ガンダムビルドモバイル Puzzle G/B   作:ウルトラゼロNEO

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プロローグ ガンプラバトルはじめました
ガンプラバトルはじめました


 気持ちの良い日差しと雲一つない晴天の空。

 昨日が土砂降りだったことを踏まえてもこれ以上なく晴々とした良い天気だ。

 そんな澄み渡る空の中で輝く太陽の恵みを受けながら商店街通り近くで一軒の喫茶店が今日も通常営業を行っていた。

 

 喫茶店の名前はセレクトM。

 店内に流れる穏やかなBGM、コーヒーをメインにしてはいるが、それだけではなくパンやサラダを中心にした軽食やケーキやアイスクリームなど豊富なデザートは中々好評で名の知れた名店……というわけではないが、それでも開店から今日に至るまで地元の人々に愛されている店だ。

 

「こちらレシートです。いつもありがとうございますっ!」

 

 そんなセレクトMのレジでは今まさに来店客の会計を済ませ、人当たりの良い笑顔と共に見送っている従業員と思わしき人物がいた。背中まで伸びた茶髪を赤色のリボンで纏めたその人物はその整った顔立ちを相まって──。

 

「タツヤー? ちょっと良い?」

「どうした、母さん」

 

【挿絵表示】

 

 ……美少女と錯覚してしまいそうな青年だった。

 彼の名はマトイ・タツヤ。このセレクトMを切り盛りする夫婦の間に生まれた子の一人だ。今も母親であるマトイ・アキに呼ばれて、先程の来店客が使用していたグラス類を片づけながら厨房で戻ってくる。

 

「ちょっと商店街の方でお豆腐買ってきてくれない? 今日の晩御飯、すき焼きだったんだけど買い忘れちゃって」

「仕方ないなぁ……。じゃあ、ちょっと行ってくるよ」

「悪いわね。学校から帰ってきてすぐに店の手伝いしてもらってるのに」

 

 たははーと誤魔化すように笑いながら両手を合わせてウインク交じりに頼んでくるアキに先程まで着用していたエプロンを脱ぎ、近くにかけてあったタツヤが通う奏海高校のブレザーを手に取ると手早く買い物に出かける準備を済ませる。

 

「そう言えば、アヤトとヒマリも商店街の方に行ってるのよね」

「アヤトは確か“ガンプラバトル”のゲリラバトル大会があるからって言ってたよな」

「そっ。それでヒマリもついていったのよ。ほら、あの子、アンタとアヤトが通う奏海高校に今度、入学するじゃない? それで仕立ててもらった制服を取りに行くついでにね」

 

 アキが口にしたアヤトとヒマリとはタツヤの弟と妹だ。

 そのアヤトは商店街で執り行われているガンプラバトルのゲリラバトル大会目当てに商店街へ出向いているらしい。

 

 ──ガンプラバトル。

 

 機動戦士ガンダム及びそのシリーズに登場する機動兵器・MSをプラモデルとしたのがガンプラである。

 ガンプラの歴史は長く、それぞれスケールが違うガンプラをそのまま組み上げて楽しむも良し、塗装や加工処理により更なる完成度を求めても良し、将又、自分だけのアイディアを元にオリジナリティ溢れる作品を作るも良しと楽しみ方はそれぞれ異なり、今日まで親しまれている。

 

 ガンプラバトルとは文字通り、そのガンプラを用いてのバトルである。

 かつては大きなドーム型の筐体に乗り込み、そこにセットしたガンプラをデータとして読み取ってバトルをしていたが、年月も進み、専用のGBと呼ばれる携帯端末だけではなく今ではスマートフォンのアプリで読み取ってゲームセンター等々に設置されている筐体と繋げることでバトルが出来る程となった。

 

 より身近になったガンプラバトルの盛り上がりはまさに世界規模の大流行となり、老若男女問わず自分の魂と共にデータによって構築されたフィールド上を日夜駆け巡っている。

 

「ついでに迎えに行ってくるよ。それじゃあ行ってきますっ!」

 

 スマートフォンで弟達に今から商店街の方へ向かう旨をトークアプリで伝えて、ブレザーを羽織ると同時に軽快な足取りでセレクトMから出ていくのであった。

 

 ・・・

 

「……アヤトの奴、何やってんだ?」

 

 商店街にて買い物を済ませたもののタツヤは今、眉を顰めたまま腕を組んで立ち尽くしていた。

 今、彼がいるのは商店街に程近いショッピングモールだ。弟からこの場所で待っていてくれとのメッセージを受けてこの場に訪れたわけだがガンプラバトルのゲリラバトル大会が行われているというだけあっていつも以上に人で溢れており、タツヤもご機嫌斜めだ。

 

「ママ、どこぉ……?」

 

 そんな時であった。

 不意にタツヤの耳に今にも泣きだしそうな子供の声が聞こえてくる。誘われるように見てみれば、そこには兄弟だろうか? 顔立ちが似ている小学校低学年くらいの二人組がいた

 どうやらあの二人はこのゲリラバトル大会の人混みも相まって親とはぐれてしまったらしく、すっかりその表情は悲しみに帯びてしまっている。

 

「うえぇっ……!」

「な、泣くなよぉっ……」

 

 やがては悔しさから弟の方が泣き出してしまったようだ。

 最も年が近いということもあって兄の方も何とか宥めようとはするが、やがて伝染するように今にも泣きだしそうだ。

 

「──よーし、大丈夫か? 二人とも」

 

 遂には兄の方も泣き出してしまい、周囲の人々も困惑し、声をかけようかと悩んでいた時であった。

 突然、二人揃って頭を撫でられ、驚いた兄弟が顔を上げれば、そこにいたのは先程の機嫌の悪そうな顰めっ面から一転、柔和な笑みを浮かべたタツヤの姿があった。

 

「飴ちゃん舐めるか? ハッピーになれるぞ」

 

 すると豆腐ついでに自分用にでも買ったのか、キャンディーを取り出すと右手の親指と小指を立てて軽く振りながら幼い兄弟にそれぞれ渡す。二人は順に渡されたキャンディーとタツヤの顔をそれぞれ見るが、その笑顔に心が解れたのか、キャンディーを口に放り込む。

 

「おいしいっ」

「そうか。この飴ちゃんはな、ウチの妹が気に入ってるんだ」

「妹、いるの?」

「ああ、弟と妹がいるんだ」

 

 やがて飴の効果もあってか、兄弟は笑顔を咲かせ、泣き止んでくれたことに安堵しながらタツヤは頭を再び撫でる。どうやらキャンディーは自分用……というよりは妹の事を考えて購入したようだ。そんな何気ないタツヤの言葉に兄の方が食いついてくるとタツヤはそのまま頷く。

 

「い、いたっ! 二人ともーっ!!」

 

 すると遠巻きに焦ったような女性の声が聞こえてくる。

 その声に聞き覚えがあるのだろう、幼い兄弟はビクリと体を震わせると込みあがる嬉しさと共に顔を見合わせ、声の方向を見てみれば、買い物袋を持った女性が慌ただしく駆け寄ってきた。

 

 ママー!と幼い兄弟はそのまま駆け寄ってきた母親に抱き着くと母親は心底安堵したように二人を強く抱きしめると幼い兄弟から迷子になってからタツヤとの顛末を全て話すと母親はタツヤにしきりに感謝しながら頭を下げている。

 

 買い物の続きがあるのだろう。母親と手を繋ぎながら幼い兄弟はタツヤを真似てか、親指と小指を立てながら手を振る。そんな姿に心を癒されながらタツヤは大きく手を振り、安堵のため息をつく。

 

「……あの、すみません」

 

 ……のだが、次から次へとというべきか、幼い兄弟を見送ったタツヤに声がかけられた。

 

「今、ちょっとだけ時間いいですか? 折り入ってお願いがあるんですけど……」

 

 そこにいたのは目を引くような桃色の髪をツーサイドアップに纏め、まだあどけない顔立ちの少女であった。タツヤと同じ制服に身を包んでいることから同じ奏海高校の生徒なのだろう。

 

「って、あれ……アナタ、誰かに似てるような……」

「ち、近いよッ」

 

 声をかけたのもつかの間、少女はタツヤの顔に覚えがあるのか、じーっと身を寄せてタツヤの顔を覗き込む。その距離、僅か数センチであり、流石のタツヤも狼狽えてしまっている。

 

「ご、ごめんっ! そ、それでね、お願いっていうのは、えっと……私のパートナーになって欲しいんだ!」

「パ、パートナー……?」

「そうっ! ガンプラバトルのパートナーになってほしいのっ! お願い、人助けだと思って!」

 

 覗き込んだタツヤの顔の焦りを見て、我に返ったのだろう。頬を紅潮させながら距離を置くと単刀直入にまっすぐ切り出してきた。しかしパートナーという単語に啞然とするタツヤだが、少女は畳みかけるように両手を掴んで頼み込んでくる。

 

「ガ、ガンプラバトルって……。昔、付き合いで何回かくらいしかやったことないんだけど」

「大丈夫っ! 何だったら今、私のデータを使って練習しても良いからっ!」

 

 弟ならば兎も角、ガンプラバトルについて造詣が深くない為、他を当たった方が良いのではないか、と言おうとするタツヤではあるのだが、少女は一分一秒が惜しいとばかりにガンガンと詰め寄って終いにはガンプラのデータが入ってあるであろう自分のスマートフォンを取り出して差し出すレベルだ。

 

「分かった、分かったよ! とりあえずやるだけな?」

「ありがとうっ! じゃあ早速……と、その前に……」

 

 お人好しの性分なのか、少女がどうしてここまで急いでいるのかは分からないが、一先ず彼女の頼み事を受け入れることにして少しでも冷静になってもらおうと両肩を掴んで承諾すると、少女は何とかなったと安堵した様子で胸を撫で下ろす。

 

 タツヤが承諾してくれた事により、善は急げとばかりに少女は筐体が置いてある場所へと向かおうとする。ゲリラバトル大会が行われるだけあって今日だけはそこらかしこにガンプラバトルを行うための筐体……ガンプラシュミレータが置いてあるのだ。だがその前に彼女自身、大事な事を忘れていたのだろう。改めてタツヤに向き直ると……。

 

「私はミヤマ・サナ。奏海高校の一年生、よろしくね、パートナーさんっ!」

 

 にっこりと微笑んで名乗る少女……ミヤマ・サナ。その無邪気な笑顔と共に差し出された手をおずおずとタツヤは握る。それはまさに彼が新しい世界に足を踏み入れた瞬間であった……。




なんだかんだでガンブレ小説は四作目。流石にNewガンブレ小説でもう終わりだろうと思ってたら、一周年を迎えたガンブレモバイルと最終回を迎えたリライズの勢いに押されて気付けば書いてました。まあ、公開するまでに結構時間がかかってしまいましたが……。

……とはいえ原作が完結していないなか、手探りで書くのでもしかしたら齟齬が生まれるかも知れません、ご容赦ください。

最後に主人公達の母親であるアキさんから一言。……本編中にイラストを載せるタイミングが掴めなかった……。


【挿絵表示】

アキ「うん? あら、見ない顔ね。若そうだけどウチの子達の知り合い? ウチの子達、迷惑かけてないかしら? 三兄妹揃ってクセがあるからねー。まあでも仲良くしてくれると嬉しいわ。そしたらオバサンも少しはサービスしてあげるから」
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