綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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間話です


間話
リタさん、ランチする


 

 

 

 

 

 

「ジルー! こらー! まだ寝てるのかぁ!」

 

 んー、何やら聞き覚えのある声だなぁ。夢の中とは言え、ターニャちゃん以外の登場人物なんて久しぶり。えっと、誰だろう?

 

「もうお昼前なんだけど! 約束を忘れたの!」

 

 お昼……約束……

 

 約束? あっ! ヤバイ!

 

 普通の夜着、所謂パジャマを着てるのも忘れて魔力強化を全力で施す。ビュンと飛び起き、一気に玄関に走った。あー! ヤバイヤバイ! 完全に寝坊しちゃったよ!

 

 こんなとき、広い屋敷は仇になるのだ。表の正門も超絶美人ジル特製の防犯装置により、普通開けたり出来ない。よほど魔素に詳しかったり、才能(タレント)があったら別だけどね、ターニャちゃんみたいに。とにかく全力疾走で待ち人へとダッシュ! まあ魔力強化したら一瞬だ。

 

 今日の来客者には開ける方法を教えてたから、正門は抜けて玄関先まで来たんだろう。だから、声が何とか届いたのだ。

 

「ご、ごめん! 寝坊しちゃって……」

 

「全く、借り一つだね……って、なんて格好してるのよ!」

 

 重厚な造りの玄関扉で、見た目通り非常に重い。しかし一定の魔力、正確に言えば魔素を動かすことで殆ど自動扉みたいなものだ。ゆっくりと開いた先には、ソバカスが可愛いリタが立っている。両手を腰に当て、いかにも怒ってますって姿が可愛い。しかし直ぐに血相を変え、何だか怒ってるみたいだ。

 

 んー? 何ですかぁ? 

 

 両頬は真っ赤に染まり、視線は下に上に大忙し。そんなリタに合わせて俯けば、理由が分かった。

 

 薄紫色したパジャマワンピはビリビリに破け、肩紐は右側しか残ってない。寝るときブラはしないから、大変立派なお胸様がこんにちは寸前。何とか下半身は無事で、それだけは褒めてやろう。よくやった我がパンツよ。我ながら艶々でシミひとつ無い肌がアチコチ露出しており、自分の身体じゃなければ滅茶苦茶興奮するレベル……

 

「わ、わぁ⁉︎ ご、ごめんなさい!」

 

 魔力銀の装備で無い以上、当たり前の衣服は強化した速度に耐えられない。うん、慌ててたから、つい。

 

「えっと、いつもの感じで強化しちゃったから……ご、ごめんね?」

 

 益々怒ってらっしゃるリタさん。周りをぐるぐると見回し、他人の視線がないか確認しているようだ。

 

「えっと、大丈夫だよ? 私の家の防犯はガッチガチで」

 

「裸同然のジルが言えたことじゃない!」

 

 俺の左手を握り、ヅカヅカと玄関に入って来た。更に扉を閉めようと頑張るが、可愛いリタの細腕ではかなり重く感じるだろう。

 

「その扉も普通じゃなくて……あ、すいません、閉めます」

 

 ぐぬぬと力を込めていたリタにギロリと睨まれ、反射的に謝った。

 

「はぁ……ジルってば」

 

 まだ真っ赤なリタだけど、多分怒りだけじゃ無いだろう。だって、まだこっちをチラチラ見てるもん。流石に恥ずかしいので、オッパイは両手で隠してる。まあサイズもあれなので、零れ落ちそうなのは許して欲しい。

 

「とにかく早く着替えて来てよ……同性なのに目のやり場に困るなんて、やっぱり反則!」

 

 信じられない、あんな美貌で、肌も綺麗で、胸も大きいし、腰なんて何であんなに細い……あ、変な趣味に目覚めそう。

 

 何やらブツブツと独り言を呟くリタだけど、ツッコミはやめた方が良さそうだ。ごめんね、超絶美人で。

 

「えっと、好きに寛いでて? 急いで着替えて来ます」

 

「はいはい、待ってますぅ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◯ ◯ ◯

 

 

 

 

 

 

 

 左に曲がり、少し細めの路地に入った。左右には露店が並び、見た目以上に狭く感じる。彩豊かな布地が吊るされ、あちこちから良い匂いもするのだ。石畳が軽やかな足音を返してくれて、喧騒の中なのに耳に届くのが何故か嬉しい。

 

 

「お! ジルじゃないか! 久しぶりだな!」

「ありゃま、ジルったら二人なんて珍しいね!」

「帰りでも良いから寄って行きなよ。娘達が会いたがってたんだ」

「ほれ、試食して来な。感想は欲しいけどな、がははは!」

 

 

 路地深く入ると、顔見知りの人達が声を掛けてくる。それも嬉しいけど、試食は勘弁して欲しいかな。これから御飯食べに行くし。

 

 何とか人波を避け、ホッと息をついた。隣のリタが溜息を隠してないが、見ないフリだ。テクテクと目的地に向かいながら暫く世間話をしていたら、さっきのお出掛けの時間の話題になった。

 

 もう忘れてくれていいんだよ?

 

「ねえ、最近かなり適当になってない?」

 

「そ、そうかなぁ?」

 

 アートリスはかなり広いから目的地はある程度決めておいた方がいい。こっちの地区、西街区と呼ばれるこの辺りは美味しい御飯屋さんが多くてよく利用させて貰ってる。しかも安くて量もあるから老若男女大人気なのだ。

 

 リタと並んでゆっくりと歩く。何だかデートみたいで楽しい。別に手を繋いだりしてないけれど。

 

「だってあんな風に裸同然で出てくるなんて、らしく無い気がする。友達になって随分経ったから、知り合う前のジルと違うのは分かるけど……それでも綺麗でしっかり者のお姉さんって憧れは消えてないよ? 私だけじゃなく、他のみんなもそうだろうし」

 

「う……で、でも、家の中だとあんな感じだよ? よく、ターニャちゃんに叱られてたから」

 

 用事のある朝は必ず起こしに来てくれた。朝ご飯も丁度良いときに出て来て驚く日々。とにかく美味いのだ、ターニャちゃんの手料理。

 

「……ターニャちゃん、か。まだ数日だけど、何だか凄い昔に感じるね」

 

「うん」

 

 ルオパシャちゃんとアートリスを旅立ち、数日が経過している。昨日も夢に出て来て、相変わらず手強かった。未だにお風呂さえ入ってくれないのは何故なんだ。

 

「今はどの辺りだろ?」

 

「場所は分からないんだ。教えて貰ってないの」

 

 ん?って顔したリタだけど、直ぐに納得の表情に変わったみたい。

 

「あー、ジルなら魔力強化して遠い街でも突撃しそうだもんね。こっそり後から尾行して観察する……間違いない」

 

「そ、そんなことする訳……」

 

 あるけども! 正にそれが理由で教えてくれなかったのだ!

 

「まあ愛しの、イチャイチャしたいターニャちゃんだもんねぇ」

 

 人通りの激しい、しかも狭い路地でリタは意味深な単語を選んでくれた。

 

「しー! 街中で変なこと言わないでよ!」

 

「んー、何のこと?」

 

 ニヤニヤと笑うリタは、今の俺たち……つまりターニャちゃんとの仲を知っている。正確に言うとターニャちゃんから旅のことを知らせるとき、合わせて伝えたらしい。まあ確かに理由がないと少女が旅に行くなんて不自然だし、ましてやルオパシャちゃんも見た目だけは子供だ。

 

 お互い告白し合った仲で、今は遠距離恋愛中。

 

 他にも色々バレてるらしいけど、何故か教えて貰えない。よく考えたらおかしくない、それって。こっちは当事者なのに。そういえば、結局バンバルボア帝国のこともあまり聞いてこない。それだけは助かったかな。リタから他人行儀にされるなんて嫌だし。

 

「ねえリタ、質問していい?」

 

「ん?」

 

「その……今更だけどさ……私達のこと、おかしいとか思わない?」

 

 だって世間的には同性で、歳の差もあるし、何より姉妹として過ごしていたのだ。温暖な気候に合わせてか、ツェツエ王国はかなり開放的な考えの人達が多いと思う。それでも、かなり珍しい関係なはずだ。

 

「そうだねぇ、不思議だけど驚いたりはしなかったかな。ターニャちゃんも、ジルも、互いを大切に想ってたし。あー、恋愛感情だったんだって知ったら、納得感があったもの」

 

 うんうんと二回頭を振ったリタが本心で話してるのが分かる。何となく嬉しくて、同時にホッとした。

 

「ありがと。うん、私がもっと頑張って引っ張って行かないとダメだね」

 

 すると、リタはハァ?って顔に変わる。あのぉ、本心が思い切り外に出てますが?

 

「あのさ。前から思ってたけど、間違いなく向こうが引っ張って行く方だからね。ジルは可愛い可愛いお嫁さんになる訳だし、無理しない方が良いって。寧ろ甘え上手になれるよう勉強したら?」

 

 えぇ……?

 

「私の方がずっと歳上……お姉様って呼ばれてるし」

 

 それに超級の冒険者で、すっごい強いんですが! まあターニャちゃんが才能(タレント)を完全に使いこなしたら、色々とヤバイ気もするけども……

 

「表だとそれで良いけど、実際は逆でしょ? 張り切ると逆手に取られて反撃を貰うだけだと思うなぁ」

 

 ーーーそれも面白いから良し。

 

「最後の面白いってとこ、小声でも聞こえたからね?」

 

 しかし、完全に反論出来ないのが悔しい。最近は色々と頼りきりだったもんなぁ。そう言えば、ターニャちゃん言ってたな……プルプルさせたり、赤くなったりするのが堪らなく好きだって。頭も良くてSっ気も隠さないから、カウンター攻撃が辛辣だったりするのだ。うーむ……

 

「とうちゃく〜」

 

 リタの一言で我に帰る。見れば目的地のご飯屋さんは目の前だ。そう、今日はリタと二人でランチだ。前から話はしてたけど、互いの都合が合わなくて延び延びになってたんだよな。今はターニャちゃんもお留守だし、リタも公休日。

 

 アートリス周辺に点在する村々から新鮮なお野菜を仕入れ、シェフの人が工夫して食べさせてくれるらしい。元の世界でも一緒だけど、女性達に人気のお店だ。外観もオシャレで、たくさんの花々が飾られている。昔の俺なら絶対に入らないだろう雰囲気だけど、今は超絶美人なジルその人。つまり、何の問題もない、うん。

 

「いらっしゃいませ」

 

「予約していた二人です。これ、予約票」

 

「はい、お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

 

 この世界には電話もメールも無い。いや、正確には魔素通信網が存在するけど、一般での使用は論外だ。だから予約するには足を運び、幾つか記入して半券を預かる方法が普通になっている。

 

「リタ、予約ありがとね。遠いから大変だったでしょ」

 

「ふふ、気にしないで。好きでやってるんだから」

 

 ニッコリ笑うリタも可愛いな。年齢は近いけど、俺に比べるとかなり幼い容姿だから尚更だ。我が母上に似て、いや似過ぎて、ジルってば美人さんに育ちましたので。でもさ、慎ましやかなお胸もサイコーだよ、リタ。

 

 内心で遊びつつ、案内された席についた。ふむ、角の奥まったところだし、VIPまではいかないけど特別な席っぽいな。店内からの視線も遮られてるし、そのくせ店先に飾られた花々はよく見える。木製のテーブルも二人でだと十分過ぎるくらい広い。うーむ、特別席で別料金とか取られないのかな。まあ、それなら俺が払うけど。

 

「あ、あの……私、普通の席で予約したんですけど」

 

 同じ不安を持ったリタの質問に、店員さんは「いえいえ」と首を振った。何だか空気感が"演算"のタチアナ様に似てる気がする。頭良さそうで、先回りされて、冷静で凄そうな女性だ。うん、ちょっと警戒してしまう。

 

「申し訳ありません。こちらの勝手な判断です。失礼ですが……同伴の方は魔剣のジル様ですよね? 既に気付かれたお客様も多いですし、気を遣わせるのも悪いですから。店長としての私の判断です。もちろん追加料金などは頂きません、が」

 

「「が?」」

 

「あ」

 

「「あ?」」

 

「あ、握手して下さい! それと! 出来れば店先に来店の署名など頂ければ!」

 

 署名、つまりサインってこと? と言うか、雰囲気変わり過ぎじゃない? 思い切り乗り出すように体を傾けてるし……何より血走った目と鼻息の荒さが凄い。

 

「ジル。ほら」

 

 完全に呆れた風のリタ。あのぉ、別に俺が悪い訳じゃないよね? そっと差し出した右手を、店長さんは両手でガチリと掴む。ハァハァと益々鼻息がもっと荒くなったのが、正直怖いんですが。女性じゃなければ間違いなく事案だ。

 

「あ、あの、そろそろ手を……」

 

 握り締められた手を舐めるように撫で撫でされて、流石に声を掛けるしかない。ハッとした店長さんが慌てて手を離し、「失礼しましたー」って小走りで姿を消した。

 

 な、何だったんだろう。

 

「浮気未遂、一件目。ターニャちゃんへ報告だね」

 

 は、はぁ⁉︎

 

「ななな何を不穏なこと言ってるのかな?」

 

「ターニャちゃんに頼まれてるの。ジルが浮気したり、他の人に色目を使われないよう注意をお願いしますって。特に綺麗系のお姉様や、可愛い系の女の子に警戒ってさ」

 

「んなぁ! そんな事ある訳ないじゃん!」

 

「ど真ん中はリュドミラ王女殿下」

 

 ミラちゃん、確かに可愛いけども! TS超絶美少女ターニャちゃんと双璧を成す、至高の美少女だけど! そもそも何で知ってるんだ!

 

「ふ、ふん! それを言ったらリタだって可愛いもんね! 私と大して変わらない年齢なのに、ソバカスとかも幼い感じで素敵……」

 

「あん?」

 

 ひぃ⁉︎ 明らかに目が座ったリタさん……す、すいません! 言葉を間違えましたぁ! "幼い"とか禁句なの忘れてた!

 

 そのあと暫く……リタのご機嫌が治るまで、頑張らないといけなくなった。

 

 うぅ、可哀想なジルちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

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