ガンダムビルドモバイル Puzzle G/B 作:ウルトラゼロNEO
「サナの話では見込みがあるとの事だが果たしてどれ程のものか」
バトルフィールドとなったのは建造物が立ち並ぶ市街地ステージであった。大きな一本道から街路樹のように設置されたビル群を抜け、現れたのはバスターガンダムをベースにジェスタ・キャノンのパーツを組み込んだカイゼル・バスターだ。
操るは勿論、作成者でもあるトウマであり、周囲を索敵しつつ相手の出方を伺う。ゲリラバトル大会を優勝しただけあってサナはタツヤを高評価していた。確かに結果は残っているし、サナやその辺のファイターを捕まえただけでは優勝までは出来ないだろう。しかしそれを直で見ているわけではない。
俗に言う上から目線という奴か。そう考えると傲慢に感じてしまう自分がいる。しかしマトイ・タツヤがどれだけの実力の持ち主であるのかは自分が直に正当に見極めたいの。……それだけガンプラ部は切迫した状況なのだから。
「……来たな」
一瞬の思考の波が過ぎたのと同時にアラートが響く。センサーが指し示す方向を確認してみれば、そこには太陽を背に轟音と共に地面に降り立ったガンダムソラーレ・ブルの姿があるではないか。
「隅々までディテールアップが施されたガンプラ。流石、アヤトが作成したといったところか……。ガンプラ部に顔を出さなくなったのが惜しい程の逸材だったな」
全国大会にまで進出しただけあって相対するトウマはソラーレBの細部まで拘った完成度を一目で見抜いたのだろう。そしてそれを作成したであろうアヤトに対しても口惜しさを滲ませる。
「良い、タツ兄。バトルに重要なのは地形も利用することだ。市街地ステージはその名の通り建造物が建ち並んでる。障害が多くて射撃の妨げになるけど逆に言えば相手の攻撃だって防げるんだ」
「見た感じ、射撃寄りって感じだな。上手く立ち回れれば……ッ」
そんなアヤトは市街地ステージの特性を説明する。確かにところ狭しと建ち並ぶ建造物の数々は上手く立ち回れるのであればバトルを優位に運べるだろう。
素人のタツヤから見てもカイゼル・バスターは中距離から遠距離にかけての射撃機。この建造物の数々を利用できるのであれば少しはまともに戦えるだろう。
その矢先のことであった。カイゼル・バスターがビームライフルの銃口を向け、一瞬の間を置いた後、その引き金を引いたのだ。
一閃。ビームが宙を走るなか、ずぐさまソラーレBは機体を翻してビルの影に隠れる。
今の一瞬でトウマの実力を垣間見た。彼の射撃には隙がない。今、回避が成功したのも彼がそう出来るように一瞬の隙を作ってくれたことに他ならなかった。
その後もビルを死角に銃撃戦を繰り広げるソラーレBとカイゼル・バスター。
ある程度、トウマが気を遣っているのとタツヤとアヤトのコンビのお陰で目立った損傷もなくバトルは続いている。それがただのバトルならば良い。しかしこれは違うのだ。
(アヤトのサポートがあるとはいえ、確かにセンスはあるようだ。しかし……)
そう、今、このバトルのきっかけは人を惹きつける程の魅力が必須の部活紹介だ。
このままただ物陰に隠れての撃ち合いでは地味な印象を残したまま終わってしまう。
「意地悪をさせてもらうッ!」
それではいけない。目を細めたトウマは素早くコンソールを叩き、カイゼル・バスターの両肩に装備されるミサイルポッドと両腰のハンド・グレネードを同時に発射すると一目散にソラーレBが隠れるビルに飛び込んでいく。激しい爆発と轟音によってビルが崩れていくなか、立ち上る爆炎を飛び出してソラーレBが空へ舞い上がった。
「──ッ!」
ここでタツヤとアヤトが息を吞む。
何とカイゼル・バスターは既に周りこんでビームサーベルを振りかぶっていたのだ。カイゼル・バスターは機動力に特化したガンプラではない。ではなぜ、こんな真似ができたのか。それは至極単純。トウマがソラーレBの行動を先読みしていたに過ぎなかった。
しかしそれはタツヤにとって動揺に繋がり、咄嗟に回避しようとするものの間に合わず、ビームライフルを両断されそのままタックルを受けて地面に叩きつけられる。
「人目を惹くのであれば……斬り合いだろうッ」
タツヤは素人であると考えれば高度な技術戦は期待できない。であれば至近距離での斬り合い。それがパフォーマンスのような派手なバトルを考慮した上での選択だった。
「来るよ、タツ兄ぃっ!」
「分かってるッ!」
向かってくるカイゼル・バスターに瞬時にソラーレBはビームサーベルを二本抜いて、二刀流で構えると真正面から向かっていく。タツヤはどちらかと言えば遠距離戦よりも近接戦の方が自信があった。トウマの意図は気づけないまでもこの状況はまだ喜ばしいことだった。
(まだ太刀筋は粗雑……ッ)
カイゼル・バスターと幾度も切り結ぶ。確かに先が楽しみなファイターではあるがまだそれでも今のタツヤの行動はトウマには手に取るように分かる。だから真正面から斬り合っていたとしてもすぐに背後を取ることが出来てしまった。
(タイムアップまでもう少し。だがそこまで待つ気はないッ)
チラリと時間を確認してみればもう制限時間が迫っていた。とはいえ引き分けにするまで手を抜く気はない。これで終わらせるとビームサーベルをコックピット目掛けて突き刺そうとした。
「ッ!?」
──瞬間。背後を取られていたソラーレBは順手で持っていたビームサーベルを即座に逆手に切り替えて、そのまま背後のカイゼル・バスターを逆に突き刺そうとしたではないか。
この一瞬の動作、素人では出来ない。これは単純にタツヤのセンスによるものだろう。彼は類まれなるバトルのセンスがある。トウマはそう感じずにはいられなかった。しかしそれでやられたりはしない。大きく後方へ飛び退いてビームサーベルを避ける。
「タツ兄、EXアクションだ!」
「EXアクション……?」
アヤトも同様に驚いてはいたもののすぐに思考を切り替え、タツヤに指示を出す。しかしいまだ詳しくないタツヤは顔を顰める。
「所謂、必殺技みたいなもんだよ。特定の武器を出現させたり、システムを作動させたり。ブルに使っているフォースシルエットのEXアクションはエクスカリバーだッ! 使ってみて!」
アヤトの説明のまま操作盤を見てみれば、確かにEXアクションはあった。どうやらEXアクションはバトル開始してから一定時間経過しないと使えないようで、逆に言えばそれだけのラグが必要なほど強力なものなのだろうとすぐさま選択する。
「ん……?」
するとソラーレBのはるか後方でキラリと輝く。それに気づいたタツヤがモニターを確認すれば、視線を引く二本のソラーレBの全長を越えるほどの対艦刀を装備した飛行機・ソードシルエットフライヤーが接近してきていた。
「させんッ!」
それが何の行動を起こすか、勿論ガンダム作品に精通しているトウマにはすぐに分かった。だからこそビームライフルを向けるが同時にソードシルエットフライヤーはパックから一本の対艦刀……MMI-710 エクスカリバー レーザー対艦刀を切り離す。
ビームライフルの引き金が引かれ、一筋のビームがソラーレBに向かっていく中、両者の間を裂いてビームを打ち消す。地面に堂々と突き刺さり、ビームを真正面から弾いたその姿はかの聖剣の名を持つに相応しい勇ましさだった。
「なあ、何かあの飛行機……落とし物していったぞ」
「いや拾えよッ! 颯爽と現れて届け物をしてくれたソードシルエットフライヤーさんの気持ちにもなれッ!」
当のソラーレB……というか、タツヤはエクスカリバーを指しながら首を傾げており、すぐさまアヤトの怒号に似たツッコミが入る。流石にそこまで言われてたら仕方ないと思ったのか、ソラーレBは地面に突き刺さったエクスカリバーを引き抜くとその刀身にビームが走り、レーザ対艦刀の機能を見せ、タツヤを「おぉっ」と感心させる。
「よっし、行くかッ」
戦意が燃えたのだろう。エクスカリバーを大きく一振りしたソラーレBは真っ直ぐカイゼル・バスターに向かっていく。咄嗟にカイゼル・バスターはその武装を駆使して接近を阻止しようとするのだが、ソラーレBはエクスカリバーで時に切り払い、時に盾代りに利用して接近するではないか。
「しまっ──!?」
ならば距離を置こうと後方へ下がろうとするトウマだがソラーレBは腕部のビームバルカンをすぐに発射する。カイゼル・バスターの横を掠めたビーム弾は高架を破壊し、崩落させ後方へ下がろうとするカイゼル・バスターの動きを一瞬でも遮った。
(しかし、バーニアが限界の筈……。それ以上はッ)
知らず知らずトウマはバトルに本腰を入れていた。ソラーレBは接近する都合上、全てのバーニアを稼働させている。しかしそれには残量があり、もう間もなくそれも尽きるだろう。
そして案の定、バーニアは弱々しくなり勢いも衰えていく。バーニアが尽きた時、それがソラーレBの最後だと判断するトウマはソラーレBに照準を確実に合わせる。
「もっと強くッ!」
「ああ。羽ばたく為にッ」
無我夢中に見えてタツヤもバーニアの残量は把握していた。だがそれでも尚近づいていたのだ。それは後少しでカイゼル・バスターに届く距離になるからだ。しかしバーニアは弱々しくなり、やがて距離は僅かに開いていく。しかしそれでタツヤ、そしてアヤトの戦意は衰えない。
するとソラーレBはシールドを自身の前方に投擲して突き刺した。誰しもがその行動の意図が読めず、眉を顰めて困惑するなか、最後の力を振り絞ってシールドに近づいたソラーレBはシールドの上部を足場に、強く蹴って反動を利用することでもう一度、飛んだのだ。
「「いっけえええええええぇぇぇぇぇーーーーーぇぇぇええっっっ!!!!!」」
タツヤの声が、アヤトの声が重なり合う。太陽を背に聖剣を振り上げた勇者達は共鳴した。その瞬間、どんな戦いでも乗り越えられそうな高揚感が生まれる。
上段から振り下ろしたエクスカリバーはカイゼル・バスターの右腕をバッサリと切り落とし、ソラーレBは目前に降り立つ。
完全に間合いに飛び込んだ。タツヤが目を刃の如く鋭く細め、トウマが息を呑むなか、ソラーレBはエクスカリバーをコックピット目掛けて突き刺そうとし、カイゼル・バスターはシールドを構える。
誰しもが固唾を飲んで見守るなか、それ以上、お互いの行動が起きることはなかった。
何故ならば両機とも時間が停止したかのように静止している。
タツヤ、アヤト、そしてトウマが乱れた呼吸を整えながら視線を向ければ制限時間を過ぎ、タイムアップとなっていたのだ。