綺麗なお姉様が真っ赤な顔してプルプルするの最高だよね 作:きつね雨
んー? トーナメント方式じゃない?
勝手に勝ち抜き戦だと思ってたけど、此処から見える感じだと違うみたいだな。だって殆ど全員揃ってるし、皆が装備も整えてる。うーん、どうするんだろ?
魔王陛下は一人、暗い色のマントを着込み堂々と佇んで……いや、しかしいかにもな格好だ。世界は違えど魔王って一緒なのかな。水色の肌とバランスも良いし、やっぱり強そう。あれで凄く良い人なんだから異世界は不思議で溢れてる、うん。
ツェイスとクロは同じ種類の鎧。重装備じゃなくて軽鎧ってところかな。まあ果たし合いじゃあるまいし、クロは魔力強化を運用した速さが売りだから当たり前か。ツェイスもどちらかと言えば敏捷性に振ってる筈だもん。ツェツエ王国の二人だし似てるのも不思議じゃないね。
そう言えば、ツェイスの真剣な試合って随分久しぶりに見るなぁ。六年前なら絶対に負けないけど、四年前は滅茶苦茶成長してた。最近だと竜鱗騎士団の講義中に見た雷魔法か……あれって初動が早い上に、魔法そのものも威力がヤバいからな。ちょっと楽しみかも。
あれ? そう言えば"魔狂い"は? あの変態エロジジイの姿が無い。マウリツさんからフェル爺とか呼ばれてたけど、あんなのエロジジイで十分だ。まあ遅刻で脱落決定、それで良い!
うんうんと内心頷いてたら、お母様が丁度質問してた。
「キーラ、魔狂いは?」
「先程到着されました。ただ……」
「ただ? どうしたの?」
モジモジするキーラも最高だけど、同時に察してしまう。アイツめ、俺の可愛いキーラに何しやがった!
「あの……思わず、こ、股間を蹴ってしまいまして……」
「コカン?」
「いきなりお尻を撫でられたので、手加減抜きで蹴りました。暫く動けないかと」
あの野郎! やっぱりやりやがったな!
お仕置きに……くっ、"ジルヴァーナに罰を"の所為で動けないじゃん!
「あのお爺さん、相変わらずね。まあ分かり易くて良いけれど……でも、私の手の者に悪い事したなら、少しだけ
エロジジイ、御愁傷様。あとで死ぬ程後悔すればいいのだ! 我が母上は文字通り恐ろしいから……あれ? お母様って会ったことあるん?
「相変わらずって?」
「超級の中ではかなりの古株だから、一応面識があるの。随分前、いきなり胸を触ろうとしたから"沈めた"わ。それ以来、私には手を出さなかったから反省したと思っていたけれど」
「へ、へぇ。そうなんだ」
えっと、沈めたって何だ? 聞くのが怖い。見ればターニャちゃんまで微妙そうな表情だし……
「あの、シャルカさん」
「あら、何かしらターニャさん」
「差し出がましいですけど……お姉様の旦那様候補なのに、他の女性に手を出すなんて、普通もっと怒るものでは……」
む、確かに。あのジジイだからつい慣れてしまっていたな。そんな風に思い、お母様の顔を伺ってみる。すると、まるで「今気付きました」って顔をしてポンと手を叩いたのだ。はっきり言って滅茶苦茶怪しい。
「た、確かにターニャさんの言う通りね」
吃るなんて益々怪しいじゃないか!
「ちょっとお母様?」
おまけに余所見まで始めたので、もう確信しかないぞ。その誤魔化し方って誰かさんに似てる。経験あり。
「……ちょっと悪戯を、ジルヴァーナに、ね」
「悪戯って?」
「本当は此方から依頼を掛けたの。役割は別にあるけれど……貴女が慌てたら楽しいかもって。正直な話、忘れてた。悪戯を」
「意味がわかんないんだけど」
「御免なさいね。今度必ず話すから」
そんな風に悲しげな顔色だと責める気も無くなっちゃうじゃん。
「……それなら良いけどさ」
「ホント、お人好しは変わらないわね」
「え? 聞こえないよ」
「独り言。気にしないで」
おかしいな? 確かに何か言ってた気がするんだけど。ね、ターニャちゃんもそう思わない? そんな風に思って振り返った時だった。
「ターニャちゃん! 逃げて‼︎」
「え? 何ですか……わ、うひゃぁ⁉︎」
ツルツル頭の小柄な野郎がターニャちゃんの背後に立ち、そして至高のお尻をイヤらしく撫でやがった。しかもツンツンした後に。絶対に許さん……ってまだ動けないし! この縄ってホントヤバすぎだよ!
「ほほぅ。ジルの娘の頃には及ばんが良い尻じゃ。将来の美貌も約束されておるし、儂も楽しみ……」
「この変態ジジイ! よくもターニャちゃんに!」
俺だってまだナデナデしてないんだぞ! う、羨ましくなんてないから!
「久しいの、ジルや。しかし……中々珍妙な格好じゃのう。景品と聞いて来たが、最近の流行は面白い」
うっさいよ! 好きでしてる訳じゃないし!
「私のター……いや、えっと、変なことして!」
「案ずるな。ジルの成長も確認しないと、な」
ギャー! 寄るな変態! 今は魔力強化が出来ないんだぞ!
「魔狂い? いえ、フェルミオ? まだ"沈み足りなかった"かしら?」
ドロドロしたマグマの様な声が隣から聞こえて来た。俺に向いてないのに、何故か震えが走る。それでも艶やかなのが尚更怖い。
「……お、おう。お嬢、いや今はシャルカ皇妃じゃったか。ただの挨拶だからな? 頼むから沈めるのだけはやめてくれんかの?」
ジリジリと後退するエロジジイ。唯一整えてる白髭がプルプルしてるのが笑える。慄け、ジジイ! それと"お嬢"って何? え、聞くな? あ、はい、分かりましたお母様。睨まないで、怖い。
「それならジルヴァーナから離れなさい。指一本触れたならタダじゃ済ませません。それとターニャさんは今や我がバンバルボアにとっても大切な女の子よ? 巫山戯た真似をするなら"沈めて"その後"埋める"から。前より強めに」
「ひぃ‼︎ わ、分かった! 済まなんだ、ターニャ、いやターニャ様!」
「は、はあ。まあ別に」
ププ、ザマァ。しかし、トラウマなんだな、きっと。それと"沈める"って気になるんですが、やっぱり。え? 聞くな? あ、はい、お母様。
「フェルミオ。早く下に行きなさいな。貴方への依頼を果たしなさい」
「ふむぅ……見事に成長した胸に加え、至高の尻が目の前にあるのに……儂、悔しい」
変な目で見るな。確かに自慢の胸やスタイルだけど、エロジジイにはあげないし! まあ何度も触られたけど、もう過去のことだ!
「……フェルミオ?」
「さ、さぁ!行こうかの!」
ターニャちゃんと同じ位の背丈、曲がった背中、ツルツルの禿頭、皺くちゃのマント、そこだけ綺麗な白髭。エロジジイは爺いとは思えない速さで階段を駆け降りて行った。
『何故か、妾には興味を示さなかったな』
可愛い真っ白なルオパシャちゃんが曰う。いや、当たり前だよ。魔法に少しでも詳しかったからヤバいの分かるから。古竜に痴漢したなんて、歴史上も居ないでしょ?
『ん? お主には何度もナデナデされたが?』
ちょ、心を読むのやめてくれ!
「き、記憶にないなぁ」
知らないフリしよっと。
○ ○ ○
「勝ち抜き戦じゃない?」
水色、茶色、二色で編まれた縄"ジルヴァーナに罰を"を変わらず握り締めながら、ターニャちゃんは呟いた。誰かに質問したと言うより、独り言みたいかな。まあ、俺も同じ疑問を持ったからね。
皆バラバラだけど魔王陛下だけは少し離れてる。そこにエロジジイが合流し、ツェイスの横に立ったようだ。
「本当にこれで宜しいでしょうか?」
隣にいるお母様だってルオパシャちゃんへ聞いてるみたい。
『うむ。まだ
んー。ルオパシャちゃんの指示かぁ。
成る程ね、勝ち抜き戦だと一人だけ頭抜けてるからか。魔王陛下はちょっと普通じゃないし、ある意味でバランスを見たって感じだ。つまり……
『魔族の王、アレに只人が抗うのは酷じゃ。ましてや
「ヤツ、ですか?」
『ん? 知っておろう? お主達が"始原"と呼ぶアレじゃ』
お母様も微妙な表情。勿論"ヤツ"が誰か分からなかった訳じゃなく、ルオパシャちゃんが乱暴な呼び方をしたからだろう。始原を。
「ルオパシャ様。あの、質問を宜しいでしょうか?」
『構わんぞ。ジルの母たるお主には妾も翼を畳まねばな』
翼を畳む? 多分を姿勢を正すとか、そんな意味?
「……始原の竜、つまり竜帝陛下はどういった御方だったのですか?」
バンバルボアの歴史にも関わる話だからか、お母様も緊張気味だ。珍しいからつい妖艶な横顔を眺めてしまった。それに俺も興味あるし。
『かかか! 竜帝、竜帝か! くく……確かにヤツは全ての力を凌駕し、同時に包んでおった。妾は当然として兄達二人も羨望を隠しておらなんだよ。じゃが、尊敬など欠片たりともしていない、いや出来ないな』
「そ、そうなのですか?」
お母様の唇、ピクピクしてます。まあ、ある意味歴史は覆された!って感じだもん。俺はそこまで吃驚してないけど。
『最初に会話したとき、ヤツは叫んだのじゃ。可愛い女の子は⁉︎ 妖艶なお姉様は⁉︎ ドキドキハーレムは何処に⁉︎ 漸く出逢えて会話した生き物が竜だなんて、とな。あの時代に人など存在しない事を知り絶望したらしい。本当に失礼なヤツじゃ。まあ別の世界から堕ちて来たらしく、常識を求めても仕方ないと諦めたが』
うん? んん? な、なにやら変な単語や妄想が聞こえて来たぞ。何だか身に覚えのある話だけど、まさか……
「ね、ルオパシャちゃん。その竜帝様の名前って聞いた?」
お母様は魂を抜かれたように動かないし、気になったので聞いてみる。
『ん? たしか、ヒロシ、と言っておったの。変わった響きじゃし、覚えておる』
「ヒ、ヒロシ君かぁ」
間違いなく転生者じゃん。しかも日本人で厨二病で、エロくて妄想全開の。きっと神様みたいな人に騙されて来たんだな。ひゃっほーい、チートだ!ハーレムじゃぁ!って……うん、よく分かります。背後をチラッと見ればターニャちゃんが無表情に変わっている。死んだ魚のように瞳からハイライトが消えているのが怖い。確かハーレムなんて大嫌いとか言ってたし、汚物を見るような感じなんだろう。
お、俺は違うよ? ホントだよ?
「じゃあ人化の魔法を学んだのは」
『うむ、半ば強制的に教わったのじゃ。妾は人で言うところの女性に当たるらしく、一縷の望みを賭けてなどと妄言を吐き……今思い出しても腹立たしい』
魔力がゾワゾワと動いて怖い。ルオパシャちゃん、落ち着いて!
「大丈夫だった? その、ルオパシャちゃん可愛いし」
その質問に魔力の蠢きが加速しました! ヤバい、質問間違えた⁉︎
『ヤツは、ロリっ娘じゃねーか! 守備範囲ちげーし! と叫んだのじゃ。まあロリの意味を知った後に何度もぶん殴ったが……全く効かず、悔しかったのを覚えておるよ』
「……」「……」「……」
うぅ、居た堪れない。何故か俺が責められてる気がするよ……なんと言うか、すいません。まるで我が身の如く申し訳なく感じます。同じ転生者として、エロい妄想をした仲間として、ヒロシくんにシンパシーを感じるけども。
「あ、もしかして」
「なぁに? ターニャちゃん」
今世二大最強美少女ターニャちゃんが首を傾げている。決してロリっ娘ではない。これ重要です。
「色々な大陸の、しかも異種族に始原の血が受け継がれてるのって」
『察しが良いの。彼奴があちこちに手を出したからじゃ』
歴史的事実発見だぁ! う、横からどんよりした空気を感じるけど見ないようにしよう。具体的にはお母様が座ってる辺りから。
ん? あれ? でもそうなると……
「あのぉ、人と魔族はともかく、アズリンドラゴンは?」
『聞かない方が良い事もあるのじゃ』
横からのどんよりな空気がずっしり重い。寒気がするのは気のせいだろうか……
あんな脱力したお母様の顔、初めて見たかも。
第三章のラストまではだいたい書き終えたので、誤字脱字チェックしつつ、出来るだけ早く投稿していきます。