ガンダムビルドモバイル Puzzle G/B 作:ウルトラゼロNEO
朝日が少しずつ昇り、 東の空が紅黄色に染まるなか、マトイ家の一室、その部屋の主はむくりと起き上がり、まだ覚醒しきれていない頭でスマートフォンの時間を確認するとまだ体温が残る心地の良いベッドから降りて洗面所へ向かう。
蛇口を捻り、ぬるま湯に温度調節するとそのままパシャッと顔を洗い、タオルで拭う。この家で行動を起こしているのは自分だけだろう。手早く動きやすい服装に着替えて靴を履いて家を出て親しんだランニングコースに繰り出す。さあ、この瞬間からマトイ・タツヤの新しい一日の始まりだ。
それから時間にして30分ほどであろうか。長年続けているランニングコースを終えてタツヤがセレクトMであり、実家であるマトイ家に帰ってきた。ランニングだけあって肌はじんわりと汗ばんでおり、頬もわずかに紅潮していて呼吸も僅かに乱れている。服の裾で軽くむず痒い鼻先の汗を拭ったタツヤはそのままシャワーを浴びに行く。
「おかえりー」
シャワーで汗を流し終えたタツヤは手早く髪をポニーテールに纏めるとワイシャツとズボンを着用し、ネクタイを締めながらセレクトMの店内に顔を出す。するとそこには既に両親が開店への向けての準備を進めており、レジに入金していたアキがタツヤに声をかける。
「タツヤ、今日はどっちだ?」
「んー……バター」
厨房にいるトモハルが縦に半分にカットされたモーニング用の3cmほど厚みのある食パンを片手に問いかけるとトモハルの近くにあるバターとイチゴジャムを一瞥し、今日の気分で答えると「あいよ」と手慣れた様子でコンベアトースターに流す。
「おはよぉ……」
すると今度は寝間着姿のままのヒマリが眠い目を擦ってやってきた。
まだ完全に目覚めてはいないようで力のないふんわりとした様子であくび交じりに挨拶してきた。
「ほら、ヒマリ。早く顔洗ってこい、いつも以上に覇気がないぞ」
「……タツ兄達と一緒に学校に行けるって思ったら眠れなくて……」
「……遊びに行くわけじゃないんだ。入学式はもう終わったんだから学生の本分をだな」
「わかってるよぉ……。顔洗ってくる……」
普段に比べて眠たそうに重い動きをしているヒマリだが、入学式を終え、今日から始業式ということもあって兄達二人と通学出来ることが嬉しいようで少々夜更かししてしまったようだ。その事で口うるさく説教を始めようとする長男をあしらいながら洗面所へ向かっていく。
「……」
「嬉しそうね」
「……まあ、ヒマリは高校生活を楽しみにしてたからな」
「いや、アンタが」
「……はぁあ!?」
ヒマリの姿を見送っていると不意にアキが隣に立って声をかける。
あんな理由で夜更かしをした妹にやれやれと言わんばかりに肩を竦めるタツヤだが、本人は自覚していなかったのだろう。頬が緩んでいる顔を指しながら何を言ってるんだとばかりにサラッと言われた為に途端に顔を真っ赤にして狼狽えている。
「ほらほら、さっさとアヤトを起こしに行って」
何か弁明をしようと言い訳を考えて口をあわあわとさせているタツヤの背中を微笑みながら押す。そう、いまだにアヤトは姿を見せていないのだ。いまだ気恥ずかしさはあるのだろう。精一杯の照れ隠しで真っ赤に染めた頬のまま顔を顰めたタツヤはアヤトの部屋へ向かう。
・・・
「……」
「おー、起きてたか。おはよう」
アヤトの部屋に向かってみれば、既に彼は起きておりベッドから降りてはいないものの上体を起こしてはいた。しかしタツヤが顔を見せてはいるもののアヤトはボーっとしたまま心ここにあらずと言った様子だ。
「時間がないんだ。早く制服に──」
「……うるせェ」
「相変わらず寝起き悪いな!?」
ハンガーにかけられた制服を差し出すタツヤだが焦点の合わない目のまま舌打ち交じりで開口一番に言われた言葉に即座にツッコミを入れる。低血圧が関係しているのか、寝起きのアヤトの態度はいつも悪い。
とはいえアヤト自身、このままではいけないことくらいは分かっているのだろう。もぞもぞとした動きでタツヤから制服を受け取ると着替え始める。
・・・
「アヤトとヒマリはどっちが良い?」
「私、ジャム」
「……タツ兄はバターだって」
「俺の食べながら言うなっ」
身支度も整えた三兄妹が続々と揃う中、トモハルは例によって残り二人にも問いかけるとヒマリは希望を口にするなか、アヤトはタツヤに用意されていたパンを頬張りながら塗られていたのがバターだった為、そのまま言うと即座にツッコミが入る。
「「「いってきまーす」」」
「「いってらっしゃーい」」
ドタバタとするなか、登校時間を迎えた三兄妹は両親に声をかけ、見送りを受けながら家を出るのであった。
・・・
「──それでは奏海高校、始業式を終えまして。有志クラブによる部活紹介を始めます」
始業式、全校生徒が集まり、粛々と進められていくなか、司会となる教師が次のプログラムに移す。すると今まで静かに、中には退屈そうに聞いていた生徒達も表情に活気が宿っていく。
「おっ、メインイベントだな。第2部活はどうするかなー? なあ、タツヤはどうする?」
「メインイベント? なにかあったか?」
「新年度の始業式のお楽しみだろ。各クラブが部員獲得のために繰り広げるド派手なアピール合戦だよ」
にわかにざわついているなか、ふと同級生の一人が何気なく聞いていたタツヤに声をかけると、タツヤ自身は特に何も思っていなかったのか、寧ろなんでこんなに色めき立つ理由を聞き返せばどうやら部活紹介においてどれだけのアピールが行えるかをみんな注目しているらしい。
「タツヤは部活に入ってなかったろ? この機会にどうだ? お前割と何でもこなせるし」
「……俺は家のこともあるから」
「あー……お前の家、一時期大変だったらしいな」
同級生の勧めに複雑そうな表情で目を逸らすタツヤ。タツヤは普段からセレクトMの手伝いをしていることは同級生達は知っているのだろう。その反応に何か思い当たる節があるのか、話しかけた同級生は苦笑している。
「……」
その話を近くで聞いていたのはアヤトだった。彼自身、思うことがあるのだろう。タツヤの顔を横目に心なしかその表情は暗くなっている。
「──どうもー、明るく楽しくがモットーのガンプラ部ですっ」
そんな矢先のことであった。ふと壇上に以前知り合ったサナが現れ、タツヤもアヤトも関心がそちらに向く。最もアヤトは相変わらず苦い顔なのだが。
「紹介するのは私、2年のミヤマ・サナと──」
「同じく2年。アイゼン・トウマです」
今回はサナだけではなかった。その隣には額縁のメガネをかけたベージュ色のマッシュヘアの青年の姿もある。自己紹介の通り、彼がゲリラバトル大会において本来、サナとペアを組む存在だったのだろう。
「キャーッ! アイゼンくーんっ!」
トウマが声を発するや否や途端に女子生徒を中心に黄色い声が沸き起こる。とはいえ、彼の整った容姿を考えればモテるのは容易に想像が出来るがここまで歓声が沸き起こるものなのか?
「流石、1年で全国大会に出た有名人だな」
「あのサナちゃんって子も可愛いし、普通なら入部希望が殺到するだろうにな」
(“普通”なら……?)
そう考えていたタツヤだがどうやらトウマはルックスだけではなく、輝かしい功績も残しているらしい。ふと近くで話していた生徒の話を耳に挟んだタツヤだがその言葉に引っ掛かりを感じてしまう。
「ガンプラ部の活動のメインになるバトルの実演をしたいのですが、誰か手伝ってくれる人っ!」
トウマが学校による備品として購入されたシミュレーターを用意するなか、サナが元気よく手を上げながら生徒たちに求める。しかしその結果は乏しくなく誰からも手が上がらない。
「あれ、手が上がらない。困ったな……。これじゃあ実演出来ないので、こちらから指名してもいいですか?」
「……いやバトルの実演なら二人でそのままどうにかなるだろ」
「マトイ・タツヤ! 壇上へお願いします!」
「いや、だから……」
「壇 上 へ お 願 い し ま す !」
ここまでは予定調和なのだろう。しかし話が進みにつれ、タツヤは悪寒を感じていると早速指名を受ける。お陰で衆目を集める結果となり、うんざりとした顔を見せるなか、半ば強引に壇上へ誘われてしまう。
「……嫌な予感がするなぁ。おい、アヤト。行くぞ」
「はあ!? 何で俺まで……!」
「俺はガンプラ持ってないんだから仕方ないだろ。悪いけどなんかあった時の為にサポートしてくれ」
悪乗りも加速して同級生達から背中を押されるなか、タツヤは重い溜息をつきながら我関せずと知らん顔をしていたアヤトの腕を掴むと道連れとばかりに壇上に連れていく。
「二人とも凄い可愛いなぁ。さっきすれ違った時いい匂いしたぞ」
「でも、あの制服からしてどっちも男だろ」
「いやもしくはアニメキャラみたいに男装してる線もあるぞ。それに男なら男でそれはそれで美味しいって!」
壇上では腹を括ったタツヤと彼に手を引かれたままうんざりしているアヤトに注目が集まっている。どうやらその容姿はどうも余計に一目を引き付けるらしい。
「マトイ・タツヤ……だな。サナから話は聞いている。サプライズですまないが手合わせ願う。アヤトも……ここに来るとは思わなかった」
「……いや別に」
もしかすれば顔を合わせているかもしれないがこうして面識を持ったうえでは初めてだろう。トウマが率先して非礼を詫びつつバトルを求めると隣にいるアヤトを見やる。先程までうんざりしていたアヤトも今となって気まずそうに視線を逸らしていた。
「……こうなったら仕方ない。タツ兄、行くよ」
「その気になったな。よし!」
「けど今回は1on1のバトルだから俺はルーナで参加は出来ない。あくまでサポートだよ」
アヤトもこのままにしても仕方ないとは思ったのだろう。タツヤ同様に腹を括るとタツヤも満足そうに頷く。しかし今回はトウマとの一騎打ちのため、ソラーレとルーナとのコンビは組めないらしい。
「セコンド式でやろうと思う。操縦によるメインのファイターを据え、それをサポートする感じだね。大体はモビルアーマーやスケールの大きいガンプラとか一人だと手に余るガンプラを使う場合に最大三人までで採用されるんだけど、タツ兄はまだガンプラバトルどころかガンダムを知らないし、流石に身内に赤っ恥はかけさせたくない。トウマもそれで良いよね」
「勿論だ。無理を言っているのはこちらだからな」
どうやら僚機としてではなく、操縦面のサポートを行ってくれるようだ。タツヤにどのようなサポートかを説明した後にトウマに了承を求めるとトウマ自身、悪いとは思っているのか頷いてくれた。
「トウマのガンプラはバスターガンダムをベースにしたカイゼル・バスターだ。中距離をメインしているガンプラだから同じ距離をメインにするロッソだと経験の差が露骨に出る可能性がある」
「ってなると、ブルになるのか?」
「うん、だからこそ俺がいるんだ。こうなった以上、ちゃんとサポートするよ」
ガンプラ部だっただけあってトウマのガンプラの特性を理解しているのだろう。ソラーレのパックをブルに選択しながらアヤトは笑いかける。どちらかと言えばアヤトはロッソよりもブルに適正がある。そんな彼のサポートを受けられるならまだ良いだろう。
「タツ兄ーっ! アヤ兄ーっ! 頑張ってーっ!」
「……聞こえたな、アヤト」
「うん、あんなに妹が応援してくれてるんだから無様には終われないよ」
「よし、いつも奴、あの言葉でやるかっ」
「えっ? あぁ、あれか。気に入ったんだね」
換装を終え、バトルへの準備が進んでいくなか不意に二人の耳に活発な妹の声が届く。見てみれば視線に気付き、ぴょんぴょんと飛びながら大きく手を振っているヒマリの姿が見え、あの期待に絶対に応えるんだと二人は頷き合う。
「「俺色に組み上げろ、ガンプラ!」」
ゲリラバトル大会同様、両手をリズミカルに交差するよう打ち鳴らしながら最後にグッと拳を打ち合わせた二人はバトルに臨む。妹の声援を受け、二人ともやる気に漲っていた。
「それじゃあカタパルトを抜けてバトル開始。タツ兄、あの言葉で出撃だ」
「あの言葉?」
「アムロ、行きまーすとかガンダム知らないタツ兄も聞いたことぐらいあるでしょ?」
「言うわけないだろ、恥ずかしい」
「俺色に組み上げろとか言っておいて!?」
いよいよ出撃画面に切り替わった。アヤトが所謂、お約束を求めるなか、その気はなかったタツヤはアヤトのツッコミを受けながら共にソラーレ・ブルで出撃するのであった。
ガンダムソラーレ・ブル
WEAPON ビームライフル(ライトニングガンダム)
WEAPON ビームサーベル
HEAD ビルドストライクガンダム
BODY ビルドストライクガンダム
ARMS ライトニングガンダム
LEGS ビルドストライクガンダム
BACKPACK フォースインパルスガンダム
SHIELD 機動防盾
AIPILOT コウ・ウラキ