ガンダムビルドモバイル Puzzle G/B   作:ウルトラゼロNEO

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今回は実験と言いますか、今まで書いてきたガンブレ小説とは違うことをしてみようという発想から生まれた試みです。一応の注意としてキャラクター達が感想を口にしますがあくまで個人の感想です。


ガンダムを見よう─機動戦士ガンダムF91編─

「まさかタツ兄までガンプラ始めるとは思わなかったなー」

 

 アヤトがトウマの伝手を頼ってオノの店でのバイトを始めたその日の晩。マトイ家のリビングでは束の間の団欒があった。

 友達と連絡でもしているのか、スマートフォンを片手にキャンディを舐めながら、ふと同じ空間にいる二人の兄に話しかける。

 

 部活紹介の場で壇上に上がった兄達に喜んで精一杯、応援こそしたがそれでもアヤトは兎も角としてタツヤがガンプラバトルを行うだけに留まらず、その部活にまで入部したのは意外だったのだろう。

 

「タツ兄は昔、剣道やってたし、今も運動してるから体育会系ってイメージだったから意外かも」

「まあな。正直少し前の俺に言っても首を傾げてると思う」

 

 ヒマリからしてみれば、もしもタツヤが部活をするのなら運動部だと思っていたのだろう。それに関してはタツヤも同意するところなのか、苦笑気味だ。

 

「それでタツ兄は何のガンダムが好きなの?」

 

 何気ない妹の問いかけにタツヤはピタリと制止してしまう。確かにタツヤはガンプラ部への入部を決めたものの思えばリアルタイムで放送していたガンダム作品をアヤトが見ているのをたまに見ていたくらいでまともにガンダム作品、もっと言えばガンプラにすら触れたことすらないのだ。

 

「タツ兄はあんまりガンダムもガンプラを知らないんだよ。ヒマリとどっこいって感じ」

「じゃあ全然じゃん。もしかしていつものお人好し? それともあの大会がそんなに楽しかったのかなぁ?」

 

 そんなタツヤを見て、今まで黙っていたアヤトが代わりに答える。

 自分を比較に出されれば分かりやすいのか一瞬は納得したヒマリだが、ともすればガンダム作品への知識が皆無に等しい自分と同じくらいの知識量となれば余計にガンプラ部への入部に首をかしげてしまう。

 

「だったらさ、これを機にアヤ兄のオススメを見せてもらえば?」

 

 それは思いがけない提案だった。思わず兄二人が発言者であるヒマリを見てみれば名案だとばかりにニコニコしているではないか。

 

「早速だけどアヤ兄、初心者にオススメのガンダムってなに?」

 

 その言葉に今度はアヤトが制止してしまう。

 ヒマリは何気なく聞いてきた訳だが今日まで続いてきた歴史あるシリーズだけあって、何をセレクトすべきか悩みどころではあるのだ。

 

「どの作品から見たって大丈夫だと思うし、何なら気になった奴から見てみるのが一番だと思うけど……」

「って言ってもアヤ兄には悪いけど私も多分、タツ兄もガンダムがバアーって並んだとして、個々の違いは分かっても結局、皆同じに見えるって感じだし」

「だとしたらあらすじに触れるか、キャラか声優さんかってなるけど……」

 

 無難と言えば無難な回答であろうか。

 とはいえヒマリからして見ればガンダムを並べたところで個々のデザインの違いが分かってもその上で並べられれば同じに見える。興味がない人間から見る多人数アイドルグループ現象と同じなのだ。

 

「因みにヒマリの最近ハマったアニメとかってある?」

「鬼滅?」

「鬼滅かぁ……」

 

 ならばと試しにヒマリの好みからも探してみようと何気なく聞いてみるとうーん、と小首を傾げながら答えた単語にアヤトも首をかしげてしまう。ヒマリが指す作品とガンダムの結び付きが思い浮かばなかったからだ。

 

(そうなってくると家族のために頑張るCV花江さんがいる鉄血とか? それにマッキーも生殺与奪の権を他人に握らせるなとか言いそうじゃない? 言わないかなぁ。でも手っ取り早いのは初代を見せるのが一番だと思うけど、如何せん過去の作品であればあるほど、絵が古く何となしの興味では敬遠され易いのも事実。逆に絵が新しめで食いつきやすいガンダムって言うとSEED系や00とか?って言ってもこの二作品だって10年以上前の作品だし……)

 

 うーんと腕を組んではずっと見易いガンダム作品を記憶の中から掘り起こそうとするが、如何せん40年の歴史あるシリーズだ。好みや見やすさを考慮して考えると中々絞り出すにも時間がかかってしまう。

 

「なあ、アヤト。ソラーレの元になったガンダムってどんな作品なんだ?」

 

 そんなアヤトを察してか、助け船を出すかのように自身が使用しているソラーレを引き合いに出して尋ねる。

 助け船のつもりでもあるが、それはそうとして自身に託されたガンプラがどのようなガンダムを元にしたのか、そしてどのような物語なのか、興味がないと言えば嘘になる。

 

(ソラーレの元はビルドストライクだけど、あの作品自体、単品で楽しめるしガンプラを題材にしているから今のタツ兄にはピッタリかもしれないけど、でも出来ればビルドシリーズはある程度のシリーズへの知識があった方がより楽しめる側面もあるからなぁ。だとすると……)

 

 ソラーレの元となったビルドストライクガンダムはガンダムビルドファイターズに登場する主役機であり、今では身近なガンプラバトルを題材にした作品だ。

 ガンプラを題材にしているだけあって細かな演出等は歴代シリーズのオマージュを感じられる作品でもあるのだ。勿論、見易い作品ではあるのだが、それはそれでアヤトなりの拘りがあるのか、また頭を悩ませながらテーブル上のソラーレを見やる。

 

「機動戦士ガンダムF91なんてどうだろう?」

 

 それが熟考の末にアヤトから提示されたガンダム作品であった。と言っても漸くそれらしいタイトルが出てきた程度でタツヤとヒマリは知っているかとお互いにアイコンタクトを確認した後に続きを促すようにアヤトを見やる。

 

「ソラーレのロッソパック。その特徴であるヴェスパーはガンダムF91から来てるし、ロッソのAIパイロットは主人公であるシーブック・アノーなんだ。早速だし見てみようよ」

 

 善は急げとばかりに早速、機動戦士ガンダムF91のソフトを取りに向かうアヤト。タツヤはそんなアヤトの背中を視線で追っていると、視界の端にいるヒマリが目に留まる。

 

「ヒマリはどうする? 一緒に見ていくか?」

「うーん……」

 

 ガンダムへの関心のきっかけがあったタツヤとは違い、機会がなかったヒマリからすればわざわざガンダムを一緒に見る理由はないだろう。下手に妹の時間を巻き込んでは可哀想だと気を遣って声をかけてみるとヒマリはヒマリで悩んでいるのか、先ほどまで弄っていたスマートフォンを顎先に添えながら視線を彷徨わせる。

 

「お待たせー」

 

 そうこうしていると映像ソフトを片手にアヤトが戻ってきたではないか。

 

「……えっと」

「……どしたのよ」

 

 するとヒマリは何を思ったのか、兄達を凝視し始めたではないか。天真爛漫な妹にしては珍しいアクションに思わずタツヤとアヤトは何かしたのかとお互いの顔を見合わせる中、戸惑った様子でヒマリを見つめ返す。

 

「……ヒマリも見てみようかな」

「えっ!?」

 

 僅かな沈黙の後にヒマリも一緒に鑑賞することを決めたではないか。

 これに何より驚いたのはアヤトであった。タツヤは兎も角、ヒマリとガンダムに何の接点もないからだ。

 

「アヤ兄もあんなにハマってるわけだし、タツ兄も興味が出てるわけでしょ? だからヒマリも見てみようかなって。それにお母さんも見てすらいないものを偏見だけで語るような人間になるなって言ってたし」

 

 それは何気ない好奇心なのかもしれない。今まで熱中していたアヤトとガンダムの世界に今から足を踏み入れようとするタツヤ。ならばこれをきっかけに何かガンダムという作品に触れてみるのも悪くはないと思っての事だった。

 

「さ、早速見てみようっ」

 

 母さんの教えをちゃんと覚えてるんだな、とタツヤがヒマリの頭を偉い偉いと撫でているなか、アヤトは一人、慌ただしく準備を始める。タツヤが横目で見てみれば、こちらに背を向ける形になっているがそれでもアヤトの口元が緩んでいるのが見えた。

 今まで家族の中で熱中していたのが自分だけだったなか、兄妹が興味を持ってくれたことが嬉しくて仕方ないのだろう。そんな弟の姿に微笑みながらマトイ三兄妹による鑑賞会が始まり、テレビにはコロニーの外壁を四方に切断して侵入してくるクロスボーンバンガードの部隊と共にタイトルバックが表示される。

 

「始まったねー。あれでもザクじゃないんだね」

「流石にね。これ、アムロとシャアが初登場した作品から44年後くらいが舞台だから」

 

 現れた機体の数々の中にヒマリが知っているMSはなかった。しかしそれもそうだろう。ヒマリが知っているのは精々世間的に名前が知られている所謂、ファーストガンダムのMSくらいでそれ以外はアヤトを通じてみたことがある程度の認識だ。

 

「じゃあアムロとシャアも出てくるのか?」

「えー? 続編なの? ヒマリ達、よく分からないよ」

「F91はアムロ達が生きた時代の宇宙世紀が舞台だけど、がっつり過去作が絡んでくるわけじゃないから二人でも安心して見れるよ」

 

 アムロとシャアの名前が出てきたこともあって続編なのかと碌な知識を持ち合わせていないタツヤとヒマリは難色を示すが、内容を知っているアヤトは安心させるように笑みを見せながら再び映像に集中する。

 

 その後、タツヤとヒマリは時折挟まれる解説担当と化したアヤトの説明を聞きながら機動戦士ガンダムF91の世界に触れる。

 平和なコロニーの中で最大の呼び物としてミスコンが開催されようとするなか、迫るクロスボーンバンガードの部隊。刻一刻と迫る日常の崩壊。そんなことも露知らずミスコンではいよいよ結果がドワイトの口から発表される時が来た。結果に喜べないヒロイン・セシリーに美人だったら何だって良いと宣う主人公・シーブック。セシリーはその性格から辞退しようとするがその瞬間、耳鳴りのようなものを感じれば向かい側のデパートの屋上で連邦軍の主力MS・ジェガンが空から落ちてきたではないか!

 

 そこから崩壊した平和と始動する物語。シーブックを筆頭とした子供達がコロニーからの脱出を試みるなか、セシリーはクロスボーンバンガードによって連れ去られてしまう。彼女はクロスボーンバンガードの創立者マイッツァー・ロナの孫娘ベラ・ロナだったのだ。

 

 シーブックとセシリー、それぞれが抱く家族の蟠りと確執。時間は止まる事なく逃げ込んだコロニーに現れたクロスボーンバンガードに妹リィズ・アノーが母親との思い出のあやとりをきっかけにガンダムF91を起動させ、シーブックは出撃する。

 

 高いセンスを見せるシーブックだがそれがやがて増長となってある悲劇が起こる。やがて立ち直ったシーブックは精神的な強さを身に着けながら仕事人間だった母親との和解、セシリーを説得。少しずつ変わっていく状況だったがセシリーの父親・鉄仮面ことガロッゾ・ロナによる人間のみをターゲットとするバグによる大量殺戮作戦が行われ、自身も巨大MA・ラフレシアで出撃する。ラフレシアに挑むシーブックとセシリー。家族論をテーマにした物語をタツヤ達は見届ける。

 

「いやー、終わったね」

 

 スタッフロールと共に主題歌のETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜が心地の良い余韻を残すなか、アヤトはタツヤとヒマリに感想を伺うように顔を向ける。

 

「思ってた以上には見やすかったよ。絵も30年前にしては凄い綺麗だったし、家族がテーマなのも身近だしな」

「そうだね。勿論、知識があるには越したことはないけどガンダムの雰囲気やハッピーエンドで終わる物語も相まって見やすい作品だと思う。そこら辺は監督もストーリー的には成功って言ってるし」

 

 一先ず見終わった第一声を口にするタツヤ。正直、難解なのではないかと思っていたが予想以上に見やすく、楽しめる作品だったとは思う。

 

「でもさー。ちょーっと尺が足りないって言うか、前半は丁寧で分かりやすいんだけど中盤以降、ちょっと巻きが入ってなかった? アンナマリーさんの顛末も凄く忙しかったし、シオにしたってナディアが鉄仮面に人殺しって言ってたけど何で死んだのか分からなかったし。しかもこれあくまで鉄仮面を倒しただけでまだ全部解決したわけでしょ?」

「そうだね。これはあくまでコスモ・バビロニア建国戦争の開戦に過ぎないからね。シーブック達やコスモ貴族主義のその後が描かれた物語もあるけど、この直後の映像作品はないね」

 

 とはいえ思うところもあったようで楽しめたには楽しめたようだがヒマリの言葉にタツヤも頷いているとその辺りに関してはアヤトも苦笑気味に笑っている。

 

「けどショッキングな映像も凄く印象に残ったな……」

「……うん。グロくはないんだけど戦いに巻き込まれて死んでいく人達が流れるように描写されるから逆に悲惨さが際立つと言うか。アーサーだってついさっきまで学園祭を楽しんでたのにね」

 

 全体の感想も程々にタツヤの発言を皮切りに話題は細かな部分に移っていき、前半、フロンティアⅣでの戦闘で巻き込まれる市民達やバグによる破壊描写について触れるとヒマリも同意見だったのか、どこか引き攣った様子を見せる。

 

「そう言えばヒマリ、鬼滅にハマったって言ってたじゃん」

「うん」

「淺黒肌のドワイト君は手鬼と同じ声優さんだよ」

「うそぉっ!? 全然違うじゃん!? 声も若かかったね……」

「F91は声優デビューしてから3年目辺りの作品だからね。今の年数で考えれば30年も前の作品だし」

 

 細かな描写の話題で三人が盛り上がっているなか、ついつい話もF91のみならずそれに出演していた声優の話にも脱線しつつエンドロールが終わった後も暫く話し込んでしまっていた。

 

「ラストの最後まで仮面を取らなかった鉄仮面とフェイスオープンしたF91の対比も好きだな。わざわざエンドロールの最後に持ってきてるし、良い演出だと思う」

「──何やってんの?」

 

 話し込んでいると不意に声をかけられる。声に誘われるがまま顔を向ければ、そこにはきょとんした顔を向けているアキとトモハルがいるではないか。

 

「ガンダム? アヤトだけじゃなくてタツヤとヒマリまで見てるなんて珍しいじゃないか」

「まあ流れというか……。でも楽しめたよ! ETERNALWIND好きだなぁ」

 

 テレビに映っている映像から物珍しそうにタツヤとヒマリを見るトモハルに珍しい状況であることは自覚しているのか、二人とも顔を見合わせて苦笑するもののそれでも一緒に鑑賞したことに後悔はなく楽しい時間を過ごしていたようだ。

 

「まっ、その辺にしときなさい。アンタ達、明日学校って事忘れないでよー」

「パパ達はもう寝るから三人もあまり夜更かしするなよー」

 

 とはいえ時間もそろそろ良い頃合いだ。一つの映画を鑑賞して盛り上がっている三兄妹の姿は親としても微笑ましいがこれ以上の夜更かしは見過ごすわけにはいかない。アキとトモハルは釘を刺しつつ三人に別れを告げて夫婦部屋へ向かうと三人もお開きだとそれぞれ行動を起こす。

 

「改めてありがとうな、アヤト。わざわざ選んで見せてくれて。家族がテーマって言うのは俺個人にも響くものがあったし」

「タツ兄……」

「ウチも色々あったけどさ、少なくとも今は上手く行ってるよ。シーブックの父親が奥さんの仕事も愛してるって言ってたように俺も父さんと母さんのセレクトMも大切にしてるし、お前が熱中してるガンプラも応援してる。ヒマリの何事も楽しむ気持ちも尊重したい」

 

 自室に戻る際、改めてアヤトに感謝の言葉を口にするとアヤトはその言葉とタツヤに思うところがあるのか、どんどんその表情が複雑なものになっていく。

 

「じゃあ、おやすみな」

 

 そんなアヤトを残して、タツヤは自室に入ってパタリと扉と閉めてしまう。ヒマリも部屋に戻り、アヤトだけが残った空間で彼は誰に問うわけでもなく静かに零す。

 

「……シーブックがセシリーを見つけられたのは機械の力だけじゃなく感性、愛があったからだよ。タツ兄自身が愛を向けた先ってなにがあるの? ……タツ兄の夢ってなに?」

 

 両親のセレクトM、アヤトのガンプラ、何事も楽しもうとするヒマリはその性格もあって多趣味だ。

 しかしタツヤはどうだろう? ここ数年、タツヤが自分の夢どころか趣味を口にした記憶がない。心の中に靄が残るなか、彼も自室に戻るのであった。




今まで書いてきたガンブレ小説で単語やキャラなどに触れながら話を紡いできましたが、自分が手掛けたキャラクター達が詳しくその作品をどう思っているのか書いたことがなかったので、試しに書いてみたかったんですよね。

二月五日には一部劇場でF91完全版の4DX上映が決定しているのですごく楽しみです! 4DXってまだ体験したことがないんですよねぇ……
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