綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね 作:きつね雨
「パルメさん、どうしました?」
何だか緊張してると言うか、心ここに在らずな感じ。お店にいるときのパルメさんは、キャリアウーマン的に凛々しくて綺麗なのだ。だからこんな雰囲気は意外と珍しい。
「え、ええ。特別なことでもないのだけど」
んー。ちょっとだけ普段と違う? 余り聞くのも失礼かな。でも、もし何かあるなら全力で助けるぞ。
「心配ごとがあるなら言ってくださいね?」
悪い奴とかなら超級冒険者なジルにお任せ!
「いや、どちらかと言えばアナタが……」
「はい?」
何ですかー?
「まあすぐに分かるわ。それより、聞きたいことって?」
おっと、そうでした。
「あのですね。リタのことなんです」
「リタの? 何かしら?」
んー、やっぱりパルメさん綺麗だなぁ。まだ短いままの銀髪も似合ってて格好良いし、お姉様枠筆頭です。
「私の……生まれのこととか聞いてこないので、もしかして知らないのかなって」
「ああ、そのこと。確かにリタに私から何も言ってないわよ? マリシュカさんは知らないけど、多分一緒じゃないかしら」
おー、やっぱりか。でも不思議だなぁ。自分で言うのもアレだけど、結構なビッグニュースだと思う。
「えっと、何故ですか?」
「言った方が良い?」
「いえ、そう言う訳じゃないですけど」
「じゃあいいじゃない」
やっぱり不思議だよ。別に隠してって頼んでないし、そもそもタイミングも無かった。でもターニャちゃんとの事は知ってたからね。
「そんな不思議そうな顔も綺麗なのは反則ね、全く。ターニャちゃんから聞いてるの、貴女はこれまで通りジルとして過ごす事を願ってるって。それに」
「それに?」
「もし話すなら私からじゃなくてジルからでしょ? 二人は友達で、ターニャちゃんとも共通の。でも……無理に言う必要はないと思う。リタはああ見えて真面目だし、二人に距離が出来るかも」
「そ、それはイヤです!」
「ふふ、でしょ。じゃあこのままで良いのよきっと」
「あ、はい」
うむ、格好良い。パルメさんは綺麗で同時に男前な人だ。もし前世のままの俺だったら話す事もない女性だもんなぁ。やっぱり……超絶美人のジルで良かったのだ!
「あ」
あ?
いきなり何ですか、パルメさん。むー、その視線は僅かに俺から逸れているみたいだ。店の正面あたりかな? 何となく振り返ってみる。
うん、何も無いし誰もいない。
「急にどうしたんですか? やっぱり何かヘン……」
「えーっと……」
今度は右側後ろ辺りに視線を送った。なになに、ホントに何ですかー? グルリと周りを見渡してみたけど……やっぱり俺とパルメさん以外に誰もいませんが? も、もしかして幽霊とか⁉︎
「ちょ、ちょっとパルメさん、悪戯はやめてくださいよ」
霊体とかも魔法で倒せるけど、怖いものは怖い。まあ
今度は俺の左側を見ている。うん、怖い。もう見ませんから!
「悪戯じゃないし。怖がる貴女も綺麗だけど、私も同じくらい怖いから」
ジーって左側を眺めるパルメさん。うぉぉ、まじで怖くなって来た! み、見てませんよ! う、左手に何やら冷たい感触が……あばばばばばば! チラリと見れば、真っ白で細い両手が、俺の左手を掴んでいるんですが! 間違いなく女性の手で、ヒンヤリしてて……
「ひっ」
「
「ひっ?」
んん? 何やら可愛らしい声まで聞こえるぞ? しかも聞き覚えまでありますね。
「私、来ちゃい、ました」
来ちゃい?
固まっていたら、真正面に桃色した物体が回り込んで来た。ふぅ、幽霊じゃなくて良かったよ、ハァ。桃色は間違いなく髪の毛で、フワフワの綿菓子みたい。ん、身長も随分伸びたね、ハハハ。
「エ、エピカさん?」
「やめて、昔みたい、に、エピィと呼んで、ください」
それはアナタが遠回しに呼ばせたんですが? 色々と脅迫され……いや、交換条件で!
いつかこの日が来るとは思っていたが、まさかそれが今日だとは……王都アーレでも会わなかったし、気が抜けてたよ……
うん、逃げたい。
何となくにじり寄って来るエピカさんを押し留め、パルメさんは奥にあるテーブルに案内してくれた。そのパルメさんだけど、少し離れた場所で観察しているようだ。無表情を貫いてるけど、興味津々なの丸わかりだからね? あのぅ、近くに来て助けてくれない? ダメ?
「え、えーっと、エピカさん」
「エピィ」
「……エピカさ」
「エピィ」
「エ、エピィ」
「はい」
身長は随分伸びたし、少し大人っぽくなったけど……中身も変わってくれてたら嬉しい。そう。普通の女の子に。ヤンデレの本物が目の前に現れたら、ホントに怖いのだよ。
「ど、どうしてアートリスに? コーシクスさんは知ってるの?」
「はい、もちろん、です。私、仕事、で来ました、から」
「仕事?」
「頑張り、ました。褒めてくだ、さい」
やっぱり成長してるんだなぁ。シクスさんの家で会った時は子供ぽかったし、その後は色々ありましたけど……そう言えば盗ん、いや持って行った下着返してくれない? 上下ともで、結構気に入ってたから。着け心地も良かったから普段使いに重宝してたんだよ。
「そっか……頑張ったね、エピィ」
まあでも、成長した妹分を褒めるのはお姉さんの役目だろう。ここは格好良くしてみるのが正しい。何よりパルメさんがじっとり見てるから、余計なこと聞かれたくない。ほら、行方不明の下着とか。
ホワホワ髪を撫でるとエピィも嬉しそう。仕草が何となくクロに似てるからワンちゃんみたい。
「それで、どんな仕事なのかな?」
質問すると、首に掛かっていたネックレスを見せてくれた。立ち上がる炎が二つ重なった様な意匠。赤色が淡くて綺麗だな、うん。
「わぁ、本当に紅炎に入団したんだ! 夢が叶って良かったね。コーシクスさんに憧れていたし、素敵なお父様だもん」
まあ実際には悪戯好きでガハハ笑いするオジサマですが。流石のシクスさんも娘達の前では格好つけてたから、内緒にしてあげよう。
それと、紅炎は貴族の娘達が多くいて、しがらみもバッチリある。実力だけでのしあがるのは簡単じゃないし、武力以外に覚える事も沢山だ。あとコーシクスさんの家は貴族でもなくて、社交界とも距離を取ってたはず。つまり、騎士団長であるクロエさんと同じ、一般枠で入団したことになる。まあ剣神の娘だから、単純でもないだろうけど。
「アナタ、です」
「ん?」
「私が憧れ、たのは、アナタ、です」
「そ、そう? 嬉しいな」
ふっふっふ。まあ超絶美人で超級のジルですから?
「ジル姉様は、超級、です。
「もう、エピィったら褒め過ぎだよ。恥ずかしくなっちゃうでしょ」
何か引っ掛かる言い方な気がしたけど、会ったときはこんな感じだったな。うん、だんだん思い出してきた。
「事実、です。私、
「う……」
可愛らしい女の子から見詰められたら嬉しいはずなのに、何だか寒気が走るの何でだろう。昔ほどエピィから病的な感じもないし、普通に褒めてくれてるだけだよな? う、うむ。パルメさんとの話もあっさり終わったし、此処は退散しよう。
「そ、そうだ。私、用事があったからそろそろ帰るね。エピィに会えて良かったよ。パルメさん、また来ます」
エピィ、一緒にとか言って来そう……
「そう、ですか。私も嬉しかった、です。偶然に、会えて」
おや? 意外と普通だ。やっぱり成長したのかも。このジルの下着とかに執着してた頃は思春期だっただろうし、今は就職した立派な社会人だもんね。
「うんうん、じゃあね」
「はい、
ん?
「ジル、店先まで送るよ」
あ、パルメさん。
トコトコ歩いてくるパルメさん、座ったままのエピィ。うぅ、警戒した俺って馬鹿みたいだな……昔は昔、今は今なのに。そうだ、今度会う事あったら下着のことも聞いてみよう。ほら、黒歴史になってたら可哀想だし慎重にだけど。やっぱり思春期とか色々不安定になって難しい年頃だからね。綺麗なお姉さんは心が広いのだ!
◯ ◯ ◯
相変わらずの信じられない身体つきを眺め、パルメはジルを見送った。同じ女性なのに、まるで別世界に生きていると錯覚しそうな美貌。らしい線は背中や腰周り、お尻から脚まで全て完璧だ。まあジルの母親も妖艶を更に加えた様な人だから、血を受け継いだのだと今は理解出来る。やはり長い歴史を誇る皇族となれば、当たり前の常識など消え去ってしまうのだろう。
「ジルもいつかシャルカさんみたいに大人の女性になるのかしら? 何だか想像出来ないけど」
寧ろ歳下の恋人である少女に弄ばれ、プルプルしてる姿しか浮かばないのだが……
一応のお客様であるエピカの相手が残っている。先程は随分と大人しく、憧れの人を前にすればあそこまで変わるのかと感心していた。まあジル本人もかなり警戒していたし、ターニャに頼まれた浮気調査は必要ないだろう。ジルもあの娘の危険性は知っていたようで、過去に何かあったのかもしれない。
そんな事を考えつつ、店内に戻ったときだった。
「ね、ねえ、エピカさん……何を、してる、の?」
絶句し、そして片言になったのも仕方ない、絶対に。
ジルが座っていた椅子にベタリと張り付き、背面の背柱に鼻をつけている。そのまま下の方に顔をずらしていくと、座面……つまりジルがお尻を乗せていた箇所に唇を這わせた。そしてペロ、いやベロリと舐めた様に見えたのだ。パルメの背筋にゾワワと寒気まで走った。
「……いえ、別に。忘れて、ください」
「別にじゃないでしょ! あ、アナタいま……」
「お願い、あり、ます」
「はぁ⁉︎」
「この椅子を売ってください。高値で買い取ります」
また片言がおさまり流暢に喋ってくる。さっきの行動と話してる内容がキモ過ぎて、パルメはブルブルと震えた。当然だが、返す言葉は決まっている。
「売るか!」
早速別の意味で警戒しないといけない相手が現れたのだ。このままでは浮気どころかジルの貞操が危ない。急いでマリシュカに相談しなければと、考えを固めたパルメだった。
以前からの設定通りなのに、書いててもキモいエピカさん……