綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、抗議する

 

 

 

「ふぃー」

 

 はぁ、気持ち良かった。

 

 森に三日も居たし、水浴びだけじゃ物足りないからね。温かなお湯に香り高い石鹸、独自開発に関わったシャンプーは最高のお仕事をしてくれる。

 

 化粧水擬き、エセ美容液、乳液らしきもの。一応は揃ってるけど、と言うか貰い物ばかりだけど、殆ど使った事がない。魔力を纏う超絶美人な俺には必要ないのだ!

 

「メイクは……要らないか」

 

 自分の家だし、今いる連中のために化粧なんて何となくイヤ。ささやかな反抗心くらいアリだよね。

 

「服は用意してくれてるって……んー、これかな?」

 

 流石に下着姿でウロウロ出来ないもん。最高なオッパイもお尻や素肌だって野郎達には見せないぞ!

 

「ふむ」

 

 先ずはスカートだな。フィッシュテールな感じ。前側は膝下くらいだけど、後側は脹脛まで届いてる。つまり裾の長さが前後で微妙に違うのだ。フワフワした軽めの生地だから歩いたりすれば揺れ動いて可愛さもあるだろう。細いベルトで固定すれば淡い臙脂色したスカートは清楚な雰囲気を醸し出す。上はブラックのリブニット。多少体の線が目立つけど下品な感じはしない。超絶美人なジルは益々綺麗系お姉様に磨きがかかった。

 

「おお、大人っぽく清楚。いいね」

 

 誰が選んだんだ? ターニャちゃんじゃ無いだろうし、キーラかな。普通ならネックレスとかして更に着飾るんだろうけど、やっぱり同じ理由で却下だ。後からターニャちゃんになら良い、うん。

 

 もう一度だけ鏡で確認。ついでにクルッて回ってみればフンワリとスカートが広がって最高。チラリと見えた太ももが良い、うむ。

 

「さて、と。お母様にガツンと言うぞ。最初が肝心だ!」

 

 フンと鼻息荒く、超絶美人、いや超級冒険者の魔剣ジルが行くのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジルヴァーナ。何ですか、化粧もせず。それに足元も疎かになっています。用意していたパンプスは? だいたいモフモフスリッパなんてふざけてるの? 淑女として、皇女として、またお話をしないとなりませんね」

 

 ひぃ⁉︎

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「その服は私が若い頃に着ていたものだから、貴女には似合ってると思う。でも、同時に心を磨くことの重要さをあれだけ教えてきたつもりだけど、まだ子供のままなのかしら? 本当に、身体ばっかり立派になって」

 

 ゆっくりと此方に歩いて来て……って、この服を選んだのお母様なんですか⁉︎

 

「ん? 貴女……湯浴みした後のお手入れは? 肌は乾燥しやすいから必ずするように教えたはずだけど、怒るわよ?」

 

 あばばばば……

 

「あらあら、寒いの? プルプル震えて」

 

 その笑顔、綺麗……じゃない! 怖いです! アカン、昔のトラウマが甦るぅ!

 

「ほ、ほら! みんな仲良しだから、友達同士気軽な感じで」

 

 間違ってない筈だ! ツェイスもクロも友達と弟的な奴だし、シクスさんはおっさんで……

 

「今日のお客様はツェイス王子殿下、このツェツエ王国の。そして騎士団からも二人来られてるのよ? 幾ら知り合いだからと言って礼儀を欠くのは感心しないわね。まったく、やっぱり私が中心となって進めるしかないか。孫を沢山……いや婚約を」

 

 本音が出てますが! あと礼儀って言うなら、無断で他国に来てるお母様の方が……

 

「なに? 何か言いたいことでも?」

 

「い、いえ、ございませんです、はい」

 

 やっぱり言えませんでした。

 

「これ以上お待たせする訳にもいきません。来なさいな」

 

 俺の髪に手櫛を通して整えると、優しい瞳の色に変わった。むぅ、怖いけど変わらないな、お母様は。あの顔を見ちゃうとフッて力が抜けちゃうんだよぉ。

 

「ターニャさんとは話をした?」

 

「え? うん、少しだけ」

 

「何て?」

 

「えっと、特別な事は何も」

 

「そう」

 

「どうしたの?」

 

「何でもないわ。でもジルヴァーナ」

 

 なに? 何ですか、ジロジロ見て。

 

「貴女、胸が大きいわね。なのに形も崩れてないようだし。その服は線が出やすい分着る人を選ぶけれど……良い感じ」

 

 ふっふっふ。まあジルですから?

 

「すぐ調子に乗って。何よ、その姿勢は」

 

 腰に手を当てて踏ん反り返る体勢ですよ? 歩きながらだから器用でしょ?

 

「魔力の体内循環が身体にどう影響を与えるかバンバルボアでも研究してるけど、ジルヴァーナは一つの完成形なのかも。ね、少し調べていい?」

 

「ヤダ!」

 

 絶対ロクな研究じゃないだろ! 目だって笑ってるの見えてるし!

 

「フフ。変わらず可愛いわね、ジルヴァーナは」

 

 お母様のその笑顔、反則です。マジで美人さんだから困るんだよ、ホント。

 

 でも、あのチラシの事や、結婚だって抗議しないと。何でイベント化してて、オマケに俺が景品なんだ! いや、理由は分かるけども! やっぱりターニャちゃんが好きって言う? いや皇族にとって個人の感情は三番目だって昔言われたし……ん? 二番目って何だろう?

 

「ところで、あの勇者くんも参加者なのかしら?」

 

「みたいですね……ハハ」

 

「モテモテね。あんな純粋な男の子まで堕とすなんて罪深いわ」

 

「クロは純粋なんかじゃないからね?」

 

 珍しい疑問符を顔に浮かべ、お母様はこっちを見た。仕方無い、説明を……いや、したく無いな。ストーカーで痴漢で、匂いフェチな上に、覗きまで画策するような奴なんて。教えた魔力強化は変態能力に活かされてるよ、ハァ。

 

「よく分からないけれど、貴女がツェイス王子殿下と結ばれて子を成すならば、こんな面倒な事はしないわ。帝国としても歓迎すべき間柄だし、皇帝陛下もお喜びになるでしょう」

 

「ね、ホントに結婚しないとダメ? 古竜の事やバンバルボアの義務だって随分昔の話なんでしょ? 実際のところは分からないと思うんだけど……」

 

「敬語もやめて昔みたいに、それと漸く本心を言ったわね。でも、ジルヴァーナの言う事は分かるわよ?」

 

 アレレ? 意外といけるのか⁉︎ もっと早く言えば良かったじゃん!

 

「じゃあ、こんなのやめて……」

 

「無理よ」

 

「なんでさ」

 

「残念ながら、インジヒとシェルビディナンの二人の存在と怒りや力は事実だから。いつ目覚めるかは誰も知らないけれど、今のままでは勝てない事も」

 

「んー、何で言い切れるの?」

 

 お母様は立ち止まり、俺の方に向き直った。真剣な眼差しに体が固まる。

 

「貴女が生まれ、その瞳の色を見たとき……私の中にも同じ疑問が浮かんだ。だから真実が知りたくて、唯一会える筈の古竜を探したの、この大陸で。正直に言えば、皇族の義務を捨ててもジルヴァーナには幸せな人生を歩んで欲しいわ。母として気持ちは今も変わらない。でも、機会に恵まれ白竜ルオパシャ様とお話して、それから沢山の事を学び……始原に連なる立派な帝国の皇女に育てると誓ったの。まだ貴女が赤ちゃんの頃よ?」

 

「赤ちゃんの頃……」

 

 あー! ツェルセンで泊まった宿"双竜の憩"だ。支配人が俺やお母様を知ってたのは其れが理由なんだな。

 

「其れが負担になってジルヴァーナは逃げ出したのでしょう? 確かに厳しく貴女を育てたのは認める。でも大きくなるにつれ、とんでもない魔法の才を見せるものだから嬉しくて。反応も可愛いから楽しいじゃない? ほら、逃亡先で捕まえた時の絶望感、プルプル震えて子猫みたいだし」

 

「最後のが本心だよね⁉︎」

 

「さあ、話は終わりよ」

 

「うぅ、はい」

 

 沢山抗議する予定だったのに、仕方無い……ん? あれれ? 何だか言いくるめられて無いか? だってそもそもあんな巫山戯たチラシやイベントなんて要らないし、何だかおかしいような。

 

 でも扉の前に佇むキーラが見えて会話も終わってしまう。どうしよう、考えが纏まらない。このまま誰かと結婚して子作り……嫌なんですが!

 

 カチャリと開けられた扉の向こうにツェイス達が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 

 

「シャルカ皇妃陛下」

 

「ツェイス様」

 

 椅子から立ち上がったイケメンは、お母様に怯む事なく真正面から視線を合わせている。シクスさんは膝を突き頭を下げたまま。クロも同じく床を見ているようだ。室内に案内したキーラは壁際に立ったまま動かない。ターニャちゃんが居ないのは寂しい。

 

「来国を改めて歓迎します。公式では無いのが残念ですが」

 

「歓迎と言う言葉を頂けただけで満足ですわ。公の有無はこの際気にしない様にしましょう。それと、我が娘ジルヴァーナとも懇意にして貰っていると聞いています。そしてこの場所にいる以上、全てご存知の筈。母として本当の貴方様を知りたいと思いますが、如何ですか?」

 

「成る程……ならば先に聞いておきたいですね」

 

 んん? 何だか不穏な空気が……

 

「あらあら、何をかしら?」

 

「ジルを景品のように扱うお気持ちを。幾ら偉大なるバンバルボアの皇族とは言え、彼女はひとりの女性。そして同時に、天真爛漫で子供の様に無垢な女の子でもある。そう、貴女の大切な娘だ」

 

「ちょ、ツェイスってば」

 

 お母様も視線が鋭くなった。平気で見返すツェイスだけど、お母様の恐怖を知らないから出来る事だ、マジで。て言うか無垢な女の子って何だよ? クロなんて下を向いたまま頷くなんて器用な真似してるし。

 

「ジルヴァーナ、下がってなさい。それと……ツェイス殿下? 気に入らないなと私が一言、貴方様を排除するとは考えないのかしら?」

 

「その時はジルを攫うだけ。何故ならば、貴女の娘はツェツエ王国アートリス支部の冒険者だ。そして超級は如何なる国も不可侵。それは不文律でもある。つまり、決めるのはジルだ」

 

「私の娘を攫う? やってごらんなさいな」

 

 いきなり何なんだよぉ。ね、喧嘩はやめよう? そもそも二人とも立場分かってるのか⁉︎ 両国を代表して仲違いなんてヤバいでしょうよ!

 

「二人とも落ち着いて! どうしたの? ツェイスらしくないよ」

 

「本当の俺を見たいと言ったのは皇妃陛下だ。そして言葉と気持ちに嘘はない」

 

 いや、景品とか俺が言う台詞なんだけど!

 

「会った早々に面白いわね、ホント」

 

「では不合格ですか? やはりジルを」

 

「いえ、合格だけれど。その言葉と気持ち、素敵ね」

 

 キョトンとするツェイス、珍しい。あと、シクスさんとクロも思わず顔を上げたみたい。まあ気持ちは分かるけど。満面の笑みを浮かべ、お母様はウンウンと頷いてる。

 

「あのぉ、お母様?」

 

「なあに? ちゃんと本心が聞けて良かったわ。思っていたより早かったけど、堅苦しいのも消えたし。そちらの御二方も席にどうぞ。キーラ、お願い」

 

「はい」

 

 静々とお茶を並べ始めたキーラ。平気そうなのが怖い。

 

 ツェイスも普通に戻ってるし……いやいや、切り替え早すぎて気持ち悪いんだが? 其れにクロなんて決意の表情。シクスさんは興味津々な顔を隠してない。て言うか絶対楽しんでるな、あれは。

 

「では改めて。我が娘、そしてバンバルボア帝国の皇女であるジルヴァーナを幸せにする()()はありますか?」

 

「勿論です」

「ぼ、僕も!」

 

「クロエリウス様も参加、と。よろしい。ただ、残る参加予定者が到着してません。それと、審査を行なって頂く方も。もう暫く待って下さいませ」

 

 まだ居るのかよ⁉︎ そもそも誰だ⁉︎ クロは顎に指を当てて悩んでるようだけど、ツェイスは特に驚いてないぞ?

 

「それでは、良ければ聞かせて欲しいですね」

 

「残る参加者かしら?」

 

「いえ、心当たりがありますので大丈夫です」

 

 ウソ⁉︎

 

「フフ、流石ですね、ツェイス殿下。では何かしら?」

 

「それは勿論……」

 

「勿論?」

 

「幼き頃のジルを、どんな娘だったか、を」

 

「あ! それは僕も聞きたいです! お師匠様が少女のとき……グヘヘ」

 

 阿保かぁ‼︎ そんなのダメに決まって……

 

 あらあらまあまあと、お母様は本日最高の笑み。

 

 キーラまで嬉しそうなのは嘘だと思いたい。

 

「任せて! 時間は十分あるし、話したい事が一杯!」

 

「や、やめてよ!」

 

「先ずは、生まれたその日に不思議な事が……」

 

「お母様! やめてってば‼︎」

 

 こんな羞恥、耐えられないですぅ!

 

 抗議、抗議する‼︎

 

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