綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、考察する

 

 

 

 

 

 

 

 テストだるいなぁ。

 

 数学は勿論なんだけど、古典とか意味分かんないし。もうさ、どーせ補習になるならサボっても同じじゃないか? うぅ……そんな訳ないじゃん、絶対に怒られて、最悪お小遣いが没収されてしまう。楽しみにしてたゲームも買えなくなって、続刊も待ってるヤツが一杯……

 

 あー、我ながら不幸だ。

 

 何で勉強なんてしないとダメなんだよ。

 

 俺ってまあおバカだし、女の子にモテる訳でもない。つまり、細々とバイトしながら趣味に生きる道しかないじゃないか。うん、一生部屋に引き篭もって遊んで暮らしたい。それともアレだ、定番の異世界転生だ。すっごいイケメン勇者になって、お姫様とか可愛い女の子と仲良くなるとか。もうサイコー。

 

 はぁ、そろそろ起きないと。

 

 顔洗って、パン食べて、歯磨きして、あと、えっと……

 

 んー?

 

 少しだけ良い匂いがする。何か蜂蜜みたいな甘い香りだ。俺の部屋ってば汚いし、芳香剤なんて気の利いたモノも置いてない。それに、枕が高くて良い感触。フワフワなのにしっかりと弾力があって、ほんのり温かい。

 

「ジル様、ジル様」

 

 じるさまじるさま? おかしいな、こんな目覚まし時計なんて買ってないぞ?

 

「んん……うーん……」

 

 うん?

 

 あ、あれぇ?

 

 ……なんか滅茶苦茶近くに美人さんがいるんですが! 縁無し眼鏡がキリリと似合う美人さんがいますぅ! 髪の毛がミルクティーみたいな色してて、それも凄く似合って……

 

「ジル様。御安心を、タチアナ=エーヴです。違和感や痛みなどはありますか? どうかご自愛を……」

 

 その視線、間違いなく俺を見てる? なに? どゆこと?

 

「……うぇ? え? えぇっと、ど、どちら様、でしょうか?」

 

 ん? な、何だか声も変じゃないか?

 

 いやいやそれよりも、大変な事に気付きました。これはもしかして、膝枕と呼ばれる伝説のぉ! 格好良い系美人なお姉さんにしてもらえたら、幸せな夢No.5に入るシチュエーション! そう、蜂蜜みたいな香りはこの女性(ひと)から漂っているのだ!

 

 その膝枕美人さんは驚いた表情に変わって、酷く不安そうに眉がクニャリ。あ、もしかして、いつまで調子こいて膝に乗ってんだコイツって意味⁉︎ そりゃキモい顔した野郎がデヘヘって涎を垂らしそうにしてたらダメだよね。ごめんなさい!

 

 と、とにかく起きよう。なんで俺の部屋に美人さんがいるのか分からないけど。

 

「すいません、直ぐに起きます……」

 

 んー、やっぱり声が違う。とっても綺麗だけど、どうして俺の口から?

 

「……ジル様、まだ無理をしては」

 

「……んん?」

 

 少しだけ顔を起こしたら、更に色々とおかしなものが沢山見える。

 

 どうやら此処は部屋じゃなく外らしい。青空と微風、西洋風の屋根と柱。そこに配置されたベンチっぽい。そこに横たわり、膝枕をして貰っていたようだ。

 

 だが、そんな風景よりも意識を取られてしまう()()がポヨンと揺れたのだ。オマケにかなりデカくて、当然ながら二つ並んでいらっしゃる。これはもしかして、男ならじっとり見てみたいトップスリー入る"オッパイの谷間"ではなかろうか。

 

「……」

 

 視線が外せない。だってすっごいカタチも良くて、肌も澄んでて、薄ら浮かぶ血管までも綺麗なんだから。

 

 やっぱり夢か? 寝る前の日課にしてる妄想が花開いたのか。

 

 でも、現実感が凄い。胸から感じる重量も、呼吸したら上下するポヨン感も。

 

 もしかして、間違いないのか。夢じゃなければやっぱり()()なんだろうか。だって、いつものパジャマ代わりのTシャツでもなく、ワンピース?的な何かを着ているのだから。

 

 こうなると股間に手を入れて確認したい。確認してあのセリフを言ってみたい。膝枕美人さんの前では恥ずかしいので無理だけど。

 

「ジル様……」

 

「あ……ご、ごめんなさい。ちょっと呆然としてて」

 

 形の良い胸や肌に、視線が釘付けでしたなんて言えない。頑張って上半身を起こし向かい合う。今更だが、すぐ近くにもう一人いた。かなり短髪にしてるけど、こちらも間違いなく女性だ。何故か頭を思い切り下げて、片膝をついている。着てるのは軽鎧? もしかして女戦士ってやつ? つまり、此処がコスプレ会場じゃなければ、鎧とかがノーマルな場所ってことだ。

 

 ふむ。

 

 ここまで来れば俺の予想の通りだろう。慌てずにいれたのは、我が知識が深すぎるからだ。

 

 そう、俺の豊富な知識と情報から照らし合わせれば、これは所謂"異世界転移"ってヤツだ。異なる世界に飛び、しかも恐らくレアな憑依系TS。きっとこの身体の持ち主は"じるさま"という名前で、膝枕美人さんの知り合いなのだ。周りの状況から合ってると思う。

 

 ……う、うむ。ヤッベェ、妄想の具現化ってホントにあるんだなぁ。

 

「私を……わたくしの名は分かりませんか?」

 

 あ。

 

「は、はい」

 

「貴女様のお名前も、ですか?」

 

「えっと、多分……あ、あの、そちらの人、ずっと頭を下げたままですけど」

 

 短髪の女戦士さん、微動だにしないからちょっと怖いのだ。

 

「……お気遣いありがとうございます。では、申し訳ありませんが、ジル様、いえ、貴女様から、顔を上げ楽にするよう言って頂けませんか?」

 

 えー、もしかして、俺の許可待ちなん?

 

「ら、楽にして下さい。あと、顔も上げて貰って大丈夫です」

 

「は!」

 

 ビクゥ! 声がデカいよ!

 

 おお、顔を上げたらやっぱり結構な美人さんだ。ちょっと視線とかキツそうけど。ただ、彼女はやや下向きで、こっちを真っ直ぐには見たりしてない。この会話や感じから身分差とか大きいお国柄なのかもしれない。

 

 ……これって酷くマズくない? この身分の高そうな"じるさま?"の身体に、紛れ込んでるのはどことも知れぬ男子学生。しかもエロい妄想バッチリなヤツだ。も、もしもだよ? もしバレたら……凄くヤバい気がしますぅ!

 

 ほら、例えば憑依する系の亡霊とかに勘違いされたり、そうじゃなくても拘束されるかもしれない。だって自由にさせたら色々と堪能しそうじゃん、この立派なお胸様を!

 

 こ、これはバレたらアカンやつだ! 俺の勘がそう言っている! お、落ち着け! 取り乱したら色々と怪しまれる! エロエロな俺が取り憑いてるなんて、絶対に知られる訳にはいかないぞ!

 

「やはり記憶が……?」

 

 記憶……そうだ、コレ、だ! 記憶喪失と言うことで誤魔化そう! 女性の仕草とか知識とか無いし、普通だと直ぐにバレちゃう。ならば何もかも忘れてしまった事にするしかない。ある意味で事実だし!

 

「えっと、此処が何処なのか、自分が誰なのかも分からない、みたいです。あの、出来れば教えて貰えませんか? すいません」

 

「頭を下げるなど、どうかおやめ下さいませ。とりあえず、貴女様のお名前はジル。ジル様、です。ただ、此処では落ち着いて話も出来ないでしょう。朝の風は冷たいですし、何より貴女様の体調に何かあってはいけない。重ねて申し訳ありませんが、屋敷内に入る御許可を頂けませんか? 勿論失礼に当たらぬよう留意致します、エーヴ家に誓って」

 

 お、おう。すっごい丁寧な喋り口、ちょっとビビる。ただ、話し方が綺麗なのか、意味は掴みやすい。

 

 て言うか、このでっかい家ってこの身体の人が家主なんだな。うん、見る限りお城とかじゃないから、ちょっと身分の高いお嬢様か何かって感じか。定番の執事のお爺さんとか見当たらないし、例えば豪商の一人娘とか? ふぅ、幾ら異世界転移とは言え、お姫様とか勘弁して欲しい。あんなの、ごく普通の庶民には対処不可能ですよ。あと許嫁とかいたら最悪だよな。ほら、見も知らぬ野郎に……ぎゃー! 無理無理!

 

「ジル様?」

 

「あ、だ、大丈夫です。よく分からないので、ご自由に」

 

「はい。では指示をします。少しだけお待ち頂けますか? ありがとうございます。では、リーゼ」

 

 振り返る姿に見惚れちゃう。ミルクティー色の髪、綺麗だな。そう言えば、この身体の人はどんな顔なんだろ? 同じくらい美人さんだったら嬉しいかも。んー、いやいや、俺が憑依するくらいだし、期待しちゃダメだ。せめて普通に可愛らしかったら良いなぁ。

 

「はっ」

 

「外の一人に伝言を。今の状況を至急ツェツエに伝えてください。そして、必ず内密にするよう厳命をお願いします。これはツェイス殿下名代である私の命令として頂いて構いません。合わせて紅炎から追加の護衛を派遣するようお願い出来ますか? 確か、幾人かアートリスにいるはずですね?」

 

「はい、タチアナ様。追加の護衛に関してはちょうど一人適任がおります。ただ、少し、いやかなりの()()()()で……しかしジルヴァーナ様への忠誠心だけは頭抜けております、その点は御安心ください。私も目を光らせますが、何かあればタチアナ様から()()()()()お叱りをお願いします」

 

「……忠誠心ですか? で、その適任者の名は?」

 

「エピカ=バステド、と。新人ですが、()()才能(タレント)を持ち、護衛任務に最適な人材です」

 

「バステド……ああ、なるほど。では急いで下さい」

 

「はっ!」

 

 ザーッて続く会話に少し呆然としてしまった。あとタチアナ様? 凄く格好良い。もう絶対に頭の良い、エリートな人で間違いないな。執事のお爺さんはいないけど、この人がその役割でも驚かないぞ。逆らわない方が良い、きっと。

 

 玄関らしき扉の方にリーゼさんは結構な速さで走って行ったようだ。うーん、鎧姿なのにすっごいなぁ。あんなスピードで走るなんて俺には絶対に無理だよ。

 

「ジル様、お待たせして申し訳ありません。では、参りましょう」

 

 スッと手を出すタチアナさん。これはもしかして、手を取れってコトだろうか? 変態!とか言われて怒られない? まあ膝枕された位だし今更だけど。

 

 恐る恐る手を握ると、優しく立ち上がらせてくれた。そして、手を離した後もゆっくりと誘導してくれている。

 

 ……多分だけど、エスコート的なやつ?

 

 うぅ、こんな待遇なんて慣れないな。

 

 とにかく先ずは情報収集だ。

 

 此処が何処なのか、異世界なのか。もしかして魔物とかいて、魔法とかぶっ放して、冒険者ギルドとかあったら泣ける、嬉しくて。あと、この立派なお胸様をお持ちの"ジル様"って誰なのかも。

 

 え? だ、大丈夫。変なコトなんて絶対にしませんよ?

 

 そんな独り言を内心で呟いたとき、不思議な光景が頭に浮かんで来た。何やらちっこい姿の女の子が両手にロープらしき物を持って近づいて来るのだ、ジリジリと。

 

 多分、ジル様?の記憶にいる誰かだ! 顔は見えないけど間違いない!

 

 うぅ、すっごい怖い! でも可愛い! 大好き!

 

 ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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