ーオデッサsideー
オデッサは、薄暗い営倉のベッドの上で、自分の『絵』を手にとって見つめていた。
「アンタ・・・・」
「・・・・アデル・・・・。俺は、俺は・・・・!!」
「・・・・アンタの、好きなようにしなさいよ」
「アデル・・・・」
オデッサはアデルの優しい笑顔を見ると、アデルはコクリと頷き、オデッサは『絵』をアデルに渡すと見張り役の艦船‹KAN-SEN›に向けて紙とペンを要求した。
ーカインsideー
「・・・・・・・・」
カイン指揮官は執務室の机に座ったまま、窓の外の夕暮れに染まりつつある景色を見つめていた。
「指揮官」
「綾波・・・・?」
「小田さん・・・・オデッサから、指揮官宛に手紙が出されたそうです」
「・・・・・・・・」
綾波達が執務室に入ってきて、カイン指揮官に手紙を渡すと、手紙を広げて読み上げる。
「『カイン・オーシャン指揮官殿。
今まで本当にありがとうございます。今日、俺は全てを賭けて戦う。俺と、ウルトラマンとして、全力で戦って欲しい。戦いを辞めて半世紀、妻と共にこの星でとても楽しく過ごす事ができた。美しい自然や愛という物に触れる事ができた。このまま人間として生涯を終えるのも悪くない。そう思うようになった。そして、キミとも友人になれた。本当に楽しかった。しかし、この星でまた出会ってしまったんだ。遠い昔、俺の誇りを奪い去った、キミという『光の巨人』に。キミの勇姿を見る度に、『本当の強さとは何か?』『本当の誇りとは何か?』を自問自答した。そして、どうしようもなく胸が熱くなった。そんな自分自身を否定し続けてきた。『俺はもう戦いは沢山だ』と、言い聞かせてきた。でも、俺の相棒が、ブラックキングが気づかせてくれたんだ。『お前の本当の望みは何だと?』と、『本当は誰なんだ?』と・・・・。やはり、俺は自分の気持ちに嘘をついていた。もう一度あの光の巨人と戦いたい。今度こそ勝つ。戦士としての誇りを取り戻す。本当に身勝手で申し訳ない。しかし、コレが俺の出した答えなんだ。カイン指揮官。この事で悲しんだり、自分を責めたりしないで欲しい。キミには、コレまでこの母港で楽しい思い出を作らせてもらった。あの絵は未完成だったけど、キミと見た夕陽が一番美しかった。ソレだけで十分だ。カイン指揮官。キミと艦船‹KAN-SEN›の皆に会えて、本当に良かった・・・・。
追伸。
コレは俺の勝手な独断によるものであって、妻であるアデルには何の関係もない事です。どうか、残される妻には寛大な措置をして欲しいと、誠に勝手ながら、カイン・オーシャン指揮官殿に切にお願い申し上げます。ーーーーナックル星人オデッサ』」
「指揮官・・・・コレって・・・・!?」
「っ! ニーミ! 営倉にいる艦船‹KAN-SEN›達に連絡! オデッサを取り押さえるんだ!」
カイン指揮官が即座に指示を出したその時・・・・。
ーーーーグシャァァァァァァァァンン!!
営倉のある区画から、白い体毛に包まれた赤い斑点のような突起が出て、顔は能面な風貌の人型の異星人、『暗殺宇宙人・ナックル星人オデッサ』である。
「小田、さん・・・・!」
「指揮官・・・・」
「〜〜〜〜!! バッカ野郎!!」
[カモン! ウルトラマンタイガ!!]
『シュァッ!!』
ジャベリンとラフィが呟くと、カイン指揮官は絞り出すような言葉を零していてからウルトラマンタイガと変身し、ソレを見たナックル星人オデッサは自分の手の平にいたアデルを地上に降ろすと、改めてタイガと対峙した。
『・・・・・・・・』
『「・・・・・・・・」』
両者の間に僅かな沈黙が支配するが、ソレはすぐに終わりを迎え。
『フンンッ!!』
『「オオオオオオオオ!!」』
夕陽が包む世界で、二人の巨人は組み合った。
ーアデルsideー
そして営倉のあった区画では、母港のほぼ全員の艦船‹KAN-SEN›達に囲まれているアデルが、タイガと戦うオデッサの姿を見て、ボソリと呟いた。
「・・・・嫌なものだね、戦士って言うのは・・・・」
「アデルさん・・・・?」
「やっと穏やかに暮らせると思っても、身体に染み付いてしまった戦いの臭いを消し去る事ができない。そんなんだから、戦いに身を投じてしまう生き方しかできないくなっちまうんだね・・・・」
『・・・・・・・・・・・・』
綾波は、否、綾波だけでは無かった、この場にいる艦船‹KAN-SEN›全員が、アデルの言葉を聞き入っていた。
「ーーーーそうだよ。男ってのは勝手な生き物さね・・・・」
『・・・・・・・・』
「好きな時に自分の生命を簡単に賭けて、戦いの中で散る事を美しい事だと、『誇り』だと思っている・・・・」
ウルトラマンタイガと殴り合うオデッサの姿を見据えているアデルのその目には、確かな哀しみと、しかしそれ以上のーーーー『深い愛』があった。
「だけどね、アタシは決めたんだよ・・・・あの人の満足する生き方を受け入れよう。あの人に付いていこう、ってね・・・・」
「アデルさん・・・・」
その姿に、綾波達は何も言えず、ただタイガに投げ飛ばされるオデッサを見据える。
ータイガsideー
『フゥゥゥゥ!』
『フッ! ハァっ!!』
オデッサの目からビームを放つが、タイガは片手で弾き飛ばし、地面や海面で爆発が起きる。
飛び膝蹴りを繰り出すオデッサに倒れさせられ、マウントを取られて殴られるタイガ。
オデッサはタイガの首を両手で掴まえて立たせるが、タイガは平手打ちで首の手を解いてから、オデッサを巴投げで後ろに投げ飛ばす。
そして双方は起き上がると、再び組み合うと、ソレを解いてお互いの拳をぶつけ合う。
ソコからは、防御を完全に捨てた殴り合いが繰り広げられる。
『「くっ・・・・! もうやめろ!!」』
カイン指揮官が叫ぶが、オデッサは止まる事なく光線を放つが、タイガは上空に飛んで回避した。
『こうなりゃ、力ずくで動きを止めるしかないぞ!』
『「のようだな!」』
『『ストリウムブラスター』!!』
オデッサの上空を飛びながら必殺光線を放つが、オデッサは自身の光線で防いだ。
ー霧崎sideー
「ーーーーあっははははははははははははははははは!! あぁ~っははははははははははははは!!」
その様子を眺めながら、霧崎は、嫌、トレギアは愉快で堪らないと言わんばかりに高笑いを上げていた。
ータイガsideー
『シュッ!』
タイガが着地すると、ダメージで両膝をついてしまうオデッサ。
『〜〜〜〜!!』
がしかし、悔しそうに地面を握りしめると、ヨロヨロと身体を起き上がらせ立ち上がる。
『「小田さん!! 今ならまだ引き返せる! 奥さんの元に帰れ!!」』
『ーーーー俺は、誇り高きナックル星人の戦士オデッサ!!』
カイン指揮官は戦いをやめるように言うが、オデッサは戦う意思を曲げなかった。
『・・・・トモユキ』
『「・・・・やるしか、ないのかっ!!」』
[カモン!]
カイン指揮官は『フォトンアースキーホルダー』を手に取り、タイガスパークを翳した。
[アース!] [シャイン!]
『「輝きの力を手に!」』
キーホルダーを握ると上部が二又に開いて光り輝く。
『はぁぁぁぁぁっ!!』
「バディーーーーゴー!」
[ウルトラマンタイガ フォトンアース]
『シュアッ!!』
フォトンアースとなったタイガが、夕陽をバックに佇んだ。
『・・・・・・・・フンンンッ!!』
その姿を見て、かつて自分を打ち破った『光の戦士』を思い返したのか、オデッサは両手を広げて胸元に両拳から発するエネルギーを収束していく。
『ハァァァァ・・・・!!』
そしてタイガも、必殺光線を放とうとエネルギーをチャージし、黄金のオーロラと光で全身を包む。
『オオオォォォォォォォォッ!!』
『『オーラムストリウム』ッッ!!!』
オデッサの光線とタイガの光線が放たれ、ぶつかうとせめぎ合い、そしてタイガの光線がオデッサの身体を貫いたーーーー。
『ァ、ァァァァ・・・・』
そしてオデッサはゆっくりと地面に仰向けに倒れて、小田の姿へと戻った。
『・・・・・・・・・・・・』
タイガはソレを見下ろし、夕陽が完全に沈みきったーーーー。
ーアデルsideー
そしてアデルは、倒れたオデッサ、否、小田の身体を抱き上げる。
「・・・・アンタ」
「・・・・ゴメン、な・・・・最後まで、苦労ばかりかけて・・・・」
「良いんだよ。アンタが心から満足できる生き方ができたんなら・・・・!」
「ハハッ・・・・やっぱり、死にたく・・・・ないな、お前ともう・・・・一緒にいられなく、なるなんてさ・・・・俺ってやつは・・・・本当に、どうしようもない・・・・」
「っ・・・・」
涙を浮かべるアデルの目に、ソっと指で拭う小田。
「今まで、本当に幸せだった・・・・ありがとう、アデル・・・・」
そう言い残し、誇り高き戦士オデッサは、静かに、心から穏やかな顔で息を引き取った・・・・。
ーカインsideー
「・・・・・・・・」
綾波達艦船‹KAN-SEN›達に囲まれたカイン指揮官は、息絶えたオデッサに小さく頭を下げようとした。
がーーーー。
「ーーーー謝る事は無いよ」
「っ、アデルさん・・・・」
アデルがカイン指揮官達の方に振り向いて口を開く。
「何もかも、覚悟していたんだからね。そうーーーーこの人と共にいると決めた日から・・・・。でも、カイン指揮官、それに艦船‹KAN-SEN›の皆。よく見ておくんだよ。アンタ達ももしかしたら、いずれこうなるかも知れないんだからね」
コクリと頷くアデルのその目には、一筋の涙が静かに落ちた。
「ーーーー戦士の、戦う者の運命・・・・」
『・・・・・・・・』
カイン指揮官と、綾波達艦船‹KAN-SEN›達も静かに、オデッサとアデルを見つめる。それはまるで、『あるかも知れない未来の自分達』を見るかのように。
そしてアデルは、最後に伝える。
「ーーーーでも、それを避けるのも、貫くのも、新たな道を見つけるのも、アンタ達次第なんだよ」
アデルのその言葉が、カイン指揮官達の心に強く響き。満天の星空から、二つの流星が流れた。
それはまるで・・・・一人の『戦士』と『その相棒』の生命が、燃え尽きたと示すように・・・・。
◇
そしてその翌日。アデルはオデッサの遺体を火葬し、骨壺を持って、アズールレーン母港を去っていったのを見届けたカイン指揮官は、オデッサとのを事後処理を終えて、夜の執務室のベランダに置かれた椅子に腰掛けながら、同じく置かれていたテーブルの上に、ウィスキーが入ったグラスが二つ置かれていた。オデッサへの献酒として置いているであった。
「・・・・・・・・」
雲一つない満天の夜空の星々と艶やかに光り輝く満月が、夜の世界を優しく包みこんでくれていた。
「ーーーーこんな所で一人で晩酌とはね。天下のアズールレーン指揮官にしては、随分と侘しいんじゃあないかな?」
と、ソコで、いつの間にか椅子に座るカイン指揮官と対面するように立っている一人の青年がいた。
「そんな事もないさ。こう見えて、独りじゃあないんでね。ソレにしても、アポも自己紹介もなしにやって来た不躾な君は、一体何者かな?」
「コレはコレは失礼致しました。ーーーー私の名は霧崎。以後、お見知りおきを」
霧崎と名乗った青年は、何処か慇懃無礼さを隠さず、ニヤついた笑みを浮かべたままカイン指揮官に恭しく礼をした。
が、カイン指揮官は至極冷静な態度で椅子から立ち上がると、献酒のウィスキーを一つ飲み干してから、冷淡に呟く。
「ーーーーソレがお前のもう一つの姿か?・・・・トレギア」
「・・・・なんの事かな?」
「恍けるな。お前のその態度と口調と隠しきれていない下衆な気配がしてならないし、姿があの最低最悪で陰険陰湿なトレギアと重なって仕方ないんだよ」
「・・・・・・・・フフフフッ」
霧崎は身体を震わせてから笑うと、その姿が一瞬ブレて、トレギアの姿と重なり、声まで重なった。
『「良く気づいたね?」どうして私だと?』
途中からトレギアの声に変わった。
「こんなセンチメンタルな気分に水を差すような無粋者。お前くらいなものだろうが。ーーーーオデッサを、小田さんを焚き付けたのはお前だな?」
『焚き付けたとは心外だなぁ。燻っていた彼の炎に、ちょっと油を指してあげただけさ。まぁ、お陰で楽しい見せ物が見れたけどねぇ』
「・・・・・・・・」
『トレギアァ・・・・!!』
『貴様は何処まで、人の心を弄べば気が済む・・・・!』
『テメェ、態々人間態の姿で来たって事は、ここで決着‹ケリ›を着けようって事か!?』
カイン指揮官が、トライスクワッドの面々が、激しい怒りで拳をキツく握りしめて、トレギアを睨みつける。
『フフフッ、勘違いしないでくれ。君達との決着なんてどうでも良いが、少し面白い話を聞かせてあげたくてね』
「面白い話・・・・?」
『間もなく、この星に『破滅』が訪れる』
「っ!?」
『『『っ!?』』』
トレギアの言葉に、カイン指揮官もトライスクワッドも身体を震わせる。その様子をトレギアは可笑しくて堪らないと言わんばかりに話を続ける。
『その『破滅』がやって来れば、君達や艦船‹KAN-SEN›達がどんなに抵抗しても無意味となるだろう。そして君達は知る事になる。『正義』も『悪』も、『光』も『闇』も、『絆』だの『友情』だの、そんな物は只々無価値なものである事をね』
「・・・・そうか。それじゃその『破滅』とやらの事をーーーー洗いざらい話してもらおうか」
ーーーーバタンッ! ジャキッ!!
カイン指揮官のいるベランダの扉が開かれ、綾波とジャベリン、ラフィとニーミがカイン指揮官を守るように出て、対艦刀と槍と砲口をトレギアに向け、更にベルファスト達メイド隊がやって来て、トレギアに向けて砲口を向ける。
更にベランダの外では、艦載機に乗ったエンタープライズとヨークタウンとホーネットに、赤城や加賀、オイゲンが宙を浮いて武器を構えていた。
『おやおや、コレはコレは・・・・まるで私が来るのを待ち構えていたかのようだねぇ?』
「陰険陰湿なお前が、小田さんを殺してしまった俺に、嫌味と皮肉を言いに来るだろうと読んでいたよ。まさか本当に来るとは思わなかったけどね」
『ふぅ~ん、少しは知恵が回るねぇ?』
「エンタープライズ様と加賀様に、『怪獣リング』を渡したのもアナタですね?」
ベルファストガ視線を鋭くしてトレギアに問うと、トレギアは含み笑みを浮かべながら、エンタープライズと加賀の二人を見据える。
『力に溺れやすそうなお嬢さん達がいたから、プレゼントをしてあげただけだよ。どうだったんだい? エンタープライズちゃん? 加賀ちゃん?』
「っ・・・・!」
「くっ・・・・!」
トレギアの言葉に、エンタープライズと加賀は不快そうに眉根を寄せると、その様子さえも嘲笑うトレギアは、カイン指揮官に向けて言葉を発する。
『クックック、カイン指揮官。また予言してあげるよ。君は『破滅』に対して何もできない。愛する艦船‹KAN-SEN›達を失い、無力感と絶望感に悶え苦しむ姿を、今から楽しみにしている!』
トレギアが全身から漆黒の波動が放たれ、その風圧で艦船‹KAN-SEN›達が怯むと、トレギアの姿が消えた。
「トレギア!!」
「己、逃げたか!」
「まだいるかもしれないわ! 周囲を捜索するわよ!」
エンタープライズと加賀と赤城が空から探しに行き、メイド隊の大半も捜索に向かった。
「綾波様達はご主人様をお願い致します」
ベルファストも向かっていった。
「・・・・・・・・」
「指揮官」
「もうとっくに、トレギアは何処かに雲隠れしているだろう。それよりも・・・・」
指揮官はトレギアが言った『破滅がやってくる』と言う言葉を思い返しながら、オデッサの為に置いていた献酒のウィスキーを手に取って、またも一気に飲み干した。
「ーーーー『破滅』と戦い、勝利する。ソレが、今俺達が、この星を守る戦士である、俺達の使命だ」
『応!』
『はい!』
カイン指揮官の言葉に、トライスクワッドと綾波とジャベリンとラフィとニーミが力強く頷いた。
ートレギアsideー
「ーーーーフフフッ、楽しみだねぇ」
そして、アズールレーン母港から離れた小島にいる霧崎は、その手にある『剣の柄』を見てほくそ笑む。
ソレは、刀身が折れた剣、『オーブダーク』が手に取っていたが、艦船‹KAN-SEN›達によって折れた事で投げ捨てた、『ダークカリバー』であった。
ダークカリバーにある『炎』と『氷』と『嵐』と『岩』の紋章が明滅していた。
「もうすぐだ・・・・もうすぐ、『花火」が上がるよ。カイン・オーシャン指揮官とタロウの息子♪」
霧崎はクックッと嗤いながら、再び闇の中へと消えていったーーーー。