綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、感じる

 

 

 

 

 

 

「そんな訳で最高の旅でした。教えて貰ったお陰です」

 

「そうかいそうかい、良かったじゃないか。お土産まで貰って私も嬉しいよ」

 

 ノールブレフツから帰り、今はマリシュカの店でお話しをしてるのだ。お土産の蜂蜜を渡すのもあったけど、幸せを誰かに伝えたくて来てしまった。

 

 流石に二人ベッドで寝た事は言えないけど。あ、思い出しちゃった。

 

「……急にだらしない顔だね。何を想像してるんだい、全く」

 

「べべべ別に、何でもないですから!」

 

 目を覚ましたターニャちゃんは慌てて飛び起きると、此れは違うんですと言い訳を始めたのだ。どうやら酔っ払った俺を部屋まで運び、横たわらせたものの全く離れなかったらしい。記憶にないけど、その時の俺を褒めてやろう。

 

 脱出も叶わず、疲れていたターニャちゃんもその内に眠った訳だ。良くやったぞ、俺。

 

「どうせ姉馬鹿全開で、ターニャを困らせたんだろうさ。これじゃどっちが姉か分からないねぇ」

 

「……」

 

 おかしいな、反論出来ないぞ?

 

「それで、愛しの妹は何処にいるんだい?」

 

「えっと、今頃はパルメさんのお店かな」

 

「パルメの所に別行動なんて珍しいじゃないか」

 

「聞いてくださいよ! 下着を買いに行くって話で、私も一緒の筈だったんです。でも、何故かターニャちゃんから別行動をするよう言われて……可愛いのを沢山買う予定だったのに。試着も予め頼んでたんですよ?」

 

「……ターニャに同情するよ」

 

 呆れた様にため息を溢すマリシュカさん、なんでさ?

 

「アンタ、余りベタベタすると嫌われるよ?」

 

「ベタベタなんて……」

 

「何で赤らむんだい……重症だよホントに。そもそも褒めてないからね?」

 

 他から見てもラブラブに見えるって事ですね? いやぁ、困ったなぁ、グフフ。

 

「帰ったら下着を確認しないと。ええ、姉として外せない大事な責任です」

 

「アンタ……ジルってそんな女だったかい? まあ面白いからいいけどさ」

 

 すると、お店の扉が開いた。定番の小さなベルが鳴ったのだ。

 

 小さな人影はキョロキョロと店内を確認している。勿論至高の美少女ターニャちゃんだ!

 

「こっちだよ! アンタのお馬鹿な姉もね!」

 

「おばさま? 失礼ですよね?」

 

 俺のツッコミはアッサリと無視された。何だか最近扱いが雑じゃない?

 

「マリシュカさん、こんにちは」

 

 ペコリと頭を下げるターニャちゃん、やっぱり礼儀正しい。

 

「はいよ、こんにちは。此処に座りな。お茶を入れて来るからね」

 

「いつもありがとうございます」

 

 随分慣れた様子のターニャちゃんは俺の隣に座った。良く会ってるみたいで、パルメさんやリタもそうだ。何だか仲間外れになったみたいでちょっと寂しい。

 

「ねえターニャちゃん。皆とよく遊んでるみたいだけど……」

 

「そうですね。良くして貰ってます」

 

「た、偶にで良いから私も参加したいなぁ」

 

「うーん……会長の意見を聞いてからですね」

 

「会長? えっと、誰かなソレ。お姉さんに詳しく……」

 

 何処のオヤジだよ⁉︎ 俺のターニャちゃんに変なことしたら許さん!

 

「お茶入ったよ。熱いから気を付けて」

 

「あ、此れって雪鳴(ゆきなき)の特級ですね」

 

「すぐ分かるなんて凄い娘だよ。当たりさね」

 

「市場のみんなや、お姉様にも色々と教えて貰ってますから」

 

 確かに初めて会った日に飲んだけど、そこまで詳しく伝えてないですが?

 

「全く良く出来た娘だねぇ。そうだ、ターニャ。旅の話をしておくれよ。土産話ってやつさ。アンタの姉の話は偶に要領を得なくてね」

 

 いちいち失礼です!

 

「はい! 沢山話したい事ありますけど、印象深いのは……ノールブレフツまでの間お姉様の魔力強化で……」

 

 まあこれだけ楽しそうに語ってくれるなら、旅は正解だったな。

 

 その笑顔だけで満足だよ? 

 

 心からそう思うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉様?」

 

 帰り道、突然立ち止まった俺にターニャちゃんも不思議そうにしてる。だけど今はちょっとだけ待って欲しいかな。

 

 アートリスをはじめ、普段街中では魔素感知を多用しない。人が多過ぎるし、精度を求めるならある程度の集中を必要とするからね。そもそも外と違って危険性に雲泥の差があるし。

 

 それでも職業柄か、変わった動きや気配に敏感なのだ。

 

 その時は魔素感知を行い、しっかりと確認する。しかし感知には特別な異常を感じなかった。

 

 何だ? 何か引っかかる。

 

 此れは……人の視線だろうか? 街中を歩けば視線に晒されるのは当たり前。老いも若きも関係なく、男達は超絶美人の俺を熱に浮かされた様に見詰める。だから、意識的に無視だって出来るし、逆に利用も可能だ……すいません、少し大袈裟に言いました。

 

 でも、いつもと違う?

 

 位置が掴めない……これはかなり厄介な相手かも。冒険者連中にも色々居て、中には暗殺者染みた奴等もいるからね。気配を消したり、市中や森に溶け込む技術を磨いた変態だって存在するのだ。まあ害意を持てば即座に見付けるけど。

 

 俺に来るなら良いが、もしターニャちゃんに何かしてみろ。絶対に見つけ出してお仕置きするからな。

 

 隣にいるターニャちゃんに分からないよう、それでも相手に伝わるよう意識を向けた。するとあっさりと視線が消える。ふむ、益々厄介な奴だな。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

 おっと、ターニャちゃんが不安そう。此処は必殺のジルスマイルをプレゼントだ!

 

「ん? ごめんごめん。何だか良い匂いがするなぁって。きっとターニャちゃんくらいの凄腕料理人が」

 

「なんで嘘を? いま、魔素感知をしましたよね?」

 

「えっと……」

 

 魔素特化型のターニャちゃんだけど、まさか日常の中で気付くなんて……正直吃驚だ。それに、ちょっと怒ってる。

 

「その雰囲気、まるで王都の地下で戦った時のお姉様みたいでした。何の役にも立たない私ですけど……そんな誤魔化し嫌いです」

 

「ターニャちゃん……」

 

 何だか格好良い。でも、巻き込みたくない。

 

 暫く見詰め合って、街の喧騒も遠く感じる。

 

「……もういいです。帰りましょう」

 

 プイと前を向くとスタスタと歩き出す。うぅ、どうしよう。怒ったよね、やっぱり。でも今回はあの超お馬鹿なミケルなんて相手にならないレベルだろうし……いや、知らない方が危険かな?

 

「ね、ねえ」

 

 するとターニャちゃんは立ち止まり、振り返って俺を見上げる。

 

「すいません、嫌な態度を取って。お姉様は世界に五人しかいない超一流の冒険者なのに。私みたいな子供が偉そうにしても……」

 

 すぐに伏せられた濃紺の瞳は揺れていた。やっぱりターニャちゃん、変わったよね。

 

「ううん、私こそごめんなさい。怒ったのは心配してくれたからでしょ? それに……滅多な事はないと思うけど、お家に帰ったらちゃんと説明するね」

 

「……はい」

 

 不謹慎だけど哀しそうな感じ、可愛いんですが!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 

 先ずは買って来ただろう下着類を片付けるぞ。

 

 全部試着して貰いジルちゃんチェックを行う手筈だったが、流石にそんな雰囲気はない。因みに、片付けのお手伝いも断られたんですが……ねえ、どんなの買って来たの? サイズアップした至高のお胸は? お姉さんに教えてよ、お願いだから。

 

「直ぐに行きますから、待っていて下さい」

 

 パタリと閉じた扉の向こうにターニャちゃんは消えて行った。

 

 ちっ……あの不審者め、絶対に許せないな。

 

 トボトボとリビングに向かう。仕方ない、先ずは甘いお菓子でも用意しよう。

 

 お菓子とジュース……まあ果実水だけど、其れ等を並べ終えた頃ターニャちゃんがリビングに入って来た。

 

「お待たせしま……そういうの私がしますから」

 

「もう、やめてよ。召使いじゃないんだから、気付いた方がすればいいでしょ? さあ座って」

 

 とか言いながら、ご飯は殆どターニャちゃんが作ってますけどね。

 

「はい」

 

 ちょこんと席に着いたのを確認し、俺も向かい側に座る。本当は横に座るか、膝の上に抱っこしたい。

 

「じゃあ、説明するね。お菓子でも食べながら聞いてくれたら良いから」

 

「分かりました」

 

 ジュースを一口だけ飲み、コトリと置いたグラスから視線を離して俺に向ける。真剣な眼差し、綺麗。

 

「ターニャちゃんの言う通り、さっき魔素感知をしたわ。人が多い場所だと集中する必要があるから、あんな感じになっちゃった。魔物相手なら簡単なんだけどさ」

 

「はい。それで誰だったんですか?」

 

「分からない」

 

「分からない? お姉様でも?」

 

「うん。今のターニャちゃんなら理解してると思うけど……相手が魔素を使い熟す知識を持ってたら、感知だって万能じゃないの。妨害したり、ボヤかす事だって出来る。ほら、訓練でも私の魔素を動かすでしょ?」

 

「それは……かなり限定した条件下です。余程近くで、しかもお姉様がじっとしてるから。あ、プルプル震えてますけど」

 

「う、うん。それは置いておいて。とにかく、そういう技術に長けている人もいるわ。かなり数は少ないけどね」

 

「魔力と魔素を区別してる人の方が希少だと教わりました。寧ろ、魔力偏重だそうですね」

 

 さすがターニャちゃんだ。ジル先生の言葉を覚えてるね。あれは最初の授業だったかな。また美人女教師になって遊ぼう。まあ魔素感知が広まった事で、魔力偏重主義も多少変化したのかもしれない。

 

「その通りよ。でも全員じゃない。クロもそうだし、無意識に扱う天才だってきっと居るでしょう。そして魔素の知識を有し、扱う人はほぼ例外無く腕が良い……厄介な事にね」

 

「つまり、お姉様の魔素感知をすり抜ける厄介な人間なんですね。先程の相手は」

 

「悪意を持たれたり、攻撃する意思を表に出したら絶対に分かるわ。そもそも魔素感知だけが全てじゃないからね。だから心配しないで大丈夫だよ。私が誰か知ってるでしょ?」

 

 張り詰めた空気なんて要らないぜ。ジルスマイルで安心させてあげよう。俺は基本的に一人で活動する冒険者だから、感知系は特に鍛えてある。おまけに、男達が涎を垂らしそうな超絶美人だし!

 

「勿論です。それでも、お姉様が警戒したのは私が居たから。自意識過剰かもしれないですけど、クロさんにも注意されました。世界最強の冒険者、魔剣ジルの弱点は私だって。ですよね?」

 

 お、おう。やっぱり頭が良いな……思い切り正解です。弱点じゃなんかじゃないけど! ターニャちゃんが居るから頑張る事が出来るのだ!

 

「大丈夫。もうアーレの時みたいに怖い思いなんてさせないからね? それに街のみんなが居るし」

 

「魔剣の妹である限り、常人では務まらない。クロさんはそう言いました」

 

 まさか此処から離れていくつもり⁉︎ そんなのダメ!

 

「嫌なこと言わないで! 私は……」

 

「ですから、お姉様の邪魔をする人が居たら、お仕置きしないといけません。徹底的に、逆らう気力が消え去るまで叩きましょう。ただ普通に過ごしているだけなのに、許せないですね」

 

 う? 何だか予想と違うんですが? 滅茶苦茶怒ってらっしゃる……静かな感じが余計に怖い!

 

「えっと……」

 

「このアートリスでお姉様の敵になる事がどれほど愚かな事か、その相手は理解していない様です。少し学んで貰いましょうか」

 

「タ、ターニャちゃん?」

 

「はい」

 

「お、落ち着いて」

 

「私は落ち着いています」

 

 いやいや、目が据わってますよ⁉︎ そもそも敵と決まった訳じゃ……

 

「お願いだから変なこと考えないで。戦ったりなんて駄目だからね?」

 

「戦う? ふふ、まさかそんな事しないですよ。私は冒険者や騎士じゃないんですから」

 

 やっぱり目は笑ってない。至高の美少女だけに、綺麗な女の子が怒ったらこんなに怖いのか⁉︎ 初めて知りました!

 

「さあお姉様、お風呂に入って来て下さい。私はご飯を作ります。着替えはいつものところに纏めてますから。今着ている服は籠に入れてくださいね?」

 

「あ、はい」

 

 立ち上がったターニャちゃんは厨房へと向かう。いつもの様に揺れる小さなお尻を眺めながら、俺は暫く動けなかった。

 

 何だか考えてた反応と違う気がする。

 

 あ、あれぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 、

 

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