綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、実験する

 

 

 

 

 

 

「やっちゃったなぁ」

 

 何度もターニャちゃんに注意されてたのに……

 

 だんだんと視界がグニャグニャ? あと火照る頬とフラフラする足元も。お店を出たときは大した事なかったけどなぁ。うー、考えが纏まらないよー。

 

 こういうの、何て言ったかな。

 

 えーっと、確か、鳥、手羽、いや、思い出した! 千鳥足!

 

「いやいや、そんなこと言ってる場合じゃないぞ……早く家に帰ろう」

 

 うん、間違いなく酔っ払ってます。何でこんなになってるんだ……ターニャちゃんが横に居たら、間違いなくジト目を喰らってる。

 

 そう、ビレモさんから買った茶葉の袋を片手に帰ってるときだった。

 

 超絶美人のジルが街を歩くと、沢山の人が声を掛けてきてくれる。ビレモさんもその一人だった訳だけど、ほかにも露店や装飾品のお店、あと化粧品とか? 服飾関連の人も偶に話があるかな。まあ俺の場合パルメさんと言う贔屓があるので軽い感じ。

 

 そんな中、さっきまで酔って、いや寄っていたお店が居酒屋さんだ。まあ居酒屋さんと言うより小料理屋?かな。年配のお婆様が手料理を振る舞う小さな店なんだけど、薄味なのに凄く美味しい。ターニャちゃんも参考にするらしく、ある種の先生的なお婆様なのだ。軽く寄っといでと誘われて、断われなかった。何よりもお腹が空いてて、良い匂いも漂って来たし。

 

「お酒に合う一品……確かに合ってたけどさ」

 

 お野菜系の注文とは別にサービスして貰ったヤツ。興味を唆られたのは、ちょっと和食ぽかったからだ。多分お肉とかの煮込みなんだけど、他の具材もあって"おでん"に似てた。

 

 お勧めされるままにお酒まで頂いてしまったのだ。ほら、子供の頃にお祖父ちゃんとかお祖母さんの家に行ったらさ。もう要らないって言ってもお菓子とか御飯がバンバン出てくるじゃん。あんな感じなんだよ、あのお店。しかも安かったり、サービスしたりしてくれるから、つい食べ飲みし過ぎる……

 

「と、とにかく、これ以上お酒が頭に回らないうちに」

 

 でもさ。フラフラフワフワ歩くの気持ち良いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◯ ◯ ◯

 

 

 

 

 

 

「んー……」

 

 自慢のオッパイを上に乗せつつ両手を組む。モニョリとした感触も素晴らしいけど、今は考え事があって大変なのだ。

 

 何とかお家に帰り、お風呂にも頑張って入った。気の所為かもだけど、酔いも少し冷めてきた様な? すると今度は何だか喉が渇いて、お茶を淹れようとしたのだけど。

 

 そう、茶葉の入った紙袋が目に入ったのだ。

 

「んー……困った」

 

 いや、大体は分かってるんだよ。ビレモさんも言ってたし、魔力の影響を抑えて淹れないとダメだって。場合によっては薬草茶としての効果も変わってしまうらしい。

 

 今の俺、つまりジルの生きる世界は現代日本と全く違う。魔法飛び交うファンタジーな世界だから、情報の蓄積や伝達方法に大きな違いがある。つまるところ、インターネットが存在しない。ググったら?なんて言われても困ってしまう。

 

「このお茶、名前聞くの忘れた……あと、淹れ方や注意点も」

 

 いやいや、ビレモさんも何か説明してたし、多分聞き逃してしまったのだ。だって可愛さ限界突破のスーパーヒロイン、TS美少女ターニャちゃんに想いを馳せてましたから? 仕方ないったら仕方ない。

 

 魔力の影響を抑えるって言ってもさ。沸かしたお湯なのか、茶葉なのか、或いは茶器なのか、或いは全部? そもそも魔力が四六時中大量に生成されてる訳ないし……とは言え魔素は存在して、ターニャちゃん曰くそこら中を飛んでるらしい。魔力と魔素は同一視されやすいから、ビレモさんの言う魔力が何なのか確定出来ない。

 

「ターニャちゃんだったら全然大丈夫だもんなぁ」

 

 あの子の才能(タレント)は凄まじく、最強生物である古竜からすら魔力を消し去る事が出来るのだ。当然ながら目の前の茶葉なんて好きに出来ただろう。あと魔素の存在を目視までしちゃうから、ミスもあり得ない。うん、改めて考えてもヤバい才能だな。

 

「見た目は普通だけど……香りは確かに薬っぽい?」

 

 パッと見は緑茶の茶葉に似てる気がする。量は少ない。

 

 傷みやすいらしいし、早めがいいよなぁ……

 

 もう一度ビレモさんに聞くのもありだけど、流石に恥ずかしいし申し訳ないな。凄く真剣に喋ってたの何となく覚えてるし。まあ今更だけど。

 

「……ふっ。我が魔剣の経験と実力で全てを覆して見せよう。不可能? そんなもの、私の辞書には掲載されてませんから!」

 

 ()()、超絶美人の、超級冒険者で、しかも魔法に関しては世界トップレベルのぉ、魔剣ジルですから? 魔力を抑えるなんて朝飯前! いや、今は夕食後、いや飲酒後ですけれど!

 

 折角だから、ターニャちゃんに報告出来るレベルまで試してみるのはどうだろう。俺にしか出来ない魔力調整と、更には万が一の場合の治癒魔法がある。色々テストして、最高の淹れ方を教えて上げるのだ。

 

 何よりも、きっと恥ずかしがるだろう。でも、ターニャちゃんが俺を沢山気遣ってくれてたお礼を伝えたい。今はもう恋人同士だし、内緒になんてする必要が無いよ、うん。

 

 それと、お礼を言ったら恥ずかしさの余り真っ赤になるかもしれない。赤面プルプルするターニャちゃん……サイコーです。

 

 よし!

 

「それでは、第一回ジルヴァーナ化学実験室を……開催しまーす!」

 

 一人で何を騒いでるんだと笑われそうだけど、何となく前世を思い出してハイテンションなのだ。だって、化学実験ってワクワクするじゃん? 混ぜ混ぜしたり、フラスコをフリフリしたり、温度を調節したり。

 

 我が屋敷の台所は非常に広い。アイランド型の作業用テーブルは真っ白な石材で作られてて、流しや魔力を使って調理するコンロは横長のキッチンスペースに配置されている。食器類や調味料などを納めるパントリーもあるけど、そっちは別室扱いみたいになっているのだ。他にも予備のキッチンがあって、それは大勢が参加するパーティとかで、料理人を外部から呼んだときに使う。まあ殆ど使用したことないけど。

 

 そのアイランド型のテーブルにカップを並べてみる。サイズを合わせる為に、同じ種類のヤツだ。お茶の色とかも見たいから、薄い色合いのモノを選んでみた。

 

「先ずはビレモさんの言ってた様に、魔力の影響を限界まで抑えてみましょう」

 

 意識して魔力を練る事をやめ、ついでに魔素感知などの行使もストップ。見えないけど、念の為に魔素自体も出来るだけ周囲から散らしておく。つまり、魔力強化の反対だ。おや? フワフワして気持ち良いし、魔力の扱いもラクチンな気がする。もしかして、酔っ払ったジルは最強なのかも。

 

 お湯を沸かすのも、カップも、茶葉にも、俺の魔力が触れない様にした、つもり!

 

 トポトポと透明なお湯が注がれて、フワリと茶葉が開く。直ぐに独特の香りが鼻をくすぐった。ふむ、茶葉そのものは薬っぽい匂いだったけど、お湯に触れるとキノコみたいな感じ。意外に悪くない。色は……薄いピンク、かな。ちょうどエピィの髪色に似てる。

 

「毒の感知なんて魔法は無いものなぁ。ターニャちゃんだったら何か気付くかも?」

 

 まあ薬草茶だし、まさか毒じゃないだろう。ただ薬って容量用法を間違えてたら駄目だろうし……よく考えたら、治癒魔法の準備もマズいか? 当然に魔力の影響があるもんね。

 

「ふむ。では逆を試してみては? ジル教授」

「ほほぉ、反証、ですな?」

 

 知らんけど。

 

 ふっふっふっ。一人芝居も今は楽しい。

 

 と言う事で、今度は滅茶苦茶に魔力を加えてみましょう。イメージは魔力銀の剣を操る感じで。超級魔剣の実力を見せてやるぜ!

 

「うりゃー」

 

 手のひらに乗せた茶葉にグイーンと魔力を送る。

 

「……お、おお!」

 

 お湯にも触れて無いのに茶葉が開いたぞ! しかも紅茶っぽい香りもする。これは興味深いですなぁ。よし、淹れてみよう。

 

「な、なるほど?」

 

 うん、意味分かんない。何故か香りは最高なのに、触れたお湯の色が毒々しい紫色になった。香りは最高なのに!

 

 しかしこうなると、魔力の大小で変わるのか気になる。ピンク色から紫色なら、中間はどうだろうか。そもそも超級魔剣が全力で練った魔力なんて一般的じゃない。この茶葉は市販されてる訳で、やはり普通の魔力量も試すべきだな。

 

 そして、気付けば目の前には合計七つのカップ。色合いはピンクから紫色までグラデーションが効いている。うん、ちょっとだけ綺麗。

 

 何だよこの茶葉……めっちゃ面白いじゃん!

 

 ターニャちゃん最高かよ。

 

「ふむふむ、魔力の強さに比例して完璧に反応する。ある意味で魔素感知に近い。何か別の用途にも使えそう。そんな感じ」

 

 あとは味と効能。

 

 不思議な事に、毒々しい色合いになるほどに香りは良くなる。最初のヤツはキノコっぽい匂いなのに、紫色は今もばっちり良い香りなのだ。何より冷めた後も変わらない。

 

「……いやいや、流石にガブ飲みは駄目だろう。薬草茶とは言え、かなり特殊らしいし。でもなぁ……」

 

 唆られるぅ! すっごく飲んでみたい!

 

 香りからして紫色が一番美味しそう。ふっ、魔剣最高の魔力を込めた茶葉が果たして危険物になるだろうか、いやならない! 

 

 考えてみれば分かる。そう、私は魔剣! 超級冒険者にして、バンバルボア帝国の皇女。しかも伝説の始原の系譜であり、かなりレアな転生者でもあるのだ。おまけに言えば、スーパーレアなTSで超絶美人!

 

「いただきまーす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 感じるのは、紫色と紅茶みたいな香り。

 

 何故か微妙に薄くなった魔力と、お酒とは少し違う酩酊感。

 

 普段と違う感覚に、()()少しだけ不安になる。何故か外に出ようとしたのは、凄く寂しくて誰かに会いたくなったからだ。

 

 そのあとゆっくり眠くなって、何とか玄関の扉を開いた? 駄目だ、頭が回らない。

 

 そしてその記憶も紫色に染められて行く。

 

「でも、凄く気持ちいい」

 

 何だか暖かくて、フワフワしてて、まるでお母様に抱き上げられた子供の頃みたいだ。でも、こんなところで寝てしまったら怒られる……あれ? 誰に怒られるんだっけ? 

 

 よく分からないし、

 

 大丈夫、

 

 か、

 

 な……

 

 

 

 

 

 

 




お約束な話が続きます。
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