綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね 作:きつね雨
ポヨ、ポヨ、ポヨン。
何の知識もないけど、多分下着の所為と思うんだ。薄着だし、タチアナさん?も夜着と言ってたし、補正する様な支えるタイプと違うのかな。だから、この立派なお胸様が歩く度に揺れる。まあアニメみたいに露骨じゃないけど。
あと重い。
更には足元が見え難いのもマジだった。
でも不思議なんだよなぁ。こんなトンデモな状況なのに、何故か体に対する違和感が薄い? 歩いてても"こんなもの"と感じる自分がいる。もしかしてこの"ジル様"の意識や記憶が残っているんだろうか。
待てよ? だとすると単純な異世界転移と言えない……?
後になって「いつもいつもエッチな事ばかり考えて、この変態め!」とか言われたら死ねる。精神的に。事実ですけども。
「ヤッベェ……本当にバレないようにしないと」
思わず独り言を呟いたので、前を歩く美人さんが振り返った。
「何か仰いましたか?」
「い、いえ、何でも」
「そうですか」
しかし、広いお屋敷だなぁ。お庭から中に入ると、ハァ?って言いたくなるエントランスがあった。いや、ロビー? まあとにかく凄い。螺旋階段が左側にあって、その下にはイミフなオブジェで多分お高いやつ。ど真ん中の天井からクリスタルか宝石か、キラキラする飾りがぶら下がってるし。あと見渡す限りにもたくさん扉が見えたけど、一体何部屋あるんだよ此処って。そもそもあの玄関扉がもう普通じゃなかった。分厚い一枚板……どれだけデカい木なんだ。
「あ、あの」
「はい、ジル様」
「やっぱり、このお家って、お、いや私の?」
「その通りです。全て貴女様のお屋敷ですね」
「な、なるほどぉ」
う、うむ。突き抜け過ぎて全然嬉しくない。とにかく色々教えて貰わないと、致命的なミスをしちゃうのは間違いないぞ!
「タチアナさん、あの、聞かせて欲しいことが」
すると、ミルクティー色の髪を揺らし、タチアナさんが体ごと振り返った。
「ジル様。私のことは"タチアナ"と。敬称も敬語も必要ございません。貴女様と私など、立場が違います」
うぅ、そんなこと言われてもなぁ。俺からしたら歳上の綺麗な女性にしか見えないし……そもそも敬語を使わないと、男ってバレちゃうよ。
「えっと、でも難しくて。今は許して貰えませんか?」
「ジル様……記憶がなくとも、貴女は変わりませんね」
「はい?」
聞こえなかったぞ。
「いえ、何でも。申し訳ありません。そうですね、先ずは貴女様自身が誰なのか、気になると思います。私が知っていることだけでもお伝えしなければならないでしょう。ただ、かなり込み入った状況な上に、貴女様自身が特別なお方ですので……」
込み入った、特別……やっぱり普通じゃないのか。まあこの家やタチアナさんの態度から当たり前なんだけど。どう考えてもごく普通の男子学生が憑依していい女性じゃないのだ、このジル様は。ウッヒョヒョーイと喜んでいた数分前の俺をブン殴りたい……絶対、かなりマズイ状況だよなぁ。
「ジル様……不安にさせたことお詫びさせて下さい。何があろうとも、このタチアナは味方でございますから。そして、我がツェツエ王国が全身全霊をもって御守り致します。そう、貴女様が
不安な感じが顔に出てしまったのか、タチアナさんも辛そうな表情に変わった。うーむ、何が何だか分からないけど、美人さんに悲しい想いなんてして欲しくないな。
「だ、大丈夫ですよー! ほら、元気一杯ですし!」
握り拳をフンと突きあげると、お胸様の存在が主張してきた。だって腕が当たるのだよ、うん。お、今更だけど、ジル様って髪も凄く長いんだなぁ。ん? いやいや、綺麗過ぎない、この髪。
思わず手に取ると、全く抵抗を感じることもなく、サラサラと溢れていく。感触もツルツルしてて、今まで感じたこともない触り心地だ。銀色? いや少しだけ輝きが違うし、プラチナってやつか。艶がヤバい。
「フフフ、貴女はやはりジル様ですね。いつも気遣いを忘れず、優しい
「は、はぁ」
美しい。
初めて言われたよ、そんな褒め言葉。
ん? 初めて、だよな?
◯ ◯ ◯
多分、客間、と思う。
どうやら鍵が掛かってる部屋も多いらしく、使える場所は此処とキッチンくらいだったらしい。フカフカのソファらしき何かに座らされ、タチアナさんはお茶を淹れてくれている。
この場所は台所じゃないはずなのに、簡単なキッチンが完備されているのだ。あれが簡易的なら本当の台所はどうなるんだって話だけど。
お、落ち着かない。
タチアナさんの後ろ姿をコッソリ眺めつつ、ソワソワしちゃう。そう、あんな美人と部屋に二人きりなのだ。童貞ど真ん中の俺には刺激が過ぎます。しかしスタイル良いなぁ、タチアナさん。とは言えこの身体もヤバいと思う。でも上からしか見えないし、イマイチ良く分からない。はやく鏡で顔を見てみたいが、ちょい怖い気がするな。せめて普通以上であって欲しい、何となく。
「全て貴女様の物ではありますが、どうぞお召し上がり下さい」
「あ、ありがとうございます」
音もなく置かれたカップは死ぬほど薄い陶器製だ。少し力を入れたら割れそうで恐ろしい。もし弁償しろとか言われたら……いや、コレもジル様のだった。
「精神を落ち着かせる香料も入れています。お疲れならば一度お休み頂き、そのあとに説明致しますが……」
「だ、大丈夫です。良い香りなんで驚いちゃって、ははは」
ジッと眺めて固まったのが疲れた様に見えたのかな。うーん、タチアナさんってばよく見てるなぁ。仕草もとにかく洗練されてるし、ホンモノのメイドさんてこんな感じなのかも。
「どうかご無理だけはなさらないで下さい。違和感などがあった場合、直ぐにお知らせ下さいますようお願いします」
「分かりました」
まあ元気なのは本当なんだけどね。
「それでは、先ずは」
「タ、タチアナさん?」
「はい」
「その、座って貰えると嬉しいなって」
綺麗に真っ直ぐ伸びた背中をそのままに、タチアナさんは起立して説明するつもりらしい。こっちは座らされ、おまけにお茶まで頂いているのに……
「そう言う訳には参りません」
「お願いします」
だって、だって気が散るんだもの! 美人さんが目の前に立って話し掛けられるなんて経験したことない。いや、学校の先生で、授業のときはそうだったかも? んー、思い出せないな。俺はそもそも……あれ? 俺ってどんなヤツだったっけ? 名前は、学校は、あ、あれぇ?
「ジル様、顔色が……」
「だ、大丈夫ですから!」
グッと顔を近づけられて吃驚した。はぁ、心臓に悪い。
しかし、マジで記憶喪失みたいで笑うしかないな。男だった記憶はバッチリあるし、日本がある世界も分かる。でもそれ以上でもないなんてさ。でも変だなぁ、違和感が少ないんだよ。まるで今が当たり前って思っちゃう。ホント不思議だ。
「その、とにかく座ってお話をしたいので」
「……分かりました。では失礼します」
タチアナさんも察してくれたのか、ローテーブルの向かい側に腰掛けてくれた。
「えっと、それで私、私の名前はジル。他には……」
このプラチナな髪が超綺麗な人の名前は"ジル"としか教えて貰ってない。苗字?家名?とかあるのかな。かなりのお金持ちだろうし多分あるよね。そうだ、そう言う意味だと職業も気になる。こんな資産を形成する以上、きっと何かある筈だし。それとも遺産相続的な何かだろうか。
答えが中々返って来ないので、タチアナさんの顔色を伺ってみる。何だか言いづらそう。
「あのぅ、何か……?」
もしかして何かヤバい人なん、この身体の持ち主さん。
「……まず、貴女様のお名前ですが」
「あ、はい」
「正しくはジルヴァーナと。ジルヴァーナ=バンバルボアと伺っております。恐らくある程度略されていて、正式なお名前はもう少し違うでしょう。先程のジルと言う呼び名は、この国に来られた時に自らが名乗られた愛称のようなものかと」
「な、なるほど?」
あのぅ、最初っからややこしくない? えー、バンバル何とかが苗字で、ジルバーナが名前……だよね?
「ジルバーナ、バンバル」
「ジル
微妙に発音が違ったりしたみたい。
「ああ、ジル、ヴァーナ、ですかね」
「はい」
うおぉ、ホントに何も知らないんですねって、憐憫の視線を感じますぅ。まあ実際に知らないんだけども!
「さっき"この国に"って。私は別の国の生まれなんですか?」
「その通りです。今、この屋敷の建つ此処はアートリス。そして、ツェツエ王国の第二の街になります。陸路の要衝であり、同時に王国最大の街でもありますね。ジル様は約八年前にアートリスに来られたそうです」
「アートリス」
んー、しっくりくる感じあるな。やっぱりジル様の記憶とかが影響してるんだろう。それと、まだ街中とか見てないけどデカい街なのかなきっと。世界が違う訳だし、すっごい気になるなぁ。やっぱりファンタジー色が強い? もしそうなら嬉しいぞ。あとで絶対に散歩しよう。
「八年前以前は何をしてたのか知っています? えっと、ジルは」
「いえ、詳しくは……申し訳ありません」
「あ、いやいや! 謝らなくて大丈夫ですから!」
そりゃ別の国にいたなら知らないよね! うん、つまり外国人ってことだ。
「じゃあ国の名前も?」
「いえ、それは知っております」
「おー」
タチアナさん、さっきより言いづらそうなんですが? やっぱりヤバい国とか、或いは密入国とか……うぉぉ、聞きたくねぇ。
「貴女様の、御出身は……バンバルボア帝国、と」
「ん? バンバル?」
「バンバルボア帝国です」
「えーっと……確か私の名前は」
嫌な予感がしますぅ……
「ジルヴァーナ=バンバルボア。貴女様はかの帝国の、ジルヴァーナ皇女殿下で在らせられます」