綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね 作:きつね雨
この世界には大陸が3つあり、他にも大小様々な島々が点在する。
最も巨大な大陸は北部に浮かび、天を突き刺す如き山脈が南北に横断している。剣に例えられるその山脈も関係しているのか、非常に寒冷な気候は人々を寄せ付けない。この大陸を支配しているのは所謂[魔族]で、人種には到底及ばない化け物が徘徊しているのだ。現在は人に融和的な魔王の治世の為、人魔大戦も過去の話となっている。
そして残る二つの大陸は人種が支配しており、それぞれに覇権を誇る大国が存在する。
俺が住む[ツェツエ王国]が正にその一つで、温暖な気候と肥沃な大地、豊富な水源と多種多様な生物、ある意味で楽園と言って良い国だろう。更には周辺の諸国とも良好な関係を築き、争いや戦争などは気配すら感じない。
勿論どの大陸にも強さに差はあれど魔物がいる。だが冒険者を筆頭に対策は講じられており、台風や地震と同じ災害の一種として日常に溶け込んでいる。
因みに、もう一つの大陸で覇権を握る国があるが、そっちは関係ない。えっ?名前? 別にどうでも……あっ、はい……名前は[バンバルボア帝国]です……
とにかく、今は俺が住むツェツエ王国の話なのだ。
大事な事がある。
それは温暖な気候であるが故に、男女問わずに肌の露出に寛容である事だ。その為街を歩く女性達は眩しい素肌を隠す事もせずに、目の保養に貢献してくれる。
当然パルメさんがデザインする数々の作品も、大変好ましいものばかりだ。名前こそ違うが「ミニスカート」や「ショートパンツ」なども存在する。下着への拘りも強く、大変素晴らしいモノが沢山ある。本当にありがとうございます。
俺の場合、自らを利用して目の保養を用意出来るが、やっぱり他の女性達である事が重要なのだ。
因みに男達も同様ではあるが、そっちはどうでもいい。
さて、パルメさんが用意してくれた服達を見てみよう。
ターニャちゃんはまだ成長過程にいて、女性よりは少女と言っていいだろう。俺と違い女性らしい柔らかな曲線も無く、上からストンと絶壁が続く寸胴体型だ。だが、その辺にいる悪餓鬼とは違い可愛いから大丈夫……寧ろそれがいい。
目の前に並べられたパルメさん謹製の作品達……そのどれもが大変素晴らしく、ターニャちゃんの細い太ももや眩しい鎖骨辺りもバッチリです。
俺が夢見た「TSイベントTOP3」とは少し違ったが、すっごく可愛いから良しとしよう。
恥じらいプルプルは次の機会を利用すれば良い。TOP3の一つ、お風呂イベントがまだ残っているのだから!
シャッ!
最後の一着を着たターニャちゃんがカーテンを開けて登場した。ふむ……アリ、だな。
散々肌の露出を脳内で語っておいて何だが、コレも良い……いや、最高では?
元の世界でサロペットと呼ばれる衣類がある。確か英語のオーバーオールと同義となる単語だ。語源としては「汚い」「汚れた」などで所謂作業着が元とされる。服飾界ではオーバーオールとは分けられており、背中側にはクロスした肩紐しか存在しないタイプを指すらしい。胸当てとサスペンダーが付いたズボンの事で[オールインワン]とも称される。違ってたらゴメン。
「お姉様、どうですか?」
先程決めた下着の上に真っ白なシャツを着ている様だ。肘まで折り畳まれた袖から細い腕が伸びている。その上からサロペットを着ており、背中は露出していない。
「……最高。さっきのミニも可愛いけど、こっちも好きかも」
ボーイッシュな装いに変わり、髪がショートのターニャちゃんに良く似合っている。くっ……こんな少女にチラ見せのエロを求めていた俺は馬鹿だった! 無茶苦茶可愛いじゃねーか!!
「ジル、この帽子も合わせましょう。きっと似合うと思うわ」
パルメさんがターニャちゃんに被せた帽子はキャスケットだ。頭部は風船の様に膨らみ、短めのひさしが付いている。
「パルメさん……これも買います。今まで着た分も全部下さい……」
パルメさんの店に連れて来て良かった。基本一点物ばかりの為、かなりの出費になるだろう。だが其れがどうした!こんな幸せな気持ちになれるなら安い物だぜ!
「……お姉様、全部買うんですか?」
「そうよ? だってみんな可愛いし、似合ってるから!」
「でも……」
「ターニャちゃん、さっきも言ったけどジルにまともな経済観念は期待しちゃ駄目よ? 気にせずに受け取ってしまいなさい。超級冒険者の収入は普通じゃないし、ジルも楽しんでるのよ、ね?」
うっ!? まさか俺の欲望に気付いた!?
「え、ええ……ターニャちゃん、気にしないでね?」
「そうですか……」
食事の時といい、ターニャちゃんはしっかりしてるなぁ……
「あの、お姉様? 我儘ついでにお願いしていいですか?」
お? ターニャちゃんからお願い事? 勿論!
「遠慮なんてしないでいいの。ターニャちゃんは私の妹になったんだから、お姉さんに任せて? なんならこの店を買い取ろっか?」
「ジル……あとで覚えときなさいよ……」
パルメさんが何か言ってるが、気にならない。
「私、お姉様とお揃いの服を着たいです。この服と同じモノでお揃いにしませんか?」
「お揃い? そんな事でいいの? お店買っちゃうよ?」
「売らねーよ……」
「はい、お揃いがいいんです。早速試着しましょう!」
「……えっ!? 試着はいいんじゃないかな? ほら、今は冒険者の装備してるし、着替えるの時間掛かるから」
「大丈夫です! パルメさん良いですか?」
ターニャちゃんは何故かウインクしてパルメさんにお願いした。
「……ん? あ、ああ! 勿論良いよ。ジル、ゆっくり着替えなさい。その間に用事を済ませて来るから、お店をお願いね?」
俺に合うサイズのサロペットとシャツを押し付けて、パルメさんはお店を出て行った。
「……ええ? お店をお願いって……」
「さあ、お姉様。お店は私が見ておきますから、着替えて下さい」
背中をグイグイと押されて、カーテンの向こう側に押し込まれてしまった。
「ターニャちゃん。服に見えるかもしれないけど、これは鎧みたいな物で脱ぐのに時間が要るのよ? 無理に今日じゃなくても……」
魔力銀の金属糸を特殊な技法で編んだこの服は、魔力を通す事で柔軟性を失わないままに金属鎧を超える強度を誇るのだ。その繊細な魔力操作は俺にしか出来ない為、実質俺専用と言っていい。
首から胸を覆い、下半身まで一体で編まれており、脱ぐのにも幾つかの工程を踏む必要がある。下半身はショートパンツと同じ形状をしており、眩しい絶対領域は確保済みである。
全体的に黒で統一されているが、銀色に染めた糸を使い、肩から両腿まで縦に線が入っている。肩から先の両腕も露出しているが、俺の魔法防御を突破出来る者など殆どいないから関係ない。首には十字をしたペンダントも掛かっていて、可愛格好いいを目指したお気に入りだ。
「駄目ですか……?」
好みの少女に涙目で上目遣いされて、断れる男がいるだろうか? て言うか、キミ元男の子だよね!?
「……全然大丈夫! 急ぐから待っててね!」
シャッ!
カーテンを閉めて簡易倉庫らしき部屋に来た以上、着替えるしかあるまい。コレ脱ぐのホントに面倒なんだけど……
「ハア……」
当初の目的と完全に変わってしまったなぁ……
シャツのサイズが合わずにターニャちゃんに探して貰ったりして、更に時間が掛かってしまった。胸がキツくてボタンが閉まらないのだから仕方がない。我ながら素晴らしいオッパイですいません。
俺の肢体は上から見ても最高だが、目の前の鏡に写すと堪らない。見飽きてはいるが元男の意識は無くなっておらず、長い脚や細い腰も完璧な比率を保っているのが分かる。
「肌もスベスベプニプニで、シミ一つない……やっぱり最高傑作だな。俺自身じゃなければ、惚れてるよマジで」
ブツブツと我ながら気色悪い台詞を吐きながら、漸くターニャちゃんと同じサロペットを整えた。
「……うーん……まあ、可愛いといえば可愛いが」
腰まで伸びる白金の髪と、女性にしては高い身長。やはり先程のターニャちゃんの様にしっくり来ない。今の俺にはもう少し大人の装いが似合うと思う。
「ターニャちゃん、着てみたけど余り合わないみた……い……」
「ジルちゃん可愛いーーーー!!」
「女らしいジルもいいが、コレもアリだね!」
「パルメの新作は何時も驚かされるねぇ」
「着てみたいけど、モデルが良過ぎない?」
「サイズ調整すれば何とか……」
「髪は纏めた方が良いかもねー」
「しかし何回見ても綺麗だねぇ、嫉妬も出来ないよ」
「あのシャツは幾ら位かな?」
「良い尻だ……」
「……は?」
俺の目の前には大勢の女性達が椅子に座り、ジロジロと此方を見ながら騒いでいる。
「……え?」
奥の方ではパルメさんとターニャちゃんがガッチリと握手しているのが見えた。
握手を終えたパルメさんが俺の前に陣取ると、女性陣に向かい宣った。
「今からパルメの店主催による、新作発表会を始めまーす!! モデルは勿論、ご存知のこの方! 超級冒険者にして、この美貌!このスタイル!何処かお馬鹿で可愛い[魔剣]ジル、その人でーす!!」
「「「わーーー!! ジルちゃーん!!」」」
割れんばかりの拍手が俺を襲い、意識が遠のきそうになる。
「……パ、パルメさん?」
「ジル、次はコレね? あと10、いや11着あるから急いで! 残りはカーテンの向こうに順番に掛けてあるからね。あっ、その前にクルッて回って見せてよね」
「いや、そうじゃなくて……」
「ほら、急いで! 皆んな待ってるわよ!」
クルッと一回転させられた俺は、ターニャちゃんと同じ様にグイグイとカーテンの向こうに追いやられるとシャッ!とそのカーテンを閉められた。閉められる前の一瞬、鍛えられた俺の眼に一緒に拍手するターニャちゃんが見えたりした。
「ジル、妹公認なんだから諦めなさい。既に契約済よ」
カーテンの向こうからパルメさんの小声が聞こえ、脳裏に記憶が蘇る。ターニャちゃんが下着の試着を頼んだ時だ……パルメさんが内緒話をしてターニャちゃんがニッコリと笑って……
渡された服を広げると、殆ど水着か下着同様のカラフルな何かが目に入った。
「……えぇ?」
新作発表会は盛況の元で終了した。
あの後は呆然としながらも衣装を着た気がするが、イマイチ記憶に残っていない。途中から変なポーズや台詞を言わされたりして、情け無くも赤面してプルプルと震えてしまった。古龍と戦った時も震えたりしなかったのに!!
お尻を突き出したり、胸を両腕で挟んでみたり、女の子座りしてみたり。
「好き……」「虐めてください……」「お帰りなさいませ御主人様」とか言った気がするが、きっと夢だろう。
パルメさんの店は開店以来最高の売上となり、製作が間に合わない分は数ヶ月待ちらしい。
ターニャちゃんとの契約内容は、本日の売り上げの10%と買い物分の無料提供。10%分は開催した始めの握手の際に追加で勝ち取ったらしい。その額はコランダム級冒険者の1ヶ月分の働きに相当し、最下級のオーソクレーズ級なら下手したら1年分になるかも知れない。
ターニャちゃんから全てのお金を俺に渡すと言われたが、断るしかないだろう。
余りに散財する俺を見て、何とかお金を返す方法を捻り出したと言われれば、仕方が無いかなと思ってしまう。でも、何処か釈然としない気がする……?
「ターニャちゃん、お願いだから最後にしてね?」
「お姉様、ごめんなさい。あんな大事になると思ってなくて……今度からちゃんと相談します」
状況に応じてですけど……
「ターニャちゃん、何か言った?」
「いえ? でもさっきのお姉様、可愛いかったです! 虐めて下さい、とか最高でした!」
また、言わせよう……
「ターニャちゃん? やっぱり何か言ってる?」
「何も言ってませんよ? 思い出してました、御主人様……とか」
「うぅ……止めて……あれは夢だったのよ……」
とぼとぼ歩く俺は、当初の"挑戦"が達成された事を自覚した。TSイベントをクリアしたのが俺という違いはあるが……
……俺が、俺がクリアしても面白くない!!
記憶を消してくれーーーーー!!
ジルの挑戦はうまくいった!
良ければコメントなど頂けると有り難いです。
次回はツェツエ王国の勇者が登場!