綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、止められる

 

 

 

 

 

 

 

 ターニャちゃんの凛々しい表情、朗らかに笑うルオパシャちゃん。

 

 泣きそうなのを我慢してたら、あの日の事を思い出す。

 

 あれは、全部の試合が終わったあとだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルオパシャ様。では、結論を」

 

 マリンブルーの瞳をキリリと光らせ、お母様はルオパシャちゃんに尋ねた。俺も緊張を隠せないし、他の皆も聞き入っているようだ。まあその為に来たんだし当たり前か。

 

 コロッセオ擬きの真ん中あたり。戦闘の跡は無くなってる。土魔法で覆ったからか、高温で溶けたり水浸しになった地面も大人しい。

 

 因みに、ビリビリに破けて地面に落ちたスカートは回収済みで、お母様が用意してくれたマントをくるりと巻いている。魔力銀の装備の場合、下着は特性上面積が非常に小さい訳だけど……今回は通常の格好だったのがせめてもの救いか。まあそれでも下着を全員に見られたとき悲鳴を上げて座り込んだけど。はー、恥ずかしかった。同じく衣服があちこち破れてたターニャちゃんまで笑ってたのは解せない。何で俺だけ恥ずかしがってるんだろう?

 

『うむ。正直に言うが、皆が素晴らしい力を魅せ、そして妾を愉しませてくれたと思っている。じゃが……誰もが兄達を脅かす才能に至っているとは言えん。確かに勝負に負けたが、彼奴等に情けなど無いし、そもそも接近が難しい。人化などと言うお遊びも知らぬのが兄達じゃ』

 

 うーむ。まあルオパシャちゃんも本気じゃなかったし、驚くことじゃないか。

 

「では、やはりジルヴァーナは貴女様に?」

 

 あ、そっか。ルオパシャちゃんも候補者だったよ。何よりツェイス達に緊張が走ったのが分かる。魔力が蠢き、また戦いが始まりそう。だけど、当のルオパシャちゃんはフルフルと可愛い顔を振った。

 

『いや、妾は脱落じゃな。如何なる理由をつけようと負けは負けじゃ。残念とは思うが、仕方あるまいて』

 

「合格者無しですか?」

 

『シャルカ、落ち着けい。そうとは言っておらん。目的はジルの血を受け継ぎ、またより強くしていく為であろう? その点を考えれば自ずと答えは決まっておるよ』

 

 うぅ、誰だろう。多分ターニャちゃんだと思うけど、正直分からない。だって皆凄かったし、クロとかツェイスだって面白い才能(タレント)持ってるし。魔王陛下なんて一段上って感じだもんなぁ。すっごい緊張します!

 

『ターニャ、じゃな』

 

 暫くの沈黙。俺もルオパシャちゃんの言葉を反芻してるところだ。

 

 ターニャちゃん、ターニャちゃん、うん、間違いない。

 

『妾も長く生きておるし、始原の出鱈目も知っておる。じゃが、魔素そのものを消し去るなぞ聞いたことも見たこともない。無論ジルの才能と反発するかもしれんが……当たり前の事象に頼るのも間違いじゃ。未知の、新たな才能が生まれ落ちる可能性に賭けるのが良いじゃろう』

 

 えっと、つまり、俺とターニャちゃんが一緒に子供を……

 

 昔隠れて見たエッチな本みたいに、二人きりで……

 

 チューなんて当たり前で、お風呂なんて普通になって、それどころかあんな事こんな事を……

 

「そうですか……仰せのままに、ルオパシャ様。ですが、こうなった以上我が娘に話があります」

 

 ぐへへ、ぐふふ。

 

「ジルヴァーナ」

 

「……ぐふ」

 

「ジルヴァーナ!」

 

「は、はいぃ!」

 

 な、なに⁉︎ 吃驚した!

 

「こっちに来なさい」

 

「う、うん」

 

 真面目な顔されるとホント逆らえないんだよなぁ。とんでもない美人さんだし、昔のトラウマがぁ!

 

 ツェイス達から少しだけ離れたら、お母様が視線を合わせて来た。な、なにかな?

 

「貴女にとっては最高の結論でしょうね」

 

「うぇ? そ、そんなこと……ターニャちゃんは大切な妹で」

 

「今更隠しても仕方ないでしょう。ジルヴァーナがターニャさんに恋してるなんて、とうの昔にお見通しよ?」

 

 えー? またぁまたぁ。いくらお母様でもそんな訳……

 

「はぁ。ツェイス殿下は以前から、そして恐らくルオパシャ様や魔王陛下もご存知でしょう。貴女に隠し事なんて無理よ」

 

「……マジで?」

 

「変な言葉使いは許しませんよ?」

 

 ひぃ⁉︎

 

「ごめんなさい……」

 

「皆様に話があると思うのだけど。このままだらしない顔して帰るつもりかしら? 彼らの気持ちを置き去りにして。今の貴女なら分かるでしょう?」

 

「う、うん」

 

 確かに……ターニャちゃんのことで頭が一杯で、忘れてしまってたかも。俺が逆の立場だったらきっと辛い。だから、そんなの最低なヤツだし、お母様の言う通りだ。でも、何て言ったら……

 

「ジルヴァーナ。私の大切な可愛い娘……ただ貴女の想いを伝えなさい。中途半端はダメよ。こんな時はきっぱりと言葉にするのが大切。何より、集まった皆様は全員立派な男性達なの」

 

 そっと肩に置かれたお母様の手。

 

「……分かった」

 

 いや、何を言えばいいかなんて分からないけど、気持ちをちゃんと言おう。それにターニャちゃんにだって。少しだけ震えてる足を一歩ずつ出して、みんなの前に立った。

 

「ジル」

「お師匠様……」

「……」

 

 ターニャちゃんと他の三人が待ってくれている。魔狂いはの姿は何故か消えてるけど、まあいいだろう。ツェイスは何かを悟った感じ。クロが泣きそうになってて少し可哀想。スーヴェインさんだけは無表情のままだ。とにかく今は話をしよう。

 

「……今までずっと黙ってた。そう、私の心の中を隠して。ツェイスやクロ、スーヴェインさんの気持ちは分かってたのに、ちゃんと応えることだってしなかった。本当にごめんなさい。だから、今、ちゃんと言います」

 

 言葉を切ってターニャちゃんを視界に収める。可愛いくて、ちょっとクールで、Sっ気もある。でも凄く優しい。

 

「私はずっと前、森で出会ってからすぐ……今もターニャちゃんが大好きです。私が女で、お相手が少女でも、それが正直な気持ちなの。妹としてだけじゃなく恋して、ううん、愛してます。だから……こんなことになる前に、もっと早く伝えるべきでした」

 

 つ、ついに言ってしまった。足はプルプルしてるし、何だかフラフラする。でも頭の中だけは妙に冴えてて、ターニャちゃんの幸せそうな笑顔でホッと出来た。

 

 一度俯いたツェイスは、ゆっくり顔を上げながら言葉を返してくる。

 

「……知っていた。キミ達がアーレに来たときから。だから、驚いたりしない」

 

「ツェイス……」

 

「それにキミは応えなかったと言うが、そんな事はない。何度も断られたし、クロエリウスもそうだろう。違うか?」

 

「うぅ……何回もフラレました……」

 

「魔王陛下は……」

 

「聞くな」

 

「みんな……」

 

 凄い。格好良いなぁ、ツェイスってば。元男として、単純に尊敬するしかない。態々こんな遠くまで来て、結局望み通りにならなかった。なのに、怒られても仕方ないのに……しかも、こっちはバンバルボアの皇女で、ツェイスはツェツエの王子。スーヴェインさんに至っては魔国の王様だ。忘れがちだけど外交問題になってもおかしくない。でも、そんな雰囲気なんて少しも存在しないのだ。やっぱり凄いなホント。

 

 俺に目を合わせ、続く言葉が溢れそうになったみたい。でも、グッと飲み込んだのが分かった。その紫紺の瞳が揺れたのが見えて、何だかこっちも悲しく感じる。何か言わないと……そんな風に思ったとき、ツェイスは笑った。

 

「……どうか幸せに。落ち着いたらリュドミラにも会いに来てくれ」

 

「分かった。ありがとう、ツェイス」

 

 外で待つコーシクスさん達と合流するつもりだろう、この会場から立ち去って行った。クロに目配せをして。

 

「お師匠様……」

 

「うん」

 

 クロにも何か言いたくなったけど、言葉は出てこない。だって綺麗な赤い瞳から涙が溢れてたから。お母様も首を振り、今は違うって言ってる気がした。

 

「僕は、ホントにお師匠様が好きだったんです」

 

「うん、分かってる」

 

「……また、稽古をつけてくれますか?」

 

「勿論。でも、変なことはダメだよ?」

 

 魔素を動かして痴漢するとか、怪我したフリして抱き付くとか。特に魔素関連はやめて欲しい。だって、ターニャちゃんが変な技術を覚えていくから!

 

「それじゃ……」

 

 泣き顔を見ると、可哀想な気持ちが湧き上がる。でも大丈夫、クロにはアリスちゃんって女の子がいるからね。縦ロールは置いておくとして、人柄や容姿だって最高。

 

「さて、我も帰る。ジルよ、気が向いたら我が国にも遊びに来い。臣下どもにも説明して貰いたいな」

 

 最後になった魔王陛下が突然宣った。

 

「えぇ⁉︎ そ、それは……何て言えば」

 

 うぅ、困ったぞ。魔王様は俺がフリました!なんて言えないし。

 

「くくく……冗談だ、ジル。では、また会おう」

 

「え、あ、はい」

 

 それだけで済ませ、スーヴェインさんも帰って行った。何だか意外とあっさりしていて、ちょっと吃驚かも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◯ ◯ ◯

 

 

 

 

 スーヴェインさんの姿も消えて、さっきまで騒がしかった周りも静かになった。色々思うこともあるけれど、今はただターニャちゃんと一緒にいたい。たくさん話して、たくさん一緒に過ごして、もっとたくさんイチャイチャしたいんだ。

 

 そして……

 

 目の前には至高のTS美少女ターニャちゃん。

 

 そういえば、ついさっき思いっ切り告白してしまった。まあお互い様だ。何だか急に恥ずかしくなったけど、もう今までのジルじゃないのだから、自信を持とう!

 

 今までプルプルさせられる事もあったが、それもここまでだ! 何故ならば、二人は公認の夫婦になるのだから……ムフフ。

 

「お姉様」

 

「ターニャちゃん」

 

 さあ、かかって来なさい! 抱き着いてくれても良いよ!

 

「私のこと、そんなに好きだったんですか?」

 

 む、何ですかそのニヤニヤは!

 

「そ、そうだけど! それはターニャちゃんもだよね」

 

 そう、お互い様!

 

「はい、確かにそうです。でも私はお風呂に入ろうとか、朝のキスとか、お姫様抱っこしたいとか求めた事ありませんよ? 出逢って最初の頃は流石に自覚してませんでしたし。つまり、お姉様は年端の行かない女の子に……」

 

「そそそそれは……」

 

「ずっとイヤらしい事を考えてたんですね?」

 

「あわわわわわ」

 

 お着替え、下着の新調、お胸のサイズアップのチェック、匂いをクンクン嗅いだこともある。あとあと、酔っ払ってキスしたらしい。記憶にないけれど。

 

 うん……ダメダメじゃん! 言われてみればエロエロオヤジと一緒だ! これじゃ魔狂いのエロジジイに文句も言えないし!

 

「罰として……そうですね、少ししゃがんで下さい」

 

「は、はい!」

 

「高さを私に合わせて、瞳は閉じて」

 

「う、うん?」

 

 あれ? こ、これはもしかして! ま、間違いないよな⁉︎

 

 伝説の……誓いのチュー!

 

「プルプルし過ぎ……こっちが緊張してしまいます」

 

 仕方ない、仕方ないったらないのだ! さあさあ早く、お願いします!

 

 いよいよ、いよいよこのときが!

 

 

 

「お待ちなさいな」

 

 

 

 そんな風に緊張と幸せが最高潮に達していたとき、お母様の制止が入った。目を開ければすぐ近くに超可愛いターニャちゃん。頬がほんのり赤いのも最高。でも残念ながらプニプニの唇が見えない。だって、お母様が二人の間に手を差し入れて止めてるからだ。

 

 もう! 何でさ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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