ガンダムビルドモバイル Puzzle G/B 作:ウルトラゼロNEO
バトルフィールドに選ばれたのは夕暮れの市街地であった。ルーナRとカイゼル・バスターが静かに降り立つなか、相対するようにオノとニシのガンプラが降り立つ。
オノのガンプラは角張った印象の作業用重機であるモビルワーカー、ニシのガンプラはRX-78-2 ガンダムの量産型機体であるジムだった。
採用試験用なのか、しかしどんなガンプラであろうと彼ら二人はこの模型店のトップであると同時にガンプラ部のOB、その作成技術やバトルの実力は安易には測れない。現に油断なくアヤトとトウマはその出方を伺っている。
モビルワーカーもジムも特出した武装こそ持ち合わせてはいない。手数でいえばルーナRとカイゼル・バスターの方が優位に立てるだろう。
すぐさま強化ビームライフルの銃口を相対する二機へ向けると間髪いれずにその引き金を引く。射線上に向かって走るビームに対してモビルワーカーとジムは弾けるようにして飛び上がる。
「アイゼン、オノさんを抑えていて!」
しかしそれがアヤトの狙いでもあった。手早くトウマに指示を出しつつ行動を起こす。
スラスターを利用してビームを避けたニシだが着地しようとした瞬間、再びルーナRのビームが迫り、半ば反射的に後方へ飛び退くようにして避けた。
「……嫌なやり方だね」
そして再び着地しようとした瞬間、再びビームが向かってくる。アヤトが製作した強化ビームライフルの威力は直撃すればただではすまないのは強化ビームライフルの作り込みだけではなく、向かってくるビームの速度と音、収束率、それら全てを踏まえた勢いは目を見張るものがあったのだ。
それを着地しようとした瞬間に撃ってくる。アヤトの狙いは分かっている。スラスターの残量は有限。スラスターが尽きた瞬間に直撃させようというのだろう。
アヤトはバトルの素人ではない。故に自分の意図が読まれていようと今だ手のひらの上にあるニシの動きは予測できるのだろう。だからこそ厄介だった。
「参ったねッ……」
そしてそれを繰り返しているうちにどんどん行動の幅が狭まっていき隙が生まれたのだろう。遂に強化ビームライフルがジムのシールドごと左腕を貫いたのだ。
そのせいで更に大きな隙を作ったのだろう。
機体のバランスを損ねた瞬間、ルーナRはバックパックのヴェスパーを展開すると瞬時に発射する。
「──くぅ!?」
しかしそれは誰もが予想しない展開となった。
全てを穿かんばかりに放たれたヴェスパーだが、そのあまりの反動に発射したルーナRが吹き飛んで地面に倒れてしまったのだ。
「なんや、アヤト。自分で作ったガンプラを使いこなせてないんかい」
カイゼル・バスターとの戦闘も激しかったのだろう。
オノのモビルワーカーも損傷が目立つなか、ジムの隣に降り立ちながらルーナRが倒れこんだ理由に触れる。そう、ガンプラバトルはガンプラの出来によってそのパラメータが上下する。逆に言えば完成度が高ければ高い程、高い性能を持つ一方、ただ単純な完成度だけを求めればピーキーになりがちな部分がある。現にアヤトはヴェスパーの反動に耐え切れずに倒れこんでしまったのだ。
隙を狙っていた筈のアヤトが逆に大きな隙を作ってしまった。すぐにビームスプレーガンによる射撃がルーナRに襲い掛かり、損傷していく。
「マズい……! 早く何とかしないと……!」
優位に立っていただけあって反動で焦りも大きいのだろう。
中々操作もおぼつかず、何とか起き上がろうとしたところで尻餅をついてしまう始末だ。
(タツ兄……っ……! タツ兄ならどうする……っ!)
その言葉の違和感にアヤトは気づいてるのだろうか?
タツヤならばどうする? 確かにタツヤはそのセンスをサナとトウマに認められている。ましてやヴェスパーを標準装備にしているロッソパックを基本にするソラーレを難なく扱っている。しかし彼はまだずぶの素人だ。まだ上手い切り返しが出来るわけではない。
では、なぜアヤトの中で縋るようにタツヤの名前が出てきたのか? それは単純な答えだ──。
「アヤト、大丈夫か!」
「ああ、大丈夫……っ!」
攻撃の最中、ルーナRとモビルワーカー達の間にカイゼル・バスターが割り込んで、相手を牽制しながら通信越しにアヤトに声をかけた。その言葉で我に返ったアヤトはすぐにルーナRを起き上がらせる。
「アイゼン、突っ込むから援護してほしい」
「策はあるのか?」
「……まあ、上手く行けばいいかな程度だけど」
今回、トウマはあくまでサポートで出撃している。なぜならばこれはアヤトの採用試験だからだ。
だからこそ今回、アヤトの指示には基本的に従うつもりだ。するとアヤトの意を汲み、全身のミサイルをモビルワーカー達に放つ。
咄嗟に二手に別れてミサイルを避けるオノ達だが次の瞬間にはミサイルによって周囲は爆炎に飲まれ、黒煙が周囲に漂った。
「何や、目眩ましかいな」
この煙では相手を伺うことは出来ない。周囲を探るオノは辺りを警戒しつつ相手の出方を伺う。すると次の瞬間、モビルワーカーに向かって何かが突っ込んできた。
「はんっ、そう上手くは──」
大方、接近戦を試みてきたのだろう。体勢を整えながら迎撃しようとするが飛び込んできたモノに啞然とする。それはルーナRのシールドだったのだ。思わず自身のシールドで弾くことで事なきを得る。
しかしシールドを払ったその動作こそが大きな隙なのだろう。刹那、背後に反応があり、見てみればそこにはビームサーベルを構えていたルーナRがおり、横一文字に両断される。
「オノさんがやられたか」
その一連の様子を避ける拍子に降り立った建造物の上から見つめていたニシだがルーナRはすぐにジムに標的を変え、モビルワーカーが払ったシールドを再び投擲する。
しかしそれはジムに狙いを定めていたわけではなかった。到底、ジムには届かない下方へ投擲されたシールドに意識を向けつつ、同時にこちらに向かってきたルーナRにビームスプレーガンを見舞う。
「タツ兄なら……っ!」
直撃を受けながらお構いなしに進むルーナR。ファイターのアヤトの脳裏にタツヤの姿が鮮明に過るなか、ルーナRはシールドに強化ビームライフルを向けると引き金を引いて、ビームが放たれる。
「っ!?」
すると放たれたビームはシールドを反射してジムのバーニアに直撃したではないか。大きく体勢を崩すジムのモニターにはもう至近距離に迫っていたルーナRを捉えていた。
「タツ兄なら前に出る!」
ルーナRは強化ビームライフルを捨て、ジムを片手でガッチリと掴んだのだ。ヴェスパーを展開するとカンと銃口がコックピットに触れる甲高い音が響いたと同時に引き金を引き、ゼロ距離でジムを貫いて撃破するのであった。
・・・
「いやあ参った。アヤトは強いね。それだけの腕なら喜んで採用させてもらうよ」
「だから言ったやろ。アヤトなら文句なしって!」
「ボクはオノさんと違って店番だけやってるわけにはいかないのでね。慎重にだってなりますよ」
バトルを終え、改めてニシからも採用を受けるアヤト。心なしかアヤトの顔から緊張が消え、安堵の様子がうかがえる。その姿を横目に自分の判断に狂いなしとばかりのオノだが、穏やかな物言いながらも鋭さを持つ言葉にたちまち縮こまる。
「この店は仕入れ、経理、人事、企画と全てニシさんが回しているんだ。事実上の経営者だな」
「人事は半分、トウマにも手伝ってもらってるけどね。サナちゃんに続いて良い人を紹介してもらえたよ」
トウマからニシの店での立場を紹介する。手広くやっているだけそれだけの有能な人材なのだろうがそうなってくるとオノはどうなるんだと思ってしまうアヤトだが、ふとニシから気になる発言が聞こえる。
「あ、そういえば言ってなかったね。私も先週から働かせてもらってるんだ。これからはバイトでもよろしく♪」
「同級生で同じ部活で同僚なんてフラグ立ちまくっとるな。うちは恋愛禁止やないから遠慮せんでもええよ」
何とサナまでこの店で働いているのだという。驚くアヤトに話していなかったとサナは改めてこの場で働いていることを告げると青春やなぁとばかりにオノはアヤトの肩に手を回し、からかうように彼の頭を撫でる。
「……いや、俺は……その……幽霊部員だし」
同じ部活……という言葉には退部まではしていないものの顔を出していないこともあって負い目はあるのだろう。勝利に喜んでいたアヤトの表情から途端に気まずさがあふれてくる。
「さて、では俺はこの辺で失礼するよ。もうすぐスーパーのタイムセールなんだ」
すると雰囲気が悪い方向へ向かわないうちにトウマは話を変えてくれた。何でもこれからスーパーマーケットに向かうつもりのようだが、それにはどうしても行かねばならない理由があった。
「今日も弟妹達の晩飯作るん? えらいな、お前はほんと」
「あ、ちょっと待って。これ、弟君達に持って行ってあげて。お菓子の詰め合わせ」
それはトウマの家庭の事情も絡んだことであった。若くして家族の為に働くトウマにオノが感心していると気を利かせたニシが事務所から袋詰めされたお菓子を渡す。
「アイゼン、その……部活に顔を出してないのに、ここを紹介してくれてありがとう」
「気にするな。アヤトの気持ちを聞けば、無碍には出来ない」
トウマは丁寧に礼を言いながら店を出ていこうとするとその前にとばかりに慌ててアヤトが声をかける。負い目を感じる部分がある以上、快く紹介してくれたトウマに感謝するしかなかった。するとトウマは穏やかな笑みを浮かべながら店を出ていく。
「……なんか真面目に働かんとって気になってきた。アヤト、仕事教えてやるから来い」
「その前に契約書ですよ、オノさん。あと学校の許可証もいります」
「細かい事はお前に任せるわ!」
苦労は語らないまでも負担は大きいであろうトウマに感化されながらアヤトに声をかけるオノだがその前にニシにストップをかけられる。働くにしてもちゃんと契約に乗っ取った上で働かねばならないのだ。しかしその辺りに関してはニシに完全に一任しているのだろう。豪快に笑うオノにやれやれとニシは嘆息するのであった。
・・・
「なんだよ、アヤト。いきなり連れ出して」
それから暫くした休日の昼下がり。タツヤはアヤトに連れられてショッピングモールの一角に訪れていた。
「タツ兄、ガンプラバトルをやってるわけだし、スマホを見る時間も増えるからブルーライトカットの眼鏡が必要だと思ってね。ほら、それでなくても前々から眼鏡ほしいとか言ってたじゃん」
「欲しいには欲しいけど今、金に余裕はないぞ」
どうやら今日、タツヤの眼鏡を買いに来たようだ。しかし今、この場で聞かされたのだろう。持ち合わせがないタツヤは今は無理だと諦めようとするのだが……。
「何の為に誘ったと思ったの? ここは俺に任せてよ。これでも陰でバイトしてたんだからっ」
「……最近やたら家にいないのはそういうことか? でもお前が働いて稼いだお金なんだから俺に気を遣う必要はないんだぞ?」
どうやらトウマにバイトの紹介を頼んだのはこういう理由だったようだ。朗らかな笑みを見せるアヤトに合点がいった様子のタツヤだがそれならばそれでとそのお金は自分のために使えと諭す。
「俺の金をどう使おうが俺の勝手でしょ? 早く行こっ! 俺も眼鏡欲しかったし、一緒に買おうよ!」
しかしそんなタツヤの言葉も一蹴しながら兄の腕を掴むと上機嫌で走っていく。ここまで上機嫌のアヤトは珍しいのだろう。初人給が他の誰でもない自分の為に使おうとする弟の姿に嬉しさを感じつつ照れくさそうな笑みを見せながら二人は近場でもお洒落と評判なメガネショップに駆け込むのだった。
タツヤ&アヤト(眼鏡)
【挿絵表示】
タツヤ「……」
アヤト「……ねえ、タツ兄。俺からの眼鏡一つで何で感極まってんの?」
タツヤ「……お前が頑張って稼いだお金を俺の為にって思うと視界が滲んじゃって……。ありがとなぁっ、アヤトぉ」
アヤト「あぁやりにくい。良いから眼鏡かけなよ」
タツヤ「ど、どうだ?」
アヤト「良いんじゃない? ……うんっ」
眼鏡描くのって凄い難しいっすね……。一応、アヤトはラウンドタイプです。
私もパソコンなどを使用する際に眼鏡を使用します。コンタクトに興味はあったんですけど、何となく怖くて出来なかったんですよね。お陰でこのご時世、マスクとの相性がggg。スプレー必須ですわ