綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、混乱する

 

 

 

 

 

「って、私も⁉︎」

 

 俺の声以外、暫くの無言。

 

 吃驚した俺は勿論だけど、ポカンとした顔のクロエリウスも動かない。ツェイスは顎に手を当てて何かを考えてるみたい。魔王陛下だけはちょっとイライラしてるかも。まあさっきは圧勝だったし、そうなるよう戦ってたもんね。多分後から文句が出ないよう戦略を練ってたんだろう。

 

 ん? ターニャちゃんは何故か厳しい顔色。ルオパシャちゃんをジッと見てる。

 

「ルオパシャ様……どういう事で御座いましょうか?」

 

『シャルカよ、先程言った通り、ジルを求める者達の戦いじゃ。そもそも妾を脅かすくらいでないと、兄達に立ち向かうなど到底出来まいて』

 

「成る程。しかし、ルオパシャ様自らが、ですか?」

 

『何を言う。ジルの母たるお主に認めて貰わなければならないのじゃろ? 妾も()()()()()()というものよ』

 

「え、あの、意味が……」

 

 こんなアタフタするお母様、珍しい。でも、俺だって意味が分かんない。何言ってるんだろ?

 

『ふむぅ? 特別な話では無いぞ? お主との最初の話通りじゃが……兄達に挑む力を必要としておるのじゃろ? ジルの子に始原の血を受け継ぎ広げる。その伴侶に相応の力を求めるのは理に適っておるし、だから妾も賛同した。そして此処に居る』

 

 参加した、妾も気合いが入る、お母様に認めて貰う……

 

 んー? あれ? も、もしかして?

 

「えっと、ルオパシャちゃんも私とってこと? ま、まさか違うよね、自意識過剰だぞって笑われちゃう、ハハハ」

 

『お主との子ならば、兄達も慄くであろうて。始原は妾に手を出さなんだから、妾達古竜に血が受け継がれなかったからの。悠久の時を超え、新たな種が生まれくるのじゃ』

 

 当たってるぅ!

 

 見た目は真っ白な超美少女。白く輝く髪は長く、橙色した瞳が凄く綺麗。前にプレゼントしたセーラー服擬きからはやっぱり白い腕と脚が伸びている。細っそりした全身は儚く見えるけど、実際にはでっかい竜で。

 

 でもでも、可愛い。

 

 超可愛い。

 

 ……グヘヘ。ありかな、いやありです。

 

「痛いっ。な、なに?」

 

 プイと明後日の方向を見てるターニャちゃんが俺の手を抓ったみたい、多分だけど。思わず問い掛けようとしたら、お母様の声で気が逸れてしまう。

 

「ルオパシャ様。大変申し訳ありませんが……人種は雌雄の別が必要なのです。我が娘は生まれながらの女。つまり、お相手には男性が」

 

 あ、だよね、はぁ。

 

 きっと知らなかったとか忘れてたのかな。こんな見た目だけど、人じゃないし。結構人種の生活に詳しいと思ってたけど、まさか性教育を受けてる訳ないからね。ほら、男と女が互いに好きになって、色々とゴニョゴニョして、うん。

 

『当然知っておる』

 

 ほら、やっぱり……って、知ってるの⁉︎ そういえば、始まる前に男女がしっぽりとか言ってたような……

 

「え? で、ではルオパシャ様は男性なのですか?」

 

 絶対違うって。声も女の子で、竜の姿だって力強さより美しさが勝る感じだよ? 大体、六年前にお着替えしたし、スカートの下も見ましたから! 縞々パンツは記憶に格納済み!

 

『いや? 少し前に始原との話をしたであろう? 妾は"ロリっ娘"とな。く、また腹が立って来た』

 

 やっぱりそうだよね? つまり雌の竜って事だ。メスノリュウ……何だか背徳感を感じる。竜娘かぁ、アリだな、うむ。いやいや、何も解決してないぞ?

 

「では、何故ジルヴァーナを求めるのですか?」

 

 すると、何だか恥ずかしそうに頬を染めるルオパシャちゃん。可愛いけど、そんな反応するなんて驚きだ。あれぇ、まさか本気なのか⁉︎

 

『う、うむ。母であるお主には伝えねばなるまい。実はな、数年前に出会ったとき、いきなり斬りかかって来た訳じゃが』

 

 そ、その話はもう要らないんじゃないかな⁉︎

 

『魔力の緻密な操作、量、そして心。そんなジルが気になっての。そのあとアートリスを散策して、始原との日々を思い出した。気付けばジルを目で追い、また会いたいと、な。そして、この度の話を聞き、その気持ちに確信が生まれたのじゃ』

 

「えっと、つまり、ルオパシャちゃんは私が好き、なのかな……?」

 

『そ、そうじゃな。人の心など全ては分からぬが、ジルと過ごす時間を楽しいと思える妾がいる。もしかしたら……始原が言葉にしていたことを、少しだけ理解したのかもしれん。だから、その答えを探しているのじゃ」

 

 さ、流石超絶美人のジルちゃん。人を超えて竜娘も籠絡してるなんて。す、凄いねぇ……マジですかぁ。

 

 見れば茫然自失のお母様。まさかルオパシャちゃんもこの戦いの参加者だったなんて、誰も思う訳ないもんね。

 

「ルオパシャ様。肝心の事が解決していません」

 

『ん、ターニャだったか? 何の事じゃ?』

 

「どうやってお姉様と子を成すのですか? 女性同士では()()()出来ないんですよ? ましてやアナタは竜。()()()()()()

 

 こ、子作り……ターニャちゃんの可愛い唇からそんな言葉を聞くと、こっちが恥ずかしくなるよ。それに大き過ぎるって? あ、身体だよね、うん。あと何だかやっぱり怖い顔。いや、何かを必死で探してる感じ? 

 

『ああ、そう言う意味か。それなら案ずるな。始原が種を超え血を広げた方法を妾も扱う事が出来るのじゃ。まあ、完成したのは最近ではあるが、我が精をジルへ注ぎ込むのに障害はないぞ』

 

 こっちが精を注ぎ込まれる……あのぉ、出来れば注ぐ側が良いのですが。

 

「……つまり、()()()()()()()()

 

 タ、ターニャちゃん?

 

『種も性も、理論的にはな。ただ人種に限らず、たとえ魔族の王であろうとも不可能な芸当じゃ。()()()()()()()を深く深く知らねばどうあっても無理……うん?』

 

「魔素……魔素を扱う技術があれば可能なんですね?」

 

『お、おう。よく知っておるな。であるなら分かるであろう? 例え魔力操作に長けたジルであっても、人の手に余るのが魔素の精細な感知と扱いで……なあジルや。この娘、何だか怖いんじゃが? それに魔素が……』

 

 ターニャちゃんの才能(タレント)が働き、魔素が震え初めてる。消し飛ばしてないから、バレたりはしてないけれど。

 

「シャルカさん」

 

「何かしら?」

 

 何故かお母様だけは冷静に返してる。さっきまでアタフタしてたのが嘘みたい。ジッとターニャちゃんを見返し……いや、何だか楽しそう。だって薄ら唇が曲がってるし。

 

 でも他の皆は雰囲気に押されて黙ったまま。勿論俺も。だってそれ程に異質な感覚を覚えるのがターニャちゃんの才能だから。真っ白な世界に墨汁を溢すような、音の無い世界で楽器を掻き鳴らすような、全部の意識を捉えられる、そんな感覚を覚えてしまう。この世界に生きる者にとって、完璧なカウンターになる特別な力。

 

「私も参加したいです。途中参加だから卑怯ですけど、古竜ルオパシャ様を退()()()()()()()()()()()()()。特別に許して下さいませんか?」

 

「あらあら。困ったわねぇ」

 

 え、えぇーーー⁉︎

 

『ほぉ……この妾を退けると言ったか。面白い! シャルカよ、この者も参加させよ! お主が勝った暁にはジルを孕ませる方法を伝授してやる。まあ学ぶ事など不可能じゃがなぁ!』

 

 あばばばばば……

 

「タタタ、ターニャちゃん、どうしたの⁉︎ 幾らあの才能があっても危な過ぎるよ!」

 

 放たれた魔法は消せない。そもそもでっかい竜だから踏み付けられたらプチって……

 

「はい、分かってます。お姉様の力が必要ですけど……私を支えてくれますか? 以前誓ってくれました。大切な妹だと、大好きだって、必ず守るって」

 

 その上目遣い、反則でしょー⁉︎ 可愛いし、可愛い過ぎるし!

 

「で、でも、私は……お姉ちゃんで、同性で……」

 

「種も性も超えられます。ルオパシャ様が言いました」

 

「え⁉︎ え、だって、私、ターニャちゃんにフラレて……」

 

「フラレた? 私は最初から今もお姉様が大好きですけど?」

 

「ま、まさか、れ、れ、恋愛的に? ラブ、な感じ、ですか?」

 

「ふふふ……片言でプルプルしすぎて可愛いですよ?」

 

 フワリと笑ったターニャちゃん。

 

 何だか大人びて、凄く綺麗だ。

 

 それより答えて貰ってないですけれど。

 

 

 

 

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

 

 ターニャちゃんはツェイス達に近づき、淡々と話を始めた。

 

「最初にお詫びさせて下さい。全力で戦った皆様なのに、途中から参加なんて卑怯だと思います。でも、()()()()()()()()()()()()()()知らなかったんです」

 

 一度目を瞑ったツェイスは暫く無言。クロは頭をガシガシしてて、スーヴェインさんは空を眺めて皮肉げな笑みを浮かべてる。俺なんて未だ衝撃から立ち直れないから、頭の中がグルグルだ。

 

 整理して考えてみなければ。

 

 ルオパシャちゃんが言うには、種族や性別も関係無く子作り出来るらしい。必要な方法は、常識を超えた"魔素"の絶対的操作。自慢になっちゃうけど、この世界で"魔力"を扱わせたら俺の右に出る奴はほぼいない。魔王であるスーヴェインさん位しか思い浮かばないからね。魔力のコントロールを可能にしてるのは魔素への理解だけど、それでも目で見たり消したりなんて絶対に無理だ。

 

 とあるTS女の子を除いて。

 

 ターニャちゃんがルオパシャちゃんから方法を学び、別の女性に子を成す事が可能になったとしよう。TSしたとはいえ、外見は完全な美少女。恋愛対象が女性だとしても、多分誤魔化していたはず。自分は元男の子ですって告白した訳じゃないし、俺以外は知らないことだ。

 

 でも障害が消え去って、心のままに恋する事が出来たなら? 実は好きだった女性(ひと)に遠慮なく告白するのだろうか。

 

 つまり? 

 

 お、落ち着け。俺的にそんな都合の良い話なんて……

 

「……最初から分かっていたよ」

 

「ツェイス殿下?」

 

 ツェイスとターニャちゃんの掛け合いに意識が逸れる。ツェイスってば何が分かってたん?

 

「愛する人は誰なのかを」

 

 うぇ⁉︎ またまたぁ、そんな訳……

 

「それどころか、シャルカ皇妃陛下も同じだろう。さっきのキミの要望にも全く驚いていなかった。当たり前だが、そんな話なんて一顧だにしないのが普通だ。大体、嬉しそうに笑っていたしな」

 

 ツェイスは嘆息。クロは呆然。スーヴェインさんは興味津々。そんな感じ。

 

「だが、二人は姉妹として歩んでいくのだろうと、そう考えて不安を見ないようにしていた。例え相思相愛だとしても、キミたちは同性だからと」

 

 こっちを見て、哀しそうに笑う。

 

「えっと……」

 

 確かに前から言ってた。俺はみんなを恋愛対象に見てないだろって。友達か兄弟のように考えてるのを知ってるって。

 

「まさか隠してるつもりだったか? やっぱりジルはジルだな。あれでバレてないと思ってるなんて」

 

 うっさいよ!

 

「つまり……好きなんですか? シャルカ皇妃陛下が言っていた人って」

 

 そうだけど! 此処で言うなんて恥ずかしいじゃん!

 

「クロエリウス。ジルの顔を見たら簡単だろう」

 

「私? か、顔?」

 

 なにさ?

 

「……まあこれだけ真っ赤で、足なんて仔ウサギみたいにプルプルしてますからね。疑うのもバカらしいですけど」

 

 真っ赤? プルプル? し、知らないしー!

 

「お姉様の魅力にやられたのは男性だけじゃ無いんです。すいません」

 

 ……うん?

 

「タタタターニャちゃん? それってつまり、えっと、アレだよね、意味として」

 

 超絶美人なジルのことが好きって事だよね⁉︎

 

「ふふふ」

 

「……誤魔化した!」

 

「面白い、さすがジルだ。だが、我はまだ諦めてはいないぞ。人の心は移ろい、そして流れていくもの。ましてやどうやってルオパシャに認めさせるつもりだ? いや、我らもだ」

 

 ずっと黙っていたスーヴェインさんの声、相変わらず渋い。

 

「……そうですね。でも、私だってお姉様を奪われるのイヤですから。必ず認めさせますし、自信だってありますよ?」

 

「ふん。我にとって元々不利な戦いだが、興味を惹くのが上手い……良かろう。あの白竜を黙らせる方法があるなら聞こうじゃないか。ジルが全力を出せるなら状況も少しは変わるが、そもそも当たり前にやったらあっさり負けるぞ?」

 

 するとターニャちゃんは堂々と返す。

 

「はい、私が何とかします」

 

 でも、小さな手が震えているのが分かる。きっとホントは怖いんだ。

 

 それなら俺のやる事は一つだけ。

 

 魔力銀の剣も服も無いけれど、お姉様で最強の超級冒険者なんだから!

 

 

 

 

 

 

 

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