綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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ターニャ視点です


☆女の子、ちょこっと本性を現す

 応接室からお姉様の寝室まで、かなりの距離がある。

 

 ウラスロさん達にはお茶を入れ直して暫く待つ様にお願い済み。朝日も高い位置に移り、より明るく廊下を照らしてくれている。窓からは時折あの綺麗な庭園が見えて、自分が遠い場所に来た事を思い出させてくれた。

 

 そんな廊下をゆっくりと歩いてると、沢山の事が頭に浮かんでくるんだ。

 

 この世界に来て未だ一か月も経っていないけど色々あったな。異世界だし、女の子なったのにも驚いたけど……やっぱり一番はお姉様だよね。

 

 今から起こしに行く相手、ジル……本名はジルヴァーナらしいけど……お姉様の存在は他の事など忘れさせた。

 

 ゴブリンらしき緑色の怪生物に襲われた時、目の前に現れた人。

 

 あの時の衝撃は今も覚えているし、毎日お姉様の姿を見てソレを思い出したりする。

 

 陳腐な言い方しか出来ないけど、あんな綺麗な人は前世を含めても見た事は無い。テレビやネットの世界を含めても、だ。

 

 最高の才を持って生まれた子を更に最高の環境で純粋培養し、無駄を削ぎ落とした美の結晶。どんな美人でも一つ位は欠点があるし、ソレが愛嬌にも繋がるけど……冗談でも無く、そんなモノは全く存在しない。

 

 それ程の美貌を持てば、性格や立ち振る舞いにも影響を及ぼす筈なのに。実際前世では女性とは男性に理解出来ない存在でもあった。

 

 だけど、お姉様は違う。必死になって綺麗であろうと、素敵な女性であろうとしてる。そこに居るだけで世界を変えてしまう程の美の結晶なのに。

 

 どう言えばいいだろう?

 

 例えるなら、お姉様は一分の狂いも無い真円。世界にたった一つ、誰が見ても綺麗な丸を疑う事すらしない。なのにお姉様は三角や四角である事を恐れて真円に成る努力をしてる。もう完成されてるのに。

 

 それが可笑しくて、可愛いらしい。

 

 ただ座って待てば良いのに、周りが放っては置かないのに……一生懸命走り回って転んだりしてる。不器用なのにね。

 

 でも不思議だったけど、直ぐにわかった。

 

 今は可能性じゃなく確信してる。

 

 お姉様は僕と同じ転生者。赤ちゃんに転生した日本人。理由は沢山あるし最初から疑わしかったけどね。

 

 まず僕を助けてくれたタイミングが出来過ぎ。魔素を感知して空間の異変を見たってウラスロさんに言ってたけど……それなら僕の転移を最初から見てた事になる。

 

 言葉の使い方が不自然。異世界言語の筈で、自動翻訳などされない単語に違和感を覚えてない。トマトとかキューブ、この世界では、とかお姉様は気付かなかった。

 

 とにかく存在がチート過ぎ。設定盛り盛りで、人外の美貌と最強の力。

 

 そして何より、物語でありそうなイベントを頑張って起こす為に行動してる。まあ、バレバレで反撃は簡単。お人好し過ぎて上手くいくわけないのにね。

 

 だからお姉様?

 

 これからも一緒に楽しみましょう。

 

 さあ、お客様がいらしてますよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お姉様の居室の扉をノックすると軽くて柔らかな音がする。この音色好きだな。

 

「お姉様、そろそろお昼です。起きて下さい」

 

 最近、残念さに磨きがかかってるよね。

 

「お姉様、入りますよ?」

 

 魔素を操作っと……

 

 うーん……ただ寝てるだけなのに綺麗なんだよなぁ。白金の髪が広がって、まるで絵画みたい。暫く眺めてたいけど、面白い事が待ってるから我慢。

 

「お姉様、もうお昼です。今日は寝て過ごすんですか?」

 

 イベントが向こうから来てくれましたよー。

 

「ん、あぁー……夢か……最近ターニャちゃんの登場率高いなぁ」

 

 夢の中でも遊んでるらしい。

 

「……お姉様、夢の中まで変な事しないで下さい。登場率ってなんですか?」

 

 うわ、ムニャムニャって……本当に言う人いるんだ……

 

「大事な話があるので起きて下さい。その後昼食を取りましょう」

 

 誰がとは言いません、嘘じゃ無いでしょ?

 

「んあ? アレ? ターニャちゃんがまた現れた? さっきは逃げられたけど、今度こそ……」

 

「……何が今度こそですか。はぁ……仕方がないですね、お姉様が悪いんですよ?」

 

 義務は果たしたので遊ばせて貰います。

 

 集中すると魔素のキューブが見える。寝ぼけてるのに、魔素は相変わらず綺麗にお姉様と踊ってる。

 

 魔素を動かすコツは目標の魔素以外にも気を配ること。前に動かしたい魔素に集中するだけじゃなく、その周辺を後ろに動かせば良い。そうすれば魔素は思う様に反応してくれる。

 

 耳や細い首、敏感な脇腹、綺麗な太ももと膝裏、そして足の裏もオマケしましょう。足りない分は周りから集めてっと。

 

 最初はゆっくり。

 

「ん……う、ん。あ……い、いや……」

 

 ちょっとだけ動きを複雑に。

 

「う、うぅっ……あうっ……ダ、ダメ」

 

 では、起きて下さいね?

 

「……う、うきゃっ!! ひ、ひゃーっっっ!! なに!? なんなの!?」

 

 見事に飛び上がり、転げ落ちたベッドの淵から頭を出したお姉様。キョロキョロと寝惚け眼で周囲を見渡せば、当たり前に僕が立っている。

 

「お早うございます、お姉様。もうお昼前ですけど」

 

 まだ夢か現か区別がついてないのかな? 僕に対しては珍しい上目遣いで、ジッと目を合わす。

 

「ターニャちゃん? お風呂は?」

 

「……お風呂なんて入ってません。夢まで文句は言いませんが、節度を持って下さいね?」

 

 まだお風呂イベント諦めてないのか……流石に恥ずかしいから、やめてほしいのになぁ。

 

「ターニャちゃん、買い物は終わったの?」

 

 漸く目が覚めたのか、姿勢を正してキリリと顔を整えたお姉様。髪には寝癖すらなく、スラリと伸びる脚が眩しい。涎の跡はあるけど。

 

 涎跡を残してキリリとされても滑稽なだけ……なんだけど、やっぱりそれすら綺麗なんだから笑うしかない。

 

「はい、さっき帰りました。お姉様? お茶を入れますから、着替えたら応接室に来て下さい。少しだけ話したい事があるんです」

 

「ターニャちゃんが話したい事!? なら急ぎましょう! 着替えなんて後でいいから!」

 

 滅多に僕から相談したりしないから何故か嬉しそう。普段からもっと我儘にしてって言われるからなぁ。

 

「流石に着替えた方がいいと思います。そんな格好は良くないのでは?」

 

 今のお姉様は裾の長いTシャツ状の服を被っただけ。薄手の白だから水色の下着も透けてるし、太ももや腕の素肌が眩しい。涎の跡は気付いてないみたい。

 

「いいからいいから! ターニャちゃんからの話なんて中々無いんだから、気が変わったら大変!」

 

「ちゃんと注意しましたからね?」

 

 うん、警告はしたからね? まあ、リタさんは問題ないしウラスロさんはお爺ちゃんだし。流石にクロさんとか居たら無理矢理でも着替えさせるけどね。

 

 流石お姉様、イベントに強い。

 

「さあさあ、行こ!」

 

 グイグイと僕の肩を押し、廊下を歩き出したお姉様。応接室までの短い旅が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数メートル先に見えた扉が開く。

 

 まだ扉に到着する前に開けたのはお姉様だ。立ち止まる事もなく応接室に入る僕たち。因みに二人が座る応接セットは背後側にあり、振り返らないと分からない。お願いした通り静かに待ってくれてるみたいだ。

 

 普段のお姉様なら気付くだろうけど、寝起きだし家の中だから油断してる。未だに僕の両肩に手を置き……と言うか殆ど抱きついている。

 

「ジルさん、歩き難いので離れて下さい。それに、お茶を入れますから危ないです」

 

 注意したのにお姉様は柔らかい胸を更に押し付けて、顎を僕の頭に乗せる。気持ち良いけど恥ずかしいんだよね……一応僕も男だから。

 

「ええーー。もし火傷しても治癒魔法で治るし、ターニャちゃんの入れたお茶なら火傷しないかも」

 

「そんな訳ないでしょう……? それになんでジルさんは何時も抱きついてくるんですか?」

 

 更にギュッと力を込めるお姉様。おまけに子供みたいにイヤイヤと首を振った。

 

「……ターニャちゃん……何か怒ってる? も、もしかして、寝坊したから? あ、明日からはちゃんと起きます! ね?約束するから……」

 

「なんで怒ってると思うんですか?」

 

「だって……さっきからジルさんって他人行儀に……何時もみたいに呼んでくれないから」

 

 はい、引っかかった。

 

「何時も……? 良く分かりません。なんて呼んで欲しいんですか?」

 

「うぅ、やっぱり怒ってるじゃん……意地悪しないで、ね?ターニャちゃん」

 

「意地悪なんて……ジルさんが望むなら、どんな呼び方だってしますよ? だから教えて下さい」

 

 少しだけ見上げて下からお姉様の顔を見ると、もう微妙に頬が赤く染まってる。ふふ、可愛いなぁ。

 

「えっと……お、お姉様って、何時もみたいに……」

 

 耳まで赤くなってる。あんまりすると可哀想だし、これくらいにしようかな。

 

「分かりました、お姉様。では……大事な話があるので、座ってくれますか?」

 

 次の動きは予想済みなので、お姉様の魔素を出来るだけ逃して邪魔もしておく。油断してるお姉様なのに、殆どの妨害は弾かれたけど目的には十分。特に足回りは重点的にっと。

 

「はー……い、ぃ………あ……あぅ……」

 

 漸く僕から離れたお姉様は、振り返って良い反応をしてくれた。うーん、最高。

 

 背中から見ても、プルプルして耳は限界まで真っ赤っか。後退りしようにも、背後には障害物……つまり僕。優しく背中を押して上げよう。

 

「お姉様? 紹介しますね。私のお友達で、ウラスロさんとリタさんです」

 

 腰に回した手は離さないで、お姉様の前に回り込む。顔が見たいし。

 

 わぁ……赤……肌が白いから目立つんだな。細い腰からはプルプルが伝わってきて楽しい。

 

「ご存知だとは思うんですが、お姉様にちゃんと紹介したくて……お姉様?」

 

 そろそろかな? 日頃の練習が試されるぞ。

 

 瞬時に魔力強化を全身に施した……筈のお姉様は……

 

 ベチャッ……

 

 見事なまでに床の柔らかいカーペットに倒れた。服の裾が捲れ上がり、可愛らしい水色の下着が丸見えになる。お尻のカタチは崩れてないのが凄い。潰れたカエルの様な姿はあまりに憐憫を誘い、裾をそっと直してあげた。

 

 残念……魔力強化で逃げ出そうとするのは予測済みでした。足回りの強化は阻害してます。普段の練習は無駄じゃなかったね。魔力銀の服や下着じゃないからバラバラになりそうだけど、その前に止めたから大丈夫。僕の優しさです。と言うか混乱してたんだな、きっと。可愛いなぁ。

 

「お姉様、お友達に挨拶もしないで逃げ出すのは良くないです。ほら、お二人も茫然としてるじゃないですか」

 

 最早諦めたのか、ゆるゆると起き上がったお姉様は一生懸命に服の裾を下に引っ張っている。恥ずかしいのは分かるけど、その仕草の方がクルものがあるのにな。

 

「……ようこそ。少しだけ失礼します、着替えて来ますので」

 

 全く二人を見ずに、真っ赤なまま扉に向かうお姉様。余りの動揺に扉の魔力を抜くのが上手くいかないのか、暫くガチャガチャとして部屋から出て行った。

 

 扉が閉まるのを見て、二人の方に振り返る。

 

 ウラスロさんは指を顳顬にグニグニと抑えていて。リタさんは最高の出し物を見た!とキラキラと目を輝かす。

 

「ターニャ……色々と言いたい事があるが、流石に可哀想じゃないか? 最後、涙目だったぞ……」

 

「うーん……でも普段から私達はあんな感じですよ? お姉様は照れ屋さんなんです」

 

「照れ屋ってお前……」

 

 おや? リタさんがブルブルと震え出したぞ?

 

「さ」

 

「さ?」

 

「サイコーじゃないですか!? ジルさんがあんなに可愛かったなんて! あの美貌で超級……誰もが遠い人だと思ってるのに、赤い顔でプルプルなんて! サイコーじゃないですか!!」

 

 ってか下着も可愛いーし!と、拳を握り締めるリタさん。

 

 この人サイコーを二回言ったぞ。

 

「リタさん……わかりますか? そうなんです、サイコーなんです。お姉様の可愛らしさは留まることを知りません」

 

 僕たちはガッチリと握手を交わす。

 

 やはりお姉様を弄る会に入って貰いましょう。

 

「お前ら……」

 

 呆れ顔のウラスロさん。いいですね……冷静なウラスロさんが居れば、益々お姉様が際立ちます。西瓜に塩的な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カチャ……

 

 談笑していた僕たちに背後の扉が開く音がした。

 

 しかし幾ら待ってもお姉様は入って来ない。ノブを持つ綺麗な手は見えるから、其処にいるのは間違いないね。

 

 トコトコと扉まで歩き、その手を取って引っ張り出してあげる。

 

 お姉様は深くソファーに腰掛けるのを考慮してか、パルメさんの店で買った七部丈のパンツスタイルだ。デニム生地にそっくりな其れは、見事なスタイルを存分に表している。ローヒールのサンダルと白のシャツ、髪はそのまま流していた。

 

 僕は少しだけ抵抗を覚えるお姉様を、二人のいるソファーまで連れて行く。終始無言でチラチラと二人の様子を伺っている様だ。

 

「はい、お姉様? 此方にどうぞ。お茶を用意しますから待ってて下さい」

 

 なかなか離さない手を引き剥がして、僕は席を離れた。

 

 もう……本当に可愛いな。変な気持ちになっちゃうよ、全く。

 

 さて、美味しいお茶を用意しよう。お姉様の故郷バンバルボアの茶葉、いれ方も分かってきたし。

 

 まだ、イベントは続いてるからね!

 

 

 

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