綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、現実逃避する

 

 

 

 

 今はスカベンジャーの三人を捕まえてアートリスに向かってるところです。

 

 槍蒼の雨との戦い?

 

 だって特に話す事ないもんなぁ。ジアコルネリが突っ込んで一瞬の内に二人を倒したし、最後の一人はピピが背後からナイフを当てて武装解除。まあジアコルネリが相当な腕前だって吃驚したくらいかな。

 

 あと証拠隠滅とか言ってたけど、普通に考えて無理でした。

 

 槍蒼の雨の皆が居るのに物騒な事なんて出来ないし、そもそもそんなのヤダ。それに、よく考えたら俺のことを知ってても、魔剣とジルヴァーナを合致させるのは難しいだろう。

 

 ま、何とかなる、きっと、多分。

 

 

 

 

 

「おら、とっとと歩け」

 

 ブルームが最後尾の野郎に言いながらお尻を蹴飛ばした。痛そう……

 

 双子の片割れブルームは治癒魔法を使うヒーラーだけど、言葉使いどころか手も出る乱暴者だった。もう一人のブランコは静かなものだし、イメージと実際が逆だよな。

 

 左側ではジアコルネリが剣をチラつかせ、偶に睨み付けたり。マウリツさんは距離を少しだけ取って全体的に把握してる感じ。て言うかピピは何処行ったんだ? 姿が無いんだけど……

 

 周りの景色に変化は無いかな。深い緑、背の高い樹々とフカフカの腐葉土や根っ子。青臭い香りは強くて獣や鳥の声が偶に聞こえる。まあこの森は凄く広いし、抜けるまで時間が要るのだ。夜通し歩いてもアートリスに着くのは明日ってところ。結局三日も掛かるなんて、はぁ。

 

 うーむ、早く帰りたいなぁ。ターニャちゃんは何してるだろう。

 

「痛え! 何しやがるんだ‼︎」

 

「デカい声だすな、阿呆」

 

「や、やめろって!」

 

「ちっ。おいジアコルネリ、もう一度だ」

 

「ひっ……分かった! 歩くよ‼︎」

 

 素振りを始めるジアコルネリ。所謂寸止めをするんだけど、目標は阿呆達の顔だからね。さっきもやったのに懲りない奴等だなぁ。

 

「歩くだけなら脚があれば良いんだ。縛ってる縄も勿体無いし腕を斬り落とすか? 止血なら任せろ」

 

「歩いてるだろ⁉︎」

 

 ……ブ、ブルームさん? あのぉ、マジで怖いんですが! 台詞もそうだし視線がヤバい。ごく普通のオジサンに見えてたけど考えを改めよう、うん。それと、ジアコルネリも張り切るんじゃない。お前の剣速って相当だからな?

 

「まあ落ち着け。さて、そろそろ休憩を入れるか。その間に話を聞かせて貰う。正直に話すなら引き渡しの時に口添えしてやるぞ?」

 

 此処でマウリツさんが登場。うむ、渋い。それに、これって尋問で定番の怖い人プラス優しい人の役割分担だよね?

 

「けっ、引き渡し? 口添えだぁ? 俺達がスカベンジャーだからって舐めるなよ? 大体何の罪になるってんだ、ああ⁉︎」

 

 この髭モジャ、ホント小物臭が凄いなぁ……爪や指も汚いし、歯も真っ黄色。武器の手入れもダメダメで、水浴びもしてないっぽい。臭そうだから距離をもっと取ろう。

 

 あ、因みにだけど、残り二人は猿轡されて喋れないよ?

 

「やっぱり知らなかったか。いいか? ここは大熊(ウルス)の住う森だ。だからツェツエの法により厳しく制限されている。例えば括り罠などは最悪の一つだな。はっきり言うが……」

 

 下手したら死刑だぞ? 淡々と話すマウリツさんを見て、髭もじゃ達は青くなった。

 

「ハ、ハッタリだ。ビビらせようとしても……」

 

「変幻した"呪われた大熊(カースドウルス)"の討伐証明もある。ああ、バンバルボア帝国では名前が違ったか?」

 

 故郷を簡単に言い当てられ、静かになっちゃった。マウリツさん、格好良いっす。

 

「あの帝国とツェツエは敵対関係に無い。しかし友好を深めた仲でもない以上、貴様等の処遇はアートリスで決まるだろう。キリキリ吐いた方が得策だと思うが」

 

 やっぱり淡々と無感情に話すからリアリティがヤバい。スカベンジャー程度じゃダイヤモンド級の凄味に対抗なんて無理だし、脂汗が流れてるのが分かる。

 

「わ、分かった。話すよ! 誓ってウルスを害するつもりは無かったんだ! ただ、食糧が欲しくて……」

 

「食糧? ふん、そんな阿呆らしい理由を信じろと言うのか?」

 

「本当なんだ‼︎ 此処がそんな森なんて知らなくて……な? 信じてくれ!」

 

「つまり、食べ物が必要で括り罠を仕掛け、偶然にウルスの子供がって事か?」

 

「そうなんだよ‼︎」

 

 必死の形相だけど、最初から分かってる。マウリツさんの狙いは其処じゃないもんなぁ。うぅ、どうしよう……

 

「死神キーラ」

 

 思い切り身体を震わせる髭モジャ。あーあ、正直に表に出しちゃ駄目じゃん。

 

「……」

 

「ダンマリか? じゃあ終わりだな」

 

「……話すよ。だから俺達をヤツに引き渡すのだけはやめてくれ!」

 

「内容次第だ。さぁ、話せ」

 

 本格的な尋問が始まっちゃった。

 

 チラリと俺の居る方に視線を送り、分からないように頷くマウリツさん。格好良いけど……

 

 え? 俺?

 

 当然コイツらに会う前から隠蔽魔法を使っていますけど? もしかしたらもあるし、此処で姿を現したら更なる混乱を生む……それとコイツらに見られたくない。

 

 マウリツさんも良い方に勘違いしてくれてるから、そのまま放置してるのだ。

 

 うーむ、何とか有耶無耶にならないかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジアコルネリが鞘から剣を出したまま立っていて、他は腰を下ろして会話が続く。スカベンジャー連中は縛られたままだから、座るのも一苦労。まあ誰も同情してないけど。

 

「キーラは、ヤツは……宝珠皇女の世話係だ」

 

「ほーじゅこーじょ? なんだそりゃ」

 

「皇女だよ! つまり、帝国のお姫様で」

 

「何てお馬鹿な嘘を吐くんだよ……死にたいのか?」

 

「嘘じゃねぇよ! 信じてくれ!」

 

 ブルームは心底呆れたって感じで髭モジャを睨む。

 

「説明するのも馬鹿らしいが……何でそんな御方の世話係がツェツエに居るんだ? まさかその宝珠皇女とやらが来国してるって言うのか? はぁ、阿呆らしい。大体そんな方が来られたなら噂が立つし、ツェツエ王家だって反応してるだろう」

 

「んなことぁ分かってる。だから俺達だって驚いて街を離れたんだ」

 

「ふん。そのキーラとやらは筋肉隆々の大男、いや名前から言って大女か? ああ、ナイフや弓矢の扱いに長けた冒険者上がりや裏家業出身者だろうなきっと。そんなヤツが皇女殿下の世話係とは、バンバルボアって余程変わった国だ」

 

「な、何を言ってるんだ?」

 

 話すのも馬鹿らしいと、ブルームは横を見た。マウリツさんも察して話を受け継ぐ。

 

「お前達を捕まえる前、会話を全部聞いたよ。何処までも追いかけて来る、気配なくそばに接近される。そして通り名が"死神"。つまり、そんな物騒な奴が皇女の世話係なんて有り得ない。そうだろ?」

 

 髭モジャが「言われてみれば」って顔になり……ってコラ! もう少し頑張れよ‼︎

 

「ま、待ってくれ。そっちは他国の人間だから知らないだろうが、宝珠皇女は凄まじい御転婆で、オマケにとんでもない戦闘力を持つ変わり者として有名なんだ。だから」

 

 ああん⁉︎ 誰が変わり者だって? しかしおかしいな……表向きは清楚な皇女として振る舞ってたはずなのに。それに帝国だって表立って発表してないよな?

 

「バンバルボアでは意外と知られてる。宝珠皇女の世話係と言えば常識外れの化け物ばかりだって。そうでもないと抑えられないから"被害者の会"、いや"ジルヴァーナ捜索隊"は凄腕の連中が集まる組織になったらしい」

 

 ふーん、有名なんだね……あ、あれぇ?

 

「ジルヴァーナ? それが皇女殿下のお名前か?」

 

「ああ」

 

「死神キーラとやらの二つ名持ちが世話係……間違いなく表向きの身分で誤魔化してる。つまり凄まじい戦闘力を誇る皇女を戴く秘密組織ってとこか? なあマウリツ、コレって事実なら相当にヤバい情報じゃないか? しかも、そんなヤツがツェツエの要衝であるアートリスに来てるなら……おまけにアーレまで馬なら三日で着く」

 

「事実ならばだが……内部工作、いやもっとタチの悪い手も……ツェツエに混乱を招く気か。何としても捕らる必要があるな」

 

 あばばばば……ち、違いますぅ‼︎ キーラはそんな危ない娘じゃないし、この間なんて箒片手にお掃除を頑張ってくれたんだよ⁉︎ それに、どちらかと言えば危険物なのはお母様ですから!

 

 アカン……ど、どうしよう?

 

 おい!髭モジャ‼︎ 俺は超絶美人で危なくないって説明しろよ! ん、ん? い、いや、詳しく説明されたら困る……うぅ、何でこんなピンチになってるんだ……

 

「お、おい、そんな物騒な皇女じゃ……いや、有り得るのか? 態と御転婆を演じ力を蓄えて……噂に聞く魔法の腕が本当ならおかしくない?」

 

 ギャー! お前まで勘違いを加速するじゃない!

 

「下手をしたら戦争ものだぞ。今なら止められる、いや止めなければ……両国それぞれが大陸を代表する大国だ。お前たちだってコトのヤバさが分かるだろ? その死神キーラの特徴や外見を話せ」

 

 髭モジャ達は顔色が変わり、凄く冷たくて張り詰めた空気になった。まあツェツエ王国転覆を企てる秘密組織がアートリスに居るわけだし。そりゃ大変だよね、うん……いやいやいや、マジでやめてくれ‼︎

 

「……キーラは、ブロンド髪で垂れ目と撫で肩。瞳は明るい緑で、ぱっと見は少女染みてる。知らなければ可愛らしい娘って感じだ。丁寧な口調と無表情、よく青目なメイド服を着てた。とにかく気配が希薄で、すぐ近くに居ても分からない……それと、追跡術もとんでもねぇ」

 

 おい、ぱっと見じゃなくて本当に可愛いからな? 抱っこしたいもん、いつも。

 

「ホンモノに限って見た目や空気は普通な事が多い。間違いなく凄腕だな」

 

 凄腕って……

 

「やはり殺し屋か? 能力的に見ても何か才能(タレント)が有りそうだ」

 

 うぅ、違うんだって! この流れやめない? でも残念なことに全員が真剣な顔して話し合ってる、ジルちゃん以外。

 

 仕方無い。アートリスに帰ったら急いで報せて、暫く屋敷から出ないように言おう。ギルド総出で探されたらヤバい。冒険者にはそれ向きの才能持ちも居るし、正規軍まで伝わったら最悪だもん。

 

 隠蔽魔法を使ってて正解だったな。落ち着いて考えること出来るし。よし、マウリツさんを内緒で呼び出して先に帰りますって伝えなきゃ。

 

「最悪を想定しよう。そのジルヴァーナ皇女殿下だが……さっき言ってたな、とんでもない戦闘力だと。どんな人なんだ?」

 

 ひぃ⁉︎ マウリツさんやめて‼︎

 

「まさか……皇女自らが来てる、と?」

 

「その可能性を捨てきれるか? ブランコ」

 

「……いや」

 

 ……もう逃げちゃおうかな。

 

「宝珠皇女は……全部がヤベェよ、ホントに。一目でも見た事があるヤツは、例外無く魂を抜かれたようになるってよ。ブツブツと気色悪い言葉を唱えて……女神だとか、魔物が化けただとか、中には暴走精霊が具現化した姿だって噂もある。何より……」

 

 ゴクリと誰かが唾を飲む音がした。て言うか暴走精霊って酷くね? それって骨と皮だけの亡霊みたいなアイツでしょ? 昔に遺跡に出てきたヤツ。

 

「聞いたことは無いか? "水魔の魔女"を」

 

「水魔か。バンバルボア帝国に燦然と輝く水魔法の麒麟児。もしギルドに所属すればダイヤモンド、いや見方に依っては超級でもおかしくない魔法士の才女だな。数々の逸話が聞こえているが……確か高位の貴族にして皇帝に輿入れした……ま、まさか」

 

「やっぱり知ってるか。そう、シャルカ皇妃ただ一人の娘であり、水魔の魔女をして絶対に勝てないと、若くして全てを越えた、そう云わしめたのが……」

 

「……ジルヴァーナ皇女、だと?」

 

「そうだ」

 

 静まり返る森の中。

 

 お母様? あのさぁ、何やってくれてんの⁉︎ 滅茶苦茶なのは知ってたけど、他国まで伝わる程なんて……

 

「それ程の……一応聞いておこう、どんな外見だ?」

 

 あ、ちょ……

 

「白金の髪、人外の美貌、水色の瞳」

 

「人外の美貌、白金……水色?」

 

 皆がうん?って顔をしました。

 

「凡ゆる魔法を操り、例外は無い。汎用も属性も、相反する全てをだ」

 

「凡ゆる魔法を操るだって? 随分と()()だな」

 

「ああ。おまけに、幼少の頃から鍛えた剣も……バンバルボア帝国屈指の実力に到達したらしい。信じられないが、魔法と剣を全く同時に駆使するってよ」

 

 全員が俺の居る方を見た。おかしいな、隠蔽魔法使ってるのにね、ははは……はは……はぁ。

 

「……もしかして、目にも止まらぬ速さで動き回ったりするか?」

 

「いや、それは知らないが……いきなり姿を消したとかの話は聞いたな。皇女一人で居る筈もない皇都の街角で目撃例もあったくらいだし、魔物や暴走精霊の噂の元になったってよ」

 

 あー……お家に帰ってターニャちゃんを抱っこしたいなぁ……

 

 

 

 

 




最近プルプルさせてないなぁ。シリアス&ダークを描きたくなるこの頃。
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