ガンダムビルドモバイル Puzzle G/B 作:ウルトラゼロNEO
恐らくアーツ史上最大の真骨彫ティガ予約争奪戦→ああああああああああ……。あ? あああああああああああああっ!!!!!
V6解散→ああああああああああっ!!!!!!?
この一か月余りの状況に情緒不安定なんですが。ティガファンでもあり、Vクラでもあるから色んな感情がごちゃ混ぜです。
「アヤトってぇーと、ガンプラを作ってる方のお兄さんだよね。何回かコンテストで優勝してるっていう」
「そのとーりっ! アヤ兄は器用なんだよ、出不精だけど」
元々ヒマリから話は聞いたのだろう。自己紹介を終え、アヤトの名前を聞いたフウカは頭の片隅にあったことを思い出したようにマジマジと見つめているとガンプラに関わりのないヒマリからしても自慢でもあるのだろう。ふふんと鼻を鳴らしながら胸を張る。
「もう一人のお兄さんはいないんだね」
「うん、今日から部活に出るって言ってたけど」
妹が自分の事を友達に自慢しているのは照れ臭くもあり、嬉しさもある。ただし出不精という余計な一言さえなければ。とはいえ話していたのはアヤトだけではないのか、周囲を見渡しながらヒマリやアヤトに似ている生徒を探すが、それらしい人物がいない事を確認すると、もう一人の兄ことタツヤについて彼自身から聞いたことをヒマリが答える。
「……ヒマリ、その……
すると今まで特に口を挟んでいなかったアオイが漸く口を開き、控えめに尋ねてきたのだ。
アオイと言う少女は何かタツヤと関わりがあるのだろうか。いくらヒマリから話を聞いていたとしてもタツヤが何の部活に入っているなど気にするとは思えないし、わざわざ言い直してタツヤさんと口にしたその声色は他人に対して放たれる事務的なものではなく親しい人や好いている人の名前を呼んだ時のようなものだったのだ。
「あぁ、いえっ……深い意味はないのですが」
アヤトの訝しんだ様子に気付いたのか、慌てて取り繕った態度を見せる。まあ別に深く突っ込むような話でもないだろうと話を終えようとした時、隣にいたヒマリが再びどや顔を見せる。
「アオイはねー、タツ兄のファンなんだよっ」
思いがけない言葉だった。これでタツヤが芸能人の類ならば話も分かるのだが、生憎タツヤはただの一般人。もしもタツヤにファンが出来る要因があるとすれば、一つだけだ。
「い、いや別にファンという程では……。ただ私も剣道をやっているから、その……」
照れ臭そうに誤魔化そうとするアオイだが、アヤトからしてみれば剣道をやっている、その言葉で合点がいった。
「マトイ・タツヤ……。ここ数年の中学剣道でその名を轟かせた男。新人戦の頃から頭角を現し、全国大会においても個人戦優勝の経歴まで持つ……。正直、奏海でも剣道をやるものとばかり」
アオイの口から放たれたタツヤの過去。しかしその輝かしい過去とは裏腹にタツヤは奏海高校に入学してから二年目で漸く部活に入った。それまでは剣道どころか部活にすら入部していなかったのだ。
一年生の時は何か事情があって部活が出来なかったにしろ、タツヤが全く違う部活に入るとは思わず、今でも解せない様子で僅かに首をかしげていた。
「って言うかさ。あんまここで駄弁ってるってのも不味いんでね?」
とはいえガンプラ部への入部を決めたのはタツヤであり、その詳しい理由まではアヤトもヒマリも知らない。
アオイの言葉に適当な相槌しか打てないなか、ふとここで成り行きを見ていたフウカが流れを読んで口を挟む。友達の兄の一人に出会えたのは面白かったが、それはそうといつまでもここで長話をしていては部活の時間に差し支える。
「そうだね。じゃあ皆、頑張って。ヒマリも張り切りすぎて無茶しないようにね」
話を切り上げるには丁度良いタイミングだろう。手早く話を終えたアヤトは踵を返して昇降口へとトボトボとした足取りで向かっていく。
「なーんか覇気がないよねー。あの感じだと部活にも入ってなさそうだし」
「こら、フウカ!」
アヤトが去ってからしばらくその背中を眺めているとフウカは思ったままの感想を口にしてしまう。そう思うのは勝手だが、それがよりにもよって身内が傍にいる時に口に出さなくても良いだろうとすぐさまアオイからの注意が飛ぶ。
「……まーね。昔はもっと明るかったって言うか、毎日が楽しそうだったのに」
ヒマリも今のアヤトには思うところがあるようだ。かつてタツヤはタツヤで栄光を掴み、アヤトもアヤトでそうであった。その充実した輝かしい日々を間近で見てきただけにもどかしく感じるのは大切な兄の一人だからだろう。
「フウカ、ごめん! 今日、用事があって部活に行けないって言っておいて!」
「えっ!? ちょっとヒマリーっ!?」
胸の中で広がるざわめき。大切な兄だからこそまた全力で楽しんでいた頃の笑顔をまた見たい。
思い至ったらすぐに行動を起こすタイプなのだろう。同じくチアリーディング部のフウカに一言頼むと有無を言う前に走り出してしまうのであった。
・・・
制服に着替え終えたヒマリが校舎を出れば、もう既にアヤトの姿はなかった。そのまま後を追おうとスマートフォンを取り出すが、アヤトへの連絡をする前にその指は止まってしまった。
今のアヤトにどんな言葉をかけて良いのか、分からなかったのだ。
そもそもガンプラこそ続けてはいるアヤトが何故ガンプラ部の活動に参加しなくなったのか、その理由も分からない。
部活動に参加しなくなったのは人間関係が悩みだろうか?しかし悩みを聞き出そうにも真正面からただ単純に聞いたところでアヤトが素直に話すとも思えなかった。
(タツ兄ならどうするかな……)
ヒマリが咄嗟に浮かんだのはタツヤの存在だった。
長男であるという意識からか、タツヤはアヤトやヒマリをよく気遣っている。だからこそその気配りに度々救われた為に縋るような想いでタツヤが頭に浮かんでしまったのだろう。
しかし今、この場にタツヤはいない。
相談という選択肢もあるが、そうするならば今、自分が出来る行動をした上で話したい。
不意にポロッと話してしまうくらいでも良い。
それだけでも十分だ。自分が知る限り、アヤトは悩みを真正面から聞いてもはぐらかすタイプだ。
「……そうだっ」
ならばまずは環境作りから始めよう。
思い立ったが吉日とばかりにヒマリは元気よく駆け出していくのであった。
・・・
「えーっと……確かここ等辺にあったよね」
ヒマリがスマートフォンの地図アプリを参照してやってきたのはかつてタツヤとサナが出会ったショッピングモールの近くであった。普段こそショッピングモールには友達とアパレルショップなど趣味で向かうことが多いのだが趣味は趣味でも今回はヒマリのものではない趣味で訪れていたのだ。
「……あった!」
程なくし目当ての店を見つけることが出来た。
それはアヤトに連れられて訪れたことのあるオノが経営している模型店だ。何故、ヒマリが模型店に訪れる気になったのか、アヤト絡みであることは間違いないが模型店を視界に入れた途端、瞳を輝かせてかけっこでスタートを切った子供のように駆け出す。
太陽のように明るく、元気いっぱいで快活な性格なのがヒマリの美点だ。行動を起こす時はいつだってアクティブである。周囲はそんな彼女に笑みを向けることが多いが、時にそれが仇になってしまう時もある。
「きゃっ!?」
信号待ちの曲がり角に差し掛かった時だ。元気に走っていたヒマリは曲がってくる人物に気付かず、走っていた勢いのままぶつかってしまう。それだけならばまだ良かった。しかしこの時、ヒマリはバランスを崩し、何とか体制を整えようとするもそれが悪手となって縁石を踏み外し、思わぬ出来事に手に持っていたスマートフォンが宙に舞うなか車道に投げ出されそうになってしまう。
「──ッ」
その瞬間、記憶の奥底に封じていた記憶が一瞬だけフラッシュバックする。そう、“あの時”も自分はこういう光景を見たことがある。土砂降りの雨の中、自分に向かってくる視界不良の車。ぶつかった衝撃と重くなっていく身体。
『ヒマリ……。ヒマリぃっ……!』
そして目が覚めた時、涙を流す家族の姿。
……だめだ。あんな顔をもう二度とさせたくはない。しかし自分で身体のバランスを整えられなくなったこの状況ではヒマリにどうする事も出来なかった。ごめんなさい、そんな事を想いながら目を瞑った。
──その瞬間、世界が止まったような気がした。
「……あれ?」
いつまでも覚悟した衝撃が来ることはなく、当たり前のように車の走行音や何気ない生活音が相変わらず聞こえてくるなか、ヒマリは恐る恐る目を開く。今、自分は車道に飛び出すことなく、歩道の中で何事もなく立っているではないか。
「──すまない、余所見をしていた。怪我はないか?」
どうなっているんだ? 自分の状況に混乱していると不意に目の前から声をかけられる。そこにはヒマリより少し年上、大学生くらいだろうか、一人の女性が立っていた。
整った顔立ちと黒いリボンで纏めたポニーテール。全体的に引き締まったさながらモデルのようなスタイルを持ったその外見に思わず見惚れるが、その女性の手にはヒマリのスマートフォンが握られている。
ヒマリは確かにぶつかった拍子で自分と共に車道に投げ出されるスマートフォンを視界に捉えていた。しかしそのスマートフォンを目の前の女性が握っているのだ。そんなこと“時間に干渉”でもしない限り出来ないはずなのに。
「ありがとうございます……。えっと、アナタは……?」
「むっ……そうだな。風来坊、と言ったところだろうか。訳あってこの町に流れ着いた」
頭が混乱してしまうが、差し出されたスマートフォンを受け取りながら目の前の女性に感謝を伝える。何気なくその素性を聞いてみれば、日常生活では凡そ聞きなれない風来坊という言葉が返ってきたではないか。思わずヒマリがフーライボー? と首を傾げていると女性は懐から一枚の写真を取り出す。
「この男を知っているか?」
そう言って見せてきた写真には一人の人物が写っていた。そこにいたのは中性的な外見を持つ目の前の女性曰く男性のようだ。年は目の前の女性に近いだろうか? とはいえ彼女がこの町に来た理由はこの写真の人物に関係しているらしいが生憎、ヒマリに記憶はなく首を横に振る。
「そうか。ならば仕方ない。ではな」
「ま、待って! お礼! お礼をさせてくださいっ!」
「そんなに大それた事はしていない。余所見をしていた私も悪いのだからな」
「でも私の気が済まないですっ! 何かさせてください! えっと……お名前はっ!?」
話も程々に女性は別れを告げようとするが、何があったか正確に把握できていないにしろ、迷惑をかけた女性に何かしたいという想いは強く、気にしないで良いと断ろうとする女性に対してグイグイと迫っていく。
「……カナデ」
出会って僅かだが、ヒマリが引かない性格なのを理解したのだろう。苦笑交じりに一息つきながら女性は改めてヒマリに向き直ると自身の名前を明かした。
「キサラギ・カナデだ」
──それは目醒めし最強の遺伝子