綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね 作:きつね雨
「ギャーーー‼︎ やっぱり無理ーー!」
「ホゲェ‼︎」
「あっ」
簡単に吹き飛んで、柔らかな絨毯に転がる。無意識の魔力強化は如何なく力を発揮して、身体の大きな成人男性だって宙を舞うのだ。
キモい目で眺めていた残り二人も呆然としてる。ハッと意識を取り戻すと、真っ赤な顔して俺を非難し始めた。
「ジ、ジル! 貴様、何をしたか分かっているのか⁉︎」
「魔剣めぇ、やはりとんでもない
「うぅ……」
だって、だってさぁ!
無理なモノは無理だもん! キモいんだよ……あっ、鼻が折れてる。
「キ、キハマァ……!」
貴様かな? ほら、治癒してあげるから。
情け無い顔してミケル様が睨んでくる。
ね、ごめんて、だめ?
○ ○ ○
地下に降りてきて入った部屋は想像と違い、随分と清潔で明るいところだった。
左側には沢山の本が並ぶ棚がズラリと壁を覆っているし、反対には美しい絵画や実戦には使えそうも無い剣や鎧たち。中央には全部で10人は座れそうなソファが向かい合う様に設置してある。
「一応紹介しておくか。此方がルクレー侯爵、向こうに居るのはマーディアス侯爵。会った事はあるだろう?」
「はい、お久しぶりです。ルクレー様、マーディアス様」
背が低くて禿げ上がったジジィがルクレーで、ワイングラス片手に気障ったらしく笑うのがマーディアスだな。マーディアスは細身で長身のダンディなオジサマだ。まあ、視線はキモいけど。しかしルクレー……何とは言わないけど、随分と後退してしまったなぁ。元男として同情するよ、うん。
「魔剣ジル、随分と久しぶりだのぅ。お前がアートリスに帰った以来か。だよの、マーディアス」
「その通りです、ルクレー侯。有りもしない殿下との仲、随分と騒がれて閉口したものです。あれ以来ですな」
ニチャリと笑ってるけど、別に皮肉になってないよ? 寧ろ助かったし。周りが騒いでくれたお陰で、アートリスに帰る理由作れたもん。確か、ツェツエの血が穢れるとか、偉大なる王家に傷が付くとか、分かり易い血統主義の台詞吐いてたっけ。
大体ツェイスは良い奴だけど、俺にはターニャちゃんという最高の嫁も出来たのだ!
「余り虐めるな、二人とも。彼女はツェツエを救った冒険者で、世界に五人しかいない超級。この美貌が辛そうに歪むのを見たくはないだろう?」
「ほほっ……美人は何時も笑顔でいなくては、だの」
「然り。まあ泣き顔も希少で、興味はありますが」
うーん……まだ虐め足りないって丸分かり。ツェイスと結婚なんてしないのに。て言うか、さっきからエロい視線隠して無いし……理解はするよ? でもやっぱりキモいのだ。
「二人には色々と知恵を貸して貰いたくてな。何とかジルを助けたいんだ」
「ほう……突然の呼び出しに驚きましたが、高々冒険者一人を助けたいとは。さすがミケル様は御心が広いですな」
マーディアスってば、あからさまなお世辞だなぁ。ちょっと間違ったら嫌味だし、そんなの嬉しい? ミケル様も怒ったりして。
ん? 滅茶苦茶に喜んでるな……
「ふふ、大袈裟だぞ。早速だが本題に入ろう。マーディアス侯、悪いが扉の鍵を閉めてくれるか? 誰が聞き耳を立てるかも分からないからな」
「はい、お任せあれ」
何故か嬉しそうにイソイソと歩むマーディアス侯爵。いいのかそれで。
「ジル、座りなさい」
「あっ、はい」
促されたのはソファの真ん中。向かい側に座るルクレーの広い額が輝いている。ミケル様は俺の隣に来るみたい。
「あ、あの……」
「なんだ?」
すっごく近くない? 他にも空いてるじゃん。
チラリとミケル様を見たが、特に気にしてないみたい。うーん……何か目の色も違って来てるし、嫌な感じだなぁ。
「いえ、何でもありません」
「さて、ジル。もう一度確認しよう。アートリスで引き取った少女の名はターニャ、間違い無いな?」
「はい」
あっ……言い訳を考えるの忘れてた。
「噂の数々は真実らしいな、キミのその反応を見ると」
「でも違うんです。決して搾取している訳では……私はあの子を妹の様に想っていて」
実際にはそれ以上ですけど!
「しかし、資料には森から連れ帰って直ぐに引き取り、その上で働かせているとあるが? 殆ど毎日市場に顔を出す上、しかも相当な目利きで値交渉も厳しいと。魔剣となれば報酬は莫大だろうに、随分と辛い役目だな。金ならば充分にあるはずだ」
ターニャちゃんってしっかり者だからなぁ。好きにしてくれていいのに、家計とか自分の財布の紐ガチガチだもん。困ったな……
「それは……」
「給金を払っていないとあるがのぉ? ミケル様、これでは偉大なるチルダ家の策定した奴隷法に抵触しますなぁ。特に15歳以下の子供には厳しかったと記憶しておる」
「ああ、それが大きな問題だ。しかもそれだけではないんだ」
「ほう、まだあるのですか?」
戻ってきたマーディアスは興味津々な感じ。
「何でも無理矢理"お姉様"と呼ばせて悦に浸っているらしい。しかも、嫌がる事を理解しながら、入浴を共にしようとする。他にも……」
「ち、違います!」
合ってるけど、違うんですってば! 確かにお風呂には入りたいけど……って言うか恥ずかしいからやめてくれぇ……
「魔剣よ、ミケル様の言葉を遮ってはならん」
うぅ……
「特別に教室を開いていると公言しながら、属性魔法は一切教えてないらしい。ターニャとやらは未だに基本的な汎用すら使えないと聞いている。10を数えれば大半の子供は汎用を使い始めるが、しかし酷い……ツェツエ最高峰の魔法を操る力を持ちながら、まともに教えもしないとは。これでは搾取どころか、虐待に近いぞ。そう思わないか、ルクレー、マーディアス」
「然り! しかし、我等も誇り高きツェツエの者。魔剣よ、何か申し開きがあるなら聞こうぞ。何故そんな酷い真似を?」
「そ、それは……あの……」
あの
「ふむ。まあ、こんな具合だ。ルクレー、どうしたら良いだろうか?」
「理由は言えませんけど、決してターニャちゃんに悪意は無いんです! もう一度アートリスの皆に聞いて貰えませんか? きっと何か間違いが……」
「チルダ家の調べが信用ならんと申すか! しかも理由が言えんだと……此処まで気遣って下さるミケル様に失礼じゃ!」
「ジル」
「は、はい」
うひっ……擽ったい! うわぁ……ミケル様が俺の膝に手を添えてますぅ!
「本来は庇う事など出来ない、私はチルダの者だ。だが、キミの為なら危ない橋も渡ろう」
撫で撫でしてるぅ……あぅぅ
「だが、何の見返りもないのは不自然だ。協力してくれている両侯爵に対しても、だ」
まさかとは、まさかとは思ってましたよ⁉︎ でも名高い公爵の息子がって否定してたのに……最初会った時は優しい感じだったし! 神経質そうな顔だってお医者さんとか、そんな風に考えてました!
「幸いキミは魔剣でもありながら、同時に女神としても有名だ。その比類なき美貌、素晴らしい身体、輝く髪。我等に捧げるならば、考えても良いぞ?」
や、や、や、やっぱりーーー!!
前世で隠れて見たり読んだりしてた"ピー"なヤツじゃん! 俺は無理矢理とか嫌いなんだよ⁉︎ 甘々ラブラブが大好きで、相手は至高の美少女ターニャちゃん……
「う……」
ひぃ! 内股触ったぁ! 指でサワサワしてるよぉ!
キモい、キモい、キモい!
助けて欲しくて両侯爵を見たけど、二人ともグヘヘって聞こえそうなキモい顔しかしてない……元男として分かるけどさぁ!
「ん、震えている……それに随分と頬が赤いな。まさかその美で初めてでもあるまい? なに、時間は必ず流れていくものだ。最初は嫌でも、我等に任せておけば楽しい時に変わるだろう」
童貞、いや処女ですから! 妄想は沢山してきたけど、こんなの想定外!
「さて、美しい肌を見せて貰うぞ……ん? 何だコレは? どうやって脱がすのだ?」
魔力銀製の服だから簡単には無理……
「ミケル様、魔剣の装備は全てが魔力銀。一種の鎧ですぞ? ですが、彼女自らに脱ぎたいと言わせるのも一興かと」
お前ら、完全に変態だよ!
「ほう……」
逆に嬉しそうだし。
「や、やめてください……誤解なんです」
脇腹から上にツツツって指を這わせて……あ、あ、あ、其処はダメ……
「震えが酷くなってるぞ、くくく……」
このオッパイを最初に触っていいのはターニャちゃん……う、う……
「ギャーーー‼︎ やっぱり無理ーー!」
「ホゲェ‼︎」
「あっ」
つい魔力強化して殴っちゃったよ⁉︎ じゃないとアレ程に吹き飛ばないし……む、無意識ですから! 悪気は、いやあるけど。ゴロゴロと転がったミケル様は鼻血をダラダラ流してます。フラフラ立ち上がった顔は真っ赤で、鼻が曲がってる。折れちゃったかな……
「ジ、ジル! 貴様、何をしたか分かっているのか⁉︎」
「魔剣めぇ、やはりとんでもない
オジサマ達も騒いでる。でもさ、無理矢理は良くないよ!
うーん、どないしよ。此れって拙いやつだよなぁ……
「キ、キハマァ……」
う、ゴメンって、だめ?
「次期チルダ公爵であるミケル様の温情を仇で返すとは! これは問題ですな! ルクレー様!」
「そうよな! 魔剣め、覚悟はよいだろうな! 市井の卑しい冒険者如きが大公爵の御子息に……最早身体だけでは済まんからのぉ!」
うぅ、やっちゃった……だってキモいもん。鳥肌だって治ってないし、さっきの感触だってあるんだよ?
「思わず……申し訳ありません。治癒魔法を掛けますので」
一応治すけど、さ。
「……ジル、優しくするつもりだったが考えが変わった。その装備を全て脱いで膝をつけ。頭を下げろ」
「……出来ません」
「ほう、逆らうのか? ならば魔剣の罪、ツェツエの前に曝け出してくれる。私自らが法を説き、最も重い刑を課そう。その名声も堕ちるのだ」
ミケル様のご立派な話に両侯爵も合いの手を入れてる。
「最初から言っています、何かの間違いだと。私はターニャちゃんを虐げたりしていません」
「そんな事は関係ない。私が決めたからには凡ゆる行為を罪とするのだ」
えぇ……?
もう逃げちゃおうかな……結局エロエロな事したいだけなんでしょ? 言ってるの無茶苦茶だもん。
「逃げる気か? 魔剣ご自慢の魔力強化でもして」
「ミケル様の裁きを前に逃走するとは……何処までも卑しいヤツだのぉ」
「愛剣も無く、此処から出られるとでも思っているなら愚の骨頂ですな。この地下室は特別製、しかもミケル様の御力を軽んじるとは。竜鱗騎士団でも有数の
……何か面倒くさくなってきたな。台詞も回りくどいし、目線もキモいままだよ。お前らの好きにさせる訳ないじゃん。才能ってアレだよね? 何か視覚的な。珍しくはあるけど其処までか?
確かツェイスは"先読み"に似てるって言ってたけど、どう見てもアートリスのマウリツさんに優ってるとは思えない。
「もうやめませんか?」
ジルの超絶な美貌にヤラレタんでしょ? まあ、正気を失ってもおかしくない美しさだから! でも、俺はターニャちゃんを本妻に掲げるハーレムの主人なのだ! 触れて良いのは、ターニャちゃんとかリュドミラ様とか、クロエさんとリタにパルメさん。いや、触るのは俺の方だけどね?
「ふん、仕方がありませんなぁ。ミケル様、例の件ですが"あの部屋"に
「おお、そうだったな。ふむ、ジルよ」
「何ですか?」
「引き取った娘、名はターニャか。言い訳通りならば大切な妹なんだな?」
「勿論です。世界で一番の」
「ならば証明して貰うか」
「はい?」
何言ってんの?
「私の言う事が聞けないならば、その愛しい妹がどうなっても知らないぞ?」
「……どういう意味でしょう?」
冗談でも許さないけど。
「察しが悪いのぉ。あの卑しい餓鬼、ターニャならば我が手の中よ! 合図一つで……」
……あ?
「
「……き、聞き間違いではないぞ! お前の愛しい妹とやら、既に捕らえ……ヒッ……!」
ターニャちゃんを、捕らえた?
卑しい餓鬼?
合図一つで? どうするって?
俺に対してならば少しだけで許してやろうと思ってたけど……無理、だな。
「そう……
今度は"無意識"じゃない。