綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、もっと頑張る

 

 

 

 

 チラリと、ターニャちゃんが俺を見た。

 

「改めて思うんですけど」

 

「なあに?」

 

「私を抱えつつ、何か準備するでもなく、簡単に魔法を使いますよね……魔素を見てなければ、お姉様が行使してるって分からないくらい自然に」

 

 あー、なるほど。この世界で所謂"詠唱"って唱える事が無いからね。まあ実際には魔力を集め、属性を付与して、更には指向性やその他諸々を規定しないと放てないからなぁ。寧ろ詠唱とかあった方が簡単……いや、多分だけど詠唱って魔法の簡略化が目的の一つか。

 

 少しずつ戦闘の中心からの距離を測りつつ移動する。ターニャちゃんの柔らかな感触や綺麗な声を堪能しながらですけど。ルオパシャちゃんはまだ様子見してるっぽいから助かるな。

 

「んー、練習を一杯したからね」

 

「練習……ですか」

 

「そうそう」

 

 何かを考えてるのか、ターニャちゃんは少し目を伏せた。色々聞いてみたいけど、今はそんな余裕がない。さてと……

 

「ターニャちゃん」

 

「あ、はい」

 

「ルオパシャちゃんの魔素はどう? 攻略の糸口でも見つかったなら教えて欲しいな」

 

 コクリと小さく頷くのを見れば、何か分かったみたい。

 

「やっぱり全てが魔素、つまり魔力により構成されてるみたいです。でも意外なのは、規模こそ桁違いですけど、お姉様より乱雑に見えることですかね。()()()が所々に……見た目通りであれば、が条件になりますが」

 

 おー、その辺は伝承の通りなんだなぁ。古竜は魔力そのものが結晶化したような常識を超越した生物だってさ。一体どんな仕組みなのか全く分からないけどね。

 

「私より乱雑……んー、大き過ぎるのが関係してるのかも。末端まで気が回らないとか? ううん、在るが儘なのかも」

 

「そうかもしれません。ただ、とにかく規模感が違いすぎるので、参考程度ですよ?」

 

「どちらにしても乱すことは可能ね、ターニャちゃんなら。どう?」

 

「直接触れる事が出来れば、どうにか」

 

 気付かれたら対策される可能性が高いな。つまりチャンスは一度切りと思っておかないと。ターニャちゃんの才能は初見殺しの意味合いが強いのだ。そして、当たり前だけど一瞬でルオパシャちゃんの魔素をコントロールなんて無理だろう。妨害だって無視出来ない上に一定の時間が必要になるし、その間は俺も何一つ役に立たない。つまり、やっぱり皆で隙を作るしかない様だ。

 

「了解。じゃ、魔狂いのお爺様? 予定通りに」

 

「うむ。任せておけ」

 

 俺達より少しだけ後ろに居るエロジジイは、距離を取りつつ攻撃と撹乱を担う。単純な魔法が効かないのは分かったし、反面意識外からは完全に防げない様だ。竜の姿にならない限り、通常より弱体化してると考えて良いだろう。

 

「こっちはターニャちゃんが一緒だから、指向性に注意してよ?」

 

「分かっておるよ。お主の尻からは視線を外さないから安心せい」

 

 別の意味で安心出来ないよ!

 

「……始めましょう。ターニャちゃんは舌を噛まない様に注意して。強化も()()出来ないし、揺れるよ」

 

「はい」

 

 少しの間お喋りもお預けだ。

 

 魔力強化で速度を上げたりはしないけど、筋力を補って出来るだけ速く動く。あとはターニャちゃんをルオパシャちゃんのそばに連れて行くだけだな。

 

「スーヴェインさん! ツェイス!」

 

「よし」

「ああ!」

 

「あのぉ、僕は……?」

 

「クロは遊撃! 分かってるくせに! 私から距離を取りすぎないで!」

 

 遠いと治癒魔法の制御が甘くなる。まあ何度も一緒に戦ったから心配してないけどね。

 

「はーい」

 

 力の抜けるクロの声と同時、ツェイスは全身に雷を纏う。さっきと明らかに違う強さに、周囲は紫色した空間に変わった。見れば身体は勿論、皮鎧や服もダメージが入ってるのが分かる。諸刃の剣ってやつだけど、痛々しいな。俺の治癒魔法を信じて全力を出す気だ。

 

 バリバリと耳障りな音を置き去りに、ツェイスは肉薄。走り抜けた跡も紫に染まっている。雷魔法はそもそも珍しいし、このレベルの行使は初めて見る。正直言って格好良い。

 

 だからかルオパシャちゃんの表情も引き締まったのが分かる。まあ触れるだけでなく、近付いても痛そうだしね。姿勢を低くした真白の少女は後退しつつ、全身に魔力を流した様だ。多分本気な防壁だな、滅茶苦茶強いやつ。

 

『……面倒な』

 

「遠慮するな古竜よ!」

 

 ツェイスは更に加速。ちょい目で追うのが厳しい速度だ。

 

 突き出した剣先からも紫電が飛ぶ。ルオパシャちゃんは避ける事も叶わず、まともに喰らった。防壁のお陰か雷は身体の周りを回る様に通り抜けて行く。直撃は出来なかったけど、逆に言えば其れだけ嫌なんだろう。続いて到達した剣も思い切り避けたから間違いない。

 

 しかし、俺対策で色々鍛えたって前に言ってたけど……怖すぎる。超絶美人なジルに喰らわせる気だったん?

 

 流石のルオパシャちゃんもツェイスに集中してる。そしてその隙を見逃す様なスーヴェインさんじゃない。魔狂いの風魔法に合わせて土魔法を行使。結果としてルオパシャちゃんの居る場所は砂嵐直撃みたいになった。ツェイスが巻き込まれてるのは笑えないけど。

 

 そして魔力製大剣を生成しつつ、その砂嵐擬きに突っ込んだ。多分横だめから振り抜くんだろう。一瞬俺の視界も遮られ、剣戟の重い音が耳に届いた。吃驚はしないけど視界ゼロから防ぐなんて、隙を見つけるのも大変そうだなぁ。

 

「……今だ! やれ!」

 

 スーヴェインさんが何やら防御の構え、そして同時に魔力を纏った。

 

 ん? 嫌な予感が……

 

「ターニャちゃん! 目を伏せて!」

 

 何となく水魔法で防御! すると砂嵐の中で紫色した閃光が弾ける。直視したら目も眩むレベルの、言うまでもなくツェイスの雷魔法だ。

 

 そして大爆発。ゴロゴロと中心から転がり出るイケメンは至近距離から喰らったはずだ。体のあちこちから煙っぽいのが上がってる。

 

「……えぇ」

 

 マジで爆発なんですが。紫色の閃光、発火の赤い火花、そして爆風と爆音が衝撃波らしき揺れを運んで来た。内心ですっごく引きながら、とりあえず治癒を飛ばす。これは……目眩し目的の砂嵐じゃなく、可燃性の粉塵を生成したのかな?

 

「粉塵爆発……?」

 

 危なすぎ。イケオジとイケメンの二人、何考えてるんだよ全く。

 

「……どうだ?」

 

 元気になったツェイスが言っちゃダメな台詞を曰う。

 

『ぬぅ……かなり痛かったの、今のは』

 

 ほらぁ、やっぱり。

 

 モクモクな土煙が晴れてくると、地面に片膝をつくルオパシャちゃんが見えた。着ていたセーラー服擬きも所々破け、そして汚れてしまったようだ。チラチラ覗く真っ白な素肌は、変わらぬ美しさを保っている。ムフ。

 

 思わずそんな白色に見惚れていたら、その背後からクロが強化したまま突撃した。流石に首じゃないけど、腕と胴辺りに狙いを定めている。

 

『ぬぉ⁉︎』

 

 あ、吃驚してる。まあギリギリ躱されたけど。さっきのツェイスみたいに地面に転がり、ルオパシャちゃんも急いで立ち上がった。

 

「もう少しだったのに……」

 

 悔しそうなクロだけど、今まで奇襲しかしてない。遊撃とは言ったけど、勇者の行いとは思えないからな?

 

『あぁ、妾の衣装が』

 

 ルオパシャちゃん、悲しそう。

 

「また一緒に買いに行くからね、ルオパシャちゃん」

 

『お、そうかそうか。うむ、でえと、じゃな』

 

 思わず声を掛けたけど、笑顔だし良かったかな。橙色の瞳が俺を見てキラリと光る。

 

「浮気性ですね、お姉様」

 

「え⁉︎」

 

 驚いてターニャちゃんを見れば、ツンな感じで可愛らしく睨まれていた。うん、可愛い。

 

『しかし、防戦ばかりでは不利じゃの』

 

 あ。

 

 魔力の収束、純度の向上、そして変化。

 

「ツェイス! 離れて!」

 

「分かってる!」

 

 そんなやりとりの最中、俺の目の前の地面が隆起した。確認したら目の前どころか四方を囲まれている。つまり、籠の鳥ってやつ。視界も遮られ、戦況を見ることも出来ない。

 

「ルオパシャちゃん! 私には何もしないって言ったよね⁉︎」

 

『攻撃は、の! 正直、お主の魔法は思ったより邪魔じゃ!』

 

 こんなの破壊して……

 

『それは固いぞ? 流石のジルも暫く時間が掛かるじゃろう。大人しく待っておれ』

 

 拙いぞ。竜種が操る攻性魔法は防御が難しいのだ。初動もなく、おまけに連発も簡単。当然に属性に左右されず、威力も莫大。()()()()妨害も難しい。

 

 とにかく土の壁を破壊しなければと、魔力を集めたときだった。

 

「大丈夫です、お姉様」

 

「……え?」

 

「私には()()()()。このパターンなら、水魔法ですね」

 

 そう言いながら、ターニャちゃんは淡々と言葉を続ける。

 

「余裕の表れか、随分ゆっくりとした収束です。狙いの最初はツェイス殿下ですね。防ぐなら、あの辺りが良いですね。あと五秒、四、三、二……」

 

 触れ合ってるからか、何となく位置も特定出来る。

 

()()()()

 

「あ、うん」

 

 ターニャちゃんを信じて、対属性の防御を展開。

 

『ぬ、なんじゃ⁉︎』

 

 土壁の向こうからルオパシャちゃんの声が聞こえて来た。うまくいったみたい。

 

『これからどうじゃぁ‼︎』

 

 軽くキレたのか魔法を次々と行使。

 

「お姉様の才能(タレント)みたいに、属性を無視してますね。これを防ぐには正に"万能"の力が必要でしょう。やっぱり凄いですね、古竜やお姉様って」

 

 いやいやいや! やばいのターニャちゃんだって!

 

 放つより前に属性と位置を特定して、おまけに俺へ伝えるなんて無茶苦茶だから‼︎

 

「あ、この壁ってあの辺が弱いですよ?」

 

 おまけにルオパシャちゃん特製の牢獄も。

 

「はい」

 

 試してみればあっさりと壊す事が出来た。

 

 ……マジでヤバイんですが、ターニャちゃんの才能。魔素ごと消し去るのも大概だけど、むしろ視覚化可能な方がとんでもないです。そもそも俺にどうやって伝えてるの、位置とか。

 

『出るの早過ぎじゃろう⁉︎』

 

「ふふん」

 

 とりあえず胸を張っておく。

 

「私を抱っこしてるんですから余り意味ないですよ?」

 

 ターニャちゃんのツッコミは敢えて聞こえないフリだ。

 

 見渡してみると、あちこちに水溜りとか抉れた地面とか、行使した魔法の跡がある。会場全体に届いているから、全方向に飛ばしたんだろう。我ながらよく防げたものだ。他の皆も一様にホッとした表情だし、間に合って良かった。

 

『珍妙な……そこな少女の力か? ジルではないじゃろ』

 

「さあどうかなぁ」

 

 怪訝そうなルオパシャちゃんも可愛い。あ、ブラしてないんだ。セーラー服擬きの破れた肩あたりにブラ紐見えないもん。縞々パンツは装備してたのに……うん、それもあり、です。今度お姉さんが見繕ってあげるからね!

 

「お姉様……!」

 

 ひぃ⁉︎

 

「な、なにかな? べべべ別に変なこと考えたりしてないよ⁉︎」

 

「何を言ってるか分かりませんが……どんどん魔素が集められてます、ルオパシャさんに」

 

「うぇ? 魔素を?」

 

「はい。今まで見たこともない量です」

 

「まさか」

 

「多分ですけど、()()()姿()に戻るつもりでは」

 

 それはダメだ。古竜の鱗は破壊不可能とされるトンデモ物質で、全力の俺が何とかギリギリ斬れるやつだ。ましてや魔力銀の剣はお家に置いて来てる。いや、散歩してたら拉致されたから当たり前だけど。

 

「……分かった」

 

 いよいよだな。短い時間だけどルオパシャちゃんと戦ってみて色々理解出来た。やっぱり普通のやり方じゃ勝てない。となると相手が考えてない方法が必要だ。

 

「ターニャちゃん。少し()()()かもしれないけど頑張って」

 

「はい、勿論です」

 

 何かを悟ったのかターニャちゃんの声色も真剣さを増した。よし、俺も覚悟を決めるか。

 

「みんな!」

 

 イケメン三人衆、いやエロジジイも足した四人が頷く。魔素が見えなくても皆んなだって不穏な空気を感じているんだろう。

 

 よし、お姉さんも頑張るからね!

 

 ちょっと()()()()()かもだけど!

 

 

 

 

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