、頭を両手で押さえ、この世の終わりのような顔で悲鳴を上げると、プスプスと、白い煙を上げて粉々になったジャイロの破片を必死に掻き集めた。

 

「ジャイロが! 僕の、僕のAZジャイロがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そして、破片を手にとって、くっつけようとするが、勿論完全に砕かれた物がくっつく訳など無かった。

 

「・・・・明石。これはどういう事?」

 

「にゃ~・・・・これは、かなり無理して使ってたのかも知れないにゃ。元々オーブリングNEOに内包されたエネルギーを、『オーブの光』、ってのから貰った『正当なアイテム』じゃにゃい『紛い物の偽物』で使っていたから、ジャイロ自体が耐えられなくなって、爆発したんだにゃ」

 

赤城の問いに、明石は足元に転がってきたジャイロの中央部分を小型顕微鏡で観察し、技術者としての意見を言った。

 

「・・・・そんな・・・・私の、私のAZジャイロが・・・・私の、『ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツTHE ORIGIN SAGA』がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

アイゼーン・マコットラーは恥も外聞もなく、その場で崩れ落ち、泣き出してしまった。

その、あまりにも惨めな姿に、先程まで捕まえて報いを与えてやると息巻いていた艦船‹KAN-SEN›達も、興が冷めたのか憐れみの視線を向けていた。

そんな中、カイン指揮官はやれやれと言いたげに、アイゼーン・マコットラーに近づく。

 

「ーーーーこれでお前の野望も終わった。観念して縛につけ」

 

「・・・・・・・・・・・・分かったよ、もう、私の負けだ・・・・手を取ってくれないか? カイン・オーシャン。立てないんだ」

 

「ああ・・・・」

 

カイン指揮官が、手を伸ばしたアイゼーン・マコットラーの手を取った。

 

 

 

「・・・・・・・・(ニヤリ)」

 

 

 

 

その時、アイゼーン・マコットラーが小さくだが、薄い笑みを浮かべたのを、エンタープライズにベルファスト、赤城にビスマルクと言った歴戦の兵達は見逃さなかった。

 

『指揮官(様)!!/ご主人様!!』

 

「えっ?」

 

「ーーーーかかったなぁ! かはぁ!」

 

「っ! うわぁあああああ!!?」

 

エンタープライズ達の声にカイン指揮官が訝しそうに眉毛を寄せると、アイゼーン・マコットラーがニンマリとしてやったりの笑みを濃くし、目を真っ赤に光らせると、目や口から黒いガス状のようなものが飛び出し、カイン指揮官の目と口の中に入っていった。

 

『兄ちゃん!』

 

『指揮官(様)!!』

 

フーマと艦船‹KAN-SEN›達が呼ぶが、カイン指揮官の身体に黒いガスが入っていく。

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・くっ、くくくくく。大成功!!」

 

黒いガスがカイン指揮官に入り切ると、アイゼーン・マコットラーは、まるで糸の切れたマリオネットのようにガクンと倒れ、手を離したカイン指揮官は数瞬の間、顔を俯かせてピタッと、一時停止したように動かなくなるが、すぐにニンマリとしたように笑みを浮かべて、バッと顔を上げると、その目は赤く光っていた。

 

「し、指揮官・・・・」

 

『違ぇよ綾波の嬢ちゃん。兄ちゃんは今、アイゼーン・マコットラーにーーーーチェレーザに取り憑かれちまった!』

 

「くくくくく、その通ぉぉぉぉりっ!!」

 

フーマがそう言うと、カイン指揮官、否、チェレーザは身体を動かす。

 

「『真のヒーロー』は決して諦めない! 希望を捨てない! 何度でも不屈の精神を以て! 不退転の心で立ち上がる! そう! それこそ、『真のヒーロー』なのだ!」

 

「指揮官の身体で変な英雄持論を言わないで下さい!」

 

「指揮官を返して・・・・」

 

カイン指揮官の身体で無駄にエキセントリックな発言と挙動をするチェレーザに、ジャベリンとラフィーが声を発する。

 

「アイゼーン・マコットラーは、どうなったのですか?」

 

「あぁん?」

 

ニーミが、チェレーザが抜けて倒れてしまったアイゼーン・マコットラーの身体について聞くと、チェレーザは、ハン、と鼻で笑った。

 

「ーーーーもうこんな身体用はない! 軍法会議にかけたいなら、勝手にかけなっ!!」

 

チェレーザはそう言うと、アイゼーン・マコットラーの身体を思いっきり蹴り上げると、アイゼーン・マコットラーの身体はゴロゴロと転がっていった。

 

「あっ! なんて事を!」

 

「あなた! この身体は長い間依り代にしていた身体でしょう? 何でこんな扱いができるの!?」

 

「ははははは! なぁにを言ってるのかね? こんなうだつの上がらない美術教師志望の冴えない美大生を、『四大国家』の一角の総統閣下にまで上り詰めさせてやったのだ! 感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いはないな!」

 

一方的に取り憑き、十数年も鉄血総統として利用し、人生を歪めてきた身体に、何の愛着も気遣いもしないで踏みにじるチェレーザに、その場にいた全員が、下火になっていた『義憤』が再び燃え上がってきた。

 

『ーーーーテメェってやつは、本当に情けねぇ野郎だな』

 

と、そんな中、フーマが声を発する。

 

「はん! 貴様のような『負け犬の息子』ふぜいに、情けないだなんて言われる筋合いはないわ!」

 

もうすでに、自分の方が『恥知らず』、『裏切り者』、『負け犬』となっているのに、ソレに気付いていないチェレーザはフーマを指差して喚く。

が、フーマはソレに怒りを抱かず、冷静に応える。

 

『いいや、言わせてもらうぜ。他人の身体を依り代としないと何もできない癖に、不利になると依り代に全部の『責任』を押し付けて自分だけ助かろうとする。テメェは本当に情けねぇ野郎だ! 『オーブの光』がテメェを拒絶したのも分かるってもんだ!』

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜!! 黙れぇぇぇっ!! 黙らないとーーーーこの人間の首を掻っ切ってやるぞぉっ!」

 

チェレーザは割れていた窓ガラスの破片を手に取ると、カイン指揮官の首筋に押し付けた。

 

『今度はまた人質かよ。進歩のねえ野郎だな』

 

「黙れって言ってるのが聞こえないのか!?」

 

『ーーーーやってみろよ。できるならな!』

 

フーマが何の迷いなくそう言うと、チェレーザは一瞬目をパチクリさせながらも、ニンマリと笑みを浮かべ、嘲弄するように吼える。

 

「は、はは、ハハハハハハハハハ!! 見捨てるって事だなぁ!? 散々私を偽者呼ばわりしておいて、貴様も最低な野郎じゃあねえか! それじゃあやってやーーーーあれ?」

 

チェレーザはガラスの破片でカイン指揮官の首の頸動脈を切ろうとした。がーーーーカイン指揮官の身体が一向に動かず、間の抜けた声を発した。

 

「ーーーーか、身体が・・・・動かない・・・・!?」

 

カイン指揮官の身体を動かそうと藻掻いているが、微動だにする事すらできなかった。

 

「ど、どうなってるだ!?」

 

『馬鹿かお前は?』

 

戸惑っているチェレーザに、フーマが吐き捨てるように言う。

 

『今のお前は、『精神寄生生命体』として、兄ちゃんの身体の精神に寄生する為に、“俺らと同じ、思念体となっているんだろう”?』

 

「ーーーーーーーーはっ!」

 

ソコまで言われて、ハッと気付いた。

 

「ま、まさか・・・・まさかまさかまさかっっ!?」

 

チェレーザがカイン指揮官の内部に意識を向けるとソコには。

 

『ーーーーそう言う事だ!』

 

『ーーーー我々の存在を忘れていたな!』

 

『な、『恥晒し』に、『筋肉ダルマ』!?』

 

そう。同じ思念体となっているタイガとタイタスによって、動きを抑えられていた。

 

『追い詰められた貴様が、トモユキの身体に逃げ込むのでは無いかと警戒して、ずっと待機していたのだ!』

 

『タイタスの予測通り! 卑怯者のお前らしい行動だな!』

 

『〜〜〜〜!! だ、黙れぇっ!! 貴様らのような『親の七光り』に『裏切り者の息子』などにぃ!!』

 

動きが読まれていた事に、チェレーザが喚くが。

 

『ーーーー『七光り』だの、『〜〜の息子』だの・・・・テメェの御託は聞き飽きたっ!!』

 

と、ソコで、フーマが勢いを付けたドロップキックをチェレーザに叩き込んだ。

 

『俺達の相棒の身体から、出ていけーーーー!!』

 

『ブブボォっ!!』

 

チェレーザーはそのままカイン指揮官の身体から、飛び出てしまった。

 

「ーーーーくはっ!」

 

「指揮官!」

 

「ご主人様!」

 

綾波とベルファストがすかさずカイン指揮官の身体を支えた。

 

「大丈夫か指揮官?」

 

「ーーーーゲホッゲホッ、タバコを吸った時ってこんな感じかな? 肺の中までスッゴイ煙ったい・・・・!」

 

少しの間咳き込むカイン指揮官が、改めてチェレーザを見る。

 

『うぅぅ、ううっ、うぅぅぅぅぅぅっ・・・・!』

 

怯えたような、威嚇するような、悔しがるような唸り声を上げるチェレーザ。

周りに目を向けると、全艦船‹KAN-SEN›達が艤装の砲口をチェレーザに向けていた。もはやチェレーザーに対して、一抹の慈悲も情けを持たないと言うのが見て取れた。

 

「・・・・本当に、救いようがないな。お前さんって」

 

『うううううう!! だ、黙れ! まだ諦めないぞ! 私は不死鳥の如く何度も蘇り! 必ずや『真のウルトラマン』の存在を! 貴様らに見せつけてやる!!』

 

「ーーーーそれじゃ、『別の世界』でやれ。『この世界』では、ウルトラマンオーブダークはーーーー『ペテン師』。『卑劣漢』。『恥晒し』。『裏切り者』。『負け犬』と、今までお前がタイガ達にしてきたのと同じ評価がされたからな。あ、『〜〜の息子』って付かない分、それ以上だけどね」

 

『ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』

 

カイン指揮官の評価に、チェレーザはさらに唸り声を上げ、呪い殺さんばかりの視線を向けてきた。

が、カイン指揮官の前に、タイガとタイタスとフーマの思念体(人間サイズ)が出てくる。

 

『わ、私を殺すつもりかっ!? この『真のウルトラマン』たる私を殺す事が、どれだけの宇宙の損失にーーーー』

 

「そんな事はしないよ。お前なんてーーーー殺す価値もないっ!!」

 

『『ストリウムブラスター』!!』

 

『『プラニウムバスター』!!』

 

『『極星光波手裏剣』!!』

 

『ぎょへええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・』

 

トライスクワッドの必殺技を受けて、チェレーザは空の彼方にキランと消えていった。

 

「ーーーーさて、と。これから大変だね」

 

先程までの戦闘でボロボロになった街を見て、カイン指揮官が呟くと、〈鉄血〉艦船‹KAN-SEN›の旗艦として、ビスマルクが前に出た。

 

「カイン・オーシャン指揮官。この度は、我ら〈鉄血〉の不始末の尻拭いを手伝っていただき、誠に感謝はつきない」

 

「いやいや。君達も直接的とはいかなくても、手を貸してくれて助かったよ」

 

「そう言って貰えると救われる。ーーーーそれで、図々しいのは承知で頼みたい事がある。我々〈鉄血〉も、アズールレーンの傘下に加えてほしいのだ。頼む」

 

ビスマルクが頭を下げると、他の鉄血艦船‹KAN-SEN›達も頭を下げた。

するとカイン指揮官は、フッと笑みを浮かべる。

 

「ーーーー勿論。歓迎するに決まっている!」

 

そう言って、ビスマルクに向けて手を差し出すと、ビスマルクは小さく笑みを浮かべて、その手を握り握手する。

 

「ーーーーこれで『四大国家』がアズールレーンに入ったな」

 

「ええ。他の陣営との交渉も楽になるでしょう」 

 

エンタープライズとベルファストがコッソリと会話すると、綾波がニーミに近づく。

 

「ニーミ」

 

「あ、綾波・・・・」

 

「これで、仲間です」

 

綾波もニーミに向かって手を差し出すと、ニーミめ最初はモジモジしていたが、オイゲンに背中を押され、オズオズとだが、綾波の手を取り握手した。

 

「よ、よろしくお願いします・・・・」

 

「はいです」

 

「これからよろしくねニーミちゃん!」 

 

「きゃっ!」

 

「綾波と仲良くするなら、ラフィー達とも仲良くする・・・・くぅ・・・・」

 

「ちょっ、何ですかその理屈!? ちょっと、寄りかからないで下さーい!」

 

『あははははははははははははははははは!!』

 

綾波の背後からニュッと出てきたジャベリンに驚き、更にいつの間にかニーミの後ろに現れたラフィーが、ニーミに寄りかかりながら眠り、退かしたいが綾波に片手を握られたニーミは叫び声をあげ、その場にいた全員から笑い声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、アイゼーン・マコットラーは元の人格に戻り、エキセントリックさがなくなり、素朴で誠実な人格に戻っていた。

しかし、身体をチェレーザに取り憑かれてはいたが、記憶は所々残っており、自分が『とんでも無く悪い事』をしたと自覚し、軍法会議にかけられ、〈鉄血〉からの国外追放にされた。

気の毒と思ったカイン指揮官の計らいで取り敢えず、〈ロイヤル〉の辺境の小さな村に亡命させ、そこで静かな隠遁生活を送る事になった。

当の本人は祖国に帰れない事を悔やむが、それが自分の罪なんだと割り切り、農業といったスローライフをしながら、大好きな絵を描く事に専念した。

後に、ウォースパイトといった芸術を学びたい艦船‹KAN-SEN›達の為に、カイン指揮官がリモートによる『特別講師』てしてアイゼーン・マコットラーを雇い、生徒となる艦船‹KAN-SEN›達(鉄血艦船‹KAN-SEN›も含む)の芸術センスを磨く手伝いとなり、多くの生徒達から慕われるようになり、さらに亡命先の村で、一番の器量良しで美人の女性と結婚し、多くの子供達を得て幸せな人生を送るのは、そう遠くない未来の話であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーチェレーザsideー

 

そして、とある海域の小さな砂浜に生えた椰子の木の下にて。

 

『ーーーーショウ・・・・チクショウ・・・・チクショウ・・・・!』

 

チェレーザは椰子の木に寄り掛かりながら、メソメソと泣いていた。

 

『ドイツもコイツも、ウルトラマンの名を語る『偽トラマン』癖に・・・・! ウルトラマンの事を全く理解していない無知蒙昧共の癖にぃぃぃぃっ!』

 

『ーーーー無様だねぇ。人の事を言えないけど』

 

『っっ!! と、トレギア!?』

 

トライスクワッドとカイン指揮官達への恨み言を言っていたチェレーザの後ろから、全身切り傷だらけのトレギア(人間サイズ)が現れた。

 

『(こ、コイツよくも私の前にいけしゃあしゃあと!ーーーーいや、今はそんな事よりも!)』

 

チェレーザはトレギアへの怨み節を叫ぼうとするが、それをグッと呑み込んで、トレギアに擦り寄るような声を発する。

 

『と、トレギアくん! 私は君を殺そうとした事は、先程私を倒した事で、お互いにチャラにしようではないか! 君は確かセイレーン達とも手を結んでいる! 今はお互いに力を合わせ、あの『偽トラマントリオ』と『無知蒙昧な愚か者共』に鉄槌を下そうではないか!』

 

『ーーーーふぅん・・・・』

 

チェレーザの意見に、トレギアは腕を組んで考えるような素振りを見せる。

それを見て、チェレーザはキランっ、と目を光らせた。

 

『ーーーー隙あり!』

 

チェレーザはトレギアの身体を包み込むと、その体内に入っていった。

 

《ワーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! やったぞ! トレギアの身体を奪ってやったぞぉ! これで復讐をーーーーな、なんだここは!?》

 

トレギアの内部を見て、チェレーザは驚愕に目を見開く。ソコは・・・・一片の光の無い闇の世界だった。

 

《な、なんなんだこれはっ!? 何と言う凍え切った深層だ!? 底無しの闇! コイツは一体っ!!??》

 

《ーーーー君ごどきが、私の中に軽々しく入ってきて欲しくないな》

 

《っ!》

 

チェレーザが振り向くと、トレギアの両目が闇の世界に怪しく光っていた。

 

《あ、あぁ・・・・!》

 

《消えな》

 

トレギアがチェレーザに向けて、両目から破壊光線『オプトダクリス』を放った。

 

《ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっっっ!!!!》

 

チェレーザの悲鳴が、トレギアの深層心理世界に響き渡った。

現実に戻ると、トレギアは回収していたグルジオキングの『怪獣クリスタル』を握り締めた手が光り、その手を開くと、『怪獣リング』となったグルジオキングが握られていた。

 

『ーーーーふぅ。まぁ、それなりに面白い余興だったよ。チェレーザくん』

 

トレギアは、もう片方の自分の手の平と同じくらいのサイズとなったチェレーザを見下ろすと、ソっとその手から、チェレーザを砂浜に落とすと、その場から去っていった。

 

『ああ、あぁっ・・・・! 嫌だぁ・・・・! 嫌だ嫌だよぉ・・・・! こんな終わり方なんて嫌だぁ・・・・! どうして、僕がこんな目に合うんだよぉ・・・・! 僕は、僕はただ、『ウルトラマン』になりたかった、だけなのにぃぃ・・・・! 助けてよぉ・・・・! 助けてくれよぉぉぉぉぉ・・・・! ウル、トラマ・・・・ン・・・・』

 

その言葉を最後に、チェレーザのガス状の身体は完全に消えていく。

誰にもその最後を知られず、誰にもその最後を見届けてもらえず、誰にもその最後を惜しまれず、この世から完全に消滅した・・・・。




英雄に憧れ、歪みきった願望を叶える為に、多くの人達を踏み躙ってきた男の末路です。
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