綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、ドワーフに会う

 

 

 

 

 アートリスの冒険者ギルドはかなり大きな建物だ。

 

 この街は陸路の要衝で、貿易にも大きな貢献をしてる。だから街の守りにチカラが注がれて、結果的にギルドは充実していくって訳。中堅どころのトパーズ、上位に数えられるコランダムが非常に多く所属してるのが証拠だね。

 

 とは言え、今は結構静かだ。

 

 夕方が近いし、まだ依頼を頑張ってる人が多いはず。つまり、まだギルドに帰って来てない。まあそれでも、幾つかのパーティらしき集まりや、一人二人と休んでる連中もいるな。殆どが男だから、俺をチラチラ見たり、ポカンと口を開けてる若いヒヨッコ冒険者も見つかる。

 

 うーん、今回は護衛依頼でキルデが対象だって分かってたから、かなり地味な装備なんだけど……それでも目立ってしまうのか、ジルだけに。でもまさか、何処か破れてるとか、汚れてるとかないよな?

 

「ふう、良かった……」

 

 確認したけど大丈夫。今日のコーデは黒のテーパードパンツと白のリブニット、擬き。敢えて言えば肘から先は素肌だけど、あと見えるのは足首くらいだし。む、リブニットはちょっと胸のラインが強調してるか? まあ斜めに掛けた剣帯のせいでパイスラ気味でもある。もし魔力強化したらもっとヤバいけどね。ほら、ピチリと身体に張り付く訳で。

 

 うー、俺は誰に言い訳してるんだ?

 

「……ま、いっか」

 

 たまにニコリと笑ってあげると、アタフタしたあと嬉しそうな笑顔が浮かぶの楽しい。うんうん、若い子からしたら歳上の綺麗なお姉さんってたまらないよね〜。甘えさせてくれそうで、お付き合いしたらどうなるんだろうって想像するのも最高。だって俺も前世で経験あるし? だからつい見ちゃうのも許してあげよう。でも残念!お姉さんは売約済みなのだ!

 

 お、リタがちょうど受付に居るな。

 

 よし、依頼完了を報告しよっと。

 

「リタ、帰ったよ」

 

「ジル、おかえり! 特に怪我とかないよね?」

 

「大丈夫。心配してくれてありがと」

 

 なに? ジロジロ見てるけど。

 

「はぁ、ジルが魔剣だって知ってるけど、その服……目の前に立ってる姿を見ると信じられないなぁ。全然汚れてないし、肌も髪だって荒れてない。そもそもジルの装備ってとても戦闘用には思えないじゃない? ほら、深い事情で何処かの国から逃げ出した王女様って感じで」

 

 ギックゥ!

 

「リ、リタ、依頼完了の報告」

 

 ま、まさかバレてるんだろうか……? チラリと伺い見てもそんな様子は無いけれど。

 

「あ、そうだね。お仕事お仕事っと」

 

 うーむ、直ぐに切り替えだ感じだと、特に深い意味はなさそう。はあ吃驚したぁ。

 

「はい、依頼完了ね」

 

 サラサラと何やら書き込み、リタはニコリと笑ってくれた。あ、可愛い。そばかすを化粧で薄く隠してるけど、そんなの関係なく可愛らしいのがリタなのだ。少しでも大人に見られたくて、燻んだ金髪を頑張って伸ばしてるのも可愛い。お化粧とかファッションとかパルメさんにコッソリ習ってるんだよね? はい、そんなとこも可愛い。

 

「なに? 私の顔に何かついてる?」

 

「え⁉︎ そ、そんな事ないよ?」

 

「そうかしら? そんな反応するジルは、大抵おかしな事を考えてるってターニャちゃんが言ってたけど」

 

「ななななにを言ってるのかなぁ? さ、早く手続き終わろ?」

 

「フフ……ジルってば慌て過ぎだよ」

 

 むぅ。最近のリタってターニャちゃんと連携取れ過ぎじゃない?

 

「慌ててなんかないし」

 

「はいはい。ところで、護衛したのバンバルボア帝国の特使だっけ? やっぱり気難しそうなお爺さんだった?」

 

「んー、普通の男性だったよ? 多分三十代くらいの」

 

 正確には確か三十六歳? 随分久しぶりで、ちょっと楽しかったな。そう言えばキルデっていつまでツェツエに居るんだろ? いきなりバイバイじゃ寂しいから、今度確認しておこう。

 

 あ、ジルヴァーナ捜索隊の一部がアートリスに居たよな? そのあとどうしたかも聞いてない。お母様もキーラも帰国したし、一緒に帰ったのかなぁ?

 

「へー。その若さで特使なんて、きっと優秀なんだろうね」

 

「うん、コト家って貴族らしいよ。結構古いって」

 

 貴族は歴史と血が大切だもんね。コト家もそうだし、まあ名門ってやつかな。でもこんな話が出るってことは、やっぱりリタは知らないままみたいだな。俺がバンバルボアから来たって。なんだか一安心です。

 

「あ、ねえリタ」

 

「ん?」

 

「アートリスに配置されてる騎士団だけど、何か新しい情報とか入ってる?」

 

「おー、さすが超級。やっぱり情報早いねー。えっと……まず蒼流騎士団の部隊を一部解散して王都へ帰還。入れ替わりに新しいのが派遣されてくるって話があるよ。また編成内容は出てないけど、詳しくはギルド長が知ってると思う。とにかく、戦争とか魔物溢れとかの危ない理由じゃないみたいだから、ジルも心配しなくて大丈夫だよ」

 

「んー、新しい部隊……」

 

「そうだ、ギルド長に会う? ジルならいつでも大丈夫だろうし、時間あるか聞いて来ようか?」

 

 ちょっと厚かましいけど、話は聞いておきたいな。多分、間違いなくバンバルボア帝国絡みだろうし……と言うか俺が原因だと思うけど。蒼流のおじさんが言ってた通りなら、紅炎騎士団から部隊が編成される。王都以外に常駐する騎士団じゃないから珍しい情報だもんね。

 

「悪いけどお願い出来るかな」

 

「勿論だよ。ジルは私の大切な友達だけど、同時に超級冒険者の魔剣だもん。街の防衛に影響が出るかもしれない内容だから気になるよね」

 

 う……防衛云々とかの真面目な理由じゃなく、すっごい申し訳ない気持ちだからなんだよなぁ。はぁ、何だかごめん。

 

 暫く待ってると、リタが奥にある階段から降りて来た。指で丸を作りつつ席に着いたから、ギルド長に会えるんだろう。

 

「ギルド長も近いうち呼び出そうとしてたってさ。直ぐに会えるよ」

 

「分かった。じゃあ行って来ます」

 

「またねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギルド長ウラスロ=ハーベイは、いつもと同じ様に窓の外を眺めつつ待っていた。あのさ、俺と会うとき必ずその姿勢だけど、態とやってんの? 両手も後ろに組んでるし。

 

「来たか」

 

「はい」

 

「まあ座れ。少し長くなる」

 

 ギルド長の机の反対側に椅子があって、やっぱりいつもみたいに座ってみる。ウラスロのお爺さん、相変わらずドワーフそのもので嬉しい。長い白髭、ポヨンとしたビア樽な腹、俺よりずっと低い身長。うーむ、何処かに金床とかハンマーとか転がってないかなぁ。カンカンって鍛冶とかして欲しい。

 

「……何だその顔は」

 

「え⁉︎ べべべつに鍛治とかドワーフなんて思ってないですよ⁉︎」

 

「ハァ……お前、ホントにバンバルボアの皇女なのか? 美貌だけなら誰もが納得するしかないが……高貴な空気を感じないんだが」

 

「一応?」

 

「一応とか言うな。確認だが、呼び方は"ジル"のままで良いのか? 我等がツェイス王子殿下を袖にした"ジルヴァーナ皇女殿下"?」

 

「う……ジ、ジルでお願いします」

 

 やっぱり知ってるんだぁ。ツェイスをふってターニャちゃんと付き合い始めたこと。ふむ、ターニャちゃんとお付き合いかぁ……まだ現実感ないなぁ。

 

「殿下も納得されたみたいだし、俺如きが言う事でも無いが……よく両国の問題にならなかったな。おまけに魔国まで関わってたんだろう? ターニャは確かに良い娘と思うが、まさか皇女殿下とくっつくなんて想像も出来んよ、普通は」

 

「えーっと、確かに……?」

 

 言われてみたら、何やらスムーズに事が進んでる気がする。ウラスロの爺さんの溜息からして、やっぱり何かあるんだろうか。

 

「絶対に言うなと厳命されてるが、殿下が不憫でならん。いいか? 今の状況も魔国やバンバルボアとのしがらみも全てツェイス王子殿下の取り計らいだぞ? シャルカ皇妃陛下とも話し合いを重ね、今の平穏が保たれてるんだ。お前もターニャも悪さをしてる訳じゃないが、周りの人達の気配りがある事は知っておいてくれ」

 

 そっか……やっぱりツェイスって凄いな。昔の俺なんて比べ物にもならない最高の男だ。だってフラれた相手のためにそこまでしてくれるなんて。ジルがTS転生じゃなかったら、元からこの世界に生まれ落ちていたなら、違う未来があったのかな……

 

「……スマン、キツく言い過ぎた。そんな哀しい顔をしないでくれ。俺もお前達二人が幸せになって欲しいと思ってるんだ。ターニャは歳の離れた友人でもあるからな」

 

「いえ、私も知らないことでしたから。ありがとうございます」

 

 頭を下げて姿勢を戻したとき、ウラスロはグニグニと眉間を揉んでいた。んー、何だよ一体?

 

「あー、やめだやめだ! お前とクソ真面目な話なんて似合わん! なんて言ってもジルだからな!」

 

「はぁ⁉︎ ちょっと大人しくしてるからって、調子に乗らないでください!」

 

「なーにが"大人しくしてる"だ。俺の話も聞かず、古竜ルオパシャに突撃したのを忘れたのか? あの後ギルドがどれだけ混乱したか語ってやってもいいんだぞ?」

 

「そ、それはずっとずっと昔の話ですぅ!」

 

「たった六年前だろうが! そもそも他にも言いたい事がたっぷりあるんだからな!」

 

「わー!聞こえません、聞こえませんから!」

 

 両耳をしっかりと覆い、全力で否定する。だって、思い当たるコトたくさんあるし!

 

 暫く我慢して待ちつつ、チラリとウラスロの様子を伺う。盛大な溜息と、早くしろってイライラが見えたので、恐る恐る手を下ろしてみた。うん、怒鳴り声は聞こえないな。はぁ、良かった良かった。

 

「ふん、説教はまたにしてやる。今は話すこともあるしな」

 

「……」

 

 お爺さん、お説教は忘れて?

 

 

 

 

 

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