ガンダムビルドモバイル Puzzle G/B 作:ウルトラゼロNEO
練習用にと近くのガンプラシミュレータに訪れたタツヤ達。こうなったら流れに身を任せようとシミュレータにスマホをBluetooth接続してセッティングを行っているサナの後ろ姿を眺める。
「出来た! それじゃ、はじめるよっ!」
準備が出来たのか、振り返って声をかけるサナに仕方なしと頭をかいたタツヤは練習相手としてバトルを行うサナとシュミレータを挟んで対峙する。
するとシュミレータはまるで何かの基地を思わせるようなフィールドを形成するとアプリのデータを元にタツヤが使用するガンプラがデータとなってフィールドに出現した。
「天使……?」
それはまさにタツヤが抱いた感想通りのガンプラであった。
白と青を基調とした色合い、美しく輝くツインアイと額の四本角のようなアンテナ。ガンプラはおろかガンダムシリーズについて詳しくないタツヤでも、それが“ガンダム”であることは認識できた。しかしガンダムに疎いタツヤでもガンダムをはじめとしたMSがロボット及び兵器の類であることは何となく理解していたのだが、そのガンダムにはまさに天使の翼があったのだ。
そのガンダムの名前はウイングガンダムゼロ(EW)。
新機動戦記ガンダムW~Endless_Waltz~に登場する主役機であり、天使の翼も相まってどこか神々しさを感じる機体であった。
「──準備は良い?」
ウイングゼロ(EW)の姿に思わず見惚れていたタツヤだがスピーカー越しのサナの声に我に返ってモニターを見てみれば、そこにはスマートフォンのデータなしで遊ぶ際に自動的に選択される機体の一機であるザクⅡであった。
ウイングゼロ(EW)とは対照的に左肩のスパイクアーマーに右肩にシールド。頭部の単眼カメラであるモノアイを光らせた緑色の無骨な機体……。ガンダムの造詣に深くはないタツヤであったもRX-78-2 ガンダムと並んでこのザクⅡという機体は知っており、一般的にもメジャーな機体だ。
「それじゃあ好きに動いてみてっ!」
付き合いで数える程度しかガンプラバトルをやった事がないタツヤは詳しいテクニックは知らなくても基本の操作技術は何となく分かっているのだろう。ザクⅡを操るサナに促されて薄っすらと緊張帯びた様子で生唾を飲み込みながらジョイスティックを操る。
「すげぇ……」
ガンプラバトルはガンプラのデータを読み込んで行われる。だからこそガンプラバトルを有利に行う条件の一つはまずその作りこみであろう。サナが手掛けたであろうウイングゼロ(EW)もタツヤが見惚れただけの事もあってその出来栄えは申し分なく半ばビギナーであるタツヤであったもストレスなく動けた。
その後もウイングゼロ(EW)の挙動を確かめるようにあちこちを移動したり、手足の稼働を確認したり、武装を実際に使用したりと練習を行う。何回かやったことがあるというだけあってタツヤは呑み込みは早く、事はスムーズに運んでいた。
「じゃあ残り時間も少ないし、軽くバトルしてみようかっ!」
練習も十分だと判断し、残り時間も少ないことからサナは締めにとウイングゼロ(EW)に武装であったザクマシンガンを向けるといくよーと前置きをした後、引き金を引く。
マシンガンというだけあって連射されたウイングゼロ(EW)に向かっていく。流石にビギナーであれば無数の弾丸を受けてしまうだろう。とはいえ作りこんだウイングゼロ(EW)の装甲であれば問題はない。そう考えていたサナだが何とウイングゼロ(EW)は瞬時に機体を動かして弾丸の全てを避けたではないか。
「……うん、イイ感じだね!」
呑み込みの早さか、才能か。ともあれ今の動きを見たサナは彼で間違いないと笑みを浮かべながら続いて攻撃を仕掛ける。とはいえ必要最低限の動きに留めながらザクマシンガンを撃つだけであり、言ってしまえば動く砲台程度のものだろう。
……それだけに留めておくはずだった。
「──ッ」
バトルを進めているうちにコツを掴んだのだろう。
ウイングゼロ(EW)は大きくその翼を広げて軽やかに飛び上がるとビームサーベルを引き抜き、緑色に輝く光の刃を走らせながら一気にザクⅡとの距離を詰める。
出来栄えを考慮したとしてもその一瞬の出来事に息を呑んだサナだが既にザクⅡは腹部に刃を受け、致命打にはならないまでも大きく切り裂かれた部分は赤熱化しており、背後に回ったウイングゼロ(EW)に振り向いて対応しようとする以前に反転して返し刀と共に今度こそ腹部を両断され撃破されてしまった。
・・・
「あらら、負けちゃった」
シュミレータも稼働を終え、スマートフォンの接続を解除しながら、サナはいやぁー参ったと芝居臭い様子でタツヤの元に歩み寄る。
「ビギナーなのに凄いね、君。センスあるよっ」
「……って言っても明らかに手を抜いてたよな」
「あー……バレた? ごめん、勝った方が楽しさが伝わると思って」
手放しでタツヤを褒めるサナだが、当の彼女は明らかに経験者であることは分かっている。そんな彼女が歩く砲台程度の動きしかしなかった点や今の態度などおだてられている事に気付いているのだろう。何とも微妙な様子のタツヤを見て、無理があったかと苦笑交じりに謝る。
「……気を遣っての事なんだろうってのは感じてたけど。でもさ、負ける事よりもこうもあからさまだとあんまり嬉しいもんじゃないな」
「ごめんって。もう絶対しないからっ。あ、でもセンスがあるっていうのはホントだよ。その調子で本番もよろしくっ!」
とはいえサナの気遣い自体はタツヤも理解してはいるのだろう。とはいえ負けず嫌いのところがあるのか、釈然としない様子のタツヤを見て、もう愚弄するような真似はしないと謝罪しつつそれでもザクⅡ撃破の際の動きから彼のセンス自体は嘘ではないとこのまま事を進めようとする。
「分かったよ。じゃあ本番も……。本番?」
《間もなくガンプラゲリラバトル大会のエントリー受付終了のお時間となります。出場希望の方は─》
しかし本番と言われてもタツヤにピンと来るはずもなく頭に?を浮かべた瞬間、その答えが町内アナウンスによって流れた。
「やば! エントリーまだなんだった! ほら走るよっ!」
「お、おおおいっ!? 大会だなんて聞いてないぞっ!」
「だってまだ言ってないもんっ! 今は兎に角受付へダッシュ!」
まさか、と思ったのも束の間、強い力と共に腕を掴まれたタツヤはサナに引っ張られ、エントリーを行うために走り出す。ガンプラバトルのパートナーはまだしも大会について聞いていなかった為、タツヤは慌てるがお構いなしに半ば拉致同然に連れていかれるのであった。
・・・
「オノさん、エントリーまだ間に合うっ!?」
「おう、サナ。遅刻ギリギリやんか!」
タツヤを引っ張って雪崩れ込むようにサナが入店したのはガンプラ専門の模型店であった。
ところ狭しと並べられるガンプラの陳列棚を抜け、レジ近くにいる金髪のソフトモヒカンの男性に声をかける。
店名とロゴが記されたエプロンを着用していることからこの店の関係者なのだろう。オノと呼ばれた男性は関西弁を口にしながら気の良い態度でサナを迎える。この人物の名はオノ・マサヨシこの模型店の店主である。
「受付こっちやから急げ、ってぇ……。ちょい待ち。隣の姉ちゃんは誰や? 男モンの制服何か着て変わっとr「男です」……お?」
「俺は男です」
「……お、おう。カミーユの逆版っちゅーかなんちゅーか……。まあ下手なことは言わんほうがええな」
ポニーテールと柔らかな顔立ちから一見、少女と見間違えたオノであったがその言葉の最中に有無を言わさない様子で訂正するタツヤにオノは頬を引き攣らせる。なぜわざわざポニーテールにしているのか分からないが、下手なことを言えばポニーテールを男の髪型にして何が悪いんだと殴られそうなため、これ以上は止めておこう。人の個性って大事、うん。
「しかしトウマの代わりを見つけられて安心したわ。全国大会の日程と被るなんてなぁ」
「トウマ?」
「ガンプラ部のチームメイトだよ。同じ学校だし、見たことあるかも。本当はトウマと大会に出る予定だったんだけど昨日の土砂降りで今日になっちゃったんだ」
トウマの代わり、という言葉に眉を顰めてどういうことだとサナを見れば、どうやら昨日の土砂降りと日程の問題から本来、組む予定だったチームメイトは全国大会に向かってしまったようだ。
「トウマの代わりは中々荷が重いで。戦いとは非常なものだ。勝つ者がいれば必ず負ける者もいる」
「──勝負の世界とはこういうものだ。ネオイングランドの英雄だね」
とはいえ話に聞く限り、全国大会に出場できるだけの実力がある人間の代わりはオノが言うように荷は重いだろう。知らず知らずのうちに生唾を呑んでいるタツヤにオノは芝居がかった態度で話していると不意にタツヤ達の後ろから声が聞こえてくる。
「やっほー、タツ兄。まさかオノさんの店にいるとは思わなかったよ」
そこにいたのは奏海高校の制服を着用し、アキに似たオレンジがかった鮮やかな長髪を腰の辺りで青色のリボンで纏めたタツヤに似た顔立ちの人物がいた。
彼の名前はマトイ・アヤト。タツヤの双子の弟であった……。