綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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第三章、スタートします。


第三章〜アートリス大騒動〜
お姉様、麗しき朝を迎える


 

 

 

 ツェツエ王国の王都、アーレ=ツェイベルンでの出来事も何だか随分前に感じる。実際に何日も経ったけど、それ以上な気がするんだ。

 

 それは多分、大好きな人がほんの少しだけ近づいたからだろう。

 

 ……何て格好良いこと言ってみたり。

 

 まあいいや、朝ご飯を楽しもう!

 

 

「ターニャちゃん、そこのお皿二枚お願い」

 

「はい。コレでいいですか?」

 

「うん、ばっちり」

 

 真っ白なお皿は少し大きめ。でもちょっとだけお洒落に、少し豪華に見えるし良い感じなのだ。

 

 朝早く起きて作った料理を並べてっと。

 

 英国料理と聞いて何を思い浮かべるだろう。煮ただけみたいな手の込んでない物が多く、ポークパイやフィッシュ&チップスなどが有名かな。殆どが卓上の調味料で味変するらしい。イタリアやフランスなどと比較されて、悲しい評価を貰う場合もある。

 

 だが!

 

 前世の記憶が叫ぶ、朝食は最高だと!

 

 イングリッシュ・ブレックファストーーー

 

 名前からして格好良い。

 

 ワンプレートに並ぶ色鮮やかな品々は食欲を誘い、バランスだって素晴らしいのだ。昔読んだ本に載ってたもんね。多分有名な作家であるウィリアム何とかさんが書いてた「英国で美味しい料理を食べたければ、朝食を三度摂ればいい」と。

 

 ん? なんか褒めてないような……ま、いっか。

 

 こんがり焼いたトーストとバター

 これも焼いた、まん丸可愛らしいキノコ

 熱々ソーセージとベーコン

 ふんわりスクランブルエッグと赤野菜

 ベイクドビーンズ

 ハッシュポテト

 ついでにフルーツも少々

 

 其々微妙に違うけど、異世界バージョンで頑張って真似ました。因みにオートミールは苦手なのでありません。

 

 これにお茶をプラスして完成だ。

 

「じゃ、お庭に行こうか」

 

「はい! 楽しみです!」

 

 うん、可愛い。

 

 以前からお外で朝ご飯を食べようと話してたけど、ようやく叶いそうだもんね。まあ色々あったから……ニートとかアーレに行ったりとか。いやいや、ニートは関係ないはずだ。

 

 ほんの少しだけ伸びた髪がターニャちゃんをより可愛いらしく魅せる。

 

 もう一週間以上経った王都での出来事は良い事ばかりじゃなかったけど、俺にとって最も幸せなのはターニャちゃんの変化なのだ。

 

 基本的にクールで、ツンツンしてる猫みたいな娘だったけど……ちょびっとだけ甘えてくれる様になった。なった!

 

 今朝だって"おはよー"のチューしてくれたし? まあ、お願いしないと駄目だけど……

 

 もう早起きだって余裕。寧ろ早く朝が来いって感じだよ、うん。

 

 サービングカートをゆっくりと押しながら、前を歩くターニャちゃんの背中とお尻を眺める至福。台車を押しますって言われたけど、絶対に渡さないもんね!

 

 グフフ……もはや俺達は恋人同士。いや、夫婦と言っても良いだろう! お風呂と同じベットで寝るのは未だだけど。

 

「今日は天気も良いし、朝からお姉様の手料理なんて最高ですね」

 

 振り返って嬉しい事を話してくれるターニャちゃん。当然だけど、お尻をネッチョリ眺めていた事はバレないようにします。自慢の魔力強化は目にも止まらない速さなのだ。

 

「ありがとう。でも料理ならターニャちゃんの方が上手だから……」

 

「そうですか? 私はお姉様の料理やお菓子、大好きです」

 

 キミは天使ですか⁉︎

 

 笑顔のターニャちゃん、可愛い!

 

 あぁ……幸せ……

 

 

 

 

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 

 

 

 我が家のお庭はかなり広い。

 

 スペインのフリヒリアナと言う小さな村をイメージして造成した。沢山の花々とあちこちに散りばめられた小屋と壁。基本的な配色は青と白で、彩り豊かなお花達が風に舞い踊っている。夜ならば魔法を使用したランプが幻想的に輝くが、朝は朝で最高だ。

 

 小高い丘に見立てたところにベンチとテーブルがある。丸い屋根と五本の白い柱。四方を見渡すことが出来て、風も緩やかに通り過ぎる最高のシチュエーションだろう。

 

 気が向いた時に一人で食べたりしてたけど、今日は二人で……

 

 カチャカチャとプレートとカップを並べるターニャちゃん。フォークとナイフもバッチリ。

 

「良い匂い。早く食べたいです」

 

「ふふ、お茶を入れたらね」

 

 魔力を送ると、ポットの中の澄んだ水がプクプクとお湯になっていく。沸騰したら先ずはティーポットに注いで温める。勿体無いけど其れは捨てて、煮立ったままのお湯を再度入れ直した。リーフが踊るのを暫く眺めればOK。まあプロの人だったら違うとか言われそうだけど。

 

「いつ見ても綺麗……お姉様の魔力って」

 

「そう? 何だか恥ずかしいな」

 

 才能(タレント)を使ってたのか、手元をジッと見てる。やっぱり何だか恥ずかしい。

 

「あの貴族の屋敷で見た魔力なんて、本当に乱雑で……」

 

 ミケルの事だろうけど、俺には多い少ないとか澄み具合ぐらいしか分からないからなぁ。

 

「余り言われ慣れないから不思議……私の魔法って戦闘向きばかりだもん。さあ、食べよっか」

 

「はい」

 

 景色が見え易い様に向かい合わせでは座らない。少し離れてるけど、隣り合う感じ。ターニャちゃんの横顔も最高だ。

 

「濃い香り……この茶葉、初めてですね」

 

 おっ! 流石ターニャちゃんだ。香りだけで分かったみたい。

 

「うん、昨日買ったの。折角だからね」

 

 ギルドからの帰り道に手に入れた茶葉だ。歩いているだけで色々と声を掛けられるけど、その中で珍しい茶葉って聞こえたからね。近付いて行くと店の人が嬉しそうにするのが面白いのだ。

 

「知らなかったな……」

 

 市場やお店の立ち並ぶ辺りで有名なのがターニャちゃんだ。

 

 ほぼ毎日の様に歩き回り、今や俺を超える目利きとなった。店の人も油断出来ないと緊張するらしい。凄い品を手に入れたと意気込んでいたら、ターニャちゃんに指摘を受けて意気消沈した人は数知れず。勿論恨まれるどころか、相手から鑑定をお願いされる程だ。

 

 秘密を聞いたら、魔素感知の応用との回答があった。良い品程に魔素が踊るらしい。うん、分かんない。他にも香りやら色やら、勉強も欠かさないのだから凄い。

 

 マジ最高の嫁(予定)だぜ!

 

「わっ……このお茶、美味しいですね」

 

「気に入った? 沢山買ったから好きな時に楽しんでね」

 

 嬉しそうに頷くと、続いてフォークを手に取った。少しだけ悩むと、ベイクドビーンズを最初の標的にしたようだ。ベイクドと言う名前から焼いてそうだけど、実際は甘辛いソースで煮込んだ料理。まあソースはオリジナルで優しく仕上げてます。

 

「これも美味しい……優しい味」

 

 ふんわり笑顔を見ればお世辞じゃないのが分かる。作り甲斐があるなぁ。

 

 ソーセージ、スクランブルエッグ、たっぷりバターのトーストと俺も口に運ぶ。

 

 うむ、美味い。

 

 一時期研究したのが良かった様だ。ソーセージはボイルした後、軽く焼き目を入れるのが拘りかな。

 

 いいなぁ。

 

 気温も丁度良くて陽の光も柔らかで……花も綺麗だし、鳥の囀りだって朝を彩る音楽だ。風が俺の髪を靡かせてサワサワと耳や首を撫でる。

 

 凄く気持ちいい。思わず目を閉じて感覚を研ぎ澄ませた。

 

 暫く身を任せていると、ふとターニャちゃんが静かだなと思った。瞼を上げ横を確認すると、こっちを見たまま頬が赤くなってる。俺が濃紺の瞳に視線を合わせても、やっぱり動かない。

 

「ターニャちゃん?」

 

 どしたん?

 

「……えっ? あ、はい」

 

 ちょっと吃驚顔で、益々赤くなる。ま、まさか……

 

「もしかして体調が悪いの⁉︎ 大変! 早く休んで……」

 

「ち、違います! 体調はばっちりですから!」

 

 でも真っ赤だし……熱があるのかな。

 

「ほ、本当に大丈夫です!」

 

 額を合わせようとしたら全力で逃げられた。うぅ……残念。まあ体調不良じゃないなら良いけどさ。

 

「そう? 無理は駄目だよ?」

 

「その時はちゃんと言いますから……」

 

 むぅ……やっぱり猫みたいだ。可愛いけど。

 

「そっか。あっ、水を足してくるね。お茶のおかわりしよ?」

 

「私が行きます」

 

 腰を上げようとしたターニャちゃん。偉いなぁ、気配り出来るよね、ほんと。

 

「ふふ。初めて此処で朝食するんだし、景色を楽しんでて」

 

 やんわりと肩を抑えたら大丈夫。

 

 よし、ついでにミルクも持って来よう。意外と合いそうだもんね。

 

「クロさんの言う通り、どれだけ見慣れても目が離せなくなる……か。これって、ヤバいよなぁ」

 

 ん? 何か言った?

 

 振り返って確認したけど、ターニャちゃんは前を向いて景色を堪能してる。

 

 あれぇ? 気の所為かなぁ。

 

 んー。ま、いっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日もお仕事ですか?」

 

「うん。其処まで難しい依頼じゃないし」

 

「それじゃ、夕ご飯作っておきます」

 

「あ、ありがとう! 夕方には帰るから‼︎」

 

 思わず大きな声になったけど、仕方が無い。無いったら無いのだ。だって至高の美少女ターニャちゃんが心のこもった手料理を作って待ってるんだよ? 最愛のひとが待つ家、何て素晴らしい……

 

「吃驚した……温め直せば良いご飯にしますから、無理しないでください」

 

「うぅ……もっと近場にしておけばよかった。戦闘自体はないんだけどね」

 

「そうなんですか?」

 

 不思議に思ったのか、コテンと首を傾げるターニャちゃん。くっ……もしかして狙ってやってる? まあ超級に求められる依頼なんて、普通は強い魔物とかだもん。

 

「意外かもしれないけど、色々と種類があるから……ほら、アーレで大変だったし、暫くは落ち着いた仕事にしようかなって」

 

「ああ、なるほど。超級ともなれば依頼の受諾も自由だって聞きました。やっぱり一般的な冒険者と違うんですね」

 

「まあ実際はそこまで自由って訳じゃ無いけどね。ウラスロのお爺さんが調整してくれたり、最近はリタが上手く捌いてくれるんだ。色々お願いしてるの」

 

「ふふ、自然に"リタ"って呼べるようになりましたね。何だか嬉しいです」

 

 頑張ったねって感じの生温かい視線……事実だけど、確かに最近ようやく呼び捨てになりましたけど! 

 

 ターニャちゃんってリタと仲良しだし、あとパルメさんやマリシュカさんとも。うぅ、何だか色々と筒抜けで恥ずかしい。偶にだけど皆んなでよく会ってるらしいし……

 

「そんな風に照れたりするから弄りたくなるのにね」

 

「ん?」

 

「いえ。そういえば依頼の種類って、魔物退治以外に何があるんですか? 戦う様なモノではなくて」

 

「えっと、一般的に多いのは調査依頼かな。植生の変化とか、季節の変わり目を事前に調べたり。勿論魔物の動向もね。季節の方は高い山とかに登って、雪解けや動植物を観察するんだよ? 結構専門の人も居て、戦闘力はある程度備わってればいいの。凄い人になるとその仕事だけでトパーズまで上がるから……つまり中級に達してるってこと。勿論他にも色々あるけどね」

 

「へぇ……その調査って私にも出来そうですか?」

 

「えっ?」

 

「そんなに驚かなくても」

 

 クスリと笑ってるけど、正直な話を言えば可能だろう。寧ろターニャちゃんならば超一流になるかもしれない。それだけの精神力も、そして才能だってある。でも驚いたのは其処じゃない。俺の元から羽ばたき、いつか遠くへ去ってしまうかもと思ったからだ。

 

「……多分大丈夫だと思う。でも、やっぱり危険が伴うし……ほら、他にも仕事なら」

 

 うぅ、情け無い独占欲だ。いつ迄も傍に居てほしい、そんな気持ちが抑えられないよ……

 

「お姉様って」

 

「え、何かな?」

 

「クロさんも、アリスお嬢様も言ってました。お姉様は()()()だって」

 

 ん? どう言う意味?

 

「ターニャちゃん?」

 

「ふふふ……もし仕事をするとしても、遠出なんて出来ません。だって、私にはジルヴァーナさんのお世話がありますから」

 

「……」

 

 えっと、つまり……

 

「お姉様?」

 

「は、はい!」

 

「真っ赤っかです、顔とか首が」

 

 ぎゃ、ぎゃーーー⁉︎

 

「プルプル震えてます、さらに」

 

 いやーーー⁉︎

 

「おおお、お、お世話なんて……私は世界に五人しかいない超級冒険者だよ⁉︎ どんな敵が来たって大丈夫だからね!」

 

「ええ、分かってます。それに敵とか言ってないですよ?」

 

 ニヤついてるぅ!

 

 うぅ、やっぱりこうなったぁ!

 

 

 

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