綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね   作:きつね雨

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お姉様、包装される

 

 

 

「うっそだぁ」

 

 昨日早く寝たからか、まだ陽が昇り切る前に目が覚めたんだけど……

 

「あんなのいつの間に……」

 

 テントから出て朝の空気を吸おうと外に出た。他の皆は寝てるだろうし、誰もいないだろうなって。アイツら結構遅くまで喋っていたみたい。よく考えたらライバル同士なのに、なんであんなに楽しそうに話したり出来るんだろ? やっぱりイケメンに生まれたからには色々と違うんだろうか。

 

『おお、早いなジル』

 

 テントの上から声が聞こえて見上げると、セーラー服姿の可愛い女の子が立っていた。真っ白な髪、真っ白な太もも……くっ、微妙に見えない。角度を変えれば何とかなるか? い、いかんいかん、またお母様に怒られる。

 

「おはようございます……ねえ、ルオパシャちゃん、あれって」

 

『良く出来ておるじゃろ? 随分前じゃが人の街で見たことがあっての。材料もあったし作ってみた』

 

 夜営地より遺跡側に近いところ、とんでもない建造物が完成している。簡単に言えば古代ローマの闘技場コロッセオかな。流石にあそこまで芸術性に振ってないけど、サイズだけなら野球場みたいにデカい。ああ、材料って遺跡の残骸か。見た目も似てるし。

 

「全然気付かなかったです」

 

『人種は夜分に眠り英気を養うのじゃろう? 妾は知っておるから静かにしておったのよ。とは言え強度は中々だから安心してよいぞ。あの石塊どもは良い材質での』

 

「はあ」

 

 まあ古代遺跡で現存してるのは大抵凄い技術で作られてるからね。普通にピカピカだったり、物理的にピカピカ光ったりしてるのもあるから。それにしても……

 

 一晩で、全く音もさせず、巨大な建造物を建てる。もう無茶苦茶だよ。土魔法の応用だろうけど、人ならあっさり魔力が切れて昏倒するかな。時間を掛ければ俺でも出来る可能性はあるけど、現実的じゃない。

 

『妾本来の姿でも入れる広さじゃ。観客席とやらも用意したからジルはゆっくりと眺めておればよい』

 

「観客席って……」

 

 ルオパシャちゃん、人のこと知り過ぎです。まあ前のデートで知ってましたけど。

 

 とにかく考えても無駄だ。しかし、こんな無茶苦茶なルオパシャちゃんだけど、インジヒとかシェルビディナンって更に強いんでしょ? 普通に考えたら勝てない気がするけどなぁ。うーむ……

 

「あの、インジヒとかシェルビディナンって……」

 

『ん? おお、良く知っておるな』

 

「ルオパシャちゃんよりもっと強いって聞きましたけど」

 

『ふむ、それは間違いない』

 

 やっぱりそうなんだ。

 

『じゃが、それは見方による』

 

「え?」

 

『戦闘、争い、殺し合い、其れらの尺度ならば正しい。お主達が"始原"と呼ぶ()()ならば凡ゆる全てを覆すが……我等も人種も()()()一人じゃからの』

 

「……どう言う意味ですか?」

 

 よく分からないな。それと"か弱い"とか始原の竜を"アレ"呼ばわりって、何だか聞いてたイメージと違う気がする。

 

『今は知らなくて良い。ジルは伴侶を決めるのじゃろ』

 

 うぅ、まあそうだけどさ!

 

『子作りの事も色々調べて来たから良く知っておるぞ? 確か二人でしっぽり』

 

「それは言わなくていいかなぁ!」

 

 何で竜が人の子作りとか調べてるんだよ! それに"しっぽり"とか言葉選びが古い……いや古代から生きる古竜だから正しいのか?

 

『相変わらずウブじゃの。歳を重ねても変わっておらん』

 

 余計なお世話ですぅ! と言うかウブとか知ってるのかよ!

 

「ルオパシャちゃん、ちょっと聞いて良いですか?」

 

『なんじゃ?』

 

「お母様からなんて聞いてるのかなって。今日のこと」

 

『昨日言った通りじゃ。ジルの伴侶を決める大会であろう? 人は(つがい)となり、子を成す。ことさら竜とは違うが、長い年月をそうして生きて来た。お主が娘の頃から知っておるが、人の生は星の瞬きの様に光り、そして消え去ってしまう。だからこそ次代に子を繋ぎ行くのじゃな。妾だけは元々始原から教わっていたが、そこに美しさと羨望を覚えておるよ』

 

 ルオパシャちゃんは何かを思い出したのか、明るくなって来た空を眺めてる。その横顔を見たら、何だか質問を続ける気が失せてしまった。長く生きるって事は、それだけ別れも多い筈だ。もしかしたら誰よりも寂しいのかも。

 

「ルオパシャちゃん……」

 

『さて、夜も明けたの。楽しい一日の始まりじゃ』

 

 ニコリと俺に笑いかけ、ピョンと地面に降りて来た。スカートがフワリと踊り、思わず視線は釘付けです。いや、不可抗力ですから! 縞々は健在だったと言っておこう!

 

「じゃ、準備して来ます」

 

『うむうむ。綺麗にして来い』

 

 

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

 中に入ると本気で似てるなぁ、コロッセオに。

 

 教科書の写真しか見たことないけど、きっとこんな感じだったはず。

 

 そして今俺がいる場所は所謂観覧席。その中でもVIPな感じだ。高台みたいになっていて、景色が凄く良い。円形のスタジアム擬きだから、此処から全体を見渡せる。

 

 真ん中の地面は平坦で、草木も生えてない。ルオパシャちゃんが綺麗にしたんだろうか。ゴツゴツした荒涼な土地だったけどなぁ。

 

 まだ大会参加者は現れてないけど、その他の人達は揃っているみたい。

 

 朝日も随分と高い位置まで来てるし、ポカポカ陽気で気持ち良いかも。まあ、気分の方は曇り空の如くドンヨリしてますが。

 

「お母様、一つよろしいでしょうか?」

 

「あらあら、何かしら」

 

「これ、何かな?」

 

 身体中に巻き付いてる物体に指差して聞いてみる。

 

「見れば分かるでしょう? リボンよ、プレゼント用の」

 

「聞いてるのはそうじゃなくて、何で私がグルグル巻かれてるかってことなんですが?」

 

 紅や緑、おまけに水色のリボンが上半身を飾っている。水色が無ければクリスマスカラーだからツリーにでもなった気分。まあゆったりだから苦しくは無いよ?

 

「大事な景品って思い出したのよ。ほら、案内の紙に書いてあったでしょう? アレって力作だし、頑張ったんだから。あの可愛いジルヴァーナなんて何年も掛けて練習したの」

 

 あのデフォルメされた俺ってお母様が書いたのかよ! 確かに可愛いかったけども! て言うか何で練習してるんだ、あんな絵を。

 

「じゃあ、これは?」

 

 今度は腰回りにあるヤツをグイと引っ張り主張する。自慢のウエストはお尻やオッパイに反して細い。我ながらとんでもないスタイルなのだ。だからこそ、そのウエストにあるコイツが凄く目立つけど……

 

「知ってるでしょうに。"ジルヴァーナに罰を"ですよ」

 

 水色と茶色で編まれた細めの縄。内部には魔力銀が仕込まれ、魔法行使を阻害するとんでもない代物だ。確かに良く知っている。名前の通り、悪戯の過ぎる愛娘を捕らえる為に開発されたモノだからね。開発者は目の前にいる妖艶な美人さん。これは四世代目の最新型だそうです。うん、全く嬉しくない。

 

 弱めに縛ってるから痛いとかはないけど……自慢のウエストが仇となり、取ることは不可能だ。下ろそうにもピンと張ったお尻があるし、上に行けばドーンと主張が激しいオッパイがある。魔力強化も出来ないから力で引き千切る事も出来やしない。

 

「何でさ!」

 

「うーん、何となく?」

 

「何となくで娘を縛り付ける母親が居ますか! 早く取ってよ!」

 

「逃げ出さない?」

 

「逃げるならとっくに逃げ出してますけれど!」

 

「どう思う?」

 

 お母様の視線が外れ、すぐ背後に向けられた。"ジルヴァーナに罰を"は三重に巻かれたあと、その先が背後に居る人に握られているのだ。まるでお散歩するワンコみたいで俺は悲しいです。

 

「……え? あ、はい! 最高です」

 

「ねえ、ターニャちゃん。何が最高なのかな?」

 

 振り返ると嬉しそうに縄をニギニギするTS美少女がいる。魔素が動くのも感じるし、色々と試しているのだろう。実際にさっきから脱出しようと頑張っているけど、全部の魔力があっさり消えてしまう。ターニャちゃんの"才能(タレント)"とこの縄って相性が良過ぎ……

 

「えっと……お姉様、綺麗ですね」

 

 Sっ気があるのは気付いていたけど、縛られた俺を見て綺麗って……

 

「綺麗なら良いでしょう。まるで囚われの皇女を救い出す物語みたいで素敵ね」

 

「まるでじゃないし!」

 

 そのまま! 文字通り! 囚われた皇女ですけど!

 

お姫さま(おひーさま)……」

 

「あ、キーラ! 助けて!」

 

「このリボンも似合うかと」

 

「味方がいない!」

 

 青いリボンを両手に持つキーラも何処か嬉しそうだ。うぅ、可哀想なジルちゃん。

 

「贈り物に綺麗な包装をするのが皇都で流行ってるんですよ? 特にこのリボンとか大人気で普通手に入れるのが大変なんです。シャルカ様のお力で大丈夫でしたが」

 

「さあ緊張を解きほぐす時間も終わり。そろそろ始まるわ。ほら、ケープを被りなさい」

 

 成る程、そうだったんだ! あのさ、その気の使い方、間違ってると思う。

 

 真っ白なケープが頭から垂れて少しだけ視界が曇った。まあ見えない訳じゃない。自慢の髪も朝に結われたから所謂"王女編み"になってる。三つ編みとサイド編みを組み合わせたゴージャスなヤツだ。カチューシャの様に頭をクルリと守る感じかな。一人だと面倒で絶対にしない。キーラが昔よくしてくれたけどね。

 

「ホントに苦しかったら直ぐ解きますから」

 

 耳元でターニャちゃんが囁いてくれた。吐息が掛かって擽ったい。多分お母様から頼まれたんだろうけど、やっぱり優しい……ん? いや、優しいのか? さっきの幸せそうな表情も演技だと思いたい、切実に。

 

 ターニャちゃん、あの晩から特に変化がない。まあ告白だって勝手に勘違いして、勝手にフラれただけで当たり前だけどさ。可愛い顔を見てたらまた泣きそうになるし、余り視線を合わせないようにしよう。侍女を目指すって話だから、一緒に居られるのは嬉しいけれど……少し辛い部分もあるよなぁ。

 

『お? なんじゃその装いは。人の間ではそれが普通なのか?』

 

 後ろ側に作られてた階段の方から声がした。ルオパシャちゃんがテクテク歩いて上がって来たみたい。しかしこれはチャンスだ。誤解を解きつつ、ついでに縄も解いて貰おう。

 

「ちが……」

「ルオパシャ様。此方に席を用意しておりますわ。どうぞ」

 

『おお、確かによく見えるの。これなら観察しやすい』

 

「これから始まりますので、皆様の戦いぶりを」

 

『うむうむ、楽しみじゃ』

 

「飲み物は如何なされますか?」

 

『至れり尽くせりじゃな。頼めるか?』

 

「キーラ」

 

「はい、お任せを」

 

 いそいそとキーラがお茶を用意するのを眺めつつ、そーっとルオパシャちゃんに近付く。

 

「ね、ルオパシャちゃん」

 

『ジルか。どうした?』

 

「この縄だけどさ」

 

『ふむ、中々素晴らしいのぉ。魔力銀の応用に関しては以前から見事と思っておったが……その様な技術もあるとは。魔素を一定方向に排出する造りになっておるの。しかもその強さによって流す速度すら変更出来る。まるで魔力錬成を阻害するかの如くじゃな』

 

「まるでじゃなくて、そのままなんですけど……」

 

『ん? ジルならば特に問題などなかろう? その程度、お主なら如何様にも対処出来るじゃろ。ならば特有の装飾品だと思うのが自然じゃ。人種は本当に面白い』

 

「そ、それはそう、ですけど」

 

 その"ジルヴァーナに罰を"を操るのがターニャちゃんなのがヤバいんです……子供騙しの筈が、本格的な拘束具に大変身してるので。魔素特化の才能が遺憾無く発揮されてます、はい。でも才能の事は内緒だしなぁ。

 

『あの童、いや女子か? それこそ力尽くで奪い取れば良い。つまり何かの儀式的なやつじゃろ? 分かっておる分かっておる』

 

 可愛らしい頭を縦に二回振り、全部理解してるよ?って感じをルオパシャちゃんが醸し出している。残念ながら、思い切り違いますが!

 

「ルオパシャ様、此方に置きますね」

 

『うむ、ありがとう。そろそろじゃな』

 

 サイドテーブルにカップが置かれたとき、ツェイス達の姿が見えた。始まるみたいだ。

 

「ジルヴァーナも座りなさいな」

 

「……はーい」

 

 ポンポンと叩かれた椅子はお母様の隣。渋々腰を下ろして下を眺めるしかない。

 

 はぁ、結局始まっちゃったなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

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