綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、頑張る

 

 

 

 

 今の俺は魔力銀の装備をしていない。

 

 つまり、全力の強化が出来ないし、剣もないから接近戦も不可能だろう。まあ実際には何も怖く無いんだけど。だってルオパシャちゃんが攻撃しないって言ってたし。おまけに魔法も好きなだけ放っていいらしい。うーむ、さすが豪華景品のジルだ。まあ殺し合いじゃあるまいし、余裕もあるんだろう。

 

 でもやっぱりさ。

 

「……ちょっと卑怯な気がする」

 

「そうですか?」

 

 胸元から可愛らしい声がした。当然にターニャちゃんな訳だけど。

 

「だってルオパシャちゃんは私を攻撃出来ない訳で」

 

「ですね。私も少し安心です。さっきの試合みたいに強い魔法が飛び交うなら、正直怖くて動けませんよ。その点お姉様の近くならバッチリです」

 

「まあ放たれた魔法が生み出した結果まで消せないからね。ターニャちゃんをどうやって守ろうか考えてたけど、こんな単純な方法かぁ」

 

 お姫様抱っこ、再び。

 

 そう、超絶最高TS美少女ターニャちゃんを俺が抱っこしてるのだ。はい、可愛い。もう、可愛い。

 

 しかしマジで卑怯だなぁ。ルオパシャちゃんは殆ど知らないから仕方ないけれど、一番厄介な力を持つのはターニャちゃんなのに……俺とくっついてたら攻撃も出来やしないだろう。まあ多少の被害はあるかもだけど、それは俺が何とかすればいいからね。

 

 それでも簡単にいかないのは分かってるけどさ。古竜の出鱈目さなら少しは知ってる。

 

「私だけじゃ近付く事も出来ません。古竜の魔力に影響を与えるなら触れ合うくらい接近しないと。正直お姉様より難しいですよ、きっと」

 

「あ、やっぱり? 見た目は可愛い女の子だけど、実際は古竜だもんねぇ」

 

「ああ、それも勿論ありますけど、お姉様みたいにプルプルさせるなんて出来ないでしょう? あんな風に集中を乱す方法が浮かばないんです」

 

 んん? プルプルさせる? 集中を乱す?

 

「えっと、練習の為に直接触らないと駄目って言ってたよね?」

 

 あちこちに指を這わされたり、サワサワ触られたのは魔素を感じるのに必要って言われて我慢してたんですが?

 

「……あっ」

 

 そのしまったって顔……

 

「……ちょっとターニャちゃん?」

 

 練習のとき、内心ドキドキだったんだけど。ほら、微妙に気持ち良かったり……いやいや、変なこと考えちゃダメだ。

 

「お姉様、皆さんも準備出来たみたいですよ」

 

 ん?

 

 視線を上げてみれば、確かにそろそろOKって感じだ。

 

 かなり離れた場所に真っ白なルオパシャちゃんが立っている。竜の姿には戻らないのかな。そっか、多分だけど途中で変身する気だきっと。こう頑張って追い込んだ時に、「我が真の姿を見せてやろう! 慄くが良い、ぐわははは!」とか言って。いや、ルオパシャちゃんはぐわはははとかって笑わないだろうけど。

 

 しかし下から立ってみると、改めて会場のスケールに驚くなぁ。一晩で建てたとは思えないコロッセオ擬きは、見上げるほとに立派なのだ。だからこそルオパシャちゃんのちんまり具合が際立つよね、うん。

 

 我がチーム連中も散開してる。スーヴェインさんとツェイスは並ぶ様に構えてるけど、クロは少し後方にいる感じだな。あとエロジジイは俺たちの近くに居る。まあ純粋な魔法使いってヤツだから仕方ないだろう。

 

 うーむ、こう見ると昔に遊んだロールプレイングゲームを思い出すなあ。俺の立ち位置は回復役兼サポートって感じで、古竜特効の切り札はターニャちゃんだ。

 

『よしよし、準備は良いか?』

 

 ルオパシャちゃんの声は空気の振動によるものじゃないから、距離があっても綺麗に聞こえる。魔力そのものが作用してるらしいけど、正直よく分からない。

 

「古竜ルオパシャよ。本当に手を抜く必要は無いのだな? ジルも加わった以上、先程とは違うぞ?」

 

『うむ、構わん。妾を殺す気で来るのじゃ』

 

 スーヴェインさんの言葉にルオパシャちゃんが返した。

 

「ジルを娶る者が誰になるのか、公正に判断出来るのか?」

 

『当然じゃ。妾を脅かす力を体現したならば、必ず報いると始原の真名に賭けて誓う。じゃが……先に言っておこう。どうやら未だ勘違いが過ぎるようじゃからの。良いか? 期待外れのつまらぬ戦いならば、ジルをお主達の到達出来ぬ場所へ連れ去るぞ? それを本当に理解しておるか? つまり、今日が訣別の日になる訳じゃ』

 

 わぁ、分かりやすい挑発だ。

 

 ニヤリと笑うルオパシャちゃん。まあ、そんな意地悪する様な(ひと)じゃないけど……みんな、分かってるでしょ?

 

「連れ去る、だと?」

「お師匠様と会えなくなる?」

「ふん」

 

 ツェイス、クロ、スーヴェインさん。何だか真面目に受け止めてますね。エロジジイだけは表情に変化ないみたいだけど。

 

「あんな挑発に乗るなんて、困ったものだよねターニャちゃ……ターニャちゃん?」

 

 濃紺の瞳がギラギラと光り、ルオパシャちゃんを睨み付けてます。それにゾワゾワと肌に感じるのは魔素の動きだろうか?

 

『それで良い。もう一度言うが、妾の気紛れや遊びと思うな。これはジルを奪い合う戦争じゃ』

 

 バッと細くて真っ白な両腕を広げ、さあかかって来いと構えるルオパシャちゃん。それに合わせる様に、お母様の声が届いた。

 

「では、我が娘を賭けた最後の戦いです。始めてください!」

 

 超級が二人、実力は超級並みのツェツエの王子、子供だけど歴とした勇者、そして魔王陛下。俺の懐には魔素特化のTS美少女ターニャちゃん。

 

 間違いなく最高のパーティ。

 

 俺を誰がってのは置いといて、正直ワクワクする試合だ。

 

 うー、頑張りますか!

 

 

 

 

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 

 

 

 

「漸く本気の魔法を放てるのぉ! 行くぞい!」

 

 ずっと我慢してた魔狂いが、得意の殲滅魔法を放った。事前に打ち合わせしてたから、ツェイス達も驚いたりしていない。

 

「あのエロジジイ、ターニャちゃんもいるんだよ?」

 

 紅蓮の大炎がルオパシャちゃん辺りで立ち上がる。遅れて轟音と熱が周囲を襲った。局地的にコントロールされていても、超高温の炎なのだ。あのレベルだと魔物の強固な外皮や鱗も融解する。弱い奴等なら一瞬で蒸発するだろう。まさに、殲滅の為の魔法なのだ。

 

 怖くて震えたターニャちゃんを感じつつ、前方半円状に透明な氷の壁を張った。板状のモノだと防ぎ切れない可能性があったからね。

 

 同時にツェイスとクロに治癒魔法を飛ばす。スーヴェインさんは兎も角、あの二人だとちょっと心配だ。特にクロは甘く見たのか距離が近過ぎ。あれだけ気を付けてって言ったのに、まったくもう。

 

「まだまだじゃあ‼︎」

 

 トリガーハッピー状態のエロジジイは放っておいて、震えが止まったターニャちゃんを見る。

 

「大丈夫?」

 

「……あ、は、はい。さっきと、全然違うので吃驚してしまって」

 

「んー、あれもかなり範囲を限定してるんだけどね。アイツならこの会場ごと焼き尽くすくらいするし」

 

 これは事実だ。超広範囲の破壊こそがあのジジイの専売特許だからね。

 

「そ、そうなんですか……」

 

 おっと。

 

「怖がらせてゴメンね? 私が側に居る限り絶対に大丈夫だから安心して。魔力の収束とか分かり易いのが大きな魔法の弱点なの。つまり、危なくてもタイミングを逃したりしない。ね?」

 

 コクリと頷くと、次々に燃え上がる炎に視線を合わせたみたい。俺は勿論だけど、ターニャちゃんも分かっているのだ。あれ程の魔法であろうとも、古竜には届かないって。

 

「よくは()()()()()が、ルオパシャさんは全く動いてないです。吹き飛ばされることも、魔素が乱れることも……信じられない」

 

「そっか」

 

 そうして炎が薄れ、焼け焦げ波打つ様に変形した地面も露わになった。赤が消えて、白が映る。

 

『素晴らしい行使じゃが……竜種に炎は余り効かぬぞ?』

 

 腕を組み、ポツンと立ったままのルオパシャちゃん。真っ白な髪も肌にも変化はない。俺が以前着せ替えさせたらしいセーラー服擬きも、煤一つ付着していない様だ。

 

 いや、あの魔法で小型竜種くらい討伐してたの知ってますけど? 流石に古竜ともなると話が違うらしい。

 

「うぬぅ……儂、ちょっと疲れたわい。ジルや癒してくれんかの? 具体的には膝枕などを……」

 

「おバカな話はいいから集中して。まだまだこれからだよ?」

 

「まともに受けて全く効かんとはのぉ。試しとは言え困ったものじゃ。ジルや、何か分かったか?」

 

「まあちょっとだけ。とにかく単純な正攻法ダメだね。先ずは隙を探しましょう、予定通り」

 

「じゃな」

 

 数歩前に出て、イケメン詰め合わせセットの援護に入る。左右に分かれたイケオジとイケメンが一気にルオパシャちゃんに迫った。

 

 ツェイスは紫色した雷を身体と剣に纏わせている。さっき聞いたけど、自分にもかなりダメージが入る諸刃の剣的な戦法らしい。正直ちょっと引く。まあ俺の治癒魔法があるから大丈夫だってさ。

 

 次いで、女の子から鳴るとは思えない、ゴインって音。ツェイスの剣を素肌露わな腕で受けたらしい。当然に切断などされず、そのまま紫電がルオパシャちゃんに流れて行く。うひぃ、見てるだけで痛そう。

 

『むっ、コレは中々……』

 

 さっきと同じ様に防げる筈だった雷魔法は、見事に効果を発揮したみたい。嫌そうに体を捩り、ルオパシャちゃんは距離を取ろうとした。更なる追撃をかけるツェイスの横薙ぎをしゃがんで躱す。すると、姿勢の崩れた少女に、背後から純粋な魔力で生成された剣が襲った。しかも四本がタイミングと角度をずらしながら。

 

『ふむ! 分かってはいたが、素晴らしいぞ!』

 

 可愛らしいお手々の先からニョインと爪が伸び、小さな身体をグルグルって回す。直ぐに、やはり信じられない様な金属音がガガガと響いた。爪だけ竜化して薙ぎ払いを行ったらしい。らしいって言うのは変化が速過ぎて、結果だけを見たからだ。

 

「別に驚きはしない」

 

 何かをボソリと呟いてスーヴェインさんは一本の巨大な大剣を創り出す。瞬時に真上から振り下ろすと、自身は後方へ一気にジャンプした。直接握る必要のない魔力の剣だから出来る芸当だ。

 

『力比べじゃな‼︎』

 

 交差した真っ白な爪で受け止めるルオパシャちゃん。両脚が溶け固まった地面へ僅かに沈んだから、相当な衝撃だったのだろう。それでも、それ以上に変化は無く、魔力も霧散して剣は形を保てなくなり消えた。

 

「滅茶苦茶だぁ……ツェイスのもスーヴェインさんのも、かなりキツイ攻撃なんだけどなぁ」

 

 俺なら真正面から受けたり絶対にしない。強化して離脱一択だ。簡単に防ぐから勘違いしそうだけど、そもそも大半の人や魔物が耐えられない攻撃なのだ。スーヴェインさんの大剣なんて衝撃が何tとかありそう。

 

『妾の番かの』

 

 あ、ヤバい。

 

 まだ近くに居たツェイスに、ルオパシャちゃんが何かしようとしてる。ツェイスは追撃からカウンター狙いに変えたみたいだけど、悪手だよそれは。あんな細っこい女の子だけど、正体は超でっかい竜なんだから。

 

 ごちゃごちゃ考えながら、思い切り魔力を込めた魔力弾を放つ。丁度ルオパシャちゃんが動き出す少し前方あたり、命中精度は求めない。いや、三発だけは狙うけど。そう、遠慮なく十発をプレゼントだ! 半透明に見える丸い弾の一発は、細くて白い腕に当たる軌道を取った。

 

『……どわっ! い、痛い!』

 

 お、効いたみたいだ。やっぱり思考の外から来る攻撃は完全に防ぎ切れないみたいだな。それに気付いた魔狂いのジジイも笑っている。

 

 伸ばした腕に当たったヤツ以外は全部弾き飛ばされた。分厚い城壁とかにも穴が開く威力なのになぁ。まあスリスリと痛そうに腕を摩る姿を見ると、少しだけ罪の意識が浮かんで来るけども。

 

 最初の分、効かないのは想定済み。だから、更に視覚外から狙い撃ちだ。コレは結構自信あるぞ。

 

 こっちを睨むルオパシャちゃんの背後に回り込むよう、無色透明な魔法の矢を放ってある。グルリと曲がり、隠蔽も加えて。

 

 さあ時間差の攻撃だけど、どうするかな?

 

 そんな風に興味津々で見てたら、ヒョイと半身で躱された。しかも全く背後を見ずに。

 

「ええぇ……あれを簡単に躱すんだ……」

 

 こっちに意識を向けた瞬間なのに。ターニャちゃんとも違う、特殊な感知でもしてるのかな? うーむ、油断が無くなると不意打ちはまず駄目っぽい。困ったなぁ。

 

『よいよい。やはりジルが居れば面白い戦いになるのじゃ。こう話している間もツェツエの王子を治癒し、同時に次の魔法の準備。お主はまるで始原の様に操る……ふむ、やはり妾と子を作らんか?』

 

 え、ちょっと興味ある。ルオパシャちゃんと二人で……グフフ。

 

「お姉様?」

 

「あ、はい」

 

 ターニャちゃん、いつもより怖いんですけど!

 

 

 

 

 

 




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