綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

38 / 130
お姉様、初日を終える

 

 

 

 

 ふっふっふ。

 

 どうよ! この超格好良くて、最高に美しい俺は!

 

 くくく、入った時から全員の目は釘付けだ。

 

 魔剣は孤高の女冒険者。清楚でありながらも隠す事の出来ない美貌と色気。しかし上品さは忘れず、高嶺の花である事は変わらない。

 

 今日の服はターニャちゃんに教えた時と違い、露出も抑えた真面目系の女教師。チラリもないから期待すんなよ?

 

 まあ、このジルから目を離せなくなるのは仕方がない。俺も鏡の前で散々確認したからな。なので、見詰めるのは許可しようではないか!

 

 魔素の知識は間違いなく役に立つから、しっかりと聞く様に。魔狂いなんて相手にしちゃ駄目だよ? あのジジイなんて……いや考えるのはよそう、うん。

 

「では、皆様にとっては当たり前の基本だとおもいますが……再度確認したいと思います。魔法とは? どなたかお願い出来ますか? はい、そちらの方」

 

 おっ、今の先生っぽくない?

 

 適当にやったけど才能あるかも。もしかして俺の才能(タレント)は教師では?

 

 なんか楽しくなってきたぞ!!

 

 よし、お前ら! 先生について来い!

 

 ……なんてね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、今日の講義はこれで終わります。明日は講義を踏まえて、従来の魔法を改変させる方法を実践しますので、良ければ皆様で考えて来て下さい。もう一度言いますが、可能性に限界はありません」

 

 お疲れ様でした……そう言って高座から降りる。

 

 いや、まじでお疲れ様だよ……俺が!

 

 質問は途切れないし、誰一人席を立たないしさぁ。もう自由にしていいって言ったよね? 予定時間を大幅に過ぎました。うぅ、これじゃあターニャちゃんに会いに行けないよー。

 

 そもそも冒険者が自分の戦い方を全部明かすわけないじゃん! 質問をお気軽にどうぞってのは社交辞令ですからね? 遠慮って知らないの? はぁ……

 

「ジル、ありがとう。俺も参考になった」

 

「私も皆様の意見を聞けて勉強になりました。殿下……予定時間を超えてしまって……申し訳ありません」

 

「ジル……詫びるのは此方だ。質問時間は明日以降制限するよう考えておく」

 

「はい」

 

「晩餐は少しだけ遅らせるから安心してくれ。着替えもあるだろうし……鐘が三回鳴ったら迎えを寄越すから、それまではゆっくりしたらいい」

 

「お気遣いありがとうございます」

 

「……では、また後で」

 

 おお……時間が少し出来たぞ! 流石に身綺麗にしないとアレだから風呂は入る。しかし、魔力強化を行えば、ターニャちゃんの顔くらい見に行けるだろう。禁断症状が出る前にせめてナデナデさせてね?

 

「ん?」

 

 魔素感知に引っかかってるな? 後ろか?

 

「あの……何かありましたか?」

 

 見れば此方から視線を外さずに見ている男がいた。竜鱗の一人なのは間違いない。何となく見覚えがあるし。かなり神経質そうで、背もヒョロリと高くて痩せてる。ぱっと見は学者にも見えたり。魔素は……眼か。何かの視覚系の才能(タレント)かもね。

 

「一言礼を言いたくてね。先程の講義は大変参考になった。限界を感じていた力が解き放たれた気がするんだ」

 

「視覚、ですか?」

 

「やはり分かるのか。素晴らしいな」

 

「あっ……すいません、不躾に」

 

 初対面の人の才能を明け透けに話したりするもんじゃないよな。気にしてたり、内緒だったりするかもだから。

 

「いや、構わない。私はミケルと言う。竜鱗には二年前に入団したから貴女とは初めてだな」

 

「ミケル様。ジルと申します」

 

「ツェイス殿下の寵を受けた貴女だし、隠す事でもない。私の父はペラン=ツェン=チルダ。私はその息子だ。ツェイス殿下とは遠い親戚になる」

 

 だから瞳が紫がかってるのか……ツェツエの系譜なんだな。しかし、かなりの大物じゃん!

 

「チルダ公爵様の……失礼しました」

 

 あまり詳しくないけど司法を司る名家だよな? 黒い噂もある大公爵家だ。て言うか寵を受けたりしてませんよ!? 部下じゃないし、アッチの意味でしょ……やめてくれぇ。

 

「畏まらないでくれ。君は恩人だ。先程も言ったが私は生まれ変わったよ。色々な意味で」

 

「は、はい。あの……」

 

「ん?」

 

「寵を受けたとは、誤解を生みますので……私は一人の冒険者に過ぎません」

 

「そうなのか? 殿下の想い人だと」

 

「ち、違います!」

 

 昔も否定したし! チルダ公爵なら知ってるはずだよ?

 

「ふむ……ならば、私が君に愛を囁いても許されるんだな? 正直なところ心を奪われてしまった。二人で話をしてみないか? 明日にでもどうだ?」

 

 むぅ……また一人ジルの魅力にやられてしまったか。ごめんね、超絶美人で。

 

「光栄ですが、明日はリュドミラ様に御招待頂いておりまして……申し訳ありません」

 

 しかし残念でした。明日は王女様とデートだし。ありがとう、リュドミラちゃん! よっ!乳なし聖女様!

 

 ところで"王女様とデート"って凄いパワーワードだよね。やはり間違いなくモテ期が来たのだ、ムフ。

 

 俺の断りに何かを察してくれたのか、ミケル様はあっさりと退いてくれた。

 

「残念だ。またの機会を楽しみにしてる。それと明日も宜しく頼む」

 

「はい!」

 

 助かった……ミケル様って見た目はアレだけど優しいんだな。神経質そうって考えてごめんなさい!

 

 時間が押してるし、急ごう。

 

 待っててね、ターニャちゃん。

 

 

 

「……本当に残念だよ……ジル」

 

 

 

 ん? なんか聞こえたような……気のせいかな? うわぁ……ミケル様ってばまだ見てるよ。まぁ、ジルの後姿は最高だから仕方がないよな。でも才能を使ってまでして見るなよ……魔素感知で何となく分かるんだからな?

 

 視覚系か……まさか透視とかじゃないよな?

 

 ……怖っ!!

 

 ターニャちゃんに慰めて貰おう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 あっちか……迷っちゃったよ。偶然ジーミュタス家の人がいてくれて良かった。時間がないけど、顔だけでも見ないとね。

 

「うーん、此処かな?」

 

 いきなり入って驚くターニャちゃんも見たいけど、万が一間違ってたら恥ずかしいし。ノックしよう。

 

「……はい。どちら様ですか?」

 

 ターニャちゃんの声だ! でも元気ない……いや警戒してるのかな? やっぱり初めての土地だしストレスなのかも。うぅ、ごめんね……なんなら俺の胸に飛び込んで来ていいよ? まあ、ターニャちゃんってデレてくれないから無理だろうけど。

 

「ターニャちゃん? 私、ジルだよ」

 

 すると凄く慌てた様子でバタバタと音がして、ガチャガチャと鍵を開けてくれた。一体いくつ鍵があるんだろ? ジーミュタス家が目を光らせてるし、そんなに危険は無いと思うけどなぁ。

 

「……お姉様」

 

 凄くホッとしたターニャちゃん。おやおやぁ? もしかしてお姉様に会えなくて寂しかったのかなぁ? なんてね!

 

 部屋は……へぇ、中々広いな。ちょっとした旅館並みだよ。寝室は別れてるし、寛げるようにソファらしき物もある。よく見えないけどベランダと大きな窓。流石に俺が泊まってる部屋には敵わないけど、一人なら十分だろう。

 

「いきなり一人にさせてごめんね? 不便はない?」

 

「よくして頂いてます。アリスお嬢様も先程……少しだけお話もしました。色々と教えて貰ったので、勉強になりましたから」

 

「そうなの?」

 

 アリスちゃんてば真面目だなぁ。縦ロールに惑わされてたけど滅茶苦茶に良い子だよ。クロの奴、いったい何が不満なんだか。

 

「お姉様、お仕事は?」

 

「さっき終わったよ? 今日は座学だから話してばかりで長くなっちゃった」

 

「そうですか……お疲れ様です。何か飲みますか?」

 

「ふふ、ありがとう。でも、この後すぐに行かないとだから……」

 

「この後、すぐ?」

 

「え? あ、うん」

 

 あれぇ? ターニャちゃんが不満顔……ま、まさか俺と一緒にいたいとか!?  まあ、そんな訳ないけどさぁ。どうしたんだろう?

 

「ご飯を一緒にするんだと思ってました」

 

 残念そうだぞ……な、何が起きているんだ……

 

 本当にモテ期が来たのか!?

 

 ターニャちゃん、デレたの!? うぅ……しかし王家の招待を無視なんて出来ないし、此れが板挟みか。モテるってツラいなぁ。

 

「ごめんね。この国の王様から招待されてるから……」

 

「王様……では()()()()殿()()()()()なんですか?」

 

「そうだけど……ターニャちゃん?」

 

「明日は、明日なら」

 

「明日の夜もリュドミラ王女殿下と約束があって」

 

「リュドミラ王女殿下……ツェイス殿下の?」

 

「妹で……」

 

「じゃあ明後日は?」

 

「えっと……その日はクロエ様……覚えてるかな、紅炎騎士団の団長さんで」

 

「……覚えています。夜は一緒に過ごせないと?」

 

 おかしいぞ……ターニャちゃんは最高の美少女だけど、どちらかと言えばツンなのだ。デレは殆ど見た事ないし、甘え上手な子じゃない。

 

「もしかして何かあったの? 何か心配事あるならお姉さんに言ってみて?」

 

「それは……お姉様が」

 

 ターニャちゃん言いづらそう。なんだ? 本当に何かあったのか!?

 

「もしかして……誰か悪い奴がいたの!? クロに任せてたのに……大丈夫よ、私がやっつけてあげるから! クロもお仕置きよ!」

 

 可愛いターニャちゃんを不安顔にさせるとは、絶対に許さん!!

 

「ち、違うんです! クロさんは悪くなくて……悪い人がいたりでもありませんから」

 

「本当に? 私に心配させたりしたくないとか、無しだからね?」

 

「そうではなくて、心配なのはお姉様というか……」

 

「私?」

 

 ん? なんだなんだ?

 

「あの……私に何か話さないといけない、そんな事はありませんか?」

 

 ターニャちゃんの上目遣い可愛い。いやいや、何か探る様な視線は一体……

 

「な、なにかな?」

 

「お姉様の本心、心の中です」

 

 ま、まさか……

 

 リュドミラ様やクロエさんに誘われて喜んでる俺に気付いた!? そ、それとも夢の中でセクハラしたりした事がバレたとか!? ターニャちゃんは俺の嫁(予定)ってニヤニヤしてたのが……お、落ち着け……いくらなんでも超能力者じゃないんだから……欲望は上手に隠してるし、バレる訳ない!

 

「本当は大好きなのに、我慢してる……自分の強い願望や気持ちを隠してしまう、違いますか?」

 

 ひ、ひぃーーー!?

 

 バ、バレテルーーー!?

 

 どどどどうする!?

 

「そ、そんな事は……」

 

「もし気を使っているのなら……遠慮しないで下さい。私なら大丈夫ですから」

 

「えっ……? 大丈夫って」

 

「お姉様の幸せを諦めないで欲しいんです」

 

 何かを決意したようにターニャちゃんは俺を見上げた。其処には強い意志がある。

 

「幸せ……」

 

 じゃ、じゃあ……ハーレムOKなのか!?

 

 アリスちゃん、クロエさん、リュドミラ様、そして本妻をターニャちゃん、其れを許してくれるの!?

 

 な、なんて心の広い……ターニャちゃんは天使だったのか……

 

「私はお姉様の意思に従います。だから……ツェイ」

 

「ターニャちゃん! もう言わなくていいよ……分かったから、私は幸せ者だね」

 

 ん? しかしツェイってなんだろ?

 

 まっいっか!! 本妻からハーレムの許可が出るなんて……夢じゃないよな?

 

「お姉様……お幸せに」

 

 ゴーン……ゴーン……ゴーン……

 

「あっ……鐘の音。ごめん、ターニャちゃん、何か言った?」

 

「……いえ」

 

「そう? じゃ、また話そうね? 私、行かないと」

 

「はい。お姉様、()()()()()()()()

 

「ターニャちゃん、ありがとう!」

 

 やったーーー!! やっぱりモテ期が来たんだ!

 

 ふと見れば何処か悲しげなターニャちゃん。そうか……例えハーレムOKでも複雑な心境なのかも。大丈夫だよ? ターニャちゃんが一番だからね!

 

 よし、急いで準備して行かないと。

 

 ご飯だ!

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。