綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、一人で遊ぶ

 

 

 

「うわ〜〜〜!!」

 

 大きなベッドはゴロゴロと転がり回っても俺を受け止めてくれた……ううぅ……

 

 

 

 

 

 自室に帰り、パタンと閉じた扉を魔力でしっかりとロックする。念の為ドアノブを回して確認。そして、フラフラと妙に広いベッドに身体を放り投げ、フカフカのお布団に顔を埋めた。

 

 きっと俺の顔は今も真っ赤だろう。二つある枕のうち一つを頭に被せると、ウーウーと無意識のうちに声が上がってしまう。

 

 余りの恥ずかしさで消えてしまいたい……

 

 おかしい……俺は超絶美人で超級冒険者、アートリスで知らぬ人などいない魔剣のジルだぞ? 街を歩けば皆が陶然と目を向け、男共はグヘヘと目尻を下げるのだ。凡ゆる男を手玉に取り、コロコロと転がしてきたのに……

 

「う、うわー! 恥ずかしい! すっごい恥ずかしい!!」

 

 耐えられなくなった俺はゴロゴロと左右に転がり、何とか誤魔化そうと頑張る。

 

 俺はターニャちゃんで遊ぶんだ……遊ばれるのは違うよぉ……

 

 そうだ。食卓で起きた勘違いはきっと夢なんだ。俺は今ベッドにいるじゃないか……うぅ、そんな訳ないじゃん……ターニャちゃん変に思ったかなぁ。

 

 そもそも俺は勘違いしていたんだ。この世界に転生して鍛えた美貌と実力は本物だ。多くの男達から告白や求婚を受け、それを袖にしてきたが……前世を含め女性に告白した事もされた事も、あたりまえだが付き合った事も無い。勿論男は論外だ。

 

「アカン……俺って恋愛初心者だし、今更ジルの演技もやめられないし……格好良いお姉さんで居られるのか!?」

 

 お風呂イベントは又にしよう……今日の俺では無理!

 

「はぁ……ん?」

 

 アレはパルメさんの店で手に入れた服達か……

 

 代償は余りに大きかったが、結果的に無料で手に入れる事が出来た。ターニャちゃんの交渉の力だろう。

 

 うーむ……記憶は定かでは無いが下着染みたモノや露出度の高い服があったな……

 

 ジルのキャラ作りから普段は余り着ないタイプだ。ジルは清楚で有りながらもチラ見せを疎かにしない、男の夢を体現した最高の女だからな。

 

 卑猥な姿など男達に見せる事は絶対にないが、この世界で唯一それを許す者がいる。

 

 それは……俺だ!!

 

「久しぶりに遊ぶか……」

 

 ターニャちゃんに連発した胸元のチラ見せや、如何にさりげなくエロを演出するか苦心した時代があった。同時に美しさや可愛らしさをどう魅せるかも大事なのだ。

 

 元男の感性から男性目線の理想を凝縮させたのがジルなのだから!

 

 そしてそれを求めるが余り、この部屋には巨大な鏡がある。

 

 部屋の入り口である扉の横にデーンと置かれたのがソレだ。特注で作らせた鏡は極限まで磨かれ、納期は通常の三倍を要したのだ。

 

 先程言わされた台詞達も自分に言うならアリかもしれない。傍目にはナルシストの塊りだろうが、此処なら誰にも見られない。魔力を駆使した防犯システムは伊達では無いのだ。

 

 そう決めた俺は、パルメさんから受け取ったお宝達を手に持ち鏡の前に立つ。

 

「ふむ……やはり可愛い」

 

 冒険者の装備は既に着けていない。食事前に室内着に着替え済みだ。

 

 ロングのワンピースは膝下まで垂れ、細めのラインは僅かに身体の曲線を魅せている。俺の美しさを際立たせる為、敢えて地味な藍色とシンプルなデザインだ。後ろ姿を鏡に映すと自慢のウエストからヒップ迄完璧な比率だろう。

 

 自慢の白金の髪は全く癖がなく、腰の辺りまで伸びてサラサラと揺れている。頭を振ればフワリと広がってシャンプーのCMの如きだ……いや22年前の記憶だが。

 

 ちなみに、履き物はギャップ狙いでモフモフのスリッパを合わせている。

 

「さて……」

 

 今の俺はジルではない。最高の観客席からジルを眺める一人の男なのだ。

 

 なだらかな肩から片方ずつワンピースをずらせば、ストンと床に落ちる。シルク以上の肌触りを誇るこの服は抵抗など感じない。

 

 鏡には下着だけで一部しか隠さない俺が立っている。流石に恥ずかしさなど無いから赤面などしてない。下着は現代日本と変わらない形状で、色は大人の濃いワインレッドだ。

 

「サイズは……分からないなぁ……女性の胸なんて直に見た事無かったし、サイズの設定なんて知らない……多分DとかEなのかな?」

 

 綺麗なお椀型で、手を添えればフンワリとした感触と柔らかな抵抗を覚える。谷間もバッチリあるし小さくは無いだろう。グラビア雑誌で見た巨乳などではないが、俺にとっては理想そのものだ。

 

「でもやっぱりお尻と太ももだよな……俺はお尻好きだと認めるしかないのだ……」

 

 再び後ろ姿を見せると、キュッと上がったお尻と健康的な脚が堪らない。

 

 自分の身体である以上は裸体だって何度も見ているし色々と研究済みだ。しかし、この鑑賞はまた違った嬉しさがあるのだよ、うん。

 

「先ずは……」

 

 袋から手に取ったのは所謂ミニスカートだ。

 

 パルメさんが作成した以上、馬鹿みたいにエロいわけではない。しかし女性らしい美しさを損なわない範囲で露出度もある。

 

「ほう」

 

 太ももマニアでもある俺は思わず感嘆の溜息をつく。

 

 続けてボーダーのシャツを羽織れば完成だ。

 

 ボールを蹴るような仕草をすれば可愛らしさとエロの両立になった。鏡越しに下着が見えそうで見えない最高の瞬間を何度も再現する。

 

「外では着ないが、家の中ならありだな」

 

 パルメさんには悪いが、下着は万が一にも男達に見せる気は無い。男の記憶がある俺は、女性の下着姿をどう見ているか知り過ぎているのだ。しかし、ターニャちゃんならチラ見くらい許可しようではないか!

 

「なんだか調子が戻って来たぞ、つぎだ!」

 

 お次は確かチューブトップと呼ばれるモノだろう。胸の上部でキツく締めて、ずれ落ちないようにしているようだ。合わせるパンツはデニムっぽい生地で、七部丈になっている。これは、細い足首が目立ち違った女性らしさを見せてくれた。

 

「夏っぽいかな……これなら外でも着れるかも」

 

 上下とも身体のラインを強調する作りの為、趣きの違うエロさを感じる。こちらも自慢のヒップラインがバッチリだ。

 

 俺……ジルのファッションショーは始まったばかり……ふっふっふ。なんだか自信が戻って来たし、やっぱり俺は可愛い!綺麗!超絶美人!

 

「どんどん行くぜ!」

 

 俺は次の衣装を手に取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パルメさんの店で吐いた台詞は何だっただろうか?

 

 着替え終えてカーテンを開ける度に観客からは悲鳴の様な歓声が上がったのは覚えている。

 

 呆然としたままの俺は、パルメさんの指示を忠実に守って色々なポーズを取った筈。

 

 腰に手を添えて片膝を僅かに曲げる。

 

 スカートの時は勢いよくクルッと回転。

 

 モデルばりにウォーキングも披露した。

 

 その内に指示は細かくなって、指先まで意識させられた。更には魔法を放つ仕草や魔剣の技まで再現した気がする。帚を片手に振り回す姿の何が良かったのか……何故かその日一番の歓声が上がった。

 

 

 だが後半は今思えば何かおかしい……

 

 

 お尻をペタリと床に付けての女の子座り。

 

 人差し指を唇に当てて首を傾げるポーズ。

 

 両腕で胸を挟んで谷間を強調。

 

 上目遣いは何度もやり直し。

 

 終いには四つん這いもした様な……

 

 所謂女豹のポーズではなかろうか……?

 

 

「俺は何をやってたんだ……それに今思えばターニャちゃんも指示してたよな?」

 

 後半はどう見てもファッションショーじゃないだろう……ターニャちゃんの指示は四つん這いと上目遣いだ。特に女豹のポーズには並々ならぬ拘りを感じた。

 

「駄目だ……折角戻って来た調子がまた変な方向に……」

 

 こうなったら[毒を食らわば皿まで]だ。それに[災い転じて福と成す]と言うし、[ケセラセラ]だ。

 

「丁度いい。やってやろうじゃないか……」

 

 今着てるのは、絶対に他人には見せられない代物だ。

 

 多分ベビードールと呼ばれるモノだろう。視覚的インパクトを狙ったスケスケの形状とレースを多用した裾はエロさ全開だ。おまけに両腕を上げれば、おへそが見えそうになる。前傾姿勢を取れば胸の谷間どころか、ブラも丸見えになった。

 

 下半身はショートパンツで下着は見えないが、お尻のお肉が少しだけ見えてコレもエロい。

 

「パルメさんは何を思ってこれを作ったんだ? どう考えても日常で着れないだろ」

 

 流石のツェツエでも此れはない。

 

 今度会ったら問い質さなければ。

 

 しかし……今なら許そう! ジルの新たな境地へ繋がるかもしれない!

 

 先ずは鏡の前に移動して、じっくりと全身を映した。

 

 身体を左右に振り、揺れる髪と胸を楽しむ。

 

 少しだけ上半身を傾けて、唇に指を添える。

 

「私は貴方の恋人よ? キスくらいいいじゃない」

 

 続いて後ろ向きから顔だけで振り返り、少しだけ照れくさそうにする。

 

「……馬鹿」

 

 更には両手を組み胸を隠して、

 

「見ないで!」

 

 次々と他人に見られたら悶死する自信がある台詞とポーズを連発した。

 

 だが良いのだ、此処は俺しかいない楽園。

 

 俺の最高傑作、ジルの部屋なのだから。

 

「いよいよか……」

 

 正直コレは趣味では無い。基本的にラブラブでイチャイチャの甘々が好きな俺なのだ、ターニャちゃんとしたい。さっきから童貞の妄想が爆発しているのは自覚している。

 

 だが、俺は今日また一歩成長するのだ。

 

 食わず嫌いは良くないし、ジルなら何をしても似合うはず。

 

 ゆっくりとお尻を冷たい床に下ろした。太ももから足先まで床に密着して座るソレは先程も思い返していた女の子座りだ。骨格の違いから男には難しいと聞いた事がある。確かに可愛い座り方だ、実際に見た事など前世では無いが。

 

 更に両手を前につき、僅かな前傾姿勢を取る。

 

 更にターニャちゃんに細かく指示された上目遣いも全力行使した。

 

 

 よ、よし……言うぞ……

 

 

「い、虐めて下さい。御主じ」

 ガチャ

「んさ、ま……」

「お姉様、お風呂はどうしま……す…か?」

 

 

 解説しよう。

 

 鏡は出掛ける前の身嗜み用も兼ねている為、扉のすぐ横に設置している。ターニャちゃんは扉を開けて直ぐ、床にペタリと座る俺が見えた筈だ。言いながらも恥ずかしかった俺は少しだけ涙目で頬は赤く染まっていた。

 

 タイミングは最高で最悪に完璧だった。

 

 

「………ち」

 

「ち?」

 

「ちが……」

 

「気にせずに続けて下さい、お姉様?」

 

 あばば……あひゃひゃ、こ、これは、違くて……!

 

「ち、違うの! これは違うから!」

 

「ええ、分かってますよ? だから続けて大丈夫です。私の事は気にしないで下さい」

 

「こ、これは、そ、その……気の迷いと言うか、アレなの!!」

 

 浮気現場を旦那に見つかった人妻みたいな言い訳をする俺。寂しかったとか、貴方も悪いなどと言えば完璧らしい……

 

 って言うか、魔力銀製の鍵をどうやって!?

 

 魔力の抜き方とか、まだ教えてないよね!?

 

「タ、ターニャちゃん、餅、落ち着いて」

 

「私は落ち着いていますが? それと、虐めて下さいの所はもう少し辛そうに言うと良いですよ? あとは最高でした」

 

 ひーー! 最初から聞いてるーーー!?

 

 完璧な防犯システム仕事しろよ! お願いだから!

 

「タ、ターニャちゃん。どうやってドアを開けたの?」

 

「え? 最初から開いてたのでは? ノックもしましたし、ドアノブを捻ったら開きましたよ?」

 

 んな訳ないじゃん! 絶対鍵掛けたもん!

 

 てか、ノックしたのかよ!?

 

「こ、これは違うのよ? 偶然服が目に入っただけ。少し確認してただけだから、ね?」

 

「ええ、お姉様は確認していただけ、偶然に」

 

 目が笑ってるし、吹き出しそうなの我慢してるよね!?

 

「ご」

 

「ご?」

 

「ごめんなさい! 誰にも言わないで!」

 

 こうなればプライドなんてゴミと一緒にポイだ!

 

「ふふふ……誰に何を言うんですか? 私の知り合いなんてパルメ(事の発端)さんかクロ(変態ストーカー)さん、マリシュカ(アートリスの拡声機)さん位しかいませんし」

 

 最悪の三人だよね、ソレ!?

 

「うぅ……お願い、何でもするから」

 

「何でも?」

 

 あ、あかん……ターニャちゃんが肉食獣の眼をしてる!

 

 絶望して立ち上がる事も出来ない俺の前にターニャちゃんも座った。

 

「お姉様、私は味方です。お姉様が悲しむ事をする気なんてありません。信用出来ませんか?」

 

「ほんと?」

 

「ええ。さっきも言ったじゃないですか、私は幸せだと。幸せにしてくれるお姉様に嫌われたくないですし、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「うぅ……ありがとう、ターニャちゃん」

 

 助かった! それに良く考えたら、ターニャちゃんの言う通りじゃないか。ターニャちゃんを疑うなんて俺は最低だ。

 

「ちょろい」

 

 ターニャちゃんは何か呟いたが、安堵と残る羞恥心に混乱していた俺には聞こえなかった。

 

 今度から鍵はしっかり確認しよう……一人暮らしが長かったから油断してたんだ、きっと。

 

 これ以上、格好良いお姉さんキャラを崩す訳にはいかない!

 

 頑張ろう!!

 

 

 

 

 

 

 

 




女の子は、お姉様の弱味を手に入れた! やったね!
次回は、ジルが先生に変身します。
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