綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、罠に嵌る

 

 

「皆さま、三日間ありがとうございました。私も様々な経験を積む事が出来たので感謝を」

 

 やっと終わったー!

 

 最終日は殆ど復習と自学だったから楽ではあったけど、昨夜の失態が頭を過ぎって大変でした! ツェイスは普段通りだし、やっぱり夢だったのかな? リュドミラ様には何やら意味深な笑みを贈られたけど……

 

「ジル、竜鱗も更に課題が見つかった。明日からが楽しみだ。まさに魔剣のおかげだな」

 

「殿下……」

 

「ジルよぉ、偶には素直に受け取っておけよ? そうじゃないと次が頼み難いからな」

 

 ……シクスのおっさんは相変わらずだな! まあ気遣いなのは分かるけど。

 

「はい」

 

「よし! 講義は此れで終わりだ。其々がより腕を磨いてくれ!」

 

「「「おう!」」」

 

 うーむ、体育会系だなぁ。筋肉が見えるぜ。

 

 もう夕方だし時間もあるから、久しぶりにターニャちゃんに会いに行かないと! そろそろ禁断症状が出るからね、うん。

 

「ジル、俺はこの後予定がある。そっちは確かクロエと会うのだったか……滞在時間を伸ばしたのは母さんから聞いているから、また話そう。それに、まだやる事があるだろ?」

 

「勿論覚えています。殿下と二人、ですね?」

 

「ああ、ジルの本当の姿を見せてくれ」

 

「殿下もです」

 

「ふっ……楽しみだ。じゃあな」

 

「はい」

 

 試合かぁ……シクスのおっさんとの模擬戦で見せた雷魔法、見えなかったんだよなぁ。これは油断出来ないかもね。

 

「やる事、二人、本当の姿、楽しみ……くくく」

 

「……何ですか? コーシクス様」

 

「別にー? 楽しそうだと思っただけだぞ?」

 

 何だよ……ただの試合で……

 

 んん? 言われてみれば、ほかの意味にも……

 

「ち、違いますよ⁉︎ 変な誤解をしないで下さい!」

 

「まぁまぁ、分かってるって」

 

 ニヤついてるじゃん! 違うから!

 

「コーシクス様!」

 

「大丈夫だって。じゃあな!」

 

 絶対分かって無いだろ! あっ! 速ぇ!

 

 はぁ……

 

 もういいや。それよりもターニャちゃんに会いに行って、そして赤毛のお姉ちゃんのクロエさんと遊ぶんだ! 先ずはお風呂に……いやでも、個人訓練とか言ってたな。それなら後がいいかも。汗臭いとか思われたくないし。

 

 いつでも素敵なお姉様でいないとね! いや、もはやターニャちゃんは俺のお嫁さんと同じ、いやそれ以上! グフフ……

 

「ジル、少しいいか?」

 

 ん?

 

「ミケル様。どうされました?」

 

 相変わらず神経質そうな表情だ。最近凄く見られてるから、緊張してしまうよ。痩せこけた頬、鋭い視線、やっぱり学者かお医者さんみたいだな。

 

 それより、この人からジルって呼び捨てにされてたかなぁ? 気の所為?

 

「少し内密な話だ。ジルと同行者の子供について」

 

「子供……ターニャちゃ、ターニャですか?」

 

「そうだ」

 

 何だろう? て言うか何でターニャちゃんを知ってるんだ?

 

「分かりました」

 

「よし、こっちへ」

 

 ミケル様はそう言うと、城から見えない建物の影へ連れて行く。校舎裏へ呼び出し、なんてね。

 

 周りの気配を探って振り返ったミケル様は真剣だ。うーむ……

 

「知っていると思うが、我がチルダ家はツェツエの法と治安を担って来た。無論ツェツエ王家、ひいては陛下の御威光が在るからこそだ」

 

「はい」

 

 んー?

 

「それ故に、王国内の情報……特に法に触れるモノは多く集まる訳だが」

 

「そうですね」

 

 何ですかー?

 

「まだ私が押さえているが、ジルにある嫌疑が掛かっている」

 

「私にですか?」

 

 またまたぁ……そんな冗談面白くないよ?

 

「年端のいかない少女を側に置き、無理矢理働かせていると言う噂だ」

 

 はぁ?

 

「えっと……何かの間違いでは?」

 

「私もそう願うよ。だが幾つかの証言がある」

 

 証言⁉︎

 

 ミケル様は両腕を組み、俺を下から上まで眺める。何かキモい。

 

「兎に角、そんな噂は嘘に決まってます。ターニャちゃんは私の妹も同然で……」

 

「証言1。子供を引き取った魔剣はギルドにも顔を出さず、突然依頼も受けなくなった」

 

 まあ、そうですけど? だから何さ?

 

「証言2。その少女は毎日の様に重い荷物を買い出しに行き、日々の家事も一人でこなしている。小さな身体では大変そうだったと。しかしジル本人が手伝う様子は無く……キミの屋敷は一人で管理するには余りに広いらしいな?」

 

 うっ⁉︎

 

「証言3。そんな大変な日々の中、魔法の訓練も課されている。しかし、本来学ぶべき初歩の属性魔法すら教わってない。驚く事に汎用も」

 

 うぅ⁉︎

 

「証言4。独立して一人で住む事も許されず、理由をつけて魔剣の家に居ることを強いられているとも」

 

 うひぃ⁉︎

 

「証言5。まあ此れは眉唾だが……入浴や着替えにも何やら変な事を求められている、らしい。おまけに"お姉様"と呼ばせて喜んでるとな」

 

 あわわわ……証言者達の顔が目に浮かぶぞ! アイツら、絶対面白がってるに決まってるよ! 特に最後! 絶対にドワーフ爺だろうが! ミケル様、真面目に受け取ってるぅ!

 

「知っているだろうが……ツェツエでは子女からの掠取は重罪だ。其処で確認だが、()()は当然に払っているのだな? まあ流石に無給は無いと思うが」

 

「あ、あの……」

 

 違うんですぅ、違いますからぁ! ほんの少しニートしてただけで……

 

「どうした? 顔が青いぞ? 無給ならば過去に制定された法、奴隷禁止法にも関わるかもしれん。それなら罪はより重い。ましてや立場が弱く、逃げ場もない孤児ならば道義的責任も問われる」

 

 あばばばば……

 

「ご、誤解です……」

 

「ならばいい。で? 証言は事実なのか?」

 

 違うけど、違わない……いや、合ってる、のか?

 

「それは……」

 

「困ったな。ならば、被害者であるターニャとやらに……」

 

 ぎゃー!!

 

「あ、合ってはいますが、微妙に違うと言うか……あの……」

 

 ターニャちゃんは異世界人な上にTS女の子で、イベントを起こす為に遊んでるとか、実は俺の嫁!だとか、才能(タレント)がヤバいとか言えない……

 

 どないしよ……

 

 悩んでるとミケル様は顎に手を当て呟いた。

 

「ふむ……私はジルの講義で生まれ変わったと言ったな。それは本心でキミには心から感謝している。だから、先ずは良く話を聞かせて貰おう。流石に表向きには難しいが何か手があるか考えようじゃないか。()()()

 

「は、はい」

 

「では行くか」

 

「あの……何処へ?」

 

「そうだな……我が屋敷では色々と拙い。伝手のある場所に行こう。あそこなら誰にも見付からないし、内密な話も出来る」

 

「紅炎のクロエ様と約束が……」

 

「分かっている。クロエには私から話を通しておく」

 

「……はい」

 

 うぅ……何て言い訳しよう……全部話せないし。特に才能(タレント)は絶対に駄目だ。う、うわー! 頭がーー⁉︎

 

 大体さ、ターニャちゃんの事はウラスロの爺様に任せてたから良く分からないんだよ……こんな事ならしっかりと聞いておくんだった。何かの手続きミスだろうけどさぁ。元の世界と違ってメールや携帯で直ぐに連絡とか出来ないし、確認するにも時間が掛かるだろうな……

 

「くくっ、此処まで簡単とは。他に用意していた手が無駄になったな」

 

 ん? ミケル様、何か言った? 気を取られて良く分からなかったぞ?

 

「あの馬車だ」

 

 気のせいかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○ ○ ○

 

 

「此処だ」

 

 窓も無い馬車だったから、横の扉が開いて漸く外の空気が吸えた。特に会話は無かったけど、ミケル様の視線が気になる。何かキモさが倍増してません? まぁ、超絶美人の俺が向かい側に座ってたら見ちゃうのは理解するけど。

 

 開けた先に木製の階段が用意されていて、二人ほど執事らしき人が迎えに出てる。エスコートは無く、ミケル様は先に降りて何やら話している様だ。まぁ、要らないし……ターニャちゃんやリュドミラ様なら良いけど! いや、俺がエスコートする側だよ?

 

 アーレでは中規模の屋敷ってとこかな。公爵の本邸では間違いなく無いし、知らない所だ。

 

「ミケル様……」

 

「ああ、済まない。悪いが剣や武器類は預けてくれ。まあ言わなくとも理解しているか」

 

「あっ、はい」

 

 剣帯を外し、其れごと魔力銀の剣を預ける。他の装備はナイフくらいだけど仕方無い。因みにナイフも魔力銀を使用した特製だ。素材自体に大した価値は無いけど、技術は特別だからお高いのだ!

 

 でも当然に執事さんが預かり証を発行してくれた。品目も間違い無く、かなりの高級紙だと分かる。一番下にはサインがしてあって、この屋敷が誰のものかも知れた。

 

「ルクレー……此方は侯爵様の?」

 

「ああ、ルクレーの別邸だ。普段は余り使われてないからな。他にも色々と協力してもらう為に今夜は集まって貰った」

 

 ルクレー侯爵かぁ。血統主義の強い如何にも貴族のおっさんだよな。以前ツェイスとの話を耳にしたのか、公然と大反対したのを覚えてる。でも、俺はそんな気が無かったから寧ろ助かりました! ありがとうルクレー!

 

「ジル、少し待て。おい、紅炎に伝言を」

 

「は!」

 

 もう一人の執事さんに手紙らしき紙を渡し、耳打ちまでしてる。見た目もあって時代劇の悪代官っぽいぜ。でも人を外見で判断しちゃ駄目だよな。

 

 足早に去って行く執事さんを見送り、ミケル様は振り返った。

 

「今回の事情は説明していないから安心してくれ。例え疑いの段階でも魔剣の醜聞を広めたくは無い。まさか幼気な少女を不法に扱っているなどと」

 

 うぅ、違うんですぅ……

 

 だけど下心満載なのは否定出来ないのがツラい。だって、ターニャちゃんとお風呂にもっと入りたいし、チューだって沢山したい! で、出来るならあんな事や変な事を!

 

「は、はい」

 

「では中へ。ジルの声を()()()()と聞かせて貰おう。その()()を教えてくれ」

 

 兎に角、ターニャちゃんは大切な妹だと伝えるぞ。マリシュカやパルメさん、他にも事実を教えてくれる人は沢山いる訳だし。何も悪いことなんてしてないからね? た、多分だけど……

 

「あ、あの……クロ、勇者クロエリウスに伝言は出来ますか?」

 

「クロエリウスか。確か以前はジルに師事していたな」

 

「はい」

 

「普通は容疑のかかった者に外と連絡などさせないぞ? 悪い事を考える奴等は幾らでもいる。だが、ジルの言う事だ」

 

「ありがとうございます」

 

 ターニャちゃんも最近寂しそうだったから、言伝を頼もう。

 

「だが、残念ながら……」

 

「え?」

 

「勇者は今朝アートリスに向けて発った。とある調査に彼が必要だった為だ」

 

 えぇ?

 

「アークウルフ……あの地域で現れてはならない魔物。道中の危険度も跳ね上がり、行き来も途絶えては大変だ。アーレとアートリスを結ぶ線を切る訳にはいかないからな」

 

「それは……」

 

「ジルが討伐したから当然に知っているだろう? 目撃した人間が必要なんだ」

 

「……はい」

 

 聞いてない! じゃあターニャちゃん一人って事⁉︎ 大事な任務なのは理解するけど、でもアリスちゃんが居るから……むぅ……

 

「この先だ」

 

 地下かな? まあ内緒話には最適だけど……不安そうな俺を見たのか笑みを浮かべてミケル様が言った。

 

「二人きりじゃないぞ? 他にも人はいる」

 

 一応頷くが魔素感知は念の為にしておく。癖みたいなものだし。

 

 でも、とにかく何か言い訳を考えないと。才能の秘密は絶対に守らないといけないし、何よりターニャちゃんを怖がらせたくない。クロエさんとのデートが無くなったのは残念だけど……

 

 うぅ……困ったなぁ……微妙に真実だから尚更だよ。客観的に見たら間違いなくターニャちゃんに頼り切りだった。

 

 ふと前を見ればミケル様はスタスタと歩く。こちらを気にする素振りはないみたい。ってか早足だ。

 

 正直高位貴族の子息としてはどうかと思う。俺自身はどうでもいいけど、普通は女性に気遣いするものだからね。ツェイスとかだったら俺の歩くスピードとか、階段とか、そんな時自然に気配りするし。

 

「ルクレー様の別邸と聞きましたが良くご存知ですね?」

 

 案内役もいないのだ。

 

「良く利用させて貰ってるからな。話し合いや打ち合わせ、捜査にも」

 

「そうですか」

 

 階段の先は何か薄暗い。

 

 

 

 あの……怖いんですけど⁉︎

 

 

 

 

 

 

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