綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、願いが叶う

 

 

 

 

 長袖のシャツワンピは細身のターニャちゃんに凄く似合ってる。藍色を中心に、襟と袖は白。膝下まであるロングだから、涼しい地域でも大丈夫だろう。おまけに以前買ったキャスケット帽が小さな頭に乗ってて可愛さ倍増だ。

 

 素足のままでお願いしたが、結局レギンスを履かれてしまった。どうやらパルメさんか着こなしを教えて貰ったらしく、俺の意見が通り難いのだ。まさか隠してる願望がバレているのか……?

 

 因みに俺の装いだけど、カーキ色のパンツに白のトップス、陽気に合わせた黄色のロングカーディガンを重ねてる。勿論魔力銀だから、そのままって訳じゃないけどね。何となく春をイメージしてるのだ。知らない人には冒険者の装備に見えないだろう。街歩き用って言われても違和感ない筈。

 

 見た目って大事だけど、依頼者の人達が驚くのが面白い。最初は半信半疑でも、結果を見せたらまん丸お目々に変わって楽しいのだよ、うん。まあ最近は超級としてそれなりに知られて来たから、余り効果はないんですけど。

 

 

「ノー……ノーブル、えっと」

 

「ノールブレフツ。長閑で涼しいところだよ」

 

「ノールブレフツ……少しだけ言い辛いですね」

 

「ふふ、確かにそうかも。でも、きっとターニャちゃんも気に入るわ。だって……」

 

 ノールブレフツは人口百人程度の小さな村だ。

 

 そして有名な生産品は蜂蜜。かなり希少な特産品で、それを利用したお菓子や加工品も種類がある。あとミード、つまり蜂蜜酒も美味しい。まあ俺はアルコールに弱いから飲まないけど。

 

「わぁ、蜂蜜ですか? ずっと探してたんです!」

 

 マリシュカさんから聞いたのだ。質の良い蜂蜜がなかなか手に入らないなとターニャちゃんが溢してたって。確かにノールブレフツの蜂蜜は高級品で、王都や他国への販売が殆どだからね。だからアートリスで手に入れるのは簡単じゃないんだよ? 安物には混ぜ物も多いし、偶にゴミが入ってたりするもん。

 

「うんうん。季節によって蜂が集める花の蜜に種類があってね。もちろん野花が一番多いけど、中には特定の果樹からだけ集めたモノがあるの。今の季節だとマルースの白い花が咲き始めるから、その蜜だけって珍しい蜂蜜が店頭に並ぶんだ。仄かに香りがして不思議なんだよ?」

 

 因みにマルースとは所謂[林檎]だ。真っ赤な品種の甘いヤツ。

 

「マルースの蜂蜜……そんなのがあるんですね」

 

 市場でマルースは見た事あるだろうけど、林檎の花だけから採れた蜜なんて中々口に入らないもんね。

 

「出来たて、いや絞り立て? よく分からないけど、味見もしてみようね」

 

「はい! すっごく楽しみ!」

 

 ああ可愛い。俺のすぐそばでターニャちゃんの笑顔が咲いたのだから当たり前か。何より両手や全身から感じるターニャちゃんの体温……こんな幸せがあるなんて、きっと日頃のご褒美なのだ、うん!

 

 そう。遂に、遂に叶ったのだ。

 

 お姫様抱っこが!

 

 アーレへの旅の途中に少しだけ抱えたけど、あの時はターニャちゃんの体調が悪かったし、余り嬉しい事じゃなかった。しかし今は違う。体調はバッチリで、何より楽しそう。

 

 つまり至高。

 

 右腕には背中の温かさ。左腕には柔らかな太ももの感触。レギンスが無ければもっと良かったけど。更に言えば、落ちないように此方に抱き着くようにしてるのだ。俺の立派なオッパイが潰れる程に……まあ本人は景色とかに夢中で気付いてない。

 

 つまり至福。

 

 何だコレ⁉︎ 凄くサイコーなんですが⁉︎

 

 ちょっとだけゆっくりにしよう。早くノールブレフツに着いちゃったら、この幸せを手離さなくてはならないのだから。

 

 まさかアッサリOKしてくれると思わなかったから、誘った時はターニャちゃんを瞳を二度見しましたよ、ええ。

 

 

 

 

 

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 

 買い物から我が家に帰ると直ぐに声を掛けた。

 

「旅行?」

 

「うん。まあ旅行と言っても一泊か二泊くらいの小旅行だけどね。ターニャちゃん毎日頑張ってくれてるし、マリシュカさんに労りが足りないって怒られたの。それにアートリス以外だと、まだ余り知らないかなって」

 

「そんな……大切にされてるのは私の方ですから。でも興味があります」

 

「良かった! 実は行き先も考えてるの。勿論ターニャちゃんの行きたいところがあったらソッチもあり! 何か希望とかあるかな?」

 

「希望ですか? うーん、無理にとは言わないですけど、美味しい物が食べたいです。珍しい食材とか調味料とか。もっと料理の幅を広げたいなって……お姉様は何でも喜んでくれるので、作るのも楽しくて」

 

「……ターニャちゃん」

 

 貴女は天使ですか⁉︎ 今でもプロ級の腕前で、しかも食材とかの目利きに至ってはアートリストップクラスらしいのに! そんなターニャちゃんが俺の為に……ねえ? 今からお風呂行かない? またツェルセンみたいに二人で入ろ? ずっと抱っこしてたいよ。

 

「でも、お姉様にお任せします。行き先が分からないのもワクワクするし」

 

 うーむ。最近ホントにどうしたんだろう? 何だか凄く優しいし、気の所為か距離まで近いよ? お早うのチューだって毎朝の日課だもん。勿論凄く嬉しいけどさ。

 

 もしかしたら勘違いしてるのかな。アーレで迷惑を掛けたとか、お荷物にならない様にとか……そんな風に思ってる? 頭が良いし気遣いも出来るから、俺が喜ぶ様に対応してるとか有り得るかも。お荷物どころか、もうターニャちゃん抜きの生活なんて考えられないのにな。

 

「ねえターニャちゃん」

 

「はい、何でしょう?」

 

「前から言ってるけど、もっと我儘にしていいんだよ? 私はターニャちゃんが笑顔で居てくれたら満足だし、こうやって二人で過ごせる事が何よりも大事なの。料理だって自分の食べたい物とか、献立を考えるのだって大変でしょう? 違ってたらゴメンなさいだけど、キミを小間使いにしたくて保護したんじゃないの。もし負担に感じてるなら……ど、どうしたの?」

 

 最初真剣に聞いていた様子だったが、話が後半に進むにつれて口がポカンと開き始めた。最後辺りで呆れた様に此方を眺めると、ハァと深い溜息を一つ。

 

「クロエさんの言う通りですね」

 

「えっと……」

 

 クロエさん? 何の話だろう。

 

「お姉様」

 

「は、はい」

 

 あれ? 少し怒ってる?

 

「私の方こそ前から言ってます。お姉様と出会えて幸せだって。もしかしてお世辞と思ってますか? 妙なところで自信がないとクロエさんが言ってましたけど、その通りみたいですね。だから、しっかり私の話を聞いて下さい」

 

「え、うん」

 

「いきなり見知らぬ場所に飛ばされた少女がいます。右も左も分からず、ただ呆然と座り込むだけ。そんな時、緑色した魔物が現れて、戦う術を持たない少女は絶望しました」

 

 うん、最初の出会いだね。

 

「もう駄目だと諦めたとき、目の前にとても美しい女性が現れたんです。その人は今まで見た事も無いほど綺麗で、夢かもと現実感すら曖昧になりました。あっさりと魔物を倒すと、更に街まで連れて来てくれて、美味しいご飯と寝心地抜群のベッドまで……それどころかまるで妹の様に、いえそれ以上に愛情を注いでくれる。だから、その少女にとって見知らぬ街は大好きな街に変わりました」

 

「ターニャちゃん……」

 

()()そんな誰よりも優しい()()()にたくさん甘えて、自分の好きな事をずっとやり続けています」

 

「好きな事?」

 

「幸せを運んでくれるお姉様が、恥ずかしそうに顔を赤らめたり、プルプル震えるのを見るのが堪らなく好きなんです、私。ごめんなさい」

 

「ええ……⁉︎」

 

 偶におかしいなと思ってましたけど!

 

「悪戯しても、どんなに我儘しても、お姉様は笑って包み込んでくれる。もしこれが不幸せなら、世界に幸福なんて存在しないでしょう。だから、コレからも宜しくお願いします」

 

 ペコリと頭を下げたターニャちゃん。何だか唇がニヤリと歪んでませんか⁉︎ やっぱり冗談? どこまでが本当なんだろう。

 

「もう! ターニャちゃん、酷くない⁉︎」

 

「ふふっ、私は最初からずっと我儘ですよ。寧ろお姉様こそもっと我儘に振る舞って欲しいくらいです」

 

「いいの⁉︎ じゃ、じゃあ」

 

「お風呂は恥ずかしいから無理ですよ?」

 

「……」

 

「あと一緒に寝るのもちょっと……落ち着きません」

 

「……やっぱり酷くない?」

 

「他に無いですか?」

 

 他に、他にか……そうだ、コレはチャンスでは⁉︎

 

「それならさ」

 

「はい」

 

「今回の旅行だけど、近いし馬車は使わないつもりなの」

 

「では歩きですか? それくらい全然大丈夫です」

 

「ううん、歩きだと流石に遠すぎるよ。だから、ね。えっと、つまり……ま、魔力強化なら早く着くかなって」

 

「? 私は魔力強化が……」

 

「分かってる。ほら、私が、ターニャちゃんを……だ、抱っこして行けばいいかなって……勿論変な意味はないよ! く、擽ったく無いように気を付けるし!」

 

 下心よ、バレるな! 太もも触りたいとか、ギュッとしたいとか!

 

「ああ、成る程。幾つか質問いいですか?」

 

「ど、どうぞ」

 

 だ、大丈夫な筈だ。ちょっとナデナデしたいだけだよ? 

 

「まず単純に大丈夫なんでしょうか? 速度に耐えらなくて迷惑を掛けたり」

 

「全力は出さないよ? 危ないから」

 

 整った顎のラインに白い人差し指を添えた。少し傾けた顔、可愛すぎるでしょう。やっぱり狙ってやってるのか⁉︎

 

「そもそもお姉様に負担が掛かりませんか? 私を抱えて遠い場所まで運ぶなんて大変だと思います」

 

「負担? 全然大丈夫! 寧ろ超大歓迎……えっと、魔力強化は力を増す方に割り振る事も出来るから、ターニャちゃんを何人も持ち上げて走れるよ? 普段の装備だってかなり重いからね」

 

「そうですか。最後に一つだけ」

 

 あ、あれれ? もしかしてOKな感じ?

 

「余り人に見られるの恥ずかしいなって。子供みたいに抱っこされてだと」

 

「普段から街道は使わないの。ぶつかったりしたら大変だし、馬車の行き来が多いから速度が出せないのもあるかな」

 

 それと子供みたいな抱っこじゃくて、お姫様抱っこですから!

 

「それなら……負担が無いのならお願いします。それに少しでも魔力強化を体験してみたいですね。普段お姉様が見てる世界を目に出来たら嬉しいかも」

 

 ジェットコースターに乗る感じかな? そんなか細い声が聞こえたけど、つっこんでる場合じゃない。だって、だってさ、念願のお姫様抱っこ出来るんだよね⁉︎

 

「ホントにいいの⁉︎ や、やったー‼︎ もう取り消しは出来ないからね? 決まりなんだから!」

 

「いや、何でお姉様が喜ぶんですか?」

 

 不思議そうにしてる瞳を二度確認したが、冷やかしではないようだ。おお……ワクワクしてきた!

 

「出発は明日ね? ターニャちゃんの気が変わらない内に抱っこしないと」

 

「目的が変わってますが」

 

「ま、間違い! 旅行に、ね!」

 

「はあ」

 

 兎に角、願いが叶ったね!

 

 

 

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 

 

「信じられない……! こんな速度なのに、揺れないし風も少しだけなんて!」

 

 俺の胸の中、ターニャちゃんは感嘆の声を上げる。

 

 最高速なんて危ないから無理だけど、車くらいの速度は出てるかな。街道から離れてるから、人通りも馬車も見えない。当然に樹々や岩などの障害物が存在するが、其れこそ問題になる訳がないのだ。

 

 戦闘中は敵と言う障害物を見極めながら、同時に剣や魔法を使う。つまり、ただ前に向かって走るなんて俺には大した事じゃ無いからね。

 

 まあ子供の頃は未熟だったから何度も失敗しました……思い出してみたら、よく死ななかったよな。頭から血を流して帰った時、お母様から滅茶苦茶怒られたっけ。治癒魔法で治したから大丈夫と説明したけど火に油だった。

 

「お姉様! もうもっと速く出来ますか?」

 

「出来るけど、怖くない?」

 

「最高です! こんなの!」

 

「じゃあもう少しだけね」

 

 約一割ほど魔力を多めに注いだ。それだけでもグンッと前に押し出される感覚を覚える。因みにこの感覚、俺も好きだったりするのだ。

 

「凄い! 気持ちいいです!」

 

 そう? 俺はターニャちゃんを全身を感じて気持ちいいです。その楽しそうな笑顔なんて最高なんだから。

 

 

 

 

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