綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、懐かしむ

 

 

「え⁉︎ な、なに⁉︎ ちょ、お母様ってば!」

 

 朝のお散歩とか言ってたくせに、屋敷に横付けされた馬車に押し込まれました! しかもいきなり過ぎて訳分かんない!

 

 思わずターニャちゃんの姿を探してしまうけど、本当に居たら困っちゃうかも。まあ勝手に恋して勘違いして、告白する前に玉砕しただけだから、側から見たら何も変化なんてないよね。うぅ、思い出したら泣きそう……こればっかりは魔力を操作してもコントロール出来ないなぁ。失恋ってホントきつい。

 

「会場へ移動します。色々用意してるから、向かいながら整えるわよ。お化粧もしてないし、ジルヴァーナの美しさをもっと引き出しましょう」

 

「えぇ……?」

 

 無言で乗り込んで来たキーラは嬉しそうに幾つかの木箱を開いている。鏡とか色々入ってて装飾品の輝きも見えた。中身の一部に何となく覚えがあるし、お母様の持ち物もありそう。ところで"ジルヴァーナに罰を"が有るのは何故なのか問いたい。整えるのに拘束用の縄なんて要らない筈だ。

 

「より魅力的な方が、皆も"ヤル気"が出るでしょう? 二重の意味でも」

 

 またお母様の口から下ネタ……ん? 多分下ネタだよな? 突っ込んだら藪蛇になりそうだし無視しよう。絶対に揶揄われるやつだもん。

 

「……ターニャちゃんは? お留守番?」

 

「いえ? まさかそんな訳ないじゃない。ツェイス殿下や勇者くんとも顔見知りらしいし、魔王陛下にもご挨拶する必要があるから、()()()に同乗して貰ってる。今後の事もあるし、色々と話をして欲しいのもあるわね。こっちに呼んだ方がよいかしら?」

 

 イケメン詰め合わせセットの中にターニャちゃんか。まさか誰かに惚れたりして……いや、もしかしなくても好きな人くらい居るだろう。あれだけ可愛い訳だから、告白だってされてるかも。

 

「ううん、大丈夫。ちょっと気になっただけだから」

 

「そう?」

 

「うん」

 

 今後、か。ターニャちゃん、侍女になるって本気なのかなぁ? 身分とかイメージと違って随分大変な仕事らしいし、無理する必要なんて……勿論気持ちは嬉しいけどさ。

 

 家事能力も凄い。お金の管理も上手。おまけに頭も良くて実は凄く優しい。あと超可愛い、これ大事。隠してる"才能(タレント)"なんて無くてもスペック高いよなぁ。でも魔素感知一つだけでも直ぐ上手になるだろうし、何気にスーパー侍女になりそう。もしかしたら"演算"のタチアナ様と肩を並べたり?

 

お姫さま(おひーさま)、動かないで下さい」

 

「はーい」

 

 さっきから何やらしてると思ったらメイクだ。まあ楽で良いし、お任せしよう。何だか昔を思い出すね。しかし、馬車もそこそこ揺れるのに器用なもんだ。二十年以上女をやってるから自分でも出来るけど、真面目な話だとすっごく面倒臭い。ただ、ズンズン綺麗になっていくのを見るのは楽しい。そんな感じ。

 

「ハァ……このお肌、信じられません。ちょっと悔しいと思ってしまいます」

 

 手の動きは止まらないけど、感情表現が少ないキーラにしては珍しく分かりやすい。まあ超絶美人で魔力によって状態を最高に保つジルですから? ごめんね?

 

「ドレスは流石にアレだから、ケープを持って来たわ。真っ白で綺麗でしょう? 刺繍も素敵だし、こんな時は清楚さが大切なの。ジルヴァーナは男性経験が無い割に身体ばっかり立派だから少し線を隠します。ほら、昼と夜の顔を二つ持つと女性の魅力が増すわ」

 

 くっ……色々ツッコミたいけど我慢しよう。絶対誘ってるし、罠に決まってる。もう俺は学んだのだ!

 

「いい? 美貌だけだと駄目よ? 落差や驚き、可愛らしさ。時に離れて焦らしたり、甘える事も忘れないで。逃げられないようしっかりと捕まえなさい。悩殺よ、悩殺」

 

 我慢我慢……

 

「キーラの言う通り、肌が本当に綺麗。でも、だからこそ簡単に御披露目しちゃいけないの。安い色気と妖艶を間違わないよう、夜はほんの少しの灯りだけで……」

 

 くっ、我慢……って無理だよ!

 

「お願いだから黙って! それにお母様の口からそんなの聞きたく無いし!」

 

「あらあら。お母さんっ子なのは変わってないのかしら? 相変わらず可愛いわねえ」

 

 違うよ! 夜の話とか考えたら色々想像しちゃうし……うわぁ⁉︎ わー! 今の無しだから! 消えるのだ我が記憶よ‼︎

 

「何を考えてるのジルヴァーナ? 目元も頬も真っ赤だけど」

 

「気の所為ですぅ!」

 

「お姫さま、お静かに」

 

「あ、はい」

 

 いやいや、悪いのは間違いなくお母様だよね? 理不尽すぎる……

 

 ガサゴソと箱の中を漁るお母様を視界に収めつつ、外をなんとなく見てみる。んー、アートリスを出たみたいだな。まあ魔王陛下に王子殿下、勇者くんに人種の魔法使い最強。魔素感知で分かるけど、剣神も後から追って来てるから当たり前か。キャストが目立ち過ぎで、街中や近くなんて論外なんだろう。

 

 はぁ、何だか他人事みたいに感じるけど、俺が景品なんだよなぁ。

 

「出来ました。シャルカ様、如何でしょう?」

 

「いいわ。普段と違う印象ね」

 

「キーラ、手鏡貸してよ。家に忘れて来た」

 

 魔力銀の装備も剣も忘れてます。街の外にこんな格好で出るなんて滅多に無いし、少し落ち着かない。まあどんな魔物が現れても、このメンバーなら瞬殺だけど。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがと」

 

 ふむ? うーん、いやいや、派手じゃね?

 

「お母様、何だか濃くない? 口紅なんて随分紅いし……」

 

 舞台女優だと言い過ぎだけど、普段なら絶対にしないタイプのやつだ。ファンデ擬きとか、瞳の周りも。

 

「それでいいの。このケープを頭から掛けて、ちょっとだけ隠す。想像してみなさいな。戦いの最中、危機に陥ったとき、遠目に何としても守りたい愛する女性が視界に入る。その時、戦士は再び戦気を取り戻し立ち上がるわけ。昔読んだ物語にそんな場面があって忘れられないのよ。だから目立つくらいが良いじゃない? はぁ、何だか私まで興奮してきちゃう」

 

 乙女か? 乙女なのか⁉︎ そんなアホらしい理由なんて力が抜けるよ。

 

「私も読みました。大賛成です。きっと隠された目元とお姫さまの美しい顎の線や紅い唇が目に入って……」

 

「流石キーラ! 分かってるわね!」

 

「はい!」

 

 キーラも⁉︎ 

 

 まあ前世で読んだ漫画とかでよくあるシーンだけど、感情移入するのはヒーロー側です。ピンチからの大逆転! 良いよね‼︎ ん? 二人と余り変わらないような?

 

「はぁ、もういいです。ねえお母様、何処に向かってるの?」

 

 キャッキャしてるお母様とキーラが眩しい。美人さんに美少女だから絵になるのだ。

 

「西ね。王国で"ツェツエの危機"と呼ばれる戦いのあった古い神殿跡の近くよ。貴女とツェイス王子殿下で討伐した"暴走精霊"や"カリュプディス=シン"が現れたところで、今は殆ど荒野になってるんでしょ? 邪魔は要らないし、丁度良いと紹介されたの」

 

「ああ、あそこ。でも、結構遠いけど」

 

 魔力強化して全速ならもっと早く着くけど、今の服じゃ素っ裸になるだけだ。

 

 まあ確かに崩れた遺跡の瓦礫くらいしかないだろう。人も余り近づかないし、戦うには適した場所かも。

 

「あらそうなの? それなら開催は明日にしましょうか。お化粧が無駄になってしまうけど、練習と思えば良いし。野営なんて久しぶりで楽しみね」

 

「あの辺って魔物が多いからゆっくり休めないよ?」

 

「大丈夫よ。絶対に近づいて来ないから、魔物なんて」

 

 なんでさ? 頭の良い魔物ならそうだろうけど、そんなやつばかりじゃないし。討伐自体は問題なくても休めないなら意味ないじゃん。

 

「不思議そうね? 私を信じなさいな」

 

「うーん、まあ私が戦う訳じゃないから良いけどさ。でも、ターニャちゃんに危険があるなら直ぐにでも中止するから」

 

 その時は素っ裸になろうが関係ない。絶対に助けるぞ。

 

「はいはい。貴女ってターニャさんのことになると人が変わったみたい」

 

「そ、そんな事はないけど……ターニャちゃんは戦ったり出来ないし、怖い思いなんてして欲しくないだけ」

 

「ふふふ」

 

 上品な笑いだけど、お母様の目の奥にこっちを観察してる気配。昔からよくあるけど、ちょっと怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○ ○ ○

 

 

 

 

 暫く馬車に揺られて、おまけにウトウトしてたら肩を叩かれた。熟睡してた訳じゃないし、すぐに起きる。

 

「……なに? 着いた?」

 

「もうそろそろね」

 

「あ、そう言えば着替えとか、準備何もしてない」

 

「お姫さま、持って来てますのでご安心を。それと、夜は身体を清めますので声を掛けてくださいませ」

 

「はーい」

 

 背中とか拭いて貰うの気持ち良いけど、何だか恥ずかしい。昔は平気だったのになぁ。

 

「ジルヴァーナ。貴女なら分かるでしょう。()()()が」

 

「え? 何が?」

 

「寝惚けてるの? 魔素感知してごらんなさい」

 

 魔素感知? まあいいけど……

 

「……うわぁ」

 

 寝る前に魔物なんて近づかないって言ってたけど納得だ。と言うか魔物どころか誰一人絶対に寄って来ないだろう。魔素感知が苦手でも、()()()()()()ら腰が抜けてもおかしくないし。

 

「変わらぬ美しさと威容……貴女のケープの白も霞んでしまうわね」

 

「真っ白だもんね、ホント」

 

「ええ」

 

 段々見えて来たその威容。巨大な翼は広げたら何メートルになるんだろう。全身は余す事なく純白で、汚れや土埃すら付着して無いのが遠目でも分かる。縦に割れた瞳孔と口元から見える牙すら恐怖を煽る筈なのに、何処までも綺麗。

 

 唯一のオレンジ、いや夕焼けの色の瞳。

 

「懐かしいなぁ……昔には遊んだりしたけど」

 

 開発したばかりの隠蔽を使ってアートリスでデートしたのだ。パルメさんの店に寄って着せ替えしたのは最高の思い出かな。あと凄く食べるのが好きらしくて食べ歩きもしたっけ。

 

「ああ、もしかして」

 

「気付いた?」

 

「うん。あの人なら周囲に気付かれないよう結界も張れるだろうし、どんな魔法が来ても平気だもん。審判?みたいなものかな」

 

「正解。何よりも古竜を良く知る方だし、安心でしょう?」

 

「良く知るって言うか、そのものだし……」

 

 真白のルオパシャ。

 

 紅、黒、そして三人目の古竜。

 

 でっかい竜の姿だと凄いけど、人化してくれたら最高。

 

 真白の古竜から、合法ロリのルオパシャちゃんに変身だ! あのとき見た下着、今も忘れてないよ? 縞々パンツ、可愛かった……

 

「何だかだらしない顔ね?」

 

 おっと。ヨダレは垂れてないよ?

 

「でもルオパシャちゃ……ルオパシャ様が良く付き合ってくれたね。大体寝てる時間が長いのに」

 

「……どうやらあの方にもお考えがあるみたい。詳しくは分からないけれど、貴女の伴侶を探すと伝えてあるわ。それを聞いて直ぐに動いて下さったし、きっと私達の義務にも理解をお持ちなのでしょう。それよりルオパシャ()()()? 何かしら、それは?」

 

「さ、さあ?」

 

 ジロジロ見られたので、顔を逸らしてしまおう。うむ、完璧だ。キーラが妙に大きな鏡を持ってこっちに向けてなければ、だけど。見事に反射して、俺の顔色がバッチリ。

 

「凄く焦ってるのが丸見えよ、ジルヴァーナ。さあキリキリ吐きなさい」

 

「ヒ、ヒタイでふ!」

 

 ムニーッと頬を引っ張られて……痛いって本当に!

 

「遥か古代より人種に寄り添って頂いた竜なのよ? まさか失礼をはたらいて無いわよね?」

 

 失礼どころか、鱗を斬って、パンツも拝見しましたが? 絶対に言わないよ?

 

「超級に推薦された理由の一つとして、不滅と謳われた古竜の鱗を切断した力が認められたとありましたが……それに、ルオパシャ様に叱られるお姫さまの目撃も」

 

 キーラ、黙ろうね⁉︎

 

「イダダダダッ……!」

 

 千切れる、千切れるから!

 

「あとで詳しく聞きます。とにかくルオパシャ様にご挨拶が先よ」

 

「ふぁーい……」

 

 パンツの事だけは伏せておこう。あと着せ替えも。

 

 でも、人化だけは頼む。

 

 ターニャちゃんにも負けない美少女だし、うん。

 

 

 

 

 

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