綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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間話的な奴です


間話
☆女の子、お友達と遊ぶ


 

 

 

 

 

 石壁と石床、無機質なその部屋は少しだけ空気が淀んでいる。蝋燭は壁に数本、テーブルには燭台もあるが、明かりは足らない。薄暗い此処は地下室で、地上に出る階段と小さな扉が一つしか無いようだ。

 

 壁側には何が入っているかも判らない樽や、置かれた棚に瓶や小さな木箱が並んでいた。更に奥にも多くの木箱が重ねてあるが、やはり中身は不明だ。

 

 そんな地下室に四人の人影があった。

 

 全員が女性で、年齢もバラバラ。

 

 ふくよかな女性は一番年上で、老女とは言えないが中年に差し掛かっている。もう一人は三十代前半か二十代後半で、スラリとした姿は座っていても分かった。

 

 残り二人は更に若い。

 

 一人は十代後半、高く見積っても二十代前半だろう。少し大人しめだが、中々に可愛らしくソバカスがワンポイントか。そして最後の一人は間違いなく少女。アッシュブラウンのショートはボーイッシュだが、この四人の中では最も整った顔で、将来の美貌は約束されているだろう。

 

 四人は部屋の中央に配置されたテーブルを囲う様に座っている。全員が配られたであろう書類に目を通していて、眉間に皺を寄せていた。何か重大な発見でもあったのか、最も年配の女は「なるほどね」と思わず呟いていた。

 

 それが合図ではないだろうが、少女は顔を上げる。そして、その唇から音が漏れるまで時間は必要無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 

 

 

「では会長、開会の挨拶をお願い出来ますか?」

 

 僕は右隣に座る女性を見た。そのパルメさんも書類から目を離し、コクリと頷く。

 

「ええ。ターニャちゃん、始めましょうか」

 

 両手を組み、その上に顎を乗せたパルメさんはニコリと笑って皆を見渡した。僕も両手を膝につけて言葉を待った。これから始まる秘密会合に期待しつつ、僕もニコリと笑顔を返す。

 

「マリシュカさん、お久しぶりですね。あとリタは初めてでしょ? 簡単に挨拶でもする?」

 

「あっはい。えっと……私は冒険者ギルドの受付をしてます、名前はリタです。ターニャちゃんに誘われて来ました。分からない事だらけですが、皆さん宜しくお願いします」

 

「ふふふ、リタってば固すぎるわ。私達は皆、同じ目的を持った同志よ。仲良くやっていきましょう。ね、マリシュカさん?」

 

「そうだねぇ。私は何やら相談役という大それた者らしいけど、ただの雑貨屋の店主さね。ましてギルドの受付と言えば、女の仕事じゃあ花形じゃないか。もっと堂々としな! ははは!」

 

 バシバシとリタさんの肩を叩いて大声で笑う。因みにここはマリシュカさんのお店の地下だ。商品の在庫を置く倉庫らしいけど、帳簿の整理もするらしい。だから机や椅子があるんだね。

 

 リタさんは最初笑っていたが、肩が痛いのだろう最後は涙目になっていた。

 

「さて……以前からこの会を開く予定はあって、内々で話は進めていたけれど。商売人が二人、ギルド職員が一人、そして対象者の身近な子が一人と、駒は揃ったからね。いよいよ本格的に始動させるわ」

 

「会の名前とかあるんですか?」

 

 リタさんは可愛らしく手を上げて、最初の質問をした。

 

 パルメさんは先程の柔らかい笑顔とは違い、ほくそ笑む様にニヤリと笑い答えた。

 

「捻りもない簡単な名前よ。産声を上げるこの会の名は……」

 

 そう、高らかに!

 

「ジルを弄って遊んで愛でる会よ!!」

 

 会長は開会を宣言した!

 

 ……なんてね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず重要な事を確認しましょう。私はジルと知り合って8年だけど、あの娘の事は大好きよ。悲しい泣き顔を見たくないし、幸せになって欲しい。この会に参加する人はジルを心から好きな人じゃないとダメ。皆はどうかしら?」

 

 パルメさんは淡々と話すが、当然確信を持っている感じ。まあ、儀式みたいなモノかな?

 

「まあ、ジルの事が心配だからねぇ。あんなに綺麗な娘なのにスキが多いし、危機感を持ってない。馬鹿みたいに強いらしいから貞操は心配ないけど、男共を甘く見てるね。それに、この間の新作発表会なんてパルメにしてやられてたじゃないか。この会はジルを再教育する良い機会だと思ってるよ」

 

 マリシュカさんは母親の様に優しい笑顔を浮かべ……いや、そうでもないか。

 

「私は以前から憧れの人でしたし、と言ってもギルドで憧れてない人を探す方が難しいですけど。とにかく、最近ジルさ……ジルとお友達になったんです。まだ短い時間ですけど色々と分かった事があって……ジルは可愛らしくて、ちょっとお馬鹿で、凄く綺麗で……とにかくサイコーなんです!」

 

 リタさん、サイコーって言葉が好きなのかな?

 

「うんうん、分かるわー。ターニャちゃんはどうかな?」

 

 お姉様への気持ち。

 

「私は、お姉様に命を救って貰いました。今も本当の妹の様に、いえそれ以上に大事にしてくれます。直接言うのは恥ずかしくて無理ですけど……凄く大好きです。それと、お姉様が真っ赤になりながらプルプルするのがもっと好きです」

 

 アーレで改めて分かった事だから。

 

「そ、そう。流石ターニャちゃんね」

 

 リタさんは尊敬の眼差しで僕を見ている。

 

「先ずは基本的な情報を共有しましょう。ジルの対外的な評価ね。みんな知ってるでしょうけど、リタやターニャちゃんはまだ知り合って短いだろうし、知らない事もあるかもしれないわ。詳しい中身はあとで整理するとして……もう一度手元の紙を見て貰えるかしら? リタはギルド職員として訂正があれば言って頂戴」

 

「はい!」

 

 僕もさっき簡単に目を通した紙に、もう一度注目した。パルメさん直筆らしいけど、興味深い事がたくさん書いてあるんだよね。しかも凄く長文だし、パルメさん楽しんでるよね、これ。

 

 

 

[名前] ジル(おそらく偽名)

 

[性別] 女性

 

[年齢] 22歳

 

[性格] 人柄は非常に良くて、基本的にお人好し。本人は頭が良いつもりらしい。多分格好良い大人の女性を目指してるだろうけど、無理だと思う。街の男どもは騙されてるみたいで可笑しい。因みに選ぶ服のセンスはアレ。装備類は結構良いのに何で?

 

[容姿] 嫉妬すら起きない程の美貌の持ち主。腰まで届く指通り最高な白金の髪、澄み切った水色の瞳、抜群の肢体、その身体は理想を忠実に守り、肌はシミひとつ見つからない。私の職業柄ジルのサイズは詳細に分かるけど、あんなふざけた数値あり得ない。本当に人間なのか? 妖精とか精霊とか言われても信じちゃう。王都やアートリスでも女神の名が当たり前になってるけど、不自然でもないし。兎に角お肌の手入れのコツが知りたい。何もしてないとか巫山戯たこと言ってるけど。

 

[職業] アートリス冒険者ギルド所属の冒険者。世界に現在五人しかいない超級の一人。才能(タレント)は「万能」で、あらゆる魔法を行使する。全ての属性魔法、全ての汎用魔法を簡単に使い、剣技にも優れている事から「魔剣」の二つ名を持つ。また、幾つかの新魔法や理論を世に送り出していて、その業界ではかなり有名。魔素感知波はその代表格で、今や世界中で利用されている。本人は余り気にしてないし誇ってもないけど、実際にはかなりヤバい。その価値を金銭に換算したら小国の国家予算を超えるらしい。これ書いてて思ったんだけど、もしかしたら気付いてない?

 

[来歴①] 出身地は不明。8年前にアートリスに現れる。14歳ながらも既に完成されていた美貌で、何人もの男達を虜に。大変な騒動に発展するかと思われたが、やはり年齢に見合わない戦闘力を見せ、力技でねじ伏せた。暫くするとちょっかいを出す男も減り、ギルド長ウラスロ=ハーベイによりギルドにスカウト。順調にクラスを上げ、史上最年少の20歳で超級に到達した。世界最強の呼び声も高い。可愛くてお馬鹿だけど。

 

 

 

(おそらく偽名)って……お姉様、バレてますよ!あと、最後! 面白いけど。

 

「此処までで、何か訂正はある?」

 

 パルメさんは、リタさんに質問をぶつけた。

 

「いえ、特には。でも不思議ですね、ギルド職員でもないパルメさんが詳しいなんて」

 

「そう? これくらい街の皆が知ってるわよ? ジルは有名で、噂話も絶えないから。何より、此処にはアートリス最高の情報網を持つマリシュカさんがいるからね」

 

「私がかい?」

 

 本人は当惑した顔だけど、その噂は僕も聞いた事がある。ツェツエ王国が誇る魔素伝達網を上回る早さで噂話を伝えるらしい。マリシュカさんに知られた秘密は瞬時にアートリスに広がるって。おばちゃんのお喋りは恐ろしい、僕も気をつけよう。

 

「自覚なし? まあいいわ。じゃあ続きを読みましょうか。リタとターニャちゃんは知らない事もあるかもしれないわ」

 

「あの……おそらく偽名って」

 

 ちょっと興味あるんだよね。

 

「ん? ああ、それはあくまで私の勘だけど……間違いないわ。だって初めて会ったら名前を言うじゃない? 吃るし、あたふたするし、一生懸命考えるし、暫く待ったからね。アートリスで最初に来たのが私の店らしいわ。服が足りなかったみたい。あの時は随分髪も短くて、可愛らしかったなぁ。口調とかもちょっと男の子みたいで面白かったのよ?」

 

「はあ」

 

 えっと……お姉様、暫く考えた結果がジルなんですか? ジルヴァーナとジル、殆ど変わり無いですけど。でも、さすが異世界だなぁ。プライバシー保護という概念がまだ浸透してないみたい。

 

「まあ本名なんてどうでもいいわ。いずれジルから話してくれるでしょう。じゃあ続きね」

 

 バンバルボアの件は伏せておこうかな。マリシュカさんも言う気なさそうだし。ちゃんと約束を守ってるんだなぁ。

 

 

 

[来歴②] 冒険者として一躍名を馳せた事件は多い。有名なものを幾つか並べておく。

 

 ⑴魔族侵攻。新魔王"スーヴェイン=ラース=アンテシェン"の即位に合わせてか、この大陸へ自ら来訪。当初から話し合いを求めていたが、大昔にあった人魔大戦の記憶も消えてないため戦争状態に。紆余曲折の末、最終的にジルとスーヴェインの一騎討ちとなった。その詳細は両者とも語らないが、最後は引き分けで終わったと言う説が濃厚。ジルが間に立ち、魔族と王国を仲介。新魔王の望みは人種との友好で、実際に戦争は終結した。魔王と互角に戦った上に、友誼を結んだ事で一躍有名になる。これは噂だけど、スーヴェインから婚約を申し込まれたって。当時16歳になったばかりのジルは「ロ、ロリコンだぁー⁉︎」と意味不明なセリフを吐き去っていったらしい。ロリコンってなんだろ?

 

 ⑵ツェツエの危機。超級に上がった二つの理由の一つ。6年前、ツェツエ西部の古い神殿から魔物が溢れた事件。王国の戦力だけでは抑え切れず、冒険者も参戦した。多くの冒険者や騎士が活躍したが、あの娘の戦果には遠く及ばない。小型竜種や多くの魔物、更にはカリュプディス=シンを撃退し、第一王子のツェイス殿下を救った事でも知られる。ジルの活躍により王都にも各街にも被害は無かった事で、その危機の脅威を甘く見る者がいるらしい。しかし、ジルがいなければツェツエは滅んでいたと、参戦した者は口を揃える。ところで、後から判明した事がある。暴走精霊の威力と被害の少なさに疑問を抱いた者が調査を行い、そして分かったのは暴走寸前にジルが何らかの強力な魔法を放った事。本人は語らないが、間違いなく"魔素爆発"の威力を減少させたとの調査報告が王家に届いている。

 

 ⑶古竜襲来。これもやはり6年前。ジルと魔王の戦いに触発されたのではと当時言われた。アートリスの南、山岳地帯から来たらしいが詳しくは不明。伝説にも謳われる古竜の一人。一人と数えるのは大昔からの風習で、人化した竜から言われたのが始まり。アートリスに向かう竜にジルが挑み、破壊不可能とされた鱗を斬った事は余りに有名。魔剣の由来の一つに数えられている。ところで、マリシュカさんの情報によると……古竜はアートリスに遊びに行こうとしていただけで、人に変身する為に地上に降りていた。そんな事情を知らないジルが襲撃したのだが、後で随分叱られたって。何やら膝を折り曲げ地面にペタリとさせる変な座り方で、涙目になったジルの目撃証言もある。因みに人化した竜の姿は意外にも真っ白な少女だったらしい。

 

 他にも、ツェツエの勇者の師としてクロエリウスを育てたり。地方の村を殆ど無報酬で魔物から救ったり。魔王からアズリンドラゴンの鱗を贈り物をされたり。面白い噂では、男達がジル愛好会を作って牽制し合ってるだの、何処かの国のお姫様が逃げて来たのがジルだの……色々とある。

 

「こうして並べてみると、非常識さが際立ちますね……一つでも凄いのに、沢山あるなんて」

 

 お姉様って正座が好きなのかな? それに、リタさんの言う通りだよ……異世界転生モノの殆どを網羅してると思う。一つ一つで物語が書けそうだし、どう考えてもチートだよね。

 

「パルメさん、本当に詳しいですね。知らない事も多いし、もっと聞きたくなります。お姉様が強いのは聞いてましたけど、想像以上です」

 

「ターニャちゃん、情報の補完はマリシュカさんにお願いしたのよ? 私も知らない事が多くて吃驚したんだから! 古竜に叱られるジルなんて、簡単に想像出来るのが可笑しいわね」

 

「確かに! ジルの事だから、うぅ……ごめんなさい……とか言いながら涙目だったんだろうなぁ。おっちょこちょいだから」

 

「目撃証言によると、リタの言う通りだね。少女に人化した所為で攻撃出来なくて、最後は泣いてたらしいよ? まあ、結局は仲良しになって二人で街を散歩してたけどね。あっ、内緒だよ」

 

「えっ!? もしかして、私の店にも来たのかしら?」

 

「パルメの店なら行った筈だよ。ジルが嬉しそうにしてたから。着せ替えを楽しんだってさ」

 

 何やら予想通りだなぁ……お姉様の趣味って分かりやすい。もしかしたら、お風呂に入るとか騒いだかもしれないな。

 

「えー……そんな事あったかなぁ? 人化した古竜なんて稀少なのに……」

 

「認識を阻害してたって話だし、覚えてないのさきっと」

 

 ……いやいや、マリシュカさんは覚えてますよね? お姉様の魔法を突破するのは殆ど不可能な筈だけど……思わずジロジロと見たのかバレたのか、マリシュカさんは此方を見てウインクした。やっぱり怖い……

 

「うーん、ジルにはまだまだ謎が多いね。その為にも此処からが本番よ? 今見て来たのは、外から見たジルだから、私達しか知らない事をこれから深掘りしていきます。ふっふっふ……」

 

 ですよね! お姉様の過去も気になるけど、先ずは楽しまないと!

 

「そこからお姉様を弄って遊んで愛でるんですね?」

 

「その通りよ、ターニャちゃん。同棲してる貴女の証言には期待してるわ。あと、王都の話も聞かせてね?」

 

 僕達は目を合わせ、ムフフと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 




因みに、この間話に続きはありません。
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