綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね 作:きつね雨
昨日の夜、結局は楽しかったな……
久しぶりの家族の団欒ってヤツを味わった気がするもん。ちなみに、ターニャちゃんとは同棲だから! まあ思う事は色々あるけど……皆んな良い人ばかりだし。ツェイスの
兎に角、今は講義中だし集中しよう。
ふと思ったけど、此処にターニャちゃんが居たらもっと効率的だっただろうなぁ。
魔素を視覚的に捉える
「あ、今のは良かったと思います」
「教官殿、ありがとう」
「いえ、私だって勉強になりますから。例えば……直接の力には繋がりませんが、色を変えるのも良い訓練になりますよ? 意外と難しいんです」
「色……?」
「はい。やって見せますね」
この台詞を聞いた周りの竜鱗の騎士達が集まって来る。皆がバラバラの格好をしていて、一見するならツェツエが誇る騎士団に見えない。俺から見ても全員が一流の人達だけどね。才能も色々ありそうだし。
ほら、ジル先生の実演が始まりますよー!
ある程度集まり落ち着いた様なので昨日と同じ"炎の矢"を現出させる。違うのは剣状に成形してなく、分かり易くメラメラと燃えているところかな。此れが一般的な火の属性を付与した魔法矢になるのだ。
「例えば……」
赤々と燃えていた炎をゆっくりと青色に変える。続いて白っぽく、輝く感じ。科学的変化では無いから温度には変化は起きてないはずだ。ターニャちゃんだったらどう表現するかなぁ?
「かなりはっきりと変わるな……」
「初めて見た」
「他の色にもなるのか?」
「綺麗だな……」
「お前……」
「な、なんだよ?」
むふふ。やっぱり先生に向いてるかも! 帰ったらもっと魔法教室を開いて、またターニャちゃんに先生って呼んで貰おっと。新しい衣装も用意しなくては!
「威力や速度には変化はありません。でも魔素を動かさないと色などの改変は難しいので、危険性の少ない訓練になります。ただ、何度も言いますが必ずしも正解ではなく、一つの方法論でしかありません。くれぐれも固まった考えを持たない様お願いします」
色彩変化は夜と昼、森や海上、天候の変化に適応させれば、魔法を隠匿出来る訳だけど……それは明かさない。アークウルフ相手に放った矢が典型だ。まあ、自分で気付こうね? とにかく魔素変化に先入観は御法度だ。
「それではこのまま各自で色々と試して見て下さい。何かあれば質問をどうぞ」
生成した矢は消してっと。
ふむ、みんな真面目に取り組んでる。午前中はこれで進めよう。やっぱり先生が凄いんだろうな、うん。
2日目は実践を含む魔法改変の訓練だ。魔素感知は全員が出来るから、後は頑張って数をこなすのが一番だし。まあ竜鱗騎士団の皆は大なり小なり魔法を扱えるから、魔素操作の入口までは簡単に来れる。その先は感覚をどう養うかだ。威力の上昇などの戦闘に直結する改変まで先は長いから、大半の人達は飽きるだろう。でも絶対に効果があるから……皆んな頑張れー!
○ ○ ○ ○ ○
「模擬戦、ですか?」
「ああ、頼めないだろうか?」
簡易的な昼食と休憩を終えたとき、昨日終わり際に挨拶したミケル様が声を掛けて来たのだ。確か、ツェツエ王国を代表するチルダ公爵家の息子だよね。
因みに、チルダ家は古来より司法を司る大公爵家で、如何に王家を支え連綿と繋ぐかを頑張ってきた。大半は素晴らしい功績ばかりだけど、貴族だし当たり前に闇の話も聞いた事がある。特に女性関係……許せん!
現代日本の知識を有する俺からしたら、司法を司りながらも、警察機構にもあたる騎士を輩出してるのには違和感しか無い。捜査権、逮捕権、そして裁判権まで持たれたら、誰が逆らえると思うだろう?
真面目に考えたら怖いな……
まあ、実際は更に上にツェツエ王家があるから無茶苦茶は出来ないんだけど。
「無論教官には予定もあると思うが、皆から強い要望があってね。私が代表して来た訳だ」
成る程……この辺りは身分を問わない竜鱗と言えど序列があるのかな? チラリと見ればツェイスやシクスさんも反対してないのが分かる。まあ、午後は実戦に近い魔素操作をする予定だったし、良いでしょう!
「分かりました。私こそ竜鱗の皆様との模擬戦なんて大変貴重で光栄な事ですから」
「決まりだな。当然全員は無理だから皆で選抜するつもりだが、構わないか?」
「はい。ミケル様も参加されるのですか?」
「いや、残念だが私は不参加だ。損な役回りだよ」
学者然とした神経質そうな顔をニヤリと歪め肩をすくめた。やっぱり見た目に反して良い人なのかな?
「では誰が参加するか決めたら教えて下さい。殿下と話して来ます」
「分かった。ありがとう」
そう言うとミケル様は指で丸を作りながら、竜鱗のみんなの所へ歩いていく。歓声が上がったから、本当に嬉しかったんだね。でも……この超絶美人の魔剣、ジルさんが簡単に終わらせたりしないよ? ふっふっふ。
「ジル、良かったのか?」
「勿論です。私も勉強させて頂きます」
ツェイス殿下は変わらずの整った顔を少しだけ傾けて聞いて、紫紺の瞳で此方を見た。まあ、格好良いのは認めよう……
「装備は……魔力銀か。では大丈夫だな」
俺の着ている服……実際は魔力銀製の鎧みたいなものを一目見て理解したみたい。ぱっと見は分からないヤツだけどなぁ。特に今日のは普通に見える筈だし。
ほんの少しだけゆったり目のパンツはセルリアンブルーに染め、薄い灰色したオーバーニットを合わせている。長めに誂えたから魔力を通すと腰回りまで守ってくれるのだ。今回は体のラインは其処まで強調していない。戦闘時は多少変化しちゃうけど。
殿下とは何回か共闘したし、色々知ってるからな。
懐からやはり魔力銀糸で編んだ髪紐を取り出し、口に軽く咥える。そのまま何度か指を通して纏めると、後ろ頭に一括り。簡単にポニーテールにして髪紐で整えた。
「殿下?」
ボーッと俺を眺める
「あ、ああ。すまない」
「ふふふ、何で謝るんですか?」
「いや……やはり綺麗になったと改めて思ってな。時の流れはキミを少年の様な女の子から、美しい女性に変えてしまった様だ」
「……あ、あの……ありがとう、ございます……」
なんでそんな気障ったらしい台詞を真顔で言えるんだ……此れがイケメンの力か⁉︎
「くく、何で赤くなってるんだ? ジルなら言われ慣れてるだろう?」
くっ……コッチが遊ぶ側だったのに!
おい、コーシクスのおっさん、なに変な気を使って離れて見てるんだよ⁉︎ 笑ってるの隠せてないからな? 周りは誰も居ないし、文句言ってやる!
「ツェイス、冗談はやめて」
「冗談なものか。冷やかして遊んでいるとでも思ってるならジルの勘違いだ。俺は思った事を言っただけだからな」
「貴方はただでさえ人目を惹く容姿をしてるのよ? オマケに竜鱗の騎士団長でツェツエの王子様なの。少しは自覚して慎しみを」
ツェイスが瞬間ブハッて吹き出した。な、なんだよ⁉︎
「くはは! 本当にジルは……まあ、このアーレやアートリスでも女神となった女性の助言だ。貴重なご意見として受け取ろう。だが一言だけ言うと……」
「な、なによ? それと女神はやめて」
「鏡を見ような?
うっさいよ!
ん……?
何かミケル様が凄い睨む様に見てるんですが。
あの感じだと
こう言う時は何て言えばいいんだっけ? えっと、確か……か、勘違いしないでよね!
……あれ? 違う?
へぇ……面白いなぁ。
最初の一人目はかなりの若さに見える人だった。竜鱗は完全実力主義だから、あの若さで入団するのは相当の腕だろう。コネは通用しないらしいし、蒼流もあるからね。でも恐らく20代半ばだし、艶々のブラウンヘアもそれを証明してる。ちょっとだけ可愛い。
今日はあくまで魔素操作の講義だし、魔力強化は使ってもしょうがない。出来るだけ魔使いとして対応するつもりだった。だけど最初から使う羽目になっちゃったよ……
「魔力を
「あっさり躱された僕の方が吃驚してますけどね、教官殿」
恐らく魔力を練る速度に影響する
「いえ、ギリギリでしたよ? これは模擬戦ですから貴方様も多少の手加減はあったと思います。本番なら危なかったかもしれません」
「はは、実は自分でも驚いてます。魔素を意識するだけで魔力を掴むのを簡単に感じる事に」
「成る程……ならば、少しだけ教官らしい魔法をお見せします」
その言葉を聞いた瞬間、ブラウンの艶々髪を揺らすラウノが此方に走り出した。まあ基本に忠実で流石だ。躊躇もないし、この辺りは竜鱗騎士団なら当然かな。
だけど、予想通りだよ?
後側に位置し踏み出す瞬間の右脚の地面を僅かに陥没させる。大きく魔法を使うと簡単にバレるから極少の変化を一瞬で行使! 気付いた時はもう遅いのだ!
速度、精度、位置指定、地味な地魔法。妨害されるか逃げられる可能性が非常に高く、誰もが思い付くけどまず実行しない魔法だぜ! ポイントは当然に速さだ。
「なっ……!」
転ばないのは見事です。まあ初見殺しだし、魔力偏重主義が蔓延した世界では効果的だからね。
前のめりになった上半身を何とか立て直したようだが、残念ながら遅い。敬意を表して魔力銀製の愛剣をラウノの肩に添える。派手な魔法が全てじゃないのだ!
「……くっ、参った」
「ありがとうございました」
ダラダラと模擬戦は続かない。本番ではアッサリと死ぬし、戦争では対人より集団戦がメインだ。
「信じられない……気配なんて」
「隠蔽はしていません。速さとより精密な行使が可能となればラウノ様も使えると思います。寧ろ貴方様の才能ならば新たな技術の開発も可能かもしれません」
「教官らしい魔法、か」
「はい」
大抵の男は歳下の女に負けると悔しそうにするけど、ラウノ様は全くそんな様子はない。やっぱり竜鱗は凄いよなぁ。
「重ねて助言させて頂くと、視覚に囚われない魔法行使が出来るよう訓練されたら良いかと。先程の危機では円周に魔法を放つ手もあります。魔物には有効ですから」
「参ったな……流石"魔剣"だ。頑張ってみるよ」
此処でニコリとジルスマイルを贈る。ラウノくんは目を奪われて大変だ。ふふふ……
二人、三人と順調に終わり、四人目も終了。
全員が個性的で面白い。ラウノが速度なら、手数重視、防御特化、更には風魔法を使った空間移動など。最後なんて完全に漫画の世界じゃん! マジでカッコ良いんだけど! 竜鱗って雑技団なのかな?
今度練習してみよう。魔力強化と組み合わせたら、分身とか出来るかもしれないし。ターニャちゃんに見せて驚かせて上げないと、うん。
さて最後の一人は、と。
ん? んん?
「……あ、あの」
「どうした?」
「まさか、冗談ですよね?」
「冗談? それはお前の冗談みたいな美貌だけにしとけよ?」
「いや、だって、他にも騎士の皆様は沢山……」
「誰でもいいんだろ? ミケルに言ってたらしいじゃないか。だから気にすんな」
いやいや……
マジで⁉︎
「貴方自らが模擬戦なんてしなくていいじゃないですか……」
「おっ! お前みたいな美人が泣きそうになるのもオツだな。帰ったらエピカに話してやろう」
「エ、エピカさんには話さないで下さい!」
やめてくれ! あの人ヤバいから!
またストーカーされたら洒落にならないよ!
「何でだよ。ウチの娘は全員が紅炎を目指してるんだ。次女のエピカなんてお前の熱狂的な信者だぞ?」
信者じゃくて狂信者だからな⁉︎ なんで髪の毛とか服とか、オマケに下着とか盗むんだよ⁉︎ あ、あの日のトラウマが……
「……エピカさんてアーレにいるんですか?」
「ああ、いるぞ」
……クロに続いてエピカさんか……早く逃げよう。
「もういいです」
「やる気になったか?」
「相手は替えられるんですか?」
「ん? そりゃ……」
無理だな!
ガハハと思い切り笑うと、ゆっくりと細身の長剣を抜く。今までとは人とは比べ物にならない剣気を放ちながら。
長い手足をダラリと下げて、ニヤリと笑う。
「はぁ……」
目の前の男、竜鱗の副長コーシクス=バステドはゆっくりと近づいて来た。
逃げたい……