綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね 作:きつね雨
真っ白な壁、青に染まった扉、モザイク模様の石畳、階段やちょっとした坂道まであって、歩くと本当に楽しい。あの小屋は庭いじり用の道具が入ってたけど、かなりメルヘンな感じも非常に良いと思う。
そんなお庭を散歩していたら、発見してしまったのだ。白壁に嵌め込まれた扉を開けた先に。
俺は今、この世界に来て最も興奮しているかもしれない。
いや、エッチな方面じゃないよ? ジル様の谷間とか、タチアナさんの後姿とか、エピィの巨乳だとかも、それはもちろん最高なんだけど。扉の先にある色々を目にしたとき、男ならば絶対にワクワクすると思うんだ。
そう、此処は間違いなく、訓練場!
今までの華やかなお庭と比べ、かなり殺風景だ。一部は芝生だけど、均した土の地面の方には草一本生えてない。壁に寄り掛かるように置かれているのは間違いなく摸擬剣達だろう。離れた場所にはいわゆる"カカシくん"が何本も立っている。
つまり、あの摸擬剣を振り、もしかしたら魔法まで放つ訓練場なのだ。何だか使用感が見えないのは不思議だけど。でも。
「うん、格好良い。やっぱり異世界転生ならコレ! 魔法! 剣! 魔物との戦い! そして可愛いヒロイン! くー!」
此処にあるって事はジルの所有物だよな? そうなれば、今の俺が使っても大丈夫なはず。うむ、もー我慢出来ません!
「ふんふーん♪」
新品同様の摸擬剣を左右から眺めてみる。木製で皆同じデザイン。多分片手剣? いやロングソード? 長さも違うと思うし、両手剣じゃないな。まあ超絶美人さんがデカい剣を操るのも最高ですけれど。とにかく、定番の片手剣キャラなんだろう、ジル様は。うむ、スタンダードも良いですよー。
「では失礼して」
確かグリップ? そこに手を添えて力を込めた。シャキーンと格好良く引き抜くイメージで、持ち上げ、持ち上げ……も、も、持ち上げてぇ!
「ぬぅぅ、お、重い! 何だコレ! 見た目だけ木製で中身は金属とかか?」
はい、全くイメージ通りになりませんでした。
まあ両手で持てば大丈夫だし、頑張れば振れなくはない。ただ、想像していたアニメのようにはならないぞ、残念ながら。
あれぇ? タチアナさんの話だと、この身体は超強いチートキャラだよな? やっぱり俺が憑依した事で弱体化したんだろうか。いやいや、それにしても限度があるよね?
改めて今の自分の腕を観察してみる。
うん、女性らしく細い。肌はやっぱり白くて、パッと見は筋肉の欠片も感じられないな。んー、触ってみたら、何となく? それよりもサラサラの肌触りがヤバい。女の人の肌って男と全然違うんですね、ははは。お、爪も艶々なんだなぁ。
「うーむ、この人ホントに超強い冒険者なの? 鍛えてるように見えないぞ?」
俺には女性の知識も、戦士の知識もないけど、ちょっとおかしいと思う。まさか騙されてる? ほら、鏡で見た容姿も凄い美人のお姉さんなわけで。でもそんな嘘ついてる雰囲気も感じないし、意味もないよなぁ。
「……考えても仕方ないか。とにかくカカシくんと遊ぼう。やっぱりファンタジー世界の訓練場ってロマンだもんね」
頑張って摸擬剣を持ち上げ、ずりずり引き摺りながらカカシくんの前に立った。もうそれだけで興奮は最高潮だ。いきなり才能が開花して、ズバッと斬っちゃったらゴメンね?
「んー、おー、よいしょ!」
上段に構えようとしたら無理だったので、斜めから重さに任せて振り下ろす。はい、カカシくんは無惨にも真っ二つに!
「なるわけないよなぁ……て言うか手が痺れて痛いし。イテテ」
金属がぶつかったみたいな音。そして、予想通りに弾かれ、持てなくなった木剣は地面に転がった。うぅ、突き指とか捻挫とかしてないかな? こんな事で怪我したら、タチアナさんから怒られるかもしれないぞ。
しかしこのカカシ、強すぎ。傷一つ入ってないなんて絶対おかしい。さては異世界トンデモ物質だな?
「はぁ、せっかくのロマンが」
いや、諦めるな。この世界には魔力があるじゃないか。そう、魔法をぶっ放し、カカシくんを驚かせてやる。
先ずは誰もいないか確認! 右よし、左よし、後ろ、前、上!
「例のやつで行くか。ええっと……わ、我は望む、火焔の輝き、紅色の剣、業火よ、ここに現出せよ! フ、フレイムスラッシュ!」
おい、恥ずかしいぞこれ! 前から考えてた一つだけど、真面目に口にするの結構キツイんですが! そもそも何一つ出て来ないし! ねえ、炎は一体何処ですか? このままじゃ中二病患者になっちゃうよ?
「ファイヤボール!」「ウォーターカッター!」「ウインドソード!」「ライトニング!」「他に、他には……」
うぅ、ダメじゃん! 出来そうな雰囲気が全然ないよ! 普通さ、こんなときは目覚めちゃったり、感じたりするものじゃないの⁉︎
「あ、もしかして魔法陣が要るタイプ? あれも超格好良いから好きだけど……そうなると勉強しないといけないやつだ。うげぇ、異世界に来てまでしたくない……」
うー、何だか疲れた。ちょっと休もう。丁度良いところにテーブルと椅子があるし、多分休憩スペースだな。広葉樹っぽい木のそばだし、木漏れ日とかも良い感じ。
テーブルはガラストップってやつだ確か。ステンドグラスみたいになってて、凄く綺麗。椅子も真っ白な蔦で編まれた風のオシャレな感じ。無骨な雰囲気がないのは、やっぱり女性の住む場所だからだろう、うん。
「ふへー」
とりあえず、突っ伏してみる。顔を横向きに下ろしたせいで、頬がちょっと冷たい。
すぐ目の前には、キラキラ光を反射する糸。つまりジルの髪の毛だ。凄く長いから、テーブルの上に広がってる。
「んー」
何となく指で摘み、ジッと眺めてみた。絡まることも、男のようなゴワゴワした感触もない。語彙力も勿論ないから、ただただ綺麗としか言えないのが虚しい。
そうだ。もしかしてアレも出来る筈では? ふとした思い付きだけど、チャレンジは大切だよね。
上半身を起こし、下を見る。そこに鎮座するのは最適なサイズと柔らかさを併せ持つ双丘だ。今はストラがあるので谷間は視界に入らない。けれど意識すればズシリとした重みを感じるのだ。
「し、失礼します」
テーブルの縁に二つの膨らみを乗せてみた。
「おお」
なるほど? こんな感じかあ、ふーん。
だが、正直な話、だから?って思う。気付いたんだけど、このオッパイをテーブルに乗せた姿は、第三者として見ないと意味がない。はぁ、何かの画像で見たときは釘付けになったけどなぁ。まあ新たな経験が出来たと思おう。TSだからこその体勢だし。
でもやっぱり不思議。
ジルは、鏡で見た顔立ちがとんでもなく美人で、スタイルも見る限り素晴らしいと思う。肌だってシットリスベスベサラサラだし、背も高いから有名モデルみたいだ。俺は自分がエロ猿と自覚してる。だから、こんな世界最高レベルの女性に憑依したならば、それはもう人には言えないアレコレを楽しむ筈。
なのに、あまり興味が湧かない? いや、それとも少し違う気がする。だって、タチアナさんの後姿とか、エピィのデッな胸とか興味津々だし? んー、言葉にするのが難しい。
なんて言えばいいだろう? 近いのはゲームで作ったマイキャラとか? やっぱり単純な憑依系じゃないのかなぁ。
「剣も魔法もダメダメ……だもの、はぁ」
転がったままの摸擬剣が目に入って、片付けないといけないと思う。でも、何だか今は動きたくない。
「せめて誰かに先生をお願い出来たら良いなぁ。ほら、綺麗な女の人だったりしたらもう。タチアナさんみたいな眼鏡なんて最高」
ついでに黒のレディーススーツを幻視したとき、何故か目の前に小柄な女の子の座った姿が見えた気がした。ショート髪が可愛い。顔は見えないのに、凄く可愛いって分かった。その娘が言った気がしたんだ。「ジル先生」って。「お姉様」って。
「……?」
何だか胸が少し痛い。そして、幻聴も女の子も消えて行く。
変なの。誰なんだい、キミは。
ぼんやりしていたら、放り出したままの木剣の側にピンク髪の糸目ちゃんが立っているのに気付く。あれぇ? いつから居たんだろう。
そして、大きな胸を揺らしつつ上半身を傾けた。
「あ! それって凄く重いから、気を付け」
ヒョイ。
そんな擬音が聞こえてくるほどに、エピィは軽く剣を持ち上げる。そのままスタスタと歩き、元の場所に戻してくれたのだ。
「えぇ……?」
うっそだぁ。あんな女の子でも簡単に持ち上がるなら、このジルってどれだけひ弱なの? 剣はフラフラで、魔法は全然だし、パワーもヨワヨワ。まあ俺が憑依したのが原因なのは分かるけどさ。
「ジル姉様、怪我、しまし、た?」
「うん?」
「でも、悲しそう、な、顔。してます」
「そうかなぁ? 元気だけど」
エピィは俺の右手を取り、マッサージ?を始めた。もしかして、さっきカカシくんに跳ね返されたのを心配してるのかな。剣も地面に落としちゃったし。
「エ、エピィ?」
「?」
「も、もう、痛くないよ、ね?」
最初はマッサージと思ったんだけど、段々と手つきが変わっていった。はっきり言うと、ナデナデしてるし、鼻息荒い。もしかして匂いも嗅いだりしてない? その証拠に顔が段々と近づいてますが?
「舐めた、ら、治り、ます。任せて」
「も、もう大丈夫! 治っちゃった!」
いま間違いなく舐めるって言ったよね⁉︎ あと、手を離してくれたら嬉しいかも! って、キミ、力強すぎない?
「ジル姉様、身体の力、抜いて、くだ、さい。目を、瞑って、さあ、隅々、舐め、ますか、ら」
「遠慮しますぅ!」
絶対隅々って言った! 手とか関係ないじゃん!
お、おかしい、可愛い巨乳な女の子に舐められるなんて、ある意味で嬉しい筈なのに……でも、浮気なんてしたら怒られる!
ん? んん? 浮気ってなんだ? あー! 頭がグルングルンだぁ!
「……残念、です」
漸く手を離してくれたエピィだけど、何故か視線はこっちの顔を見たまま。すると、スッと俺の耳元に唇を近づけて小声で囁いた。擽ったい。
「
「……はい?」
「フレイム、スラッシュ?」
まままままさか、最初から見てたの⁉︎
「ふふ、真っ赤、プルプル、ジル姉様、可愛い、です」
ぎゃー!
そろそろ物語を動かす予定です。