綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね 作:きつね雨
ふっふっふ。
どうよ! この超格好良くて、最高に美しい俺は!
くくく、入った時から全員の目は釘付けだ。
魔剣は孤高の女冒険者。清楚でありながらも隠す事の出来ない美貌と色気。しかし上品さは忘れず、高嶺の花である事は変わらない。
今日の服はターニャちゃんに教えた時と違い、露出も抑えた真面目系の女教師。チラリもないから期待すんなよ?
まあ、このジルから目を離せなくなるのは仕方がない。俺も鏡の前で散々確認したからな。なので、見詰めるのは許可しようではないか!
魔素の知識は間違いなく役に立つから、しっかりと聞く様に。魔狂いなんて相手にしちゃ駄目だよ? あのジジイなんて……いや考えるのはよそう、うん。
「では、皆様にとっては当たり前の基本だとおもいますが……再度確認したいと思います。魔法とは? どなたかお願い出来ますか? はい、そちらの方」
おっ、今の先生っぽくない?
適当にやったけど才能あるかも。もしかして俺の
なんか楽しくなってきたぞ!!
よし、お前ら! 先生について来い!
……なんてね!
「では、今日の講義はこれで終わります。明日は講義を踏まえて、従来の魔法を改変させる方法を実践しますので、良ければ皆様で考えて来て下さい。もう一度言いますが、可能性に限界はありません」
お疲れ様でした……そう言って高座から降りる。
いや、まじでお疲れ様だよ……俺が!
質問は途切れないし、誰一人席を立たないしさぁ。もう自由にしていいって言ったよね? 予定時間を大幅に過ぎました。うぅ、これじゃあターニャちゃんに会いに行けないよー。
そもそも冒険者が自分の戦い方を全部明かすわけないじゃん! 質問をお気軽にどうぞってのは社交辞令ですからね? 遠慮って知らないの? はぁ……
「ジル、ありがとう。俺も参考になった」
「私も皆様の意見を聞けて勉強になりました。殿下……予定時間を超えてしまって……申し訳ありません」
「ジル……詫びるのは此方だ。質問時間は明日以降制限するよう考えておく」
「はい」
「晩餐は少しだけ遅らせるから安心してくれ。着替えもあるだろうし……鐘が三回鳴ったら迎えを寄越すから、それまではゆっくりしたらいい」
「お気遣いありがとうございます」
「……では、また後で」
おお……時間が少し出来たぞ! 流石に身綺麗にしないとアレだから風呂は入る。しかし、魔力強化を行えば、ターニャちゃんの顔くらい見に行けるだろう。禁断症状が出る前にせめてナデナデさせてね?
「ん?」
魔素感知に引っかかってるな? 後ろか?
「あの……何かありましたか?」
見れば此方から視線を外さずに見ている男がいた。竜鱗の一人なのは間違いない。何となく見覚えがあるし。かなり神経質そうで、背もヒョロリと高くて痩せてる。ぱっと見は学者にも見えたり。魔素は……眼か。何かの視覚系の
「一言礼を言いたくてね。先程の講義は大変参考になった。限界を感じていた力が解き放たれた気がするんだ」
「視覚、ですか?」
「やはり分かるのか。素晴らしいな」
「あっ……すいません、不躾に」
初対面の人の才能を明け透けに話したりするもんじゃないよな。気にしてたり、内緒だったりするかもだから。
「いや、構わない。私はミケルと言う。竜鱗には二年前に入団したから貴女とは初めてだな」
「ミケル様。ジルと申します」
「ツェイス殿下の寵を受けた貴女だし、隠す事でもない。私の父はペラン=ツェン=チルダ。私はその息子だ。ツェイス殿下とは遠い親戚になる」
だから瞳が紫がかってるのか……ツェツエの系譜なんだな。しかし、かなりの大物じゃん!
「チルダ公爵様の……失礼しました」
あまり詳しくないけど司法を司る名家だよな? 黒い噂もある大公爵家だ。て言うか寵を受けたりしてませんよ!? 部下じゃないし、アッチの意味でしょ……やめてくれぇ。
「畏まらないでくれ。君は恩人だ。先程も言ったが私は生まれ変わったよ。色々な意味で」
「は、はい。あの……」
「ん?」
「寵を受けたとは、誤解を生みますので……私は一人の冒険者に過ぎません」
「そうなのか? 殿下の想い人だと」
「ち、違います!」
昔も否定したし! チルダ公爵なら知ってるはずだよ?
「ふむ……ならば、私が君に愛を囁いても許されるんだな? 正直なところ心を奪われてしまった。二人で話をしてみないか? 明日にでもどうだ?」
むぅ……また一人ジルの魅力にやられてしまったか。ごめんね、超絶美人で。
「光栄ですが、明日はリュドミラ様に御招待頂いておりまして……申し訳ありません」
しかし残念でした。明日は王女様とデートだし。ありがとう、リュドミラちゃん! よっ!乳なし聖女様!
ところで"王女様とデート"って凄いパワーワードだよね。やはり間違いなくモテ期が来たのだ、ムフ。
俺の断りに何かを察してくれたのか、ミケル様はあっさりと退いてくれた。
「残念だ。またの機会を楽しみにしてる。それと明日も宜しく頼む」
「はい!」
助かった……ミケル様って見た目はアレだけど優しいんだな。神経質そうって考えてごめんなさい!
時間が押してるし、急ごう。
待っててね、ターニャちゃん。
「……本当に残念だよ……ジル」
ん? なんか聞こえたような……気のせいかな? うわぁ……ミケル様ってばまだ見てるよ。まぁ、ジルの後姿は最高だから仕方がないよな。でも才能を使ってまでして見るなよ……魔素感知で何となく分かるんだからな?
視覚系か……まさか透視とかじゃないよな?
……怖っ!!
ターニャちゃんに慰めて貰おう!
「ありがとうございます」
あっちか……迷っちゃったよ。偶然ジーミュタス家の人がいてくれて良かった。時間がないけど、顔だけでも見ないとね。
「うーん、此処かな?」
いきなり入って驚くターニャちゃんも見たいけど、万が一間違ってたら恥ずかしいし。ノックしよう。
「……はい。どちら様ですか?」
ターニャちゃんの声だ! でも元気ない……いや警戒してるのかな? やっぱり初めての土地だしストレスなのかも。うぅ、ごめんね……なんなら俺の胸に飛び込んで来ていいよ? まあ、ターニャちゃんってデレてくれないから無理だろうけど。
「ターニャちゃん? 私、ジルだよ」
すると凄く慌てた様子でバタバタと音がして、ガチャガチャと鍵を開けてくれた。一体いくつ鍵があるんだろ? ジーミュタス家が目を光らせてるし、そんなに危険は無いと思うけどなぁ。
「……お姉様」
凄くホッとしたターニャちゃん。おやおやぁ? もしかしてお姉様に会えなくて寂しかったのかなぁ? なんてね!
部屋は……へぇ、中々広いな。ちょっとした旅館並みだよ。寝室は別れてるし、寛げるようにソファらしき物もある。よく見えないけどベランダと大きな窓。流石に俺が泊まってる部屋には敵わないけど、一人なら十分だろう。
「いきなり一人にさせてごめんね? 不便はない?」
「よくして頂いてます。アリスお嬢様も先程……少しだけお話もしました。色々と教えて貰ったので、勉強になりましたから」
「そうなの?」
アリスちゃんてば真面目だなぁ。縦ロールに惑わされてたけど滅茶苦茶に良い子だよ。クロの奴、いったい何が不満なんだか。
「お姉様、お仕事は?」
「さっき終わったよ? 今日は座学だから話してばかりで長くなっちゃった」
「そうですか……お疲れ様です。何か飲みますか?」
「ふふ、ありがとう。でも、この後すぐに行かないとだから……」
「この後、すぐ?」
「え? あ、うん」
あれぇ? ターニャちゃんが不満顔……ま、まさか俺と一緒にいたいとか!? まあ、そんな訳ないけどさぁ。どうしたんだろう?
「ご飯を一緒にするんだと思ってました」
残念そうだぞ……な、何が起きているんだ……
本当にモテ期が来たのか!?
ターニャちゃん、デレたの!? うぅ……しかし王家の招待を無視なんて出来ないし、此れが板挟みか。モテるってツラいなぁ。
「ごめんね。この国の王様から招待されてるから……」
「王様……では
「そうだけど……ターニャちゃん?」
「明日は、明日なら」
「明日の夜もリュドミラ王女殿下と約束があって」
「リュドミラ王女殿下……ツェイス殿下の?」
「妹で……」
「じゃあ明後日は?」
「えっと……その日はクロエ様……覚えてるかな、紅炎騎士団の団長さんで」
「……覚えています。夜は一緒に過ごせないと?」
おかしいぞ……ターニャちゃんは最高の美少女だけど、どちらかと言えばツンなのだ。デレは殆ど見た事ないし、甘え上手な子じゃない。
「もしかして何かあったの? 何か心配事あるならお姉さんに言ってみて?」
「それは……お姉様が」
ターニャちゃん言いづらそう。なんだ? 本当に何かあったのか!?
「もしかして……誰か悪い奴がいたの!? クロに任せてたのに……大丈夫よ、私がやっつけてあげるから! クロもお仕置きよ!」
可愛いターニャちゃんを不安顔にさせるとは、絶対に許さん!!
「ち、違うんです! クロさんは悪くなくて……悪い人がいたりでもありませんから」
「本当に? 私に心配させたりしたくないとか、無しだからね?」
「そうではなくて、心配なのはお姉様というか……」
「私?」
ん? なんだなんだ?
「あの……私に何か話さないといけない、そんな事はありませんか?」
ターニャちゃんの上目遣い可愛い。いやいや、何か探る様な視線は一体……
「な、なにかな?」
「お姉様の本心、心の中です」
ま、まさか……
リュドミラ様やクロエさんに誘われて喜んでる俺に気付いた!? そ、それとも夢の中でセクハラしたりした事がバレたとか!? ターニャちゃんは俺の嫁(予定)ってニヤニヤしてたのが……お、落ち着け……いくらなんでも超能力者じゃないんだから……欲望は上手に隠してるし、バレる訳ない!
「本当は大好きなのに、我慢してる……自分の強い願望や気持ちを隠してしまう、違いますか?」
ひ、ひぃーーー!?
バ、バレテルーーー!?
どどどどうする!?
「そ、そんな事は……」
「もし気を使っているのなら……遠慮しないで下さい。私なら大丈夫ですから」
「えっ……? 大丈夫って」
「お姉様の幸せを諦めないで欲しいんです」
何かを決意したようにターニャちゃんは俺を見上げた。其処には強い意志がある。
「幸せ……」
じゃ、じゃあ……ハーレムOKなのか!?
アリスちゃん、クロエさん、リュドミラ様、そして本妻をターニャちゃん、其れを許してくれるの!?
な、なんて心の広い……ターニャちゃんは天使だったのか……
「私はお姉様の意思に従います。だから……ツェイ」
「ターニャちゃん! もう言わなくていいよ……分かったから、私は幸せ者だね」
ん? しかしツェイってなんだろ?
まっいっか!! 本妻からハーレムの許可が出るなんて……夢じゃないよな?
「お姉様……お幸せに」
ゴーン……ゴーン……ゴーン……
「あっ……鐘の音。ごめん、ターニャちゃん、何か言った?」
「……いえ」
「そう? じゃ、また話そうね? 私、行かないと」
「はい。お姉様、
「ターニャちゃん、ありがとう!」
やったーーー!! やっぱりモテ期が来たんだ!
ふと見れば何処か悲しげなターニャちゃん。そうか……例えハーレムOKでも複雑な心境なのかも。大丈夫だよ? ターニャちゃんが一番だからね!
よし、急いで準備して行かないと。
ご飯だ!