綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、ぬける

 

 

 

 

 

「こうじょでんか?」

 

 はっはっは、またまたそんな、ねえ?

 

「我がツェツエ王国で言えば、リュドミラ王女殿下と御立場が近いかと。無論帝国においての詳細は分かりませんが……」

 

 いやいや、いくら真面目な顔して言われても其れはないでしょ。だって、おバカな俺でも違和感満載だもの。

 

「王女様と同じなんて、そんな筈」

 

「いえ、間違い御座いません」

 

「そ、そんなのおかしいですよ。だって此処はそのバンバルボアとか言う国じゃないんですよね? なのに、別の国にそんな人が居るなんて」

 

「はい」

 

「あと、此処には護衛の人とか、付き人とか、侍女さんとかも見当たりませんよ? 普通に考えても絶対に不自然で」

 

「まさにその通りです。現在このお屋敷に住まうのは貴女様だけですから」

 

「仮に、仮にですけど、悪い人とかに襲われたり、もし怪我でもしようものなら外交問題にだって発展しますよね?」

 

「間違いなく」

 

 ちょっと! さっきから全肯定してくれてるけど、答えになってませんが!

 

「タチアナさん、こんな時に悪い冗談なんて」

 

「いえ、記憶を失いながらも、さすがジル様と感じ入ります。全てが正に御懸念の通りですから。ただ、冗談や嘘などではありません」

 

 えぇ……? 

 

「じゃ、じゃあ女性一人なのに、何かあったらどうするんですか? 強盗や暴漢に襲われたら」

 

 以前の男の体でも自信ないのに、こんな女性になったら益々危ないじゃん! そもそも喧嘩とか怖くて無理だし、さっき鎧姿の人もいたくらいだから、治安だって日本とは比べものにならないだろうに。

 

「……実は、その疑問の答えを持っております。が、余計に混乱させてしまうかもしれません。先程も言いましたが、ジル様は少し、いえかなり特別な御方なので」

 

 マジでこれ以上聞く? かなりヤバいよ?

 

 そんな風に言ってる気がする……

 

 でも聞かないと気になって仕方ない。

 

「き、聞かせてください。受け止めますから」

 

 多分。

 

「それでは」

 

 

 

 

 

「魔剣」「万能」「超級冒険者」「古竜」「魔王」。他にも色々。

 

 タチアナさんは淡々と"ジル"のことを教えてくれた。

 

 どうやらこの身体の持ち主は、いわゆるチートキャラだったらしい。いや、そんなのをごちゃ混ぜにした別の何かだ、きっと。そもそも竜とか魔剣とか、もうファンタジー世界で確定だし……興味は凄く唆られる上にワクワクするけど、今は嬉しくない!

 

 だって、一つ一つだけでも無茶苦茶で、そんな人が他国の皇女なんだよ? もうホント意味分かんない。大体さ、立場的に他国へ出奔して良いの? もうそれだけでヤバいじゃん。もしかして超御転婆な人だったんだろうか。

 

 目覚めたとき、タチアナさんがあんなに慌てたのも理由が分かった気がする。

 

 うぅ、どんすんのコレ。元のひと、早く帰って来てー!

 

「どうか気を楽に。さあお茶を」

 

 少し温くなったお茶。香りを嗅いだだけで、少しだけ落ち着く。喉を潤すと、タチアナさんが話を続けてくれた。

 

「確認したいのですが、魔力を感知、或いは操る事が出来ますか?」

 

「魔力?」

 

 魔力って、いわゆる、例の、アレですよね?

 

「そうです」

 

 あー、あったらいいなぁ。アニメみたいに魔法をぶっ放したい。きっとホンモノなら出来るのかな。まあ憑依しただけの一般人には多分無理ですけど、ええ。

 

「んー」

 

 おーい、魔力さん何処ですかー? それとも呪文とか唱えないと発動しないタイプかい?

 

 ふと見れば、真剣な顔色でこちらを伺うタチアナさん。あのですね、申し訳ないけど無理っす。

 

「やっぱり良く分かりません。ごめんなさい」

 

「……そうですか。では魔力銀の剣を振るう事も不可能となり、剣技も同様でしょう。つまり貴女様は今、別人の、か弱き一人の女性と考えなければ」

 

 実際に別人ですけど、うん。

 

「では、しっかりと聞いてください」

 

「は、はい」

 

「諸々の事情により、今日からツェツエ王国紅炎騎士団にてジル様を護衛させて頂きます。先ずその御赦しを頂けますか?」

 

「えっと、お願いします?」

 

「ありがとうございます。その上で、大変申し訳ありませんが……お一人で外出などもお控え頂きます。いえ、はっきりと言いましょう。絶対に今の状態を外部に漏らす訳にはいきません。ですので、対策を講じるまではこの屋敷内にてお過ごしください」

 

「え? 外出もダメなんですか?」

 

 お出掛け禁止? でも、街の見学とかしたいんですけど。あと魔法とか見てみたいし。その何とか騎士団の人が護衛してくれたら良いんじゃないの?

 

「危険なのです。貴女様が、超級魔剣が無力である事を知られるのは。お願いします」

 

「ええ……?」

 

 何となく話してる意味は分かるけど、絶対に退屈しそう……

 

 だってこっちにはスマホもゲームも無い訳だし。何して暇つぶしすれば良いの? ん、待てよ? 課題やテストに追われないのは嬉しいかもしれない。つまり、赤点ギリギリに一喜一憂しなくていいと言う事か? ふむ、アリ、だな。

 

「どうか、暫くは」

 

「は、はい」

 

 うー、そんな真剣な顔色で頼まれたら断れないよ。

 

 綺麗な所作で頭を下げるタチアナさん。何の知識もない俺だけど、凄く洗練されてるのが分かっちゃう。うむ、とにかく頼れるのはタチアナさんだけだし、むしろこんな美人さんが助けてくれるなんてラッキーなんだろう。まあ中身がジル様じゃなく俺だってバレなければだけどね! 

 

「では、護衛が到着するまで暫しお待ちください。私はジル様のお召し替えを」

 

 お召し替え? ああ、着替えのことか。そう言えばまだ薄着のままだったよ。季節柄なのか、寒く無いから忘れてた。この格好、細い肩紐が両肩に二本ずつあるだけで、結構な露出だものね。スカート部分は長めだから上半身は、だけど。二本……このパジャマ的な何かと、ブ、ブラ的なヤツかなきっと。だ、ダメだ、変なこと考えちゃ。

 

 それでもつい視線を下げれば、谷間が、谷間が凄く、良いです。

 

 大きいのもあるけれど、何だかカタチも綺麗。肌もとにかく白くて。

 

 丁度タチアナさんが部屋から出ていき、今は一人になった。なってしまった。はい、もう我慢なんて無理です。

 

「お、お、おお……!」

 

 か、感動だ。とにかく柔らかくて、でもちょい弾力がある。当たり前だけど、重みを感じるのが素晴らしい。

 

「なにこれ。もうずっと触ってたい」

 

 現在進行形で童貞な俺にとって、女性の胸を触るなんて夢のまた夢だった。それが今、我が目の前にあるのだ! で、でもそうなると、実際に?

 

「……か、確認するだけだ。ほ、ほら、今は自分の身体みたいなものだし、ちゃんと知っておかないと」

 

 プルプル震える指で下着を摘む。ほ、ほんの少し見るだけですから。両御胸様の頂を、その神秘を! ほらもう少し、もう少しで……

 

「ジル様?」

 

「ひゃい⁉︎」

 

 ひー! タチアナさんだぁ! あばばばばば! ち、違うんですこれは! いや違わないけれども! アカン、これじゃただの痴漢だよ!

 

「どうされました?」

 

 変態的行為に及んでおりました。申し訳ございません。

 

「えっと、その、私って、何なんだろうって、考えてました」

 

 もう言い訳も意味不明だ。

 

「なるほど。ですが、ご安心ください」

 

「え?」

 

 変態痴漢野郎なのに、安心してよいの?

 

「畏れながら申し上げます。確かに現在は記憶を失い、不安を感じられているでしょう。そしてもちろん最初は私もそうでした。しかし今は、間違いなくジル様なのだと少しだけ安心しています。その御心は全く変わっていないですから」

 

 淡い笑顔を浮かべ、タチアナさんは優しく話し掛けてくれた。

 

「で、でも」

 

 エッチな俺と変わってないとか、それはそれでヤバいのではないでしょうか。

 

「きっと、貴女様を知る誰もがそう思います」

 

 そうなん? いや、ジル様ってどんな女性だったんだよ。それとも俺の演技が素晴らしいとか?

 

 ニコリと笑ったあと、タチアナさんが背後に回った。手に持っていたマフラー、いやストールらしきものを肩に掛けてくれる。肌触りがサラサラで気持ち良い。

 

「魔力により鍵が掛かった部屋が多く、衣装は見つかりませんでした。ですので、このストラだけでも」

 

 ストラって言うのか。近い名前だし肩掛け用の羽織りだね、きっと。薄手な作りで暑くないし丁度いいや。

 

 今度は前に周り、ストラを重ねたところをピンで止めてくれた。うん、何から何までありがたい。谷間が隠されて、見えなくなったのは残念だけど。我が変態的行為、バレてないよな?

 

 コトリ。

 

 続いて用意されたのは、鏡だ。

 

 卓上に置くもので、サイズ的には肩辺りまで映るくらい。枠は木製になってて細かな彫刻が施されている。素人な俺でも相当な高級品と分かった。

 

「お(ぐし)を整えましょう。私の櫛しかありませんが、お許しください」

 

 そう、鏡なのだ。

 

「……」

 

 な、何だよコレ……

 

 タチアナさんが何かを言ってる気がするけど、それも随分遠くに感じる。よく"魂が抜ける"って表現、まさに今の俺がそうだろう。そんな内心の独り言さえも遠い。

 

 両眼は透き通った水色。絵の具みたいに作られたものじゃなく、森深い泉みたいに吸い込まれそうな色だ。

 

 長い髪はプラチナのようで、これが人間の一部だとは信じられない。貴金属、宝石、或いは全部? なのに柔らかくて優しい。

 

 睫毛は長く、細い眉も整っていた。鼻筋も精密機械で作られたように真っ直ぐだし、細い顎からやはり細い喉と肩にかけてのラインが綺麗。よく小顔が何とかって聞くけれど、あれって結局はバランスが影響するはず。でも、この女性の前ではバランスとか小顔がとかさえ陳腐な言葉にしかならない。

 

 シミひとつない肌は雪のように白く、触らなくても最高だと確信出来る。口紅なんて塗ってないだろうに、色付く唇は艶やかだった。

 

 もう、もう、メチャクチャだ。

 

 この女性(ひと)は本当に人間なのか? 精霊とか女神とか、人外の何かじゃないの? だって此処は異世界なんだから。

 

「ジル様? 大丈夫ですか?」

 

「コレが……私?」

 

 つい、定番の台詞を言ってしまった。

 

 そう。絶世の、蠱惑的で、妖麗な、美しき人が鏡に映っていた。息が苦しい、心臓が暴れてる。

 

 嬉しい?

 

 いや、むしろ怖くてプルプル震えてしまう。

 

 全く釣り合わない自分が中身になってしまったことに。

 

 

 

 

 




TSらしきもの、書いてみたかったんです。
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